稚作『雨のち晴れ』と一部登場人物の名前が同じだが、その関係は……!(配点:後日談)
ともあれ、ウチ鎮はずっとこんなノリでしょう。たぶん。
pixiv様でも同タイトルで投稿してます
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───疲れた……!
風呂上がりの熱持つ体をベッドへと投げる。
場所は鎮守府利用者寮の一室、自分たちの部屋だ。時刻は既に22時を過ぎているが、相部屋をしている同居者はまだ食堂で騒いでいるようで、帰って来た形跡はない。なので一人で寛がせて貰う。
体の力を抜き体重をベッドへと預けると、嫌が応にも泥のような疲労が肩腰へと溜まっているのを自覚させられる。そのことに、老いの二字が脳裏に過るも、気のせいだと投げ捨てる。なぜなら、
───今日はハロウィンだったからな……。
ハロウィンという近代のバカ騒ぎの風習ができてどれほどの時が経ったかはわからないが、ともあれ、日本人特有のなんでも許容する精神性もあって、ハロウィンという西洋の文化はあっさりと日本にも根付いていた。
ここ鹿屋鎮守府も例外ではなく、毎年この日になると、周辺の市民を招いてバカ騒ぎをするという頭の痛い風習が出来上がっていた。
特に、ここ数年は頭の悪さのギアが掛かり、そろそろガチで死人が出るのでは? というもっともな意見が出たので、今回は安全重視にコスプレ程度に留めることで安全を計ったのだが、問題児が割といる第6司令部に任せたのが不味かった。同司令部の良心である瑞鶴に内緒で企画を進めていたので倍悪い。
結果、艦種を問わない制服交換とかいう頭の悪い企画になり、駆逐艦や海防艦はぶかぶか衣装で大変和んだのだが、戦艦組や空母組、巡洋艦なんかは中々の目の毒で、結構な数の工廠作業員が前屈みでトイレに駆け込むという変態なことになったが、まあ些細なことだ。ついでにそいつらが女子連中に冷たい視線で見られていたことも含めて些事である。なお、潜水艦たちは、肌が暖かい! 露出が少ない! これがまともな制服の感触か……! などと感涙を流していたので、今度上に潜水艦娘様の平時制服を申請しておこう。そうしよう。
ともあれ、一部にセクシャルテロをぶちかましながらも、交流会は例年からは考えられないぐらい穏やかに進行していたのだが、昼頃に第6司令部の空母4人が集合したあたりから雲行きが悪くなった。
具体的にいうと、駆逐艦娘の制服を着た二航戦、五航戦の4人なのだが、うち三人が犯罪スレスレで制服を着ている中、誰とは言わないが一人だけしっかりと着れていたので、全員が哀れみの視線を一人に向けていた。
その時点であからさまに不機嫌になっていたのだが、ふとした拍子で蒼龍の胸ボタンがバーストして瑞鶴の額にヒットし、いよいよ瑞鶴がキレて暴動を勃発。悪ノリした貧乳艦娘を集めて神聖ひんぬー軍団を設立、世の巨乳へと宣戦布告するも、同じく悪ノリした巨乳艦娘も無敵きょぬー艦隊を結成。血で血を洗う大乱闘へと発展して、まあつまるところ例年通りの展開へと発展してしまった。やっぱり鹿屋は頭おかしい。
最終的に、劣勢に立たされた貧の側が工廠に籠城。ハロウィンの締めに使うつもりだった八尺玉片手に自爆特攻する寸前に、比較的マトモな艦娘たちによって両者鎮圧され、打ち上げた花火を背景に喧嘩両成敗になった。 なお、彼女らの提督たちは皆してどっちの陣営が勝つかでトトカルチョをしていたので、軍規 is どこ……? という感じだが、悲しきことにこれも例年のことだった。転職したい……。
ともあれ、そんなあれこれがあったので、比較的マトモな自分は市民の案内や後片付けに奔走していた。結果、泥のように疲れていた。具体的にいうと3日ほど休みを取ってダラダラしたいぐらいには疲れていたが、悲しきかな、勿論明日も仕事なのだが。
なので、疲労回復のためにも、早く寝ようと寝仕度を整えようとして、
───音が響いた。
扉を叩く音、ノックの音だ。打数は3つ。親愛を示す回数。
というよりも、律儀にそんな礼節あるやり取りをする相手は知人に少ない。なので相手を特定し、苦笑を浮かべて、
「鍵は空いてるよ」
姿勢をそのままに言うと、扉の開閉音が響き、少し置いて足音が近づいてくる。頭を上げると、来訪者の姿が見えた。黒い服装を身に纏った駆逐艦娘、時雨だ。
昼間は妙高型の制服を着て複雑な表情を浮かべていたものだが、今は普段の白露型の制服へと服装を戻している。ただ、頭には普段にはない、黒地に青リボンの魔女帽子を被っていた。ぐうかわいい。
それはともかく、
「お疲れさん時雨、バカの鎮圧には疲れただろ」
「いやいや、悲しいことにもう慣れたよ……ホント、悲しいことに」
目を反らして時雨はそう言葉を重ねた。
その姿に同情を覚えながら、特になにをするでもないので感傷を投げ置いて、
「で、何の用だよ? 帽子似合ってるぞ」
「会話の前後おかしくない? それはさておき、」
時雨は一呼吸置いて、
「TRICK OR TREAT. お菓子ちょーだい」
端的にそう告げた。
最初から選択肢を捨てた発言はどうなのだろうか? と内心で首を傾げるも、こうなる予感はしていたので、駄菓子のストックはある。
あるのだが……、
───普通に渡しても面白くないな。
昼間のバカな空気に当てられ過ぎたのか、脳内でそんな妄言を浮かべる。端的に云うと、悪ノリしようということだ。なので、
「ない」
嘘を吐いた。
しかし、時雨もこちらの性格を理解しているのか半目で、
「そこの棚にあるでしょ」
指差しとともに、そう告げた。
宣告通り、確かにそこに駄菓子を隠してある。だがそれは、
───今回だけの隠し場所だぞ……!
これは密告者がいるな……! と背中に鈍い汗を浮かべて、言い訳を考える。本来はこんなに意固地になる必要は露ほどもないのだが、しかし、一度始めた以上はそうそう止める訳にはいかない。鹿屋特有の芸風、一度始めたネタは全力で、だ。なので、
「あれは同室の三木のだ」
嘘を重ねると、時雨は半目のまま、
「ふぅん?」
そう、わかったような音を溢した。
それから手腕を組んで、見上げるような姿勢で、
「で? お菓子はないの?」
「ないな」
「一つも?」
「一つも」
「嘘吐いてる?」
「吐いてない」
堂々と嘘を吐くと、時雨はなるほど、と数度頷きを置いて、表情を笑みへと変えた。
瞬間的に背中に浮かぶ汗の勢いが増すが、時雨はこちらの様子を意にせず、そういえば、と口火を切る。
「伝言なんだけど、同室の三木さんは今日は泊まってくるってさ」
「へー、それは初耳」
言われた伝言に軽口で返す。
三木は結構遊び人なところがあるので、余所の部屋に泊まり込みをすることも珍しくない。とはいえ、このタイミングで
時雨は続ける。
「話は変わるけど耕喜、君明日は休みになってるよ」
「………………は?」
唐突に告げられた言葉に、一瞬思考が凍る。
自惚れではないが、自分の役職上、そうおいそれと予定に無い休みを直前に入れられるほどの余裕はない。そして、自分にその知らせはない。
そのことに、嫌な流れを覚えながらも、時雨の言葉を止めることはしない。
故に、時雨は続ける。
「ちなみに僕も明日は休みだ」
「…………おう」
本能的に、今回もそういう流れかぁ。と感じながら、時雨の言を止めることはしない。
しなかったので、時雨は笑みを邪悪なものにして一歩詰めて、
「お菓子を用意してない相手なら、いたずらせざるを得ない」
制服のタイを解きながら、そんな風に言う。
───いたずらってそういうアレかよ! というか、ここまで周到に用意したいたずらってアリかぁ───!?
内心でツッコミを叫びながら、口にはできない。そもそもは此方が悪ノリしたのが悪いのだ。だから、できるのは引き吊った笑みで、
「……今からお菓子渡して撤回できない?」
「その場合、嘘つきにはいたずらしないといけないね」
「おいおい、詰んでるわ俺」
言ってる間に、時雨が距離を詰めている。
一足ほどの距離もない。触れ合えるほどの距離で、だから時雨は両手を前へ伸ばし、こちらの両肩を軽く押す。布団の跳ねる音を置いて、背中からベッドへダイブ。その上へ時雨がマウントを取り見下しの姿勢で、
「さあ、悪い子にはいたずらをしようね」
満面の笑みでそう告げた。
このあとメチャクチャ(ry
ここまでは、私の役割……後は、あなたの役割……