悠「曜…一体どうしたんだ?」
曜「どうって、私はいつもと一緒だよ」
そう言う彼女の瞳に前の輝きは見当たらない
曜は俺の隣にいる梨子に目を向け、少し苛立った表情になる
曜「ところで、今まで2人でなにしてたの?」
悠「鞠莉さんのところにいたらな、偶然梨子が…」
曜「ふーん、偶然ね」
曜は梨子に詰め寄る
曜「梨子ちゃん、一応言っておくけど、私の悠介君に何かしたらただじゃ置かないからね?」
梨子は何も答えず、曜と対峙し続ける
そして悠介の方に向き直り
曜「悠介君も、次こんな事があったら…」
息を呑む
曜「お仕置きだからね?」
彼女の目は漆黒に染まり、独特の雰囲気を醸し出していた
吸い込まれそうな瞳と、いつもとは違う声色は、悠介の心に言い知れぬ恐怖をもたらした
浦の星学院 屋上
辺りは夕焼けに包まれ、オレンジ色の夕陽に照らされている
辺り一面が絵の具で塗られたような光景は、とても美しく見えた
これを黄昏時、とでもいうのだろうか
悠「はぁ、今日も疲れたな…」
悠介は疲れた顔でスポーツドリンクを運ぶ
千「疲れた〜、ありがとう悠介君!」
そう言いながら抱きついてくる
例により、目に色はない
花「またやってるずら、無駄ずらよ」
善「リトルデーモンは我が下僕、私のモノよ」
ダ「二人ともおやめなさい!」
ル「どうしちゃったの…」
千歌は悠介から離れない
千「悠介君〜今日私のうちに来ない?」
悠「いや…今日もちょっと疲れてて…」
千「なに?私といるのが嫌なの?」
形相が変わり、悠介を睨みつける
悠「そういうわけじゃな…」
言い終わる前に千歌が悠介の頬を叩いた
バチン、と痛々しい音が響いた
千「ふざけないで…!」
千歌は暴走したかのように悠介の上に乗り、更に頬を叩く
悠「ち、千歌…やめ……ろ」
千「私より大事な人がいるの?なんでなんでなんで…!」
その時、鞠莉が二人の間に割り込む
鞠「そこまでデース、みんなも早く着替えなさい?風邪ひくわよ?千歌っち、汗臭いって嫌われるよ?」
千「むー、それは嫌だな」
ぶつくついいながらも悠介から離れる
千「じゃあ早く着替えるから待っててね!」
そう言いながら屋上から出ていった
悠「鞠莉さん、ありがとうございます、助かりました…」
鞠「ノンノンノン、これくらいじゃ、私がした事は償えないわ」
悠「でも、鞠莉さんが元に戻ってよかったです」
その言葉に嘘偽りはなかった
鞠「じゃあ私も着替えてくるから」
そう言って下に降りて行く
悠「鞠莉さん、元に戻って本当によかった…でも花丸ちゃんと善子、そして千歌と曜、一体どうしたんだ…」
悠介の心は、未だに蟠りが取れないままだった
浦の星学院 校門前
俺は疲れていたので、早く帰ろうと校門を出る
千歌と曜を待ったとしても、また揉め事になるだろうな
そう思っていると、誰かから急に抱き着かれる
曜「悠介君!待ってたよ!」
俺の腕に頬ずりする
目に色はない
悠「あ、あぁ…待たせたな」
遅かったか…
曜「もちろん一緒に帰るよね?」
曜の言葉にはどこか迫力があった
悠「わかった、一緒に帰ろ」
曜「そこで1つお願いがあるんだけど」
悠「なんだ?」
曜「今日私の家に来ない?」
いつもなら恥ずかしがってこんな事言わないのだが、曜の声はどこかいつものそれとはトーンが違った
断ればまた面倒な事になる
そう思った俺に選択の予知はなかった
曜の家
家に着くなり、曜の部屋に通された
俺の心臓が、これから何をするのかという緊張で高鳴っている
その時、部屋の扉がガチャリと開いた
そこにはコーヒーカップを載せたお盆を持っている曜が立っている
曜「コーヒーいれてきたよ!飲むよね?」
目が断るなと言っている
俺はカップを1つ手に取り、口へと運ぶ
悠「ありがと、でも珍しいな、お前がコーヒーなんて…」
言い終わらないうちに、悠介の視界がグニャリと歪む
それと同時に強い眠気に襲われ、そのまま倒れた
曜「やっぱり、すごい効き目だね」
そう言いながらポケットから小瓶を取り出す
曜は眠った悠介を見下ろしながら呟いた
曜「悠介君が悪いんだからね?私と別の女の子の部屋に行くなんて、これはお仕置きだよ」
彼女の口元は妖しく歪んでいた
悠「うっ、頭いてぇ…」
眠っていたのだろうか、体が重い
ゆっくりと立ち上がろうとするが、手足が動かないことに気づいた
両手両足がロープで縛られていたのだ
悠「な、なんだこれ…」
驚きと恐怖で頭がパニックになる
何とか立ち上がろうとするが失敗し、盛大に転けてしまった
すると、その拍子に1冊のメモ帳が落ちてきた
それはどうやら日記のようで、あるページが悠介の目に止まる
4月3日
今日から2年生!
私の今後の目標は、千歌ちゃんとすっごいスクールアイドルになる事!それに、可愛い転校生も入ってきた!
頑張ろう〜
5月6日
新入部員!可愛い1年生が入ってきてくれた!その名も花丸ちゃんとルビィちゃん、どっちも美少女!
ページをとばす
7月5日
転校生がやってきた!しかも男の子
でも、彼はどこか寂しそうな眼をしている
何かあったのかな?
7月29日
悠介君がやっと心を開いてくれた
本当にいい友達になれそう
いや、友達以上にも、なれるかも…
悠介は涙が出そうになる
純粋な心、本当にいい奴だな…
そして、何気なく次のページをめくった瞬間、背筋がゾワリと震える
悠介の目に映ったのは、ページいっぱいに書かれた文字
大堂悠介大堂悠介大堂悠介大堂悠介大堂悠介大堂悠介大堂悠介
大堂悠介大堂悠介大堂悠介大堂悠介大堂悠介大堂悠介大堂悠介
そこには血迷ったような文字で悠介の名前が書き殴られていたのだ
悠「な、なんだこれ…」
大きな虫が背中を這い回っているかのような感覚に襲われる
次の瞬間、部屋の扉が開く
曜「あーあ、見ちゃったんだ」
そこには色のない目をした曜が制服姿で立っていた
悠「曜…これはいったい…?」
悠介は恐る恐る質問をする
曜「決まってるじゃん、あなたが好きだからだよ」
その声は本心だろうが、まるで心がこもっていないようだった
悠「なんで、なんでなんだよ…」
なぜだ…一体曜に何があったっていうんだ…
曜「これで私の気持ちはわかったでしょ?じゃぁ…」
曜は横たわる悠介に近づき、唇を近づける
悠「お、おい、ちょっとまっ…」
顔を動かそうとするが、まだ痺れていてビクともしない
曜は悠介の唇に自分の唇を重ね、長い長いキスをした
彼女の体温が上がっている事が肌身を通じて伝わってくる
曜「ぷはっ…悠介、好きぃ」
頬は真っ赤に染まり、熱気を放っていた
悠「曜…俺は…」
曜「悠介、私がもっといいことしてあげるからね」
悠「こんな事してなんになるんだ…!」
必死に抵抗するが、未だに体は動かない
曜「体は正直なんだから」
悠介の体を指で妖しく撫でる
曜「このまま最後まで…」
悠介の服に手をかけようとした瞬間、彼の手が曜の手を掴んだ
悠「やめ…るんだ…」
曜「辞めないよ、だって…」
少し下を向いて再び向き直り、悠介に顔を近づける
曜「あなたはもう、私のものなんだから」
悠「くっ、やめろぉ!」
悠介は気合いと共に、無理矢理体を動かす
彼女を遠ざけようと手を振り回した
次の瞬間、悠介の手が曜の頬に強く当たる
悠「もうやめろ、こんな事してなんになるんだ!」
曜の瞳から一筋の涙が流れ、悠介に向き直る
曜「わかった」
彼女の目付きが、あからさまに変わる
曜「悠介君がそこまでいうのなら…」
二人の間に淀んだ空気が流れる…
曜「別れよ、私達」
悠介を見下ろしながら、曜は冷たく言い放った
悠「えっ…」
心臓の鼓動が、どんどん大きくなっていく
その音は、悠介に警告を鳴らしているかのように大きく波打っていた
今回はここまでです!
次回もお楽しみに!