刀使ノ兄弟   作:腰痛持ち

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14話 兄の週末出張稽古

真希を泊めた翌日の早朝

勇刀は大きめのボストンバックと自身の御刀を背負い私服姿で

真希は前日の出で立ちのまま小さなカバンを背負っていた

 

「一晩泊めてもらった上にお弁当まで貰ってしまって、お世話になりっぱなしだな」

「気にするな、俺が自分の分を作る予定があったし何より俺がやれることやっただけだ、何かあったら必ず連絡しろよ、お前一人で戦ってるわけじゃねぇーんだからな」

「あぁ、ありがとう期待に添える様に努力するよ、それじゃぁまた」

「おう、またな」

 

二人はそれぞれたがいに背を向け反対方向へ歩き出した

 

(ありがとう、衛藤勇刀…いや勇刀これで僕は……)

 

(さーて、アイツ等ちゃんとサボらずやってたかなぁ)

 

それぞれの思いを胸に二人は目的の為に歩き出した

 

そしてそれをまったく別の方向から見つめる人影があった

 

「勇刀の家から見知らぬ美女が出てきたっ………こいつぁタイヘンだっ!!」

その人影は音も無くその場を離れて行った

 

勇刀は途中コンビニで飲み物を買い駅で電車に乗り着いた場所は

 

「あっ!居た居た!勇刀さーん」

「ちょっと美炎ちゃんあんまり大きな声出すと騒ぎになっちゃうよ」

「相変わらず元気だな美炎、誰と居ても保護者位置だよな舞衣ちゃんは」

 

伍箇伝の内の一つ美濃関学院の最寄り駅、岐阜羽島駅

そこで勇刀は学院の生徒で顔見知りの安桜美炎に出迎えられていた

 

「まぁ元気だけが取り柄みたいな所があるので!」

「いつもの事ですから慣れっこです!」

「そうかい、んじゃ見つかる前にとっとと行きますか」

 

そういって歩き出そうとした瞬間

 

「居たわ!!衛藤勇刀よ!!」

「はぁ…マジか」

「もしかして私のせい?」

「多分…そうだと思うよ」

 

先程の美炎の声を聞きつけて周囲で張り込みをしていたメディアの人間が集まって来た

 

「衛藤勇刀さん!一言コメントをお願いします!」

「貴方達六刃将の活動を教えてください!」

 

等など一斉につめかけてきていた

 

「はぁ美炎、舞衣ちゃん変な所触っちゃったらゴメンな」

「え?」

「へっ?」

「よっと!!」

「うわぁっ!?」

「きゃっ!?」

 

勇刀は二人を両腕で抱えて立ち上がる

美炎と舞衣は突然抱き上げられ驚いていたが、二人の手はしっかりと勇刀に添えられていて、二人の表情に不安な様子は無く、自然と勇刀に身体を預けていた

 

「喋ると舌噛むからな!気をつけろよ!!」

「「はいっ!!」」

「行くぜっ!」

「あっ!ちょっと!!待って!!」

 

勇刀は迅移を使いその場から駆けだした

その場に残された報道陣は電信柱や屋根を足場に駆けて行く勇刀を見上げる事しか出来なかった

 

そして3人はそのまま人気の少ない所まで移動し柳瀬家の執事柴田さんの運転する車に乗り込み学院へ向かった

 

「は~まったく美炎のせいでえらい騒ぎになっちまったな」

「すみませんでした。以後気をつけます…」

「それにしても美炎ちゃん、よく勇刀さんがいるって解ったね」

「なんかふと感じたんだ、勇刀さんがそこに居るって自分でも何でだかよく分からないんだけどね」

「ふーん、偶然かそれとも美炎の感覚が人並み外れてるだけなのか、まぁ美炎らしいって言えば美炎らしいけどな」

「そうですね」

「ちょっと二人とも、私の事バカにしてる?」

「「全然?」」

「絶対バカにしてるでしょーー!」

 

そうして雑談をしている内に車は美濃関学院に到着した

 

「さてと、取り敢えず先に荷物を置いて来ちゃおう」

「勇刀さんは何時もの部屋を使って下さい」

「あいよ、そう言えば可奈美はどうした?」

「可奈美は関東への派遣が延長されちゃってて」

「可奈美ちゃん本人は帰って来るつもりだったらしいんですけど、真庭本部長からどうしてもって」

 

「うぇえええええええええん!!おにーちゃあああああああん!!」

「すまん衛藤耐えてくれ……」

 

「まぁ、仕事だから仕方ない、次来た時は大変な事になるんだろうな、それじゃぁ俺も荷物置いて着替えたらすぐ行くから、皆も準備しといてな」

「はい!解りました!!」

勇刀は今しがた聞こえた可奈美の泣き声を空耳だと思い込み頭を振って気を取り直して部屋に荷物を置き、ジャージに着替えて早速、道場へ向かった

 

そして道場へ着くと美濃関の刀使科の生徒達がジャージ姿で集まっており

勇刀が来た事に気付くと一斉に一礼の挨拶をし、勇刀もそれに一礼で返した

 

「皆おはよう!」

「「「おはようございます」」」

勇刀は前に用意された台の上に乗り挨拶すると元気よく返す美濃関の生徒達、中には高等部の生徒達も混ざっているが全員、勇刀に対して信頼の眼差しを向けていた

「さぁ今週もこの日が来たぞ!ちゃんとサボらずやってたか!?」

「「「「はい!!!」」」」

「じゃぁその成果、見せてもらおう!素振り始め!!」

「「「「「はいっ!!!」」」」

 

生徒達は自分の周りに一定の間隔を開けて素振りを始めた

勇刀はその様子を台の上から眺めたり周りを歩いたりして見回っていた

そして適宜声をかけていた

 

「前回も言ったけど、疲れて正しく振れなくなったら休んで良いからな~」

「「「「「「はいっ!!!」」」」」」

 

返事はするものの、振るう木刀は止まることなく空を切る音を発し続ける

しかしそれでも自分がしっかりと振る事が出来なくなったと認識した生徒達はそれぞれ休憩を始める

そしてそのまま勇刀の号令で素振りの時間は終わり

 

「そこまで!!うん、最初の時より皆素直に振れる様になってたから良かった!先週からちゃんと積み重ねていた成果だな!あとは個人で何か聞きたい事があれば休憩中でもいいから聞きに来な」

「「「「「はいっ!!!」」」」

「いつまでも素振りだけじゃつまんないだろうから次に進むぞ」

 

その言葉を聞き生徒達は浮足立ち眼が輝き始めた

 

「舞衣ちゃんは何やるか解るよね?」

「えっと…帽子落としですか?」

「その通り!ただ人数も多いし仕様を変更します!それがこれだ!」

 

勇刀が何処からともなく取り出した大きな紙にはこう書かれていた

 

二人一組のペアとなり両者が帽子を被る

 

制限時間内に相手から帽子を落とした方の勝ち

 

両者とも帽子を落とせなかった場合はじゃんけんで勝負を決める事

 

そして勝者は俺と帽子落とし

 

「それじゃぁ二人一組帽子落とし開始!写シ張って制限時間は3分!」

 

それぞれが近くに居た者同士でペアを組み対峙する

 

ここに少女達の戦いの幕が切って落とされた

 

そして勇刀と打ち合う少女達が選抜された

 

「さぁてまずはふたばちゃんだな、いつでもかかっておいで!」

「はい!宜しくお願いします!!……やぁっ!!」

 

まず最初の相手は中等部の長江ふたばだった

中等部1年ということもありまだまだ動作にぎこちなさがあった

そんな動きを見て勇刀は微笑み、しっかり受け止める

 

「ほら!踏み込みが甘いぞ!確り踏み込んで来い!」

「はいっ!…たぁっ!!」

「いいぞ!ふたばちゃんはもっとしっかり相手に打ち込む事!それがちゃんと出来る様になって初めて次の段階へ進める!」

「てやぁあああああああ!!!!」

 

勇刀は適宜アドバイスを交えてふたばと剣を打ち合わせる

そして最後にはふたばがスタミナ切れを起こし終了となった

 

「次は私とお願いします」

「次は舞衣ちゃんか。いいよかかっておいで!」

「やぁっ!!」

「おぉっと!流石御前試合での美濃関代表!良い動きだ」

 

勇刀は舞衣の居合い抜きを回避するとそのまま反撃に転じるため御刀を振り抜くが避ける

 

(勇刀さんの斬撃は一振り一振りが鋭く重い、よく妹が見てるヒーローアニメの必殺技みたい、まともに真正面から受けちゃ駄目!避けて受け流して!反撃する!)

 

舞衣ちゃんは冷静に彼我の実力差を見て戦っていた、しかし

 

(流石舞衣ちゃんと言った感じだな、しっかりと自分と俺の差を考えた上で最善の戦い方を常に選択してる、戦闘でも司令塔になるだけはあるけど、仲間のいない一対一の勝負だとそれだけじゃ、足りない)

勇刀は少しギアを上げ御刀を振るう、すると舞衣は次第に反撃する余裕が無くなり防戦一方になっていた

(くっ!想定が甘かった、勇刀さんなら私がそういう戦い方をするという事も想定内だったんだ、だから私がギリギリ反応して避けられる速さで攻撃出来ていたんだ)

「ほらほら!防戦一方になって来てるよ!頭を使うのも良いけど頭でっかちになり過ぎない!今は味方も居ない、連携の必要もない!思いっきり本能で戦ってみても良いんじゃない?」

「本能で……」

「そう、それが舞衣ちゃんと次の段階へ押し上げてくれるはずだ」

「……………ふぅ」

舞衣は深く深呼吸をし構えを解いて脱力する

「…………っ!!」

「っぅおぁっ!?」

次の瞬間勇刀の視界から舞衣が消え眼前に迫っていた刃を弾く事で精一杯だった

 

「少し言っただけでここまで変わるか!?舞衣ちゃん恐ろしい子!」

 

その後も舞衣の猛攻は続き勇刀も応戦するが舞衣の予測できない動きに手古摺っていた

 

「ナニあれ!?今勇刀さんと打ち合ってるのってホントに舞衣!?」

「凄い、いつもの柳瀬さんの剣とは全然違う」

「柳瀬先輩スゴイ」

「やっぱり衛藤君に頼んで正解だったわね」

「学長!いつの間に!?」

 

壁際で二人の打ち合いを見ていた美炎達の傍にいつの間にか美濃関学院学長、羽島江麻が立っていた

 

「それより学長、勇刀さんに頼んで正解だった、というのは?」

「ふふっ、それは貴女達が一番解っている事の筈よ」

「私達が?」

「じゃぁ技量も実力も衛藤君とまったく同じ人がもう一人いたとしましょう、その人は貴女達の剣の腕だけを見てそれだけを確実に上げてくれます。それに対して衛藤君は貴女達自身をよく見て、得手不得手や癖をしっかり理解して、それに合わせて助言や指導をしてくれる、さぁどっちが良いかしら?」

 

それを聞いていた生徒達は少し考えるがどちらが良いかなど解りきっていた

 

「本当に可奈美が居てくれて良かった、そして勇刀さんが可奈美のお兄さんで良かったって、可奈美っていう目標が居て、それに近づく為に手を貸してくれる人が居る、私達って本当に恵まれてるなって思います。それからそれに今まで無自覚だった事も反省してます。

もっともっと頑張らなくちゃ!!成せば成る!!」

「おう!頑張れよ!」

「はいっ!!って勇刀さん!?舞衣と打ち合ってたんじゃ!?」

 

美炎はいつの間にか目の前にいた勇刀に驚いていた

そして腕の中には肩で息をしている舞衣が抱き抱えられていた

 

「舞衣ちゃんも良く頑張ったけど、すこし飛ばし過ぎたね」

「はい……でも、何か…掴めた、気がします……」

「そっか、なら少し成長かな、じゃあ次は美炎だ準備は良いか?」

「はいっ!!!!」

 

勇刀は舞衣を他の生徒達に任せて美炎と向き合う

その時見た勇刀の力強い瞳に美炎は身体の奥から力が湧いてくるのを感じ

思わず声が上ずってしまった、がそんな事も気にならないほどに美炎は勇刀に集中していた

 

「それじゃぁせっかく学長もいるし、合図は学長にお願いします」

「解ったわ、では双方構え!写シ!……始め!」

「せぇええええええええい!!!!」

 

 

 

 

 

 

「しかし、さっきの美炎には驚いた、確かに可奈美が興味を持つはずだ」

日も暮れて空に無数の星が輝いている夜空の下、学院のグラウンドを勇刀は一定のスピードで走っていた

 

脳裏に過るのは昼間の美炎との打ち合いの記憶だった

その時の美炎からは普段とは全く別の何かが感じられた

 

「あれが本人の言う【集中している状態】なら、あれを自在に使いこなせれば一気に化けるぞ…ん?あれは……」

勇刀がふと寮の方を見ると屋上に誰かが居るのが見えた

 

 

「ふっ!ふっ!ふっ!」

 

寮の屋上では美炎が独り自身の御刀《加州清光》を振っていた

美炎の顔からは御刀を振る度汗が飛び、その量がどれだけの数を振ったかを言わずとも示していた

 

(私はまだまだ強くなれる!強くなって沢山の人を荒魂から護るんだ!その為にはもっともっと努力しなきゃ!!)

「お…」

「ふっ!ふっ!ふっ!」

「…いっ!」

「ふっ!ふっ!ふっ!」

「お………の!」

「ふっ!ふっ!ふっ!」

「安桜美炎!!」

「わひゃいっ!?えっ?勇刀さん?」

「やっと気付いたか」

 

美炎はいきなり現れた勇刀に驚き尻餅をついていた

 

「お前何時から振ってんだ?」

「えっ?えぇ~っとご飯食べ終わって直ぐからだったので……2時間くらい?」

「はぁ~~お前はホントに自制って言葉を知らないのか、今日はもう終わりにして休め、これ以上はオーバーワークだ」

「でもっ!もっと強くなって荒魂から沢山の人を護れるようにならないと!」

「その意気や良し、でもそれでお前が身体を壊したら意味無いだろ?他人の事と同じ位にちゃんと自分の事も大切にしてあげなきゃ駄目だろ?」

「わたしっわたしっ!」

 

勇刀の優しい言葉に美炎は涙を流し俯いていた

 

「何で泣いてんだよ、まったくこれじゃぁ妹が一人増えた見たいだ」

 

勇刀は泣いている美炎を優しく抱きしめて髪を梳く様に優しく撫でると

疲れていたのか美炎は眠ってしまった。

仕方なく勇刀は美炎を背負って寮へと戻る

しかし一つ問題があった

 

「俺、美炎の寮部屋知らねぇ」

 

そう、勇刀は美炎の部屋を知らなかった

その部屋の住人は

 

「勇刀おにいちゃぁん……」

 

と勇刀の背中で寝息を立てていた

この後運よく舞衣ちゃんに会い、美炎の部屋まで案内してもらい事無きを得た

そして勇刀も宛がわれた部屋へ戻り眠りに着いた

 

翌日の稽古をより充実した物にする為に

 




とじとものキャラクターも出てきたりしましたね。
案外とじともから出てくるキャラクターも思ったほど多くなかったので驚きました。

ではまた次回お会いしましょう。
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