傷だらけの戦士   作:黒死牟

30 / 40
ついにこの小説も30話まで来ました!ここまで続けてこられたのも、いつも読んで頂いている皆様のお陰です!これからも頑張って行きますのでどうぞよろしくお願いします!


第30話 崩壊

沼津 カジノ店廃墟

グ「ジャラジはいったい何をしているのでしょう?クウガとも戦っていないようです…」

バルバはグレムを見下ろす

バ「お前は何も分かっていない、奴がしようとしている事を」

グレムは苛立ちをあらわにし、バルバを睨んだ

グ「なんですって?私があいつよりも劣っているとでも…?」

次の瞬間、コブラのような頭と鋭い鉤爪を持つ怪物へと変身した

バルバに詰め寄り、鉤爪を振り上げる

グ「ふざけるな…!」

 

バルバを切り裂こうとした瞬間、軍服の男が立ちはだかる

ガドル「やめろ、お前はバルバに勝てない」

 

グ「ガドル…くっ!」

変身を解き、ガドルを睨む

ガドル「落ち着け」

グレムは椅子に座り直し、机を叩く

やがて冷静さを取り戻したのか顔から怒りが消えていった

グ「私とした事が…」

バルバはグレムを見下ろす

バ「まぁ今に見ていろ、クウガは、地獄を見る…!」

その目は冷徹そのもので、恐ろしい雰囲気を醸し出していた

 

 

スクールアイドル部 部室

穏やかな陽の光が射し込む部室

温かい空気を満喫したい所だが、そうはいかない

千「ゆ〜すけく〜ん、今日放課後遊び行かない?部活も休みだし!」

 

鞠「なに勝手な事言ってるの?お子様はお家で大人しくしてなさい、変わりに私が遊んであげるわ、悠介!」

千歌と鞠莉さんが色のない目で此方を見つめる

悠「まぁ二人とも…俺も今日は用事があるし」

穏やかに止めたつもりだが、二人はそうはいかない

鞠「なに?私と一緒にいるのが嫌なの?ふざけないで!」

ものすごい剣幕で悠介に詰め寄る

ダ「二人ともおやめなさい!一体どうしたんですの?」

 

曜「そうだよ、どうしたの?」

曜とダイヤさんが止めに入る

しかし、ほかのメンバーはそうはいかない

善「ほっとけばいいじゃない、興味無い」

明らかに目が違う

花「なにいってるずら、悠介さんは丸のものずら」

ルビィは変わり果てた2人の姿に恐怖を感じている

ル「二人ともどうしたの…?なんか怖いよ…」

 

悠「一体どういう事だ?昨日とまるで別人だ…梨子?」

梨子の方を見ると、彼女も驚きの表情を隠せないでいた

梨「私…怖い」

そう言いながら悠介に近づく

よかった、梨子は普通みたいだ…

安心する悠介だが、近づいた瞬間の梨子が不敵な笑顔を見せていた事など、知る由もなかった

果南は未だ黙ったままだが、こちらを見る目に色はない

 

一体…なにが起きているんだ…?

 

悠介の言葉に答えるものは、いなかった

 

 

放課後 2年生教室

Aqoursの練習も終わり、悠介は教室で帰り支度をしていた

彼の顔は酷く疲れている

悠「はぁ、本当にみんなどうしたんだ…」

まるで自分を取り合っているような言動、俺と曜が付き合ってる事はみんな知ってるはずだし、後押しもしてくれていた

なのになぜ…?

思考に疲れ、気持ちを落ち着かせようとゆっくり息を吐いた

 

その時、誰かが教室に入ってくる

曜「悠介君大丈夫?」

心配そうな顔でこちらを見る

悠「大丈夫…じゃないな、正直キツイ、千歌達はどうした?」

 

曜「他のみんなには悠介君は先に帰ったって言ってるよ、ダイヤさんが気を利かせてくれたみたい」

曜の顔が曇る

曜「みんなどうしちゃんたんだろ?私、怖いよ…」

 

悠「何が原因かはわからない、でも、ダイヤさんとルビィちゃん、梨子は恐らく大丈夫だ」

 

曜「うん、でも私…」

曜が何かを言おうとした瞬間、鞠莉さんが教室に入ってきた

鞠「こんな所にいたのね悠介、私を置いて二人でお喋り?どういうつもりなの?」

顔は笑っていたが、恐ろしい雰囲気を醸し出している、そして色のない目…

悠「鞠莉さん…一体どうしたんですか!」

 

鞠「どうもしてないわ、私は私よ、悠介、今日は私と一緒に帰りましょう、おいで」

最後の「おいで」という言葉に殺気を感じる

俺は曜にアイコンタクトを送り、曜もそれに頷く

鞠莉さんと話し合ってみる、もしかしたら原因が分かるかもしれない

悠介は立ち上がり、鞠莉と一緒に教室を出た

 

曜は二人を見送り、心配そうな表情を浮かべる

曜「悠介君…気をつけて…」

 

 

バルバはグレムを連れ、スクールアイドル部の部室の惨状をみせる

部屋の中ではメンバーが言い争う声

バ「見ろ、これがジャラジのやり方だ」

グレムは不機嫌そうな顔をするが、バルバの言わんとする事を理解していた

グ「なるほど、クウガの周りの人間に接触し人格を操作する、ストレスをかけ続け次第にクウガを弱らせる、という事ですか」

 

バ「既にクウガは弱り始めている、このまま行けばファイナルゲームに進むのは…」

その時、グレムがバルバの声を遮る

グ「どうでしょう?今のクウガは強い、私達の祖先が戦っていた頃よりずっとね」

 

バ「ほう、自分を過信しているやつから出る言葉とは思えんな、もしかしてクウガの強さを認めているのか?」

バルバは不敵に笑みを浮かべる

グ「さぁ、どうでしょうねぇ」

 

バ「ふ、相変わらず不思議な奴だ」

二人は踵を返す

部室の中では、未だに言い争いが続いていた

 

 

帰り道

俺と鞠莉さんは二人並んで歩く

普通、こんな美人な人と歩いていたら胸が高鳴るものだが、俺の中の高鳴りは、それとは全く別物だった

悠「あの、鞠莉さん、何かあったんですか?」

俺はなるべく気に触らないように質問する

鞠「悠介、私の家に来ない?」

ダメだ、聞いていない

悠「で、でも明日も学校ですし…」

鞠莉さんの目の色が無くなる

鞠「なんで?私に逆らうの?」

 

悠「い、いえ、決してそういう意味では…」

今度は不気味なほど笑顔になる

鞠「じゃあいいでしょ?」

再び目の色が無くなる

鞠「それとも、曜がどうなってもいいの?」

今の鞠莉さんなら誰だろうと手にかけてしまう

ここは従うしかない…か

悠「わかりました…」

鞠莉さんは弾けるような笑顔になり、俺の手を掴む

 

骨が軋むほど、かなり強く掴まれた

 

まるで、もう二度あなたを離さないと言わんばかりに…

 

鞠「ふふっ、Rock on…」

鞠莉の手には、得体の知れない小瓶が握られていた

 

 

曜の家

曜「悠介君大丈夫かな…」

彼は鞠莉ちゃんに連れられ、何処かに行ってしまった

何かあれば連絡があるはずだが、音信不通のままだ

 

その時、私は感じた

虫の知らせ、とでも言うのだろうか

彼と私が写っている写真立てが倒れたのだ

悠介君の見に何か起きている

 

気がつくと、考えるより先に体が動いていた

自転車に跨り、船乗り場を目指す

今ならギリギリ最終便に間に合うはず

曜「待ってて、悠介君!」

 

慌てて駆け出す曜の後ろ姿を、1人の男が見つめる

ジ「へぇ、あれがクウガの、あいつを壊せばチェックメイトか」

ジャラジは不気味に笑い、ゆっくりとその後を追った

 

 

ホテルオハラ 鞠莉の部屋

気がつくと俺は、どこか分からない部屋のベットに寝かされていた

頭がぼんやり重い

記憶を辿り、情報を整理する

 

俺は確か鞠莉さんに連れられて…それで…

その時、脳裏に浮かんだのは何やら液体を染み込ませたハンカチを俺に押し付けてきた鞠莉さん…

悠「まさか、あれで眠らされてここに…」

なんのために?

悠「ここはどこだ?鞠莉さんもいないし」

何気なく窓を見ると、不気味なほど青白い月が浮かんでいる

悠「夜になっている…兎に角帰らなきゃ」

そう思いベットから体を起こすが、右手に違和感を感じた

悠「なんだ?」

ガチャガチャと金属音が鳴る

 

俺の右手は手錠に繋がれ、ベットに固定されていた

悠「な、なんだこれ…!」

 

その時、部屋の扉が開いて鞠莉さんが入って来る

鞠「お目覚めかしら、気分はどう?」

目に色はない

悠「鞠莉さん…どうして…」

 

鞠「決まってるじゃない、あなたを私のモノにするためよ」

彼女の言葉からは狂気さえ感じられた

鞠「もうあなたは私のモノ、これからはずっと一緒に暮らすのよ、身の回りの事は気にしないで、私が全部してあげるから」

鞠莉さんの顔は紅潮し、何かに取り憑かれているようだった

悠「鞠莉さん、お願いします、この手錠を外してください!」

必死に訴えるが、届かない

鞠「ダメよ、だって逃げるでしょ?あなたはもう私のモノなの」

 

鞠莉さんが俺に近づいた瞬間、扉がノックされた

どうやら使用人のようだ

使「鞠お嬢様、お客様がお出でです」

 

鞠「いい所だったのに、誰?」

 

使「はい、桜内梨子と言っておられました」

 

悠「梨子?どうして…」

なぜ梨子が?時間的に部活の相談でもなさそうだし、どういう事だ…

鞠莉は部が悪そうな顔をする

鞠「悠介、すぐ戻るから待ってて」

俺に不気味な笑顔を向け、部屋を出て行った

 

今がチャンスだ、何とかこの手錠を…

俺は必死に外そうとする、が、そうはいかない

悠「くっ!…なんでこんな事に…」

その時、ふと気がついた

今の鞠莉さんは危険だ、梨子に何をするか分からない

その考えが脳裏を過り、俺は恐怖を感じた

急がなければ、梨子が危ない…!

俺は覚悟を決め、手錠をしっかりと握りしめた

 

この方法しか、ない…!

 

気合いと共に、手錠と己の手を反対方向に引っ張っる

 

 

内浦 連絡船乗場

曜「間に合った…急がなきゃ!」

淡島までの連絡船は残り2本ある

 

船に乗り込もうとした瞬間、甲高いフィンガースナップが鳴った

低い男の声…

ジ「君、今のままでいいのかい?」

振り向いた先には、細身の男が立っていた

曜「あなた…誰?」

理由はわからない、ただこの男からはただならぬ脅威を感じる

ジ「君の彼、このままだと取られちゃうかもしれないよ?」

 

曜「悠介君の事?そんなこと…」

その時、千歌ちゃんや鞠莉ちゃんが頭を過る

もしかして本当に悠介君は…

 

ジ「今の疲れ果てている彼を見て、そうさせた奴らを憎いとは思わないか?」

 

曜「憎いなんてそんな…」

 

ジ「表ではそう思っていても、心の奥底は正直だ、誰よりも愛している彼を取り戻さなくていいのか?」

男の言葉が、私の胸に刺さるように入ってくる

次の瞬間、何かが壊れた音がした

私は奪い返さなければならない、それは私の義務…

だって彼は私の物なのだから

 

曜の目は、かつてのようなマリンブルーではなくなっていた

 

ジャラジは満足したかのように笑い、その場から立ち去る

ジ「チェックメイトだ、クウガ…!」

 

 

鞠莉が玄関に出ると、そこには梨子が一人で立っていた

鞠「梨子、なんの用かしら?」

笑顔で語り掛ける

梨「悠介君、どこにいるか聞こうと思って」

梨子は真剣な表情だ

鞠「ここに悠介はいないわ」

 

梨「嘘、本当の事を言って」

 

鞠「諦めが悪いわよ、悠介はもう私のモノ、余計な手出ししないで」

鞠莉はあからさまに不機嫌な表情になった

梨「彼が本当に好きなのは…」

そこまで言いかけた瞬間、鞠莉が梨子に掴みかかる

鞠「戯言はそこまでよ、私と悠介の関係を邪魔するものは、誰だろうと許さない…!」

あまりの剣幕に梨子は怯え、為す術もない

鞠「綺麗な指、私と悠介の邪魔をした代償は大きいわよ?」

鞠莉は梨子の可憐な指に手をかける

まさか私の指を…?

もうダメかと思い、梨子は目を瞑る…

 

誰か、助けて…

 

その時、鞠莉の手を誰かが掴んだ

梨子はゆっくりと目を開け、その人物を見る

鞠「ど、どうしてあなたが…」

その人物の手からは、流血と共に痛々しい傷跡が残っていた

梨「どうしたの?その傷…」

 

鞠「…悠介…」

 

悠「もう辞めるんだ、鞠莉さん!」

鞠莉は驚きの表情を隠せない

鞠「なぜ…手錠はどうしたの…」

 

悠「無理やり引き抜いた」

悠介は冷静に答える

どれほどの痛みだっただろうか

手の傷はあまりにも生々しく見えた

鞠「どうしてそこまでして…」

 

悠「もうこれ以上、誰かの涙は見たくない、皆に笑顔でいて欲しいんです、この街の人も、Aqoursも、そして…鞠莉さんにも」

鞠莉は頭を抱え込む

鞠「私は…私はなんて事を…」

色を無くしていた目に少しずつ色が戻り、心にこびりついていたドス黒い何かが剥がれていく

悠介は鞠莉の肩を優しく包み込み、声をかけた

悠「いつも優しくて、みんなのお姉さんみたいな存在で、頼りになって、俺、そんな鞠莉さんが好きでした、だから…これからもずっと笑顔でいてください…!」

鞠莉の目からは、留めなく涙が溢れ出る

 

彼女の目は、以前のような輝きを取り戻していた

 

 

鞠莉さんと別れ、俺は梨子と一緒に連絡船に乗っていた

あの後、鞠莉さんはずっと謝っていたが、彼女の目はいつもの澄んだ瞳に戻っていたのでもう大丈夫だろう

悠「鞠莉さん、元に戻ってよかったよ」

 

梨「そうね」

心做しか、梨子が悔しそうな顔をしていた

梨「(もう少しだったのに…絶対に彼を手に入れなければ、でなきゃ1年生をけしかけた意味がない)」

 

私は彼の事がずっと好きだった

これまで抑えていたこの感情は、ある男によって開かれた

あの細身の男に…

私は彼を手に入れるため、花丸ちゃんと善子ちゃんを壊した

彼に取り入らせ、彼を疲れ果てさせるために

そして、私という餌を与える

そうすれば彼は私のモノ…

ダイヤさんとルビィちゃんは落とせなかったが…まぁ十分だろう

私は必ず、彼を手に入れる…!

 

悠「ん?梨子どうした?難しい顔して」

 

梨「うんん、なんでもない」

 

船乗り場に着き、船から降りる

その時、誰かが悠介の懐に飛び込んできた

その人物はショートボブで銀髪の少女…

しかし、目からは色が消えていた

曜「おかえり!悠介君!」

 

悠「ただいま、急にどうしたんだ?」

曜は少しはにかみ、彼の手を強く握る

手が軋み、悠介は表情を歪めた

曜「悠介君は私のモノだよ、永遠に…」

彼女の瞳は以前のように澄んでなく、漆黒の闇に支配されていた




今回はここまでです!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。