目覚めたらそこはシシ神の森でした   作:もふもふケモノ大臣

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予想外の高評価を頂き戦々恐々としています。
これもジブリの凄さ…そしてもののけ姫の偉大さ…。

まだ始まってもいないという的確過ぎる感想があったので取り敢えずスタートラインまでは頑張ってみます。

私は感想返しをし始めるとそちらにパワーが注がれて本編が全く進まなくなってしまうと思うので、すみませんが感想返しは遠慮させて頂きます。ごめんなさい。
でもありがたく読んでいます。ありがとうございます。


群れ

今日も平日昼間からーごろごろーごろごろー…

あーあ。犬繋がりでアマ公みたいに筆しらべ使えないかな。

 

いや、そんな馬鹿なことを朝から妄想してる場合じゃない。

 

なんで俺朝っぱらから………

 

 

 

囲まれてるんだっ!!!

 

 

 

おいおいおい…死んだわオレ。

俺にそっくりな白山犬達に囲まれてるんだけど。

カサカサ近寄ってくる大量の足音で目覚めるって嫌な気分だったよ?

もう耳の裏がなんかゾワゾワしてすごく嫌。もうすっごく嫌だった(語彙貧弱)

 

困りますよそういうの、君たち!

アポイントとったの?

事務所通した?

わんわん界のアイドルこと俺の寝起き攻めとかやめてよーちょっとーノーメイクよー?

えーやだー?

急いで俺は毛づくろいを開始したのであった!はむはむぺろぺろぺろ!

現実逃避ばかりしていつまで経ってもノーリアクションの俺に腹を立てたのか、

 

「貴様、我らの群れに囲まれておきながらそのトボけた態度…胆力は見上げたものよ。

 だが、ココを何処と心得る!シシ神の森と知っての無礼か!

 我ら森の護り手の山犬の一族に紛れ目を盗み、

 ぬけぬけとようもシシ神の住処で寝こけおったな!名乗れい!」

 

俺を囲む…1、2、3、4、5、6匹…10匹以上の山犬の中でも、

一番体格の立派な2本の尻尾の山犬が

今にも俺に噛み付こうかという勢いで怒声を上げている。

 

……。

 

だって…シシ神の住処寝心地いいし…。

苔の天然ベッドふかふかだし…。

気温丁度いいし…。

うーんソウダナー…問題点といえば同居人(シシ神)が夜中になるたんびに

デイダラボッチになるからちょっとウルサイくらいかナー?

いえね、足音とか変身音とかは別にしないんだけどね…

ちょっと見た目がうるさいっていうのかな…。

デイダラボッチは巨人の割に無音歩行するから騒音対策もバッチリだ。

だけどちょっと視界がね…?

今朝も、時間的にはこいつらに囲まれるちょっと前…

デイダラボッチからキモ鹿に戻る時にさー。

俺の頭上に巨人形態の頭から突っ込んでくるからかなり怖かったです。

あれ絶対わざとやってるよー。

この前うっかり喉笛噛み千切ったこと(大罪)まだ根に持ってるに違いないよー。

 

あっそうだ(唐突)

聞きたいことあったんだ。聞いてみよう!

 

「聞きたいことがある…」

 

「我らをコケにしているのか?

 オマエの質問に答える義理はない…!

 マズは我らの質問に答えろ…

 それによっては我が牙がオマエの素っ首を噛み切るだろう…!

 オマエ、名は?…何処から流れてきた山犬だ」

 

えぇ…やっぱり質問に質問で返したらダメだったか。

困った。困りましたねぇ。

俺はアドリブがきかない性格なんだ。頭の回転が鈍いんだ!

こういう時とっさに正直に言っちゃうタイプなんだよお~!

そして真実味が在る嘘を言おうとするとながーい沈黙が流れちゃうんだ。

そして場の空気の悪さは加速する…!

これが俺の会話術だよ(クソ駄目ワンコ)

 

「……」

 

「答えられぬと見える!」

 

グルルルルって超威嚇してるじゃないっすか。

ほらぁ~~!

だから言ったじゃない!

慌てさせないでよ!(逆ギレ)

今なんて答えようか考えてんの!

 

「……我が名は……八房。

 東の果てよりシシ神に呼ばれて参った」

 

見ろよホラ。焦らすからよくわかんないこと言い出しましたよ自分。

つい南総里見八犬伝からパクっちゃったよ。(1OUT)

なんとなくアシタカっぽいセリフまでパクっちゃったよ。(2OUT)

シシ神に呼ばれたって嘘まで言っちゃったよ。(3OUT・チェンジ)

 

だが俺の嘘にシシ神の森在来山犬達は段々目を大きくして驚きを滲ませ始める。

お?嘘効いてる?

なんだよ~騙されちゃってるの?

所詮ケモノ脳のようだな。(同類)

 

「シシ神が貴様を呼んだだと!?」

「嘘をつくな!」

「我ら一族がいながら何故貴様のような余所者が呼ばれるのだ!」

「オレたちが頼りにならんと言うのか!シシ神は何を考えている!」

 

…?ざわざわと騒いで勝手に討論し始めたんだけど?

 

(おさ)ッ!シシ神にコヤツの正体を聞こう!」

「シシ神を騙して我らにとって代わるつもりか!」

「シシ神め!長年森を守ってきた我らに代わり…

 こんな流れ者を新たな護り手にしようというのか!」

 

…それぞれの山犬が

勝手気ままに人語混じりにワンワン吠えまくるから、なんかもう凄い賑やか。

しかも何だか「シシ神に呼ばれた」って嘘で、

山犬さん達のシシ神への好感度が勝手に下がり初めていとをかし。

そうだよワンワン共!

シシ神って実は何も考えてない神様だからあんま奉んないでいいゾ。

というかガチ神だから俺達地上の生命体じゃ思考が理解できない。

もうシシ神のことなんか放っておいて一緒に北国行こう?なっ!

って今言いだしたら俺殺されるかな?

 

「鎮まらぬか!!」

 

ひぇ…。

しゅごい迫力…

俺に一番最初に話しかけてきた、

俺と同じくらい大きな山犬の一喝でその他の山犬達は皆口を噤んでしまった。

言われたのは周りのワンコ共なのに、

なんか俺の毛も耳も尻尾もシュンとなっちゃった。

そういうことない?

自分が怒られてるわけじゃないのにその場にいるだけで

自分が意気消沈ゴリラになっちゃうこと。

 

「…コヤツが只者でないことは一目見て分かる。

 我ら一族では、年を経て強くなろうとも二つの尾がせいぜいよ。

 古には三つ四つの尾を持ち更に大きな獣もいたと聞く。

 それを思えば、なるほどコヤツは並の山犬ではない」

 

オサ…多分リーダーって意味の「(おさ)」だろう。

確かに体格もいいし…あっ…そういえばコイツ…

おケツに尻尾2本あんじゃーん。

ってことは…?

じゃあ…こいつがモロ?

 

…。

 

なんか…声が微妙に違うような…。

でもミワさんの威厳アンド母性を感じさせるあのステッキーボイスに…近いかな?

微妙に違うって程度に聞こえるなら……ひょっとしてモロの親戚とか?

 

「オマエの体の、その巌の如き逞しさ……。

 何よりも八つの尾がオマエの神威の高貴なるを物語っている…。

 私としては――」

 

「――なぁ、お前はメスか?いまいち性別が分からぬのだ」

 

「………」

 

あらヤダ。オサさんの目が何いってんだこいつって言ってる。

 

「キサマ!我らが母に無礼であるぞ!」

「どう見てもメスだろうメス!母者は我ら一族一番の美人じゃ!」

「長を男と見紛うなどオマエの目は節穴か!」

「匂いを嗅げば一発でわかるのにな」

 

「お前達お黙りっ!!」

 

…。

すごい迫力だ…。

あのキャンキャン喚いていた山犬達が

みんな耳をたたんで尻尾たらしてシュンとしてる…。

もちろん、俺もそのうちの一匹だ。

 

「……私の息子と一族達がうるさくて悪かった。

 だが、オマエも少し黙って私の話を聞くがいい」

 

はい。ごめんなさい聞きます。

黙ってジッとオサさんの目を見ていかにも真面目アピールするぜ。

オサ…長…長さんって書くといかりや長介か…それとも…

 

っ!

 

長さん…俺達は山犬…犬…ワンちゃん…ワンワン……な、なんてこった!

ワンワンの中の人じゃないか…!このまちだいすき!

はぇー、こんな共通点あるんだね。(すぐに思考がブレる真のケモノ脳)

 

「フム……オマエ、良い眼をしているね。

 シシ神が東方より呼び寄せた物の怪…ヤツフサよ。

 私としては、オマエの命が無事でシシ神の住処に寝ておった時点で、

 既にシシ神様はオマエを受け入れているというのは解っていた」

 

おお。俺の眼、良い眼だってさ!(節穴)

キリッとした顔を意識してたのが良かったかな?

いや、それとも奥底からの性格イケメンっぷりが滲みでた可能性が?

 

「見た所…図体はデカイがまだまだ若造のようだな

 ……毛艶が若造そのものだ…フフフ。

 あの子らの小さい頃を思い出すな…もっとも、オマエみたいにデカくなかったがね。

 群れに、若く…そして新しい血が加わるのは喜ばしいことよ」

「待て母者。コイツを群れに迎えるというのか?」

「こんな強力なオスが大人しく我らの一族に収まると思うか、伯母上?」

「ヌゥ…長がそう言うのならば従うまでよ」

 

なぬ?

なんか口をへの字にしてキチンと黙ってたら話があれよあれよと…。

どゆこと?

え?俺、今日からこの群れの仲間なんですか?

 

皆から母とかオバちゃんとかオサとか呼ばれてたリーダー山犬が、

デカくて裂けた口の端っこを釣り上げて笑う。

うーん…コワイ。

 

「よし…皆反対はないようだな…ヤツフサ。

 我々一族はオマエを受け入れよう。

 今日からはシシ神の住処で寝るんじゃないよ…全く恐れ多い奴だ。

 若さゆえに恐れ知らずの無鉄砲なのか?

 ワッハッハッハッ!」

 

…。

コワイだけじゃなくて、なんと言いますか…豪傑だな。このオバちゃん山犬。

モロをより「てやんでぃ」的にした感じ?

肝っ玉母さんだなー。好きだよこういうオバちゃん。

いきなりオマエを仲間にしちゃるって言い出して、

俺も、そして多分周りの山犬も困惑気味だけど…

それでもソレを押し通して納得させる女傑のようだ。

モロというよりラピュタのドーラタイプかな。

 

よし。仲間やってみっかー。

そして気が合わなければ夜逃げして北へ行こう。(即断)

 

…。

 

おっそうだ。

俺ケモノだし…折角仲間になったし…

このタイミングでしか言えない、あの往年のゲームの名台詞…

言ってみたかったんだよ俺。

 

「ワレハ 聖獣 ヤツフサ コンゴトモ ヨロシク」

 

新入り的に頭をぺこりと下げて、

その後ドヤってみる。

だってあの名台詞が凄いマッチするシチュエーションなんだもん!

自己満足がすげー!

俺の心の中は満足感とやりきった感で満ちてるよ。ミチミチだよ!

ムフー!って鼻息でちゃった!

胸元のもふもふ毛も気持ち逆だって膨張しちゃった!

 

「……」

「…かわった奴ダナ…」

「うむ…こ、今後とも…よろしく?」

 

俺にのってくれた若い山犬がいるぞ。

お前すごく良いやつだな!

 

あとの犬っころは冷たい目で見てくるけど。

冷めた目のお前ら、後で24時間耐久毛づくろいしてやる!

俺様の絶技に喘ぎ散らすがいい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―本日からの寝床―

あっ!

ここ!

映画で見た石の洞窟みたいなとこだ!

 

「ヌオー!ここ!俺ここで寝る!」

 

俺はサンが劇中で寝てたと思われる場所で寝ると主張した。

必死に前足で「ここ!ここですよ!」とパンパンと石の床を叩いた。

だが現実は非情である。

 

「新入りの兄弟は端っこだ!もっと入り口の方イケ!」

「図々しいぞヤツフサ!」

「オマエ、ただでさえ図体デカイ。尻尾八本もあって更に邪魔」

「だからコイツを仲間にするのは嫌だったンダ…寝床が狭くなル…」

 

「……クゥーン」

 

いきなり10頭くらいできた山犬の兄弟の図体に

グイグイ押されて隅に追いやられた。

ションボリだよ。俺様ションボリだよ!

花瓶倒して怒られたチワワみたいな声でちゃったよ!

新入りはどこの業界も世知辛い。

 

…。

 

くっさ。

 

ケモノくっさ!

 

この石の洞窟…いや部屋か…?

ワイルドな犬の匂いが濃厚だよ!

あ?

俺もこの臭いなのか!?

あれか。

自分では気付けないけど他人だと気付く的な。

 

明日から水浴びしよう。

 

…。

 

……。

 

あれ…。

そういえば…。

俺、なんか大切なこと聞き忘れてるような…。(年代とかモロのこととか諸々忘却ワンコ)

―この間僅か0.1秒―

まっいいや!(ケモノ脳)

兄弟共で暖かくてもふもふでウトウトしてきたし寝よう。

明日のことは明日の俺が何とかするさ!

何かもう臭いも慣れたな!

目を閉じると、人間時代は劣悪に感じた環境でも、

俺はいつものようにぐっすり安眠できるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして明くる日。

俺は陽が昇る前から叩き起こされて、今こうしてボーッと突っ立てる。

何をしてるかって?

さぁ…?

とりあえず長さんに

 

「オマエはそこに立ってるんだ。私の息子達が追い込むからな」

 

って言われただけでしてね。

立ってろって言われたから立ってるだけですよ、はい。

 

…。

 

……。

 

あぁ…。

朝早かったし……陽がちょっとだけ高くなってきて…。

今日も良い天気だし………。

 

…。

 

うとうと…。

 

スヤァ。

 

 

 

 

「追い込め!」

「逃がすナ…!」

「ヤツフサ!そっちへ行ったぞ!!」

 

 

 

スヤァ。

 

「ヤツフサ!そいつを仕留めろ!」

 

んあ?

なに?

ソイフォンにめろめろ?(難聴系主人公)

 

…。

 

ほげぇ~!?

親方!うたた寝から目覚めたら俺に向かって一直線に走ってくるデケェ猪が!!

 

「プゴオオオオオオオオッ!!!」

 

なになに!どうすんのあれ!

えっ

ちょっ

止まって!俺に激突するぞブタ野郎!

オマエ俺とぶつかったらそのまま2匹とも美味しい肉塊になるぞこの野郎オマエ!

ヒェッ止まっちくり~、あっ(察し)ダメみたいですね。

 

『八房、迫リ来ル巨猪ニモ 些カモ怯エ震エルコト非ズ 微動ダニセズ。

 彼ハ僅カニ体ヲズラシ 巨猪トスレ違イザマニ喉笛ヲ牙デ裂キ 一撃デ死ニ至ラシ給ウ』

―狩りを目撃したショウジョウの述懐―

 

 

大きな猪は首から血を噴き出しながら10数m程走り、

段々とフラフラしてからドスンッと横倒れ。

 

うわあああ怖かった怖かった怖かった!

 

「グルルルル…」

 

ハァハァハァハァ…

すごいぞ俺…追い込まれてからの気迫…

過緊張で鼻っ面が痙攣して唸ってるみたいになっとる。

抑えに向いてるな…(確信)

もう追い込まれすぎて自分でもどうやって体動かした良くわかんない…。

 

「よくやった!」

「見事なりヤツフサ!」

「さすがは長が見込んだだけはある」

「勇ましい面構えダ…さすがはシシ神が呼びし犬神ヨ」

 

わらわらと四方八方から山犬達が俺に寄ってくる。

うひゃひゃ、やめて、くすぐったい。

首甘噛しないで!耳元スンスンすんなやコラァ!

おい脇の下に顔突っ込むんじゃねぇ!

ぬわーやめろォ!オス共の熱烈なハグなんざうれしくないんだよなぁ!

いやわかってるよ?

多分これって山犬業界の親愛の情の証みたいなやつだしょ?

でもちょっ熱烈過ぎませんかね…。

 

俺が義兄弟にもみくちゃにされてると、

長がノッシノッシと歩いてくる。

その顔はちょっと笑ってるように見えた。

 

「見事な狩りじゃないか…猪を仕留める直前まで気配を殺すとはね…。

 オマエが見た目だけ立派な見掛け倒しじゃなくて私としても嬉しい。

 オマエが役立たずだったら、

 オマエを群れに入れた私の立つ瀬もないカラね…ふふっ」

 

長も義兄弟らと同じように2本の尻尾を振りながら俺の首に鼻先を擦り付けた。

う~んくすぐったい。

 

「今日の獲物は大物だ。

 暫くはたらふく食えるな……皆、少しここで食っていこう。

 こんな大物を運ぶのは手間だからね…少し軽くしていこう」

 

長がそういうと皆、いの一番に猪の死骸へ食らいつく。

お腹のでっぷりとした所には誰も食いつかない。

妙なスペースが空いているんだが…なんであそこ誰も行かないの?

一番食べやすそうだし肉も多そうなのに。

 

「ほら、行くよヤツフサ。

 あそこは私とオマエの為に、あの子達が空けてくれているんだ」

「…新参の俺が、あんな良いポジションで食って良いものか」

「ぽじしょん?変わった言葉を使うな…それは東方の言葉か?

 ……いいのさ。新参だろうが群れを率いる私の横で食えるのは、

 常に狩りで大手柄をあげた者と決まっている。

 さぁおいで」

「…あぁ」

 

うっかり使っちゃったポジションはスルーしてくれて良かったぁ。

今後も変な言葉使っちゃったら東方の言語とか、

神様の世界の言葉とか言っとこ。

俺の言葉が変なのも全部シシ神って奴のせいなんだ。(なすりつけ)

 

俺とおばちゃんは猪の脂ののったジューシーでっぷりお腹を堪能したのだった。

すごくおいしかったです。

 

 

 

 

 

 

▽▽▽

 

 

 

 

 

ぬわぁぁぁん疲れたもおおおおん。

もう狩りやめたくなりますよぉー。

何日目だと思う?この狩りの繰り返し生活。

70年間続けてるんだゾ。

有り得ないんだよなぁ、特にイベントもないまま70年間とか。

さすがの聖獣(自称)ヤツフサ様も飽き飽きしてきた…。

イベント…なにかイベント…ちょうだい…。

仲良くなったさ…ああ、確かにコイツらとは仲良くなったさ!

群れにもすっかり馴染み、

狩りの連携も以心伝心だし

寝床だってもう遠慮しないで早い者勝ちしても許されるようになったさ。

 

だって70年目選手だからな。大ベテランだよ人間的には。

むしろ狩り一筋70年ってもう人間国宝レベルじゃない?

でもね…俺達みんな半分神の領域に足突っ込んでるから、

まだまだ70年目なんて神業界じゃペーペーどころかまだオムツもとれてない。

立川の2人組は数千年選手でしょ?

頭下がるわー。さすが2大宗教の首領(ドン)

無理だ…俺には無理だよ…千年、二千年と同じことするなんて…。

教えてくれシシ神…俺は一体あと何年…このサイクルを繰り返せばいい。

 

…。

 

……。

 

ああああああああああああ!(暇すぎて暴れるケモノ)

 

いつまでもシシ神の森なんて守ってられるか!

俺は人界に降りるぞ!

そもそも何十年も森で山犬の一匹として馴染みすぎたわ!

住心地いいし狩り楽しいわぁ~と思っちゃってついうっかり70年過ごしちゃったけど、

そういえばいつシシ神の森に終わりが来るのか全然わかってないよ俺。

 

そうだよ。

そもそも俺、最初は年代特定しようとか考えてましたよね?

なんで思いっきり放り投げて狩り生活に勤しんでるの?

バカなの?ケモノなの?

 

今がいつの時代か特定作業をするのが一番大事って!

あなた言ってたじゃない!(70年間完全に忘れていた模様)

うん、ちょっとだけ人界におりよう。今おりよう。

1人じゃ寂しいからアイツも連れて行こう。

アイツってあれね…

初対面の挨拶でメガテン挨拶に乗ってくれたノリの軽い義兄弟ね。

 

「義兄弟よ」

「…?どうしたヤツフサ」

「今ヒマか?」

「…見て分からぬか?」

 

俺はチラッと義兄弟の足元を見る。

そこにはずっと前に仕留めた大猪の大腿骨が転がっている。

ずっとハムハムして遊んでただけのようにしか見えませんが。

 

「分かったぞ。ヒマなようだな」

「そのとおり!」

「俺と一緒に人界に行こうではないか。顔見知りの村があるのだ」

 

俺の言葉に義兄弟はエッ?って顔になった。

まぁ無理もない。

いつの間に人間の知り合いなんざ作ったんだって感じだろう。

 

「シシ神の森を守る犬神が人間と触れ合っていると汚れるぞ」

「固いことを言うな。それにあの村の人間は森への尊敬を忘れていない」

「…………ああ、というとアノ村の人間達か。確かに人間の中ではマシだ。

 あの人間達はオマエの知り合いだったか…なるほどなるほど。

 よし行こう…面白そうではナイカ」

 

結構あっさり食いついたな…やっぱ若いと脳が柔軟。はっきりわかんだね。

こうして義兄弟は簡単にホイホイ俺についてきちゃったのだ。

 

 

 

 

 

▽▽▽

 

 

 

 

 

「おばば様!」

 

村の子供が息を切らしながら村で一番大きな藁葺き屋根の家へ駆け込んできた。

この家は、本来は集会などに使われるものであったが

今は足腰が弱った村一番の知恵袋である老婆が、

世話役の少女と共に寝起きしていた。

 

「なんだいアンタか、ババ様は今日はお具合が悪いんだ。

 静かに入っておいでね。アンタももうすぐ年頃なんだから」

「あ…ご、ごめんなさい、おネエ!でもそれどころじゃないだよ!」

「これ!声が大きい!」

 

娘が煮込んだ薬草粥をかき混ぜながら元気な少女を窘める。

両者の会話を耳にしてか、奥で寝ていた老婆がヨボヨボと上半身を持ち上げ、

 

「ええんじゃよぉ…どうひたどうひた、しょんなに慌ててぇ」

 

フガフガいいながら少女を優しく出迎えてやった。

この老婆、今年で御年70歳。

この時代、田舎に住む卑賎の女としてはとても長寿でお達者だ。

 

老婆は「これも全てシシ神様と犬神様のご加護なのだ」と常々口にする。

この集落の人間は昔からシシ神の森と共に在った。

今の時代はまだまだ人は自然や霊威を畏れていると言える時代ではあるが、

その中でも彼らは(みやこ)の人間達と比べて

森と獣に寄り添い共栄する道に対してずっと理解があり、

70年前に犬神が降臨してからはそれに拍車がかかった。

 

特にこの老婆は赤子の時分、犬神への供物に捧げられる所を

犬神自身によって慈悲をかけられ生き長らえた女性だ。

神に気に入られ、神に人としての生を全うすることを直々に許された者。

その事実から彼女はちょっとした現人神のように祀られ、

彼女がいるだけで村は安泰かのように村人からは看做されていた。

また彼女自身その性格は控え目。

村中から絶大な信頼と尊敬を集める深き知恵持つ賢女へと成長していた。

その頼れる賢女に少女が一大事を告げた。

 

「い、いいい犬神様がお越しです!!」

「っ!?ぶへぁっ!?な、なななんな、んな、んなんじゃとおおお!?」

 

深き知恵持つ重厚なる賢女、盛大に吹き散らす。(悲報)

 

普通の人間なら生涯に1度でも神と巡り会えたら、

それはもう人生全ての運を使い切ったと言っても過言ではない幸運だろう。

その一度が、言葉まで交わして「守ってやる」等と言われては、

それはもう尋常ではない強運だろう。

 

それが、この老女は老境に入って二度目の邂逅となる。

この運の強さをなんと言い表わせば良いのか、老婆は分からなかった。

 

曲がってヨボヨボの腰はピンシャンとして、

布団から飛び起きると直ぐ様身なりを整える。

白髪頭を結い上げ、翡翠を削った耳飾りをつけ、八百万の神々を称える紅化粧をさし…

屈強で若々とした男衆も真っ青な身軽さと速度で走りだした。

韋駄天も白旗をあげそうな健脚で犬神の待つ集落の入り口まで爆走である。

 

そしていた。

まだ赤子だった老婆自身、覚えちゃいなかったが…

それでもその輝くような神聖で厳かな白毛の巨狼を、確かに彼女は知っていた。

 

「お、おおおお…!おおおお!!い、犬神様…!!!ふ、二柱も!!?」

 

既に村中の人々が伏せて白き犬神を迎えている。

老婆も猛然とその土下座の輪の中に割って入り、

 

「シシ神の森よりいでし八尾の白狼よ…そしてもう一柱の犬の神よ…

 今一度、貴方様がお越しになって下さること、過分な僥倖でございます。

 我ら一同かしこみかしこみお迎え致す」

 

何とか声だけでも落ち着けて迎え文句を言い切った。

 

「ウム…久しいな。この村に来るのも70年ぶりか?

 ニオイでわかるぞ……赤子よ随分老いたなぁ…時が経つのは早いものだ」

 

あの時差し出された赤ん坊が、もうこんな皺くちゃのお婆ちゃんになっている。

それを見ると時の無常というか…感慨深さをも感じる八房であった。

それと同時に犬神になった自分が時間の流れに対して鈍感になっているのを実感する。

あぁ自分はもう完全に物の怪だ、と八房は思った。

 

「へ、へへぇ~~!わ、私のことを覚えていて下さったのでごぜぇますか!?」

「…んん…ごほん。無論だ…俺は下らぬ記憶力だけは良いのだ。

 今日は、またあの日のように俺に話を聞かせてくれ。

 最近、人間達の間で何が起きたか…。

 ……そしてな、いい加減に皆頭を上げろ。

 それでは話も出来ぬ。今日は俺の義兄弟もいるのだ。

 皆、コイツにも色々と話してやってくれ」

 

言われて、村人は暫く無言で伏せ続け、互いに困り顔を突き合わせてから、

徐々に徐々に頭を上げて大きな山犬と視線を合わせ始めた。

 

「えぇ、そ、そうですなぁ…わしら下界の俗事でよぉございましたら…」

「……おい、おめぇ…何かねぇか?」

「……………オラはちょっと…」

「じゃ、じゃあオラが……、ごほん…

 なんでも瀬戸内じゃ藤原(なにがし)が海賊率いて大暴れしとるって話でさぁ。

 この前港町まで皮売りに行ったらんなこと言っとりました。

 瀬戸内じゃ碌に商売も出来んそうな」

「あぁそういうんならオラも知っとるで!

 関東の方じゃ(たいら)の…なんじゃったかな…えぇと、(つわもの)が反乱なすったとか」

 

山深い村に住む彼らだが、

定期的に狩り獲った肉や皮、僅かな木材などを売りに大きな人里へ降りていく為、

このように意外と広範囲の出来事を耳にしている。

何よりこの時代、噂話は最も楽しい娯楽の一つ。故に民衆は耳聡い。

 

「…関東で起きた…タイラノツワモノの反乱…?

 タイラノツワモノ…タイラノツワモノ………むぅ」

 

八房は、初めて…とても重要そうな歴史的情報を得た気がしたが、

彼はかつて人だった頃、座学はからっきしだった。

ウンウン唸って歴史の教科書を必死に脳内でめくっていたが、

 

「…うわぁ~~~、いぬがみ様おっきぃ!」

「こ、これっ!やめなっ!」

 

犬神の優しい雰囲気に安心したのか、

初めてまじまじと見る山犬への感動が理性を上回った

村の幼子が走り寄ってきたので、教科書は霧散した。

急いでそれを母親が窘めたのは当然だろう。

犬神の気分を害せば噛み砕かれるどころか、村全体を祟られかねないと思ったからだ。

だが、

 

「ん?はっはっはっ!そうだろう…俺は大きいのだ。

 小娘…俺の背に乗るか?」

 

八房はかんらかんらと笑って悪童めいた笑みを浮かべそう言った。

母親は「滅相もない!」とただ慌てるばかりである。

 

「…乗ってみろ小娘。オレの義兄弟は図体だけは良い。

 さぞ眺めはイイだろうヨ……どれ、オレが乗せてやる」

 

義兄弟が八房の悪ノリに付き合いだした。

大慌ての母親を尻目に、

義兄弟は少女の服をパクリとしてそのまま八房の背に放ってやる。

 

「あぁ!犬神様!お許し下さい!あぁ、あぁ、この娘はそのような無礼を!!」

「きゃー!おっかぁ!すごいよすごいよ!

 もふもふ~!あったかぁい!ながめいい~~!」

 

少女が八房の背の豊かな白毛に顔を埋めてグリグリ押し付ける。

 

「フフン…ちゃんと沐浴を済ませてきたからな…。

 小娘…どうだ、俺様は良い匂いだろう」

「いぬがみ様はお日様のにおいだ!」

 

大きな山犬のその()()()()に、

他の子供らも我も我もと犬神へと殺到していったのは当然の成り行き。

 

「オイよせ…オレはヤツフサのように物好きではないぞ。

 よじ登るな……尻尾に乗るな!よせと言うに。乗るのは一度に三人までにせい」

 

八房の義兄弟山犬も子供の群れに沈んでいった。

少々荒い口調で色々言っているが、彼も満更でもなさそうだ。

 

最後まで大人達は畏れ多いと言って憚り、

子供達を必死に止めようとしていたのだが…

陽が暮れる頃には大人も山犬も、

子供の天井知らずの元気に振り回されて疲れ果てていた。

子供が疲れて寝てしまうまでそのどんちゃん騒ぎは続いたのだ。

 

 

 

 

「ヤツフサ…オレはもうクタクタだ……人間の凄さを初めて味わった気がスル…」

 

帰り際、義兄弟は疲れた顔で長いベロを出しながらそんなことを呟いた。

八房も全くの同感であった。

 

「あぁ…今日は俺も疲れ切った…。

 子供ってのはあんなパワフルなのか…」

()()()()ってなんダ?」

「あっ……………ぱ、ぱわふるってゆーのはな……えぇと、そのぉ」

 

2頭の山犬は疲れた顔をしながらも満足気に山に帰っていったのだった。

 

 

 

 

 

 

2頭の背には山海珍味の風呂敷が巻きつけられていたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

▽▽▽

 

 

 

 

田舎に泊まろうwith義兄弟から早くも……何年だ?何年経った?

あの日、ベイビーがババアになっちゃった事件を境にして

俺の時間感覚に著しい乱調が見られる。一大事ですぞ!

というか、前までが俺ちょっと凄かったよね。

時計もカレンダーもないのに70年間分カウントしてたって凄くない?凄い。(確信)

 

でももう数えるのも飽きたからいいんです。

年月数えてたって時代特定イベント起きないから意味ないなって…、

俺…わかっちゃったし。(平将門フラグ取得を幼女キャンセルしたワンコ)

 

 

 

とにかく何年か何十年か経って…

俺はその日の朝、

ウトウトしながら「あ~まだ起きたくない…長…あと10分寝かせて」と訴えていたのに

無慈悲にも長であるオバちゃん狼は

 

「さっさと起きな。お前達、狩りに行くよ!」

 

な~んて張り切ってるからもう参っちゃうね…ハハッ!(夢のネズミ風)

これには義兄弟達もしぶしぶ従って早朝から皆でお出かけ準備に勤しむのであった、まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして危な気なく狩りは終了。

俺もうまくなったもんだぜ!

狩りをし、シシ神の森に異常はないか見回って…、

ショウジョウを見つけたら面白い話ないか聞いて…、

コダマを追っかけてみたり、

蝶々を前足だけでどっちが多く捕まえられるかの勝負を義兄弟達としたり…、

 

…。

 

……。

 

ぬわぁぁぁん疲れたもおおおおん!!

森暮らしやめたくなりますよ~。

 

俺は若者特有のアレを発症して都会に行ってみたいと思うようになった。

 

「長っ、オレ都に行きたい」

「…熱でもあるのか?今日は大人しく寝てていいよ」

 

長に直訴したら一刀両断だよ。バッサリだよ。

確かに森の護り手たる山犬一族には湧いてくる筈もない発想なんだろう…。

でも俺行ってみたいの…今の時代の人間の生活水準知りたいの…。

俺も長年親しんだこの群れを蔑ろにする気はないし…

だからちゃんと事前許可貰おうと思ったのに!

もうバカ!長なんて知らない!

 

いいよ。もう今日は大人しく寝てやる!もう今日は狩り手伝わないからな!

俺は寝床の隅っこで

「あぁ、ここにいつかサンが寝るんだ。今から良い匂いしないかな」

なんて思いつつ床をクンカクンカして

義兄弟達のケモノ臭しかしないことに絶望しながらゴロゴロしていた。

 

…。

 

……。

 

おっそうだ。(閃き)

瞑想しよう!(唐突)

そういえば俺は、自分でも忘れていたが

シシ神から神様パワーを物理的に摂取した(スーパー)山犬だったゾ。

頑張って修行すれば筆しらべみたいなのが

いつの日か出来るようになっちゃったりする可能性が

在ったりなかったりスルかも知れない。

 

目を閉じて…

まずは思い出すことから始めないとな。

だってもう大神やったの体感的に何十年も前のことだし…

 

筆しらべ…。

 

どんなだっけ…。

 

…。

 

むーん…。

 

…。

 

……。

 

 

 

スヤァ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああああああああああああああ!!(熟睡からの目覚め)

一日過ぎてる!

そんなバカな!

これは…スタンド攻撃か!!

目を閉じて瞑想しようと思ったら時が飛ぶなんて!!

わかってるよ畜生!俺寝たんだよ!

だってポカポカ陽気だったから!

だからシシ神の森ってヤなんですよねぇ…。

人が…じゃなかった、犬が何かしようとするとすぐにコノ…

良好な環境が俺を惰眠に誘うんですよぉ。

 

ま、いっか。

俺、山犬だし。

超長寿だし。

瞑想する時間はたーんとあるさ。

 

…。

 

……。

 

あれ…?

俺、山犬になった当初、時間ばっか気にしてたような…。

なんでだっけ?(理由を忘却する駄犬)

 

…。

 

えーと。

 

何かを忘れてる気がする。

 

うーん?

 

「おい、ヤツフサ」

「何ダ…俺は今考えごとをしているンダ…後にしろ」

「オマエ、海見たことあるか?ちょっと行ってみないか?」

「オッ、行こう!」

 

俺と一番良くつるむ義兄弟が俺を遊びに誘いに来た。

これはもう行くしかないな。

海…海かぁ。

何十年ぶりだな。

山犬になってから海なんて見てないなぁ。

 

「他の奴も誘わないカ?」

「あまり全員で出かけるとシシ神の森が無防備になるからナ」

「…仕方ないか…ではまずは俺達だけで行こう。

 他の兄弟はまた次の時ダナ…」

「アア、そうしよう。母者に言ってから出発ダ」

 

俺と義兄弟はウッキウキで長の所に行ったのだが…

 

「………海を見てみたい…だって?」

「ウン!」

「俺達、海見たことナイ!」

 

ジロリと凄く威圧的な目で俺達2頭を睨む!コワイ!

 

「…はぁー、まさかオマエと出会った時は……、

 オマエがこんな馬鹿な子だとは思わなかったがねぇ」

 

んん?俺がバカ?

いや、違うきっと義兄弟の方だな。今のは。

ハハハハ、バカって言われてるぞブラザー!

 

「……………………いいよ。行っておいで」

 

たっぷり間を置いてから、

なんだか疲れたような?投げやりな感じを匂わすような?

そんな口調で許可がでた。

どうした長っ!疲れが溜まってるのか!もう年か!?

寄る年波には勝てないか、さすがの山犬の一族でも!

 

ギロリっ

 

ヒェッ…。

そんなこと思ってたら長が睨んできた。コワイ。

 

「…いいかい?二人共はぐれないようにしっかりくっついて行くんだよ。

 後、人の目に触れないように街道からはたっぷり離れること。

 後は、空腹になっても落ちてるものは食ってはいけない。

 ちゃんと狩りをして食うんだ。いいね」

 

後は後は、とドンドン言い足していく長に俺と義兄弟はウンザリだ!

俺達は幼稚園児じゃないっつーの!(それ以下の疑い有り)

大丈夫だって!

 

「長っ!お土産持って帰るからナ!」

「母者、行ってくる」

 

こうして俺達2頭は群れの仲間に見送られ、シシ神の森を旅立った。

羨ましそうなブラザー達の視線を背に受けての出立…。

中々心地良いゾ~、これ。

 

俺達2頭は長の忠告をちゃんと守って、人目を憚り夜になるのを待って…

しかもちゃーんと街道からすっごく離れて走った。エライだろう?

目指すはココから近い日本海側…じゃないぞ!

風光明媚で有名な瀬戸内の海だ!

ずっと前、村人から聞いた瀬戸内の海賊ってのも見てみたいし、

観光にはやっぱ瀬戸内がちょうどいいって感じ?Foo!テンションあがるぅー!

 

「ヤツフサ!どちらが速くあの峰の向こうまで行けるか勝負せぬか?」

「フンッ!俺に勝てると思うか…いいぞ、その勝負受けた!」

 

俺と義兄弟は高まったテンションのままに野山を走り、

崖を飛び越え、川を飛沫を上げて割って駆ける。

 

一夜走り、二夜駆けて、三夜跳ぶ。

シシ神の森とは全く違う空気と風に俺達2頭の頭は完全にお花畑だったと言わざるを得ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここって瀬戸内か?」

「どうであろうな…だがどうでもイイ!広いナ!コレが海か!!」

 

俺達の目の前には荒波がザッパーンしている。

そして海を初めて見た義兄弟は凄く嬉しそうに、小高い崖から海原を見渡していた。

俺だって嬉しい。海を見たのはウン十年ぶり…下手したら百年以上ぶりだ。

もう正確な年月は忘れてしまったが、感動モノなのに変わりはない。

 

「この匂い…!これが潮風というヤツだ義兄弟!」

「なんとも初めて香る匂いダ!素晴ラシイ…!波の動きは見ていて飽きんな…」

 

おっ?

フとあちらを見れば、あんなとこに神社が!

ちょっとお参りしてみるか。(自分が神の一柱なのは忘れているワンコ)

 

「…?どこ行くんだ?」

「あれだ。あの社…ちょっと行ってみよう」

 

チャッチャッチャッと荒々しい岸壁を蹴る俺達の爪音が小気味いい。

そしてその岸壁に打ち付ける荒波の寄せては返す水音…。

イイ…。

すごくイイ…。

 

「……フム?和布刈神社……?」

「なんと読むのだ」

「そんなの…ソノママ読めばイイだろう…ワフカリジンジャだな」

「ワフカリ…」

「誰を祀っているンダ?まさかシシ神じゃあるまいな。

 どれどれ………オッ、猿田彦の岩があるゾ」

「猿田彦か…知っているぞ。母者から聞いたことがある」

 

2頭で真夜中の神社を散策していると、遠くから人の気配。

むむ。

まさか、この時代のこんな夜中に人が来ることもあるんだなぁ。

ひょっとして神主とかかもな。

俺達は一応犬神だし、簡単に人目につかない方がイイというのは分かっている。

何より長に言われたし…スタコラサッサだぜ!

 

その後、俺達は夜の荒海へ飛び込んで思う存分泳ぎまくったのだ。

 

「う、うおおお!これが波か!凄いな!流されるぅー!ガボボボボ」

「ヤツフサー!おいしっかりしろ!オレの尻尾に掴まれ!」

 

ガボボボボ…!

アババババ!

まずい沈んでしまった。

思ったより潮流すごかったです。

こんな時は……そうだ、ベア・グリルスさんの教えを……。

 

って思い出せるか!

もう100年くらい前だっつーの!

あの人の顔すら薄らぼんやりしとる段階だわ!

 

くそー…どうにか自力で陸に……。

ん?

 

お?

 

なにあれー?

 

なんか光ってんじゃーん!

お宝発見?(歓喜)

やっぱ神様は違うなー、リアルラック持ってんよ~!

 

俺はススイノスイ~と華麗に犬かきして

海底の岩に引っかかっている光り物へ近づいた。

 

はぇ~かっけぇー。

これ剣じゃね?

のほぉー海底から剣拾うとかマジ オレサマ スゴイ!アオーン!

むへへへ…

コイツは今日から俺様の愛剣となるガオボボボっ!!(呼吸が限界に達した模様)

 

…!

 

……!!

 

………!!!

 

「グハァッ!!!」

 

ヒューヒューヒュー…

 

「おおっ!浮いてきた!大丈夫だったか兄弟!」

「あひゅなきゃっはへ!(危なかったぜ)」

「…?何を咥えているんだ?…剣、か?」

 

俺は今あまり喋れないのでコクコクうなずく。

取り敢えず陸に上がろう!

やっぱ犬は水適性Dだ!

俺達は陸でこそ輝く陸上ユニットだ!

2頭の犬神(笑)は必死に犬かきをし、岸目掛けて一目散だ。

 

 

 

 

 

 

「で、この剣が海底にあったのカ」

「うむ……形からしてかなり古そうだな。

 刀ではないようだ…古代の剣か?」

「こんなもの拾ってドウスル?我らには牙と爪がある。人の武器などいらぬだろう」

「分からぬか?これを口に咥えて振り回すのだ」

「…?」

「これを蛇狗剃(ダークソウル)の型というのだ。

 高天ヶ原の大狼シフが使う神代の闘技だ」(嘘八百)

「ホオ!高天ヶ原の犬神の技か!

 さすがは東方の物の怪…最近はすっかり忘れていたが、

 やはり一番神に近き山犬ダナ!義兄弟たるオレも鼻が高イゾ!」

 

この義兄弟…チョロい。(確信)

とにかくも、こうして俺達は観光を終えて無事帰還…

 

しようと思ったらまた面倒なことががががががが!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「山犬め!こんな場所で何をしている!」

「貴様ら、何故海を渡って来たのだ!」

「コレより先は我ら猪の領地ぞ!」

「去れ!山犬め!」

 

本州から渡ってしまったのが良くなかったようだ。

知恵ある猪共のテリトリーに入ってしまったらしい。

俺達はいっぱぁぁいの猪に囲まれていた。

 

「…言われずとも去る。そう()()()たて――」

 

穏便にさっさと去ろうとした俺達だったが…

 

「――その4本牙……その灰色の毛皮……まさか…!」

 

俺は看過できない猪の姿を、群れの中に見てしまった。

えぇ…。

ひょっとしてひょっとしたら…。

 

「オ、オマエ…名はなんという!」

「…まずはそちらから名乗るのが筋というものじゃないか?山犬よ」

 

むむ…この理知的な対応…やはり…!

いや、でもバカな…俺達は瀬戸内諸島にいるはずなんだ。

 

「そうだったな…。俺の名はヤツフサ。シシ神の森より来た」

「わざわざそんな遠い所からご苦労なことだ。

 ……俺の名は乙事主。

 この鎮西の一角…今、貴様らが荒らしている土地の主だ」

 

…。

 

……。

 

若ぇえええええええええええ!!!

乙事主様、若ぇぇぇぇええええええ!!!

 

ようやくシシ神以来の原作キャラきたああああああああ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というか、俺達瀬戸内諸島方面に来てなかったぁぁぁぁぁぁ!

 

ここ関門海峡じゃないっすかぁぁぁ!

 

俺達九州の端っこ上陸してるじゃないっすかぁぁぁ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どういうことだよ。(憤慨)

 

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