傷だらけの戦士   作:黒死牟

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今回はとても重要な話です!

あの曲との掛け合いが…

では、どうぞ〜!



第35話 輝波

十千万前 砂浜

早朝でまだ寒さが残る時間

太陽も顔を出さず、月が西の空に輝いている

 

千「たぁぁぁ!」

千歌は気合いの声を上げ、大きく飛んだ

 

しかし、上手くいかずに転んでしまう

 

その様子を、曜と悠介は心配そうに見つめていた

悠「千歌…」

その時、不意に声をかけられた

梨「やっぱり、やってたんだね」

どうやら心配して来てくれたようだ

曜「うん…梨子ちゃんに頼んでも、止められるからって」

 

悠「果南さんにあんなこと言われたらな…」

 

夕方の砂浜

何度やっても転んでしまう千歌

彼女のため、今後のAqoursの活動の為にも、果南さんは気遣ってくれたのだろう

 

でも…

 

果「千歌、約束して、明日の朝までに出来なかったら、諦めるって」

 

 

曜「2年前、自分が挑戦してたから、尚更分かっちゃうのかな…難しさが…」

 

果南の言葉を受け止め、千歌は決意の表情を浮かべ、拳を力強く握っていた

 

もう一度走り出し、飛ぶ

しかし、またも上手くいかずに転んでしまう…

 

曜「あと少しなんだけどな…」

 

梨「うん、あと少し…」

 

千歌は疲れてしまったのか、地面に寝転がってしまった

拳で地面を思い切り叩く

千「あぁ、もう!どこがダメなんだろう、私…」

 

耐えきれず千歌の元へ行き、その手を握る

梨「焦らないで、練習通り、力を抜いて」

 

千「梨子ちゃん…」

 

曜「できる、絶対できるよ!見てるから!」

 

千「うん!」

悠介はあえて近づかず、その様子を見つめる

 

もう一度やろうと立ち上がった時、明るい声が聞こえてくる

花 善 ル「千歌ちゃ〜ん!ファイトォー!」

 

花「頑張るずらー!」

 

1年生の後押しも受け、再び走る

 

しかし、またも転んでしまう

千「あぁ!も〜できるパターンだろーこれぇー!」

 

千「なんでだろ、なんでできないんだろ、梨子ちゃんも曜ちゃんも、こんなに応援してくれてるのに…」

千歌の脳裏に、去っていく果南が映る

千「いやだ、いやだよ!私、何もしてないのに、何もできてないのに!」

無力な自分が悔しくて、目から涙がこぼれ落ちる

 

何がダメなんだろう、私は一体…

 

目が熱くなり、瞳から雫がこぼれ落ちる

その時、千歌の耳に明るい声が届いてきた

梨「ビードッカーン、ズビビビ〜!」

 

曜「普通怪獣ヨーソローだぞー!」

 

梨「おっと、そうはさせぬ、梨子っぴーもいるぞー!」

まるで子供のようにじゃれあう2人

 

普通怪獣…自分がいつも言っているフレーズに反応し、千歌は立ち上がった

 

曜「まだ自分は普通だって思ってる?」

 

梨「普通怪獣チカチーで、リーダーなのに皆に助けられてここまで来たのに、自分は何も出来てないって、違う?」

 

千「だって、そうでしょ…」

千歌は俯きながら答える

曜と梨子は笑い合った

曜「千歌ちゃん、今こうしていられるのは、誰のおかげ?」

 

千「それは、学校の皆でしょ…街の人達と、曜ちゃん、梨子ちゃん、みんな…悠介君も…それに…」

千歌の言葉を曜が遮る

曜「一番大切な人を忘れてませんか?」

 

梨「今のAqoursが出来たのは、誰のおかげ?最初にやろうって言ったのは誰?」

 

千「それは…」

 

曜「千歌ちゃんがいたから、私はスクールアイドルを始めた」

 

梨「私もそう、きっと、みんなだってそう、悠介君も」

悠介は大きく頷いた

 

東の空が少しずつ明るくなり始め、暗闇が照らされていく

 

曜「他の誰でも、今のAqoursは作れなかった、千歌ちゃんがいたから、今があるんだよ?」

曜は少し俯き、直ぐに顔をあげる

曜「その事は…忘れないで!」

 

梨「自分の事を普通だって思っている人が、諦めずに挑み続ける、それが出来るって、凄いことよ?凄い勇気が必要だと思う!」

 

曜「そんな千歌ちゃんだから、みんな頑張ろうって思える、Aqoursをやってみようって、思えたんだよ!」

 

梨「恩返しなんて思わないで!皆ワクワクしてるんだよ!」

 

当たりが少しづつ明るくなっていく

 

梨「千歌ちゃんと一緒に、自分達の輝きを見つけられるのを…!」

 

千「みんな…」

目頭が熱くなり、涙が溢れそうになる

私は…皆にここまで思われて…

 

鞠「新しいAqoursのwaveだね!」

気がつくと、そこには3年生が揃っていた

果「千歌、時間だよ、準備はいい?」

果南さんは真面目な顔だったが、直ぐに笑顔になる

 

それに応えるかのように、千歌は大きく頷いた

 

最後の力を振り絞り、走る

 

同時に太陽が顔を出し始め、辺りを明るく灯していく

暗い海も輝きを取り戻し、闇が晴れていく

 

果南は、とても優しい顔で千歌を見つめていた…

 

果「ありがとう、千歌…!」

 

地面を強く蹴り、大きくジャンプする

 

その姿はまるで…

 

大空を舞う、鳥のようだった

 

 

悠介はバイクに跨り、約束の場所へと向かう

 

千本浜

バイクを降り、ヘルメットを脱ぐ

彼の顔は、戦いを前にした決意に満ち溢れていた

 

必ず勝つ、笑顔で曜達の所に戻るんだ!

 

その時、悠介の目の前に大男が現れた

ガ「来たな、クウガ…!ビビって来ないかと思ったぜ」

ガドラは不敵に笑みを浮かべる

 

悠介は真っ直ぐな瞳で敵を見据えた

迷いは感じれない

 

悠「俺は負けない…負ける訳にはいかない、仲間とこの街と、そして…愛する者のために…」

全身に力を漲らせ、気を上げていく

ガ「…望むところだ」

ガドラも気合いの声を上げ、怪人態に変身した

悠「勝負だ!…変…身!」

仮面ライダークウガ マイティフォーム

 

 

ラブライブ 地区予選ライブ会場

彼は今、戦っているだろう

 

私達も戦う、以前突破できなかった壁を乗り越えるために

 

学校や街や家族、全てに感謝して、この歌を歌う

 

景気のいいイントロが流れ始め、曲が始まる

お揃いのピンク色の衣装に身を包んだ私達は、心も1つだった

 

届けよう、今の私達の全力を…!

 

MIRACLE WAVE

 

限界までやっちゃえ 最後まで!

 

クウガは大きくジャンプし、ガドラに殴りかかる

ガドラも大きく前に出て、その拳でクウガを狙う

 

じれったい自分 超える時だよ!

 

お互いのボディに拳がめり込み、その場に倒れ込んだ

両者とも直ぐに立ち上がり、構える

 

他のこと 考えられない

 

ク「はぁっ!」

クウガは渾身のパンチを叩き込んだ

ガドラは少し怯んだが、直ぐに同じように殴り返す

 

ひとつになった夢よ走れ!

 

両者、激しく殴り合う…

鮮血が白い砂浜を赤く染めていく

ガトラの渾身の一撃がめり込み、クウガは腹を抑えて倒れこむ

ク「がぁっ…」

 

ガ「その程度か、クウガ!」

 

ク「ちく…しょう…」

 

メンバーが横一列に並び、千歌1人が前に出る

 

いよいよだ…

 

悔しくて じっとしてられない

そんな 気持ちだった みんなきっと…わかるんだね!

 

祈るように見つめる8人…

 

千歌はステップするように助走をつけ、そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロンダートからのバック転を見事に決めてみせた!

 

それは今までにないほど綺麗で、文字通り、観客を魅了していた

 

奇跡が…起きた!

 

倒れ込んだクウガを足で踏付ける

ガ「もう終わりなのか?つまらん」

 

くそっ、体が動かない…

 

その時、クウガの耳に声が届く

 

できるかな?できる!叫ぶ心が 欲しがる輝き

目の前で 君に見せるんだ!

 

そうだ、俺は負ける訳にはいかない

あいつらだって、頑張ってるんだ!

 

ク「おらぁぁぁ!」

闘志を燃やし、気合いでガドラを跳ね除けて立ち上がった

ガドラはバランスを崩してその場に倒れ込む

 

少し距離を取り、必殺の構えをとった

脳裏に、メンバーの声が鳴り響く…

 

できるかな?できる!

それしかないんだと 決めて 熱い熱いジャンプで!

 

ガ「最後だ…こい!」

ガドラも距離をとり、構える

 

意識を集中させ、力を溜める…

 

両者一斉に走り出し、距離を詰めていく

クウガの右足には炎が灯る

 

新しい光 掴めるんだろうか?

 

大きくジャンプし、相手に蹴りかかる

 

信じようよ!

MIRACLE WAVEが〜MIRACLE呼ぶよ〜!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クウガの蹴りが、ガドラの胸に直撃し、大きくぶっ飛ばした

マイティキック

 

 

腕を大きく回して最後の決めポーズをとる

 

やりきった…全力をだしきった!

心中が充実感で満たされていく

他のみんなも、とてもいい笑顔をしている

 

会場は歓喜と拍手に包まれ、独特の雰囲気を醸し出していた

 

 

胸にクウガの紋章が浮かび上がり、ガドラは苦しむ

 

気合いで消しさろうとするが、紋章は濃く、歯が立たなかった

ガ「いい…腕だな……やはりお前は…強い…」

体に亀裂が入る

ガ「じゃあな…ライバルよ…」

大きな破裂音とともに、ガドラは跡形もなく砕け散る

 

爆発する寸前、彼の口元が笑の形になっていた様にみえた

 

クウガは変身を解き、雲一つない空を見上げる

 

どこまでも澄み渡る空は、永遠に続いているかのように思えた

 

俺は今まで、1人で戦っているつもりだった

 

でもそれは間違い

 

ずっと、助けられていたんだな…

 

楽しい時も嬉しい時も、辛い時も悲しい時も、俺は1人なんかじゃなかった

 

これからも彼女達の輝きを守り続ける

 

悠介は、その願いを、どこまでも澄み渡る空に誓った




お楽しみ頂けましたか?

いつも見ていただきありがとうございます!

次回もお楽しみに!

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