目覚めたらそこはシシ神の森でした   作:もふもふケモノ大臣

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九州満喫!2000泊2001日の旅

ねんがんの 乙事主に 会ったぞ!

 ①そう 関係ないね。

→②殺してでも 鎮西を乗っ取る。

 ③(九州を)譲ってくれ 頼む!!

 

のっけから何なんだコノ物騒な選択肢は!

ろくな選択肢がないじゃないか!

やっぱ人生ってクソゲー。

 

いかん。

またまたフザケて妄想に浸かってる場合じゃありませんことよ。

いや、まぁ妄想にも浸かるわ。

だっていきなり乙事主なんだもん。

水泳だけして帰ろうって油断バリバリのところにいきなり映画の主要キャラが、

しかも若くて漲ってる感じでリデザインな風で出てくるんだもん。

 

まず目がね。黒々として鋭くてバッチリ焦点距離合わせて来やがるよこの白猪。

目ヤニも溜まってなくて綺麗な目だぞ!

かっこいい!ヒューヒュー!

映画の老練で老将な感じで仙人な感じで、

だけども熱い血潮を秘めた猪神の長!な乙事主も当然かっこいいけど、

今、目の前にいるどっからどうみてもギラギラしてるザ・猛将の乙事主もかっこいい。

4本の突き出た牙もツヤツヤでどこも欠けてないし、

もう体中の脂肪と筋肉がパンパンに詰まってるよ!

まるで筋肉の鎧!

ホワイトマッスルの爆走戦車!

キレてる!

もうデカイ!

そこまで絞るには眠れない夜もあっただろ!

 

そのヤング乙事主が俺のことをジッと見ている。

やだ熱い視線。惚れそう。

 

「…何だ?」

 

ずっと見てきちゃって何さ!

 

「それはこちらの言葉だ…山犬。

 何故オマエ達が鎮西に乗り込んできたのか…理由をまだ聞いておらん。

 事と次第によってはここで貴様らを八つ裂きにしてやる」

 

うお…。

気迫がスゴイ。

乙事主の毛が逆立ち、漲る筋肉が更に膨張していくのが見て取れる。

ヤベーよヤベーよ。

何だあの筋肉。

あの体でタックル食らったら俺ゼッタイ爆発四散するよ。

 

よし。

 

ここは終始、低頭平身に徹してだな……

 

「八つ裂きだと?やってみるがいい!

 オレとヤツフサが猪風情に遅れを取ると思うてか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…。(白目)

 

いとをかし。

 

草はゑる。

 

え?なに?今、義兄弟ちゃん何言ったの?

 

「ほほう…言いおったな山犬め。

 我が一族に囲まれていながら度胸があるではないか!」

 

…?

ちょ、待って。

義兄弟ちゃん!やめて!これ以上乙事主様にケンカ売らないで!

 

「突進するしか能のない猪如き…我らの敵ではないわ!

 なぁヤツフサ!」

 

ほわああああ、俺に話し振ってきたぁぁぁ!

どうしようどうしようどうしよう。

何て言おう。何て行ったら場を収められるだろうか。

 

「…いや、落ち着こ――」

 

「よう言うたわ!犬め!

 我ら鎮西の猪を侮るとは!!

 もとよりキサマらは猪を狩り食らう…!

 平素なればそれもまた摂理と見逃しもしてやるが、

 事ここに至っては貴様らに食われた同胞の無念もついでに晴らすとしようか!」

 

ア…。

 

ア゛……。

 

ア……ア……。

 

見て。今の俺、カオナシみたいになってない?

コイツら若いからか!?

戦いの血潮がギラギラ滾ってるの?ウォーボーイズなの?

俺の頭の回転よりも早く、義兄弟と乙事主の煽り合戦は発展していくじゃあねぇの。

ヤッタネ。(遠い目)

 

「ブオオオオオオオオオッ!!!」

 

くっそビビたぁぁ!

空気がもうビンッビンッに震えてるよ!

大地が揺れてんじゃないの!ってくらいの乙事主の雄叫びが響いて、

それと同時に取り巻きの猪達が俺達目掛けて爆走してきたんだが?

圧死しそうなんだが?

うばあああああ!!

このバカ犬!

バカ義兄弟!

うんち!

オマエの母ちゃんでべそ!

ごめん、やっぱ最後のだけ取り消し。

とにかくこのお馬鹿さん!

お兄ちゃん悲しい!

 

「えぇい!囲まれておきながら挑発するとは、愚かだぞ義兄弟!」

「だがオレとオマエならば負けはせぬだろうて!」

 

もおこの子は!ほんとにもう!

俺とオマエだけで数十頭のデカ猪と乙事主どう処理すんだよ!

俺達2頭はその場で跳躍し、空中で身を翻すと猪共の頭を踏み台に更に跳んだ。

眼下で頭同士ごっつんこして昏倒する猪が何頭かいる。

ばっかでwwww

 

「プギッ!?」

 

猪の頭を踏み台に!

 

「ぐごっ!!」

 

更にジャンプ!

 

一頭一頭相手にしてらんない。

目指すは大将よ!

乙事主への道が宙に開け―――

 

「げぼッ!?」

 

え?

 

なに?

 

俺すんごい変な声出た。あら?世界がスローモゥー!

ジャンプしたよりもすっごい高く俺…飛んでるぅー!

なに俺って二段ジャンプできたの?

これもシシ神パワー………あっ、違いますねコレ。

猪が俺のお腹にめり込んでるぅー!すごく痛い!

ははーん、なるほど。

仲間猪を突進で宙に打ち上げたわけね?

ロケットみたいに!

タイミングばっちりだし仲間を弾頭に見立てちゃう戦闘バカっぷり素敵!

もう許せるぞオイ!

でも俺のぽんぽんを物理的にイタイイタイしてきたことはちょっと頭きちゃうカナ?

もう許さねぇからなぁ?(豹変)

 

だがしかし。

 

許したくなくても残念ながら撃墜された俺は落下するしかなくてですね。

 

ドスンっと地に落下した俺目掛けて怒涛のごとく迫り来る肉の波!

まさにドドドドドドッ!って表現がぴったり。

まっずいよねアレ。

アレに轢かれたらオレサマ ゼッタイ 圧死!

脳内麻薬どっぱどっぱな現状、

動きだけは見えてるし思考が超高速フル回転で

圧縮された時の中ですごい量の1人会話できてるけどね!

腹にヘビーな一撃貰ったせいで…

立ち上がるのに…

ぬっ…うぅ…。

ちょっと…時間が…足りないかも…。

あ~視界がスローモーションなのに体が追いつきませんぞ~。

義兄弟ちゃん今何してんの!?

俺のこと助ける余裕ある!?

 

チラッと見たらアイツは乙事主タックル受けて数十mぶっ飛んでた。

オイ!

大丈夫かアイツ!一応、体捻って直撃は回避してるっぽいけど…。

あれはもう肋骨粉砕コースの大惨事でしょう!?

やめて!乙事主のタックルが直撃したら

シシ神のドロドロを飲んでいない義兄弟の体はバッキバキに砕けちゃう!

お願い死なないで義兄弟!

あんたが今ここで倒れたら、俺は一体どうなっちゃうの!?

気力はまだ残ってる!ここを耐えれば乙事主に勝てるんだから!

次回、俺死す!デュエルスタンバぎゃあああああああああ!!

(※猪の大群にたった今轢かれました)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チーン(笑)

 

大丈夫?俺ぺったんこになってない?

内蔵でてないかな?汚いもの皆に見せちゃってない?

自慢のモフモフ毛皮が……泥と砂でカスカスに…ぐふっ。

あぁ…折角拾った最高にイカしてた剣も粉々に…ウゥっ。

 

…。

 

……。

 

あぁ…ダメだ…意識が遠のく…。

絶対、コレ…全身の骨バキバキだよぉ…。

クリティカルで致死ダメージだよぉ…。

ふぇぇ…。

もう立てないよぉ…。

指一本…動かせねぇや…へへ…俺、こんなとこで…死ぬ、のかな…。

 

…。

 

……。

 

指一本…?

犬の俺が、指一本動かせない……なんかコノ表現違う気がしない?

いや元々動かせないじゃん!俺、犬だし!

指一本動かせないって、犬的にはダメージ表現としてどうなんです?

 

うーん…チョット待って。もう一度やらせて。

 

く……もう…指一本…動かせねぇや…へへっ…ドジ、踏んじまったな…。

 

 

 

 

…。

 

……。

 

ン~~~なんかなぁ…やっぱそれってワンコ的にどうなの?

なんか俺自身納得イカンよなぁ~。

そうだなー。

肉球一個…動かせない…。

ンッン~~…。

まぁ…犬の俺が言うなら指一本よりは肉球一個の方がいいかな?

それとも尻尾一本動かせない…か?

いやいや耳一個動かせない…。

ンン~~~~~!悩むね。実に悩ましいね。

 

…。

 

ん?

 

あれ?そういえば意識遠のかねぇな…。

ちょっと何時まで待たせるの?まだ意識がフェードアウトしないよ?

こちとらデッド待ちしてんでやんすよねぇ…。

何時まで全身痛い状況で死なせてくれないんだよ。(半ギレ)

あくしろよ。

 

…。

 

ん?

 

お?

 

動いたよ!足が!

でかした!俺!

 

え…ウッソだろ俺…余裕で立てたんだけど…。

 

全身痛いって自己申告は嘘だった…?

 

俺は自分の痛みすら間違う残念なワンコだった…?

 

ウソ…私の痛覚、適当すぎ…。

あっ、わかったーアレでしょー、幻肢痛ってやつでしょ。

ファントムペインっていう何とも厨二心をくすぐられるアレ。

え?アレは手足を失った人が感じる手足の痛みだって?

うるさいよ。りろんは一緒だろ多分。俺は詳しいんだ。

ウソじゃないよ!本当だって!さっきは確かに痛かっ…

もういいや、めんどくさい。(思考放棄)

あれだ。

治った。

 

おお、おお。猪共が俺を見てめちゃくちゃ驚いとる。

乙事主もすっごく驚いてるっぽい。

わはは、なんかあの視線快感!

そりゃ驚くよな!俺が一番驚いてるんだけどな!

 

「バ、バカな…キサマは不死身か!」

 

えぇえぇ…すみませんでしたね。骨も折れてないし肉も潰れてないよ。

 

「ありえぬ!我らにアレだけ踏まれて無事だとォ!?」

「形すら残らず潰れていてもオカシクないのだぞ!?」

「そんなバカなっ!なぜ傷一つ負っていないのダ!!」

 

まだ言うか。

いや、傷負った気がしたんだよ俺も。でもなんか無くなってるんだもの…。

死ぬ死ぬ詐欺してすみませんでした…チッ、っせーな…反省してまーす。

しょうがないじゃん…俺だって好きで無傷なわけじゃないんですよ。許して。

 

…ん?

あっ!義兄弟!

吹っ飛んでった義兄弟じゃないか!

生きとったんかワレ!

フラフラだけどこっち向かって走ってきてる!

良かった良かった。生きてたか…。

さすが鉛弾くらっても即死はしない半神のケモノだ!

でも大分辛そうに見える。

あれ、もう一発くらったら確実に死にますね。

幸い、乙事主も部下猪も全員俺を見ているので

まだアイツが向かってきてるのに気付いてない。

 

えぇい…!仕方ない…。

義兄弟は俺と違ってラッキーのあまり無傷で済むような感じじゃないし、

ここは真のラッキードッグたるこのオレサマが!

八尾の力見せちゃるからな。

見てろよ見てろよ~。

 

意を決し、大きな白猪を思い切り睨みつける。

 

「どんな小細工を弄したか知らぬが、

 今度こそ擦り潰して黄泉返らぬようにしてくれるッ!」

 

青筋浮かべて大きな4本の牙を振り回しながら、

白い巨猪は俺目掛けて突進してきた。

控えめに言っても最高にコワイ。

だが、ぶっ飛ばして義兄弟の溜飲を下げてやらぁ!

 

幸い、その他の猪は俺の異能生存体っぷりに怖気づいてるらしい。

遠巻きに見ているだけだ。

それとも群れの長の戦いっぷりを見聞するつもりか…。

どっちでも構わない。

とにかく好都合だ。

やったらぁ!

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな風に息巻いて突っ込んでいった俺は、

今思うと中々熱血漢で若いなぁって…。

義兄弟の為!なんて言って猪相手に突撃合戦挑むとかバカの極みでした…。

 

乙事主と義兄弟のこと、若いねぇ!バカだねぇ!

なんて言ってたけどやっぱり俺も若くて…

そして…えぇえぇ、バカでしたよ。俺はバカですよ。(ようやく自覚するバカ)

 

過程を飛ばして結果を言おう…。

無我夢中で戦ってたら勝った。

オレスゲー…。

 

いや、分かるよ。言いたいことは良く分かる。

説明になってないって言うんでしょ?

キング・クリムゾンになってるって言うんでしょ?

思い返すのが面倒なだけだろうって?

誰だそんなこと言う脳内話し相手(オマエラ)は!

 

仕方ないんだ!

だって、俺もよく分かってないからね。仕方ないね。

頭に血が昇り過ぎて闘争本能刺激されすぎて、

もう人語忘れて唸って吠えて戦ってたから。

 

俺が理性を取り戻した時には、俺以外みんな倒れてたんだ!

暗かった空も明るんできてて、

俺は血だらけでボーッとしながら剣を咥えてて、

そこら中血溜まりがスゴくて、

義兄弟と乙事主までぶっ倒れてて動かないという…。

そんなショッキングな場面が目に飛び込んできて俺は思わず泣いてしまった。

涙ちょちょぎれさせて「ワォーン、ワォーン」って。

 

状況判断的にどうみても俺が主犯じゃねーか!って絶望して

とうとう俺も身内殺しの前科犬かよぉ!と嘆き悲しみ、

ついでに死んだ義兄弟と乙事主を思って泣いたよ!

その他の猪は…まぁしょうがない!食べたこともあるぐらいだし!

まぁ生きてたんですけどね。二人とも。

更に言うと誰も死んでなかったんだけどね。部下猪さん達も。

全員重傷負ったけど結果オーライ。

死人でなくてよかった。

ああ、死人じゃなくて死獣か。

 

今は一匹だけ元気な俺が、

倒れた皆を一生懸命介抱していた。

と言ってもただ傷口をペロペロしてあげるだけだけど…。

モブ猪さん達は軽く、乙事主さんには割としっかり、

そして義兄弟には丹念に一生懸命ペロペロした。

クゥーン…義兄弟…ガンバッテ…。

 

でもまぁ、俺のそんな頑張りを無碍にするくらいあっさりとね!

お天道様が一番高く輝く頃には全員ピンシャン回復したけどね!

なんなんだオマエラ!丈夫だなオイ!

放置してても問題無く回復したろオマエラ!

さすが神獣共…心配して損した!

 

海泳いで溺れかけて囲まれて戦って全員をprprするとか、もうすんごくハード。

もう舐め疲れたから俺は寝る。

今日はもう熟睡するからな!

絶対明日の昼まで起こさないでよ!

まったくどいつもこいつも……

俺は観光したかっただけなのに……

一体全体なぜこんなスヤァ…。(急速睡眠)

 

 

 

 

 

▽▽▽

 

 

 

 

その日、和布刈(めかり)神社(速戸社)の神官は所用があって山向こうの村まで出ていた。

既に創建から800年以上を経た由緒正しき神社の神官は暇ではない。

ワカメの豊穣を祈るだけが和布刈の神職の役目ではない。

様々な権力者から海峡守護の祈祷を頼まれることも多く、

それが地元権力者であり多額の寄進をしてくれる者ならば尚更だった。

供を連れて神官が和布刈神社に帰ったのはもう夜も遅く…。

子の刻を回ろうかという真夜中であった。

時はまだ中世前期…ついこの間まで源平が栄華を巡って争っていた時代だ。

森や山に神なる獣が跋扈しているのが当たり前で、

こうも夜遅くになれば街道や人里近くにも様々な(あやかし)の類が出没する。

 

(…無理をすれば間に合うと思ったが…すっかり遅くなってしまったのう)

 

供の者にゆっくり休むよう言うと、神官は暫く留守にしていた境内を見て廻った。

 

(ふぅ…こうも暗いと、蝋燭の火でも頼りない。

 ……神職にある者が言うのも何だが…夜は出そうじゃのう…)

 

源平争乱の世。

それの終焉が打たれた地が()()だ。

おびただしい数の平家の武者の水死体を引き揚げ、そして弔った内の一人が彼だった。

あの合戦の前夜、平氏がこの地で

最後の宴をひらいた際にも彼は色々と準備を手伝ってやった。

その縁もあったが、あれ程の凄惨を目の当たりにしては神仏宗派は関係無いだろう。

そう思い、僧侶も神官も一緒になって飲まず食わずで弔った。

名もなき武士に混じり、平家に縁在る女子供の死体も多くあり、

気の毒に思った地元の漁師達が供養塚も建ててやった。

 

(それでも…今も、平家の無念が怨念となってこの地を彷徨っておるやもしれんなぁ。

 まこと、人心乱れること麻の如くよ…むごいことじゃ、むごいことじゃ…)

 

「っ!?」

 

神官は一瞬背筋が冷たくなって見廻りの足を止めた。

何かが暗闇の向こうで蠢いた気がしたからだ。

気のせいか、ヒュウと風切る音も聞こえた。

 

(まさか…本当に迷ってでたか…?)

 

急いで本殿に戻り、祭事で使う松明と鎌を手に握り、

影が飛び立ったと思われる方へとこっそり小走りでいく。

霊が苦しみ彷徨うならば払ってやろうという神官の義務感がそうさせた。

 

砂利道を慎重に歩き、小さな林を抜けると直ぐにゴツゴツとした岩肌に出る。

その向こうはもう切り立った崖だ。

地元の者でも月明かりだけで歩くのは覚束ない。

 

今宵も風は強く、波は荒れている。

壇ノ浦のこの強く乱れる潮流がまた平家の者の命を多く奪った。

その荒海から、何とも恐ろしい声が聞こえた。

 

「…!まこと、で、でたのか…」

 

波と風の音を聞き間違えたのかもしれぬ。

神官は自分にそう言い聞かせてゆっくりと身を低くして崖の上から頭を出した。

 

(あっ!)

 

神官は見た。

月明かりに照らされてキラキラ輝く銀色。

 

「う、美しい…」

 

神官は我を忘れて呟いた。

二匹の大きな狼が戯れるようにして波間を泳いでいる。

濡れて光った白毛が月光を反射し、

二匹がじゃれ合う度に跳ねる水の雫が宝石のようだ。

 

(この世の光景じゃない…見ちゃいかん…目が潰れる…)

 

神々の威光を直接目にすると瞳が潰れると信じられているが、

それでも神官はうっとりと見惚れていた。

きっとあの白狼は壇ノ浦で散っていった御魂を慰めに

天から舞い降りた御使いだ。

神官はそう思い何時までも波間で戯れる二匹の神獣から目を離せなかった。

 

やがて二匹は、御魂を鎮め終わったのか、

人語を交わしながら陸へと軽やかに飛び移る。

水の重みをまといながら、

たったの一飛びで十間(約18m)以上ある崖の上に飛び乗ってしまった。

 

そして、更に驚愕する光景を彼は目にすることになる。

 

(ありゃ…お、乙事主じゃ!

 ここらを治める山の主がこんな人里近くまで降りてきおった!)

 

雲ひとつ無い夜空の月の明かりが、

恐ろしい数の猪と二匹の犬神に注ぐ。

 

乙事主が天を震わす雄叫びを轟かすと、

今度は無数の猪が大地を揺るがしながら一斉に犬神目掛け突き進んでいく。

犬神はひらりひらりと舞うように猪らを躱していたが、

怒涛のように押し寄せる猪の波にあっという間に飲み込まれて消えた。

 

「あぁ!」

 

神官は思わず声を上げた。

一応姿は隠しているつもりだが、

とっくに犬神も乙事主達も自分の存在には気付いていることは神官も解っていた。

速戸社の主祭神…比賣大神(ひめおおかみ)がきっと自分にこれを見届けよ、と言っているのだ。

眼の前の神々が自分を無視して戦っているのはそういうことだと、

神官は懐中から紙と筆を取り出し、事の一部始終を書きつけだした。

 

(うん?……な、なんと!無事なのか!?しかも…尾がや、や、八つ!!)

 

轢き潰されたと思われた犬神は、

何事もなかったかのように横たわっていた身体をゆっくりと持ち上げると、

その美しい尾を天へ向かって伸ばし威風を示す。

白銀に輝く八つの尾が夜風に揺らめき、瞳は金色に光っていた。

 

その圧倒的な神威に圧されたのか、乙事主が猛り狂って八尾の白狼へと突っ込むと、

白狼は荒々しき形相となってそれを真正面から受け止めた。

山のような乙事主の体当たりにも微動だにしない。

 

 

 

体中の血が沸き立ち血眼になって書き殴った神官の書にはこうある。

 

『その圧倒なる神威に圧されきや、乙事主が猛り狂ひて八尾の白狼へと突き進めば、

 白狼は荒々しき形相となりてそれを真正面より受け止め、

 山のごとき乙事主の体がふわりと宙を飛びて地に叩きつけらる。

 群れたる猪らが主の身を慮り一気呵成に犬神へとなだれ込まば、

 犬神、木の葉のごとく身を翻すと光の渦より鈍色の剣取り出したる。

 鈍色の剣をその猛々しき口に咥えば、

 その剣とみに輝き出し畏きばかりの天衝く剣へと化身し、

 犬神の頭上には叢雲が集ありて渦巻き天地を震はす。

 獣剣一体となりて枯れ枝のごとく軽々振るひ猪を蹴散らして其の者らを屈服至らしめる。

 乙事主は犬神の余りの威光にいよいよ身を屈し頭を垂れてひれ伏しき。

 其はされば何者ありなりと乙事主問はば、

 犬神は己をしし神より血を分けられき果てより参りし八尾の聖獣に名を八房と名乗りき。

 かの者は真に天より降臨せし大神の化身なり。

 八頭八尾の八岐大蛇は人王八十代の帝と成り

 八歳の時に天叢雲剣を取り返しその御魂を美しき神犬へと帰りゆきき。

 神剣は真の主のがりと帰り心の底より喜び畏れ多く気高きその名をあはれがりき』

 

興奮しきっていた神官が書き記したものであるから、

全てを鵜呑みには出来ないが…これ程に神懸かった戦いが在ったと後世に伝わる。

 

この後、この神官は境内に白狼像を建てたり白狼伝説を語り広めたりと

すっかり白い犬神に魅了されてしまったという。

有る事無い事、伝え広まったのも大体彼のせいである。

 

 

 

 

 

▽▽▽

 

 

 

 

「寝たか…」

 

「そのようだ」

 

傷だらけの乙事主が、

先の戦いで突き飛ばし重傷を与えた山犬を相手にゆったり話し込んでいる。

傷つけあったのが嘘のような雰囲気だ。

猪も山犬も暖かな日差しの林で体を休めていて、

八房は今、義兄弟の横でだらしなく寝こけている。

 

「…コイツは…ヤツフサと言ったか…何者だ。

 どう見ても只の山犬ではない。

 アレ程の力、我ら地上の神々を遥かに超えている。

 オレ達の傷もあっという間に癒してしまった」

 

「フフフ…オレの義兄弟は凄かろう。

 シシ神の森でもヤツフサに敵う者はいない」

 

「如何に傷つけようとも立ち所に自らを癒やし、

 砕けた剣をもみるみる直し、

 剣自らがヤツフサの元へと飛んでいったかのようだった…。

 口に携えれば大剣へと変容させ…八尾を逆立てる姿…。

 思い返すに見惚れる程の威容よ…!」

 

トボけた面でぐーすか寝るヤツフサを見ながら、

乙事主は豪快に笑った。

幸いなことに彼の群れに死者はいない。

いや、おそらくこのヤツフサがそういう風に加減してくれたのだろう。

 

(やれやれ…こんな強いヤツがいるとはなァ…俺もまだまだよ)

 

心地よい敗北感が乙事主の胸中にあった。

 

「……そういえばオマエ達…なぜ鎮西に来たかをまだ聞いていなかったな。

 良ければ理由を聞かせて貰いたい。

 この土地をオレから奪いに来たというなら、

 コヤツにならば喜んで差し出そう」

 

コヤツとはヤツフサのことだ。

乙事主の視線がそう語っている。

 

「……オレとヤツフサは……物見遊山だ」

 

ちょっとだけ間を置いて、どこか恥ずかしそうに山犬が答えた。

乙事主は耳を疑う。

 

「物見遊山!?

 ナラバ、なぜ我らと事を構えた!?」

 

義兄弟は目をそらす。

奇妙な沈黙が場を支配したが、何時までも黙ってるわけにもいかず

観念した山犬が正直に吐露しだす。

 

「……スマヌ。オレが喧嘩っ早いせいだ。

 売り言葉に買い言葉だ…」

 

これには流石の乙事主もあんぐりと口を空けて呆れたが、

 

「まぁ良く良く考えれば我ら猪も、ちとイケなかった。

 オレ達も最初から喧嘩腰であったしな…ここは喧嘩両成敗ということでドウダ」

 

出会った当初とは違い、すっかり理知的になった瞳でジッと山犬達を見た。

 

「ソレは助かる」

 

猪と山犬はニヤリと笑いあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おはよう!

もう夜じゃねーか!

誰か起こしてくれよ!

なんで起こしてくれなかったの義兄弟。

なにしてるの君。

なんで猪と和気あいあいと酒飲んでんの。

それ…その大皿になみなみ注がれた液体酒でしょ?

わかるよ!匂いでわかるの!

酒クセー。

デカイ狼と猪が同じ皿つっついて酒飲んでるよぉ…えぇ…ナニこの光景。

 

なに。

何があったの。

俺が寝てる間に何があったのさ!

 

さっきまでバトってたじゃん!

 

「おい義兄弟」

「おおヤツフサ!起きたか!この水ウマいぞ!

 おい乙事主!主役が起きたゾ!!」

 

あっ(察し)もう酔っ払ってる…。

 

「きおったな!まぁ呑め呑め!

 コレはな…人間達より捧げられた神酒よ!

 人間は気に食わんことをする事が多いがコレだけは格別だ!

 この時ばかりは人間も可愛いヤツらよ!ワッハッハ!」

 

ドスドス歩いてきたドスファンゴもダメみたいですね。

もうただの酔っ払いオヤジじゃない…。

 

「おいヤツフサ!聞いたぞ!ただの物見遊山で鎮西に来たらしいな!

 そのついでに我が一族にケンカを売った挙げ句、

 勝ってしまうとは気に入ったぞ!」

 

痛い。やめて。

その4本牙でバンバン俺の肩叩くのやめて。

折れそう。

 

「オレと真正面から組み合うあの勇姿!

 山犬にしとくにゃ惜しいヤツだ!

 ヤツフサ!オマエ我が一族にならんか!猪になれ!ワハハハ!」

 

だからやめて。

俺の肩の骨粉々になりそうなんだが。

今の俺、チベットスナギツネみたいな顔になってると思うわ。

 

「おいおい乙事主、我が一族の次代の長を持っていくナ!」

「そうか!長になるのか!そりゃそうじゃ!オマエなら当然よ!」

「「わははは!」」

 

誰かー!(堤真一)

ちょっとこの酔っ払い共どうにかしてよぉ!

義兄弟も乙事主も、とーぜん周りのモブ猪さん達もみんな酔ってるよぉ!

いいのかよコノ神話生物ども!

こんな醜態さらしていいのかよ!

もうオタンコナス達!

俺より先に出来上がられちゃうと寂しいじゃない!

 

「俺も酒飲むぞ!」

 

こういう疎外感を消すためには自分も酔っ払いになるのが一番!

 

「おお!呑め呑め!我が一族の奢りじゃ!たらふく呑めい!」

「山犬の誇りにかきぇて呑み負けるにゃよキョウダイ!」

 

俺も飲めって?かしこまり!

でもとりあえず義兄弟。オマエもう飲まないで?

ゲハゲハ笑ってお顔に締まり無くなってるし呂律怪しくなってるゾ。

だいたいさぁ…義兄弟なさけないぞ。

昔のお酒って弱いんでしょ?アルコール度数。俺は詳しいんだ。

大皿一杯くらいじゃ足りませんことよ?

こんなん水だよ水!これしきでそんな酔っ払うなよ義兄弟!(フラグ)

 

「フフン…もっとなみなみ注いでくれ乙事主!」

「よう言うたわ!おい、ナゴの守!もっとデカイ皿を持ってこい!」

 

群れのリーダーに言われて乙事主さんの次くらいにデカイなんとかカミさんが、

朱塗りの大皿を口に咥えてえっちらおっちらやって来た。

というか乙事主さん…

あなたのさっきの口調、まんま現代の酔っ払いオヤジ…。

 

…。

 

っていうか、デカァイ!!説明不要!

 

なにこの皿…ちょ、ちょっと大きすぎない?大きいよね。

 

おおぅ…とぷとぷとぷってスゴくいい音させながら注ぎよる…。

うまそう…。

この量、大丈夫かな?

大丈夫でしょ。

大丈夫だろ。

イケルイケル。

あぁ百年以上ぶりのお酒だぁー!

 

…。

 

……。

 

俺って人間だった時お酒は飲んでいたのだろうか。

忘れちゃった。

 

…。

 

じゃあ初お酒だぁー!

Foo!俺アルコール解禁!

 

お、ようやく注ぎ終わった。注ぎすぎじゃない?

でも乙事主さんの次にデカイなんとかカミさんおつかれ!ありがとナス!

じゃあいっちゃおうか。

 

「卍解~」

 

俺はグビグビグビっと大皿を器用に前足で持って

犬芸のチンチンのポーズで一気に呷ったのだった。

 

ングング。

 

ングングングング。

 

ゴクリ!プハー!

 

周りから、

イイゾイイゾ

ノメノメ!

ヤンヤヤンヤ!

プギィー!

モットノメ、キョウダイ!

こんな感じで囃し立てるケモノ共の声が聞こえてくる。

 

…。

 

……。

 

 

「……ンマァーイ!もっと飲むゾ!俺は!酒、酒、アォーン!」

 

いいゾ~これ。

酒というものは全て美味いのか、それとも乙事主印のこの酒が美味いのか!

 

「おお、いいなお主!やはりオマエとは気が合いそうダ!」

 

乙事主が目をランランと輝かせて嬉しそうだ。

不思議なことにそれから暫く、俺の記憶は消えてしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、今ここはドコなの?

ねぇ乙事主さん。

 

「ここか。ここはな…桜島ダ」

 

Q.なぜ俺様ワンコはここにいるの?

 

「なんじゃ覚えとらんのか。まぁずっと酒かっ喰らってたからな、オマエは。

 毎晩毎晩あれだけ呑めば記憶も飛ぶというものダ。ハッハッハッ」

 

Q.どれぐらい俺の記憶は飛んでいましたか?

 

「んん?本当に何も覚えとらんのか?呆れたやつダ。

 だが剛毅でオレはそういうヤツは好きだがな!グワッハッハッ!」

 

Q.もう一度お聞きします。どれぐらい俺の記憶は飛んでいましたか?

 

「そうさな…あの日、我らが初めて会ってから半年くらいか」

 

Q.なぜ俺達は桜島に?

 

「一からオレが説明せにゃいかんのか。

 薄っすらとぐらいは覚えとるダロウ?」

 

Q.乙事主ちゃんの口から教えて下さい。

 

「オレの鎮西統一に協力してくれると息巻いて、

 オマエさんが率先して他の山の主を蹴散らしてたんじゃないか。

 で、ここは最後の山の主がいたとこじゃ。ほれ、あっちで伸びとるヤツがそうダ。

 いやぁさすがの強さだったのう。ヤツフサよ」

 

 

 

 

 

 

 

ああああああああああああ!

うっ。オェエエエエエエエエエエ(重度の二日酔い)

はぁ、はぁ、はぁ。

一体何故こんなことになってしまったんだ…。

オレは…オレは、ちょっと酒に感動して飲みすぎただけなんだ…。

 

まさか、半年も酔から醒めないとは思わなんだ!

酒ってこわい!

お酒の失敗談は本当にあったんだ!

もうオレは酒断ちする!

禁酒だ禁酒!

禁酒法施行するぞオラ!

半年も犬から理性を奪うたぁとんでもねぇ毒薬だ!

 

「お主ら山犬のお陰でオレの鎮西統一の夢もあっさり叶ったナァ!

 ほら、コレは礼だヤツフサよ!

 人間から贈られた極上の神酒ぞ!

 この樽全部、オマエにやろう!」

 

「お前は真の友だ!乙事主!」

 

禁酒は明日からやろう。(意志薄弱)

ナァニ、俺は普通の犬じゃない。

飲みすぎたってヘーキヘーキ。

九州って楽しいな!

お酒も美味いし乙事主も良いやつだし!

 

「山犬ども!

 物見遊山で鎮西まで来たのだ。どうせ急ぎの旅でもないのだろう?

 暫く鎮西でゆっくりしていけ!

 もはや鎮西はオレの領地だ。自分の庭だと思って好きなだけ滞在していけ。

 何なら、オレと義兄弟の盃でも交わさぬか、ヤツフサ!」

 

え?

いいんですかぁ?

さすが乙事主は太っ腹ダナぁ!

おい義兄弟!

しばらくココで遊んでいこうぜ!

 

「そうしよう!そうしよう!」

 

やったぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぼくたちワンコ2匹がシシ神の森に帰ったのは、それから5年後のことでしたとさ。

 

「五年もの間、全く音沙汰なしで…!

 呆れた子達だ!まったく呆れた!!言葉も出ないよ!!」

 

その後めちゃくちゃ(おさ)に怒られた。

 

 

 

あと、長が新しい犬を生んでました。女の子だって。

えぇ!単独生殖!?分裂!?クローン!?

あっそうですか。旦那様がいらっしゃった。

ほぉー。

 

どこに!?

旦那様どこに存在したの!?

 

いたらしいよ。

何でも日の本中を旅してて定住しない山犬なんだって。へぇー。

久しぶりにその旦那狼が帰ってきてイチャイチャしてたら

妊娠して出産まで終わったそうな。

オレ達が九州で飲んだくれてたせいで色々なイベントを見逃してしまった!

なんだよー旦那さんにご挨拶したかったなぁ。

長の旦那ってこたぁ、オレの義理のパパみたいなものなのに!

 

あぁこれも全部酒のせいだ。

オレは酒は飲まないゾ!

シシ神に誓います。アーメン(異教徒)

義兄弟と一緒にえんやこらと持ち帰ったこの樽6つで最後にする。

ホントホント。

なに、その目。

疑ってんの?

よくないよ、そうやって犬のこと疑うの。

 

樽以外にもちゃんとお土産持ち帰ったんだから!

酒で頭一杯だったわけじゃない証拠だよコレは!

ね?

ほら、貝殻でしょ。

あとはオレ良く覚えてないんだけど、

でっかくなったり光ったり壊れても勝手に直ったりする海で拾った剣でしょ。

後、乙事主のヒゲでしょ。

あ、そうそう。

あとこの猪さん。

 

「誰だいコイツは!

 なんで鎮西から猪なんか連れてきた!」

 

「えー、ほら自己紹介するんだ」

 

「鎮西の乙事主の一族…ナゴの守ダ。

 ヤツフサ殿の強さに感銘を受ケ、

 マタ…我が一族の長、乙事主ガその友誼の証トシテ、

 ヤツフサ殿とシシ神の森をお守りスル手助けをスル為参った」

 

「そういうわけダ。なっ!義兄弟」

「そうそう。母者、このナゴの守は乙事主に次ぐ実力者デナ!」

 

 

 

 

あるるぇ?

長がなんかすっごく呆れ感だしてる。

ナニあの空気。

長の顔が前にオレがした顔そっくり!チベットスナギツネに!

そんな目でオレと義兄弟を見つめるなよ。

よせやい、照れるぜ。

 

「………もういいさ…はぁ。まぁ無事で戻ってきて良かった。

 土産は…ありがとう。受け取っておこう」

 

「ナゴの守も!?受け取ってくれる!?」

 

「…仕方ないだろう。来てしまったんだから。

 乙事主とやらの想いも無碍に出来ないしね。

 …隣山の森にはコレと言った主はいない。

 アンタ、そこにお行き…いいね」

 

長が言うと若いデカ猪はうんうんと頷く。

 

「ありがたい。乙事主の一族に恥じぬ働きをしてみせよう!」

 

喜び勇んでナゴちゃんは隣山に去っていくのだった。

いやぁ良かった良かった!めでてぇ。

 

はぁーチカレタ。

長旅だったなぁ。

よぉし、明日にでもシシ神にこの剣でも見せびらかしに行こうかな。

オレがいなくて寂しかっただろうし。

 

 

 

 

 

 

あっそういえば。

 

「長。オレの妹の名前は何だ?もう決めたカ?」

 

「モロだ」

 

ほーん。

モロね。良い名前なんじゃないかな?

画数とか大丈夫?

人間に聞いてきてやろうか?

まぁいっか。

もうすぐ日も暮れるし…寝よ。

 

はぁ~、この匂いに包まれて寝るのも久しぶりィ!

やっぱ心休まりますねぇ。

実家最高。

 

…。

 

……。

 

モロ?

 

なんか…すっごく聞いたことあるんだけど。

あれ…なんか……あっ出てこない。

喉につっかえてる!

ここまで出てんだけど。

 

く…。

 

やっぱ酒呑みすぎて脳みそがトロけた可能性が!?

思い出せない。

あぁモヤモヤする。

 

うーん。

 

うむむ…。

 

…。

 

……。

 

 

 

 

スヤァ…。

 

 

 

むにゃ…実家さいこー…。

 

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