刀使ノ兄弟   作:腰痛持ち

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    沈み行く意識の中で
     
       誰かが悪態をつき

          誰かが嗤っていた


22話 折れる刃と失意の雛鳥

 

 

「……………」

 

奈良市内でも最大級の規模を誇る大病院の集中治療室

そこには無数の医療機器に繋がれた勇刀がベッドで眠っていた

 

壁の一面がガラス張りになっており外から中の様子を見ている少女が一人

勇刀の妹、衛藤可奈美

彼女の顔からは何時もの明るい笑顔は消え去り、瞳に光はなくただ勇刀を見つめているだけだった

 

「衛藤さん、ちゃん休まないと倒れちゃいますよ?今は少しでも休んでください」

「ありがとう清香ちゃん、でも私が寝てる間にお兄ちゃんが居なくなっちゃいそうで、怖いの怖くて怖くて堪らないのっ…お兄ちゃんが居なくなっちゃったら私っわたし!」

「衛藤さん……」

 

清香は可奈美にかける言葉が見つからず、押し黙ってしまった

自身に兄はいないが、可奈美の言葉からは勇刀がどれ程大切な存在かが痛いほど伝わってきた、可奈美をこのまま放っておく事は出来ないが自分に出来ることが解らずにただ、その場に立っていることしか出来なかった

 

すると、自分達の方へ駆け寄ってくる多くの足音が聞こえた

 

「勇刀さん!!可奈美ちゃん!!」

「勇刀君!!」

 

その足音の正体は六刃将と舞衣、沙耶香、薫、エレン、智恵、美炎、呼吹だった

「舞、衣ちゃん…」

「ほのちゃん、皆さん」

 

「可奈美ちゃん大丈夫!?勇刀さん…は……そんな」

「おい…嘘だろ、何かの冗談だよな!?勇刀!」

「薫落ち着いてくだサい!」

「勇刀お兄ちゃん!」

「勇刀っ……」

 

「おい、和人のヤローはどうした!」

「ヒッ!十条さんのお兄さんなら妹さんを探しに行ってますっ」

「ちょっと益子君!清香ちゃんを怯えさせないであげて!」

 

到着するなり各々が勇刀の状態に驚愕し混乱していた

それは今まで常に自分達の先頭に立って戦っていた勇刀からは想像出来ない姿だったからだ

そこへ和人が戻ってきた

 

 

「皆、来ていたのか」

「っ!十条さんは見つかりましたか!?」

「あぁ、土砂降りの中素振りをしていた、今は風呂に入れて休ませている」

「おい和人!!テメー勇刀と一緒に戦ってたんだろ!それでなんで勇刀だけがあんな重症なんだよ!!!テメーは一体何してたんだよ!!!!」

「俺は……」

「勇仁君!!落ち着いて!!」

「これが落ち着けるか!あの勇刀が!あんな一方的にやられたんだぞ!誰かが馬鹿見てねぇなヘマしなきゃ!こんな事になるはずねぇだろ!!」

「勇仁」

「あぁ!?」

「黙れ」

「っ!!」

 

意外にも勇仁を抑えたのは尊だった

普段の温和な雰囲気からは考えられない程に鋭い目付きと殺気を勇仁に当てていた

その場にいた勇仁以外のメンバーも押し黙った

 

「和人君、辛いでしょうけど詳しく話してください。」

「…あぁ、奴が現れたのは昨日の昼過ぎだった」

 

 

遡ること一日

その日は平城学館での出張稽古二日目が始まっていた

道場では前日に引き続きストレッチ後の素振りから始まっていた

勇刀は昨日と同様に素振りを一人一人チェックしながらアドバイスをしていた

和人も勇刀の補助として水分補給の為のドリンク作りなどのサポートをしていた

 

「和人君聞いてよ!お兄ちゃんてば平城の子達とばっかり立ち会って私の事はほったらかしなんだよ!酷くない!?」

「お前は何の為に来たんだ」

「お兄ちゃんと一緒に居たいからだよ?」

「勇刀の指導補助だ……はぁ、苦労人だな勇刀も」

「ん?和人君何か言った?」

「何でもない……」

 

これまで勇刀が出張稽古をしてきた所では最後の〆に可奈美が出張先の刀使との立ち会い稽古の相手をして、勇刀が端からみて指摘をする内容の稽古もあったが平城ではまだ行われておらず可奈美は暇を持て余していた

 

その時、校内アナウンスが荒魂の大量発生を知らせた

そしてアナウンスで召集された勇刀と和人は学長室に急いだ

 

「現状を簡潔に説明します。現在奈良県北部の山間に強大な荒魂の反応とそれに付随する多数の荒魂の反応を感知しました。」

「この規模、尋常じゃありませんね。まさか関東以外でこんな反応が出るとは」

「あぁ、しかも帯同している荒魂の数も相当だ」

「まず衛藤君と十条君には前線に出て強い反応の荒魂を頼みます。タギツヒメ程では無いにしても大荒魂クラスや現状二人にしか頼める子が居ないんが正直な所や」

「了解です。なら俺と和人と可奈美に姫和ちゃんでそこに向かいます。」

「これがベストだろう、未知数の敵でもこの編成ならなんとかなるだろう」

「ならそれ以外の刀使科の子達はいつも通りの編成で取り巻きに対応させます。現在移動こそしていないものの、いつ動き出すか」

「了解です。可及的速やかに処理します。」

 

勇刀はデータを受け取り部屋を出た

そのまま可奈美と姫和に声をかけ準備をさせ、出動する刀使全員を集めた

 

「急な出動になっちゃったけど、昨日と今日やったことと今まで積み重ねてきたものが皆を助けてくれる、ここにいる仲間とこの状況を覆して全員無事に帰ってこよう!!」

 

「「「「「「「はいっ!!!!!」」」」」

 

それぞれ、部隊編成毎に輸送車に乗り込み出発した

車の中は緊張感が漂っていた

しかし勇刀がいる車は少し違っていた

 

「皆には仲間を意識させたけど、俺達はそうはいかないぞ。必要ならこっちを取り巻きに割かなきゃいけなくなる」

「あぁ、臨機応変に対応しなければな」

「そうですね。全力で挑みます!」

「どんな荒魂だってお兄ちゃんと私達なら勝てるよ!」

「可奈美、何時もの荒魂討伐とは規模が違うんだ不測の事態も想定しておかないと犠牲が出てからじゃ遅いんだ、楽観を捨ててもう一回気を引き締めろ」

「…はい」

「良い子だ」

 

勇刀は和人と有り得るであろう可能性について話していたが、可奈美は初めての兄との実戦と言うことで浮き足立っていた所を勇刀が注意をして作戦に目を向けさせた

聞き分けの良い可奈美の頭を撫でて作戦に集中していく

 

そして現場に到着し展開を終えた

 

「展開中の全刀使!特祭隊員に告ぐ!作戦開始!!!!」

「行くぞ!可奈美!」

「うん!頑張ろう姫和ちゃん!!」

 

荒魂を囲むように展開していた刀使達が一斉に目標に動き出した

 

「衛藤隊長達に道を開けろ!」

「全力を尽くせ!」

 

勇刀達は出来た道を全力で駆け抜けていく

そして遂に元凶との邂逅を果たす

 

「こいつが親玉か…」

「大きい」

 

4人の前に現れたのは両腕が鋭い刃の様な爪を持った巨大な人形の荒魂だった

 

 中々ニ骨ノアリソウナ人間ダナ、コイツハ楽シメソウダ

 

「荒魂が喋った!?」

「タギツヒメと同じタイプか、油断できんぞ」

 

 タギツヒメカ懐カシイ名ヲ聞イタ、刀使共ヨク来タナ、楽シモウゾ

 

「話が早くて助かるわ、行くぞ!」

 

勇刀が先頭を切って斬りかかるが外皮が予想以上に堅く、刃が通らなかった

この事に多少の衝撃を受けつつも冷静に分析をしていく

 

和人の御刀はここじゃ解放させられない、となると直接切り落としていくしかないがこの硬度だ根比べになるな、勇仁が居れば少しは楽になるんだろうが無い物ねだりか

 

 ドウシタ?始マッテ早々ニ考エ事カ?随分ト余裕ダナァ刀使!!!!

 

「ぐぉっ!!」

 

 サァ!モット私ヲ楽シマセロ!!コレデハマダマダ足リンゾ!!!!

 

「させるか!」

 遅イ!!

「チッ!姫和!!可奈美!!」

「はぁっ!!」

「せいっ!!」

 

御刀を受け止め、そのまま振り払い勇刀を吹き飛ばすと追撃を加えるが

それを和人が遮ろうとするが片方の腕で牽制される

しかし、両腕が塞がった状態で姫和の突きと可奈美の横薙ぎによる挟撃が、荒魂の頭部を捉えたかに見えた

 

 ソノ程度デハ俺ノ身体ニハ傷ヒトツツケラレンゾ!!刀使共!!!!!

 

「そんな馬鹿な!」

「これでも刃が通らないなんて!」

 

 ハルカ昔ノ刀使共ノ方ガ良イ太刀筋ダッタゾ

 

「くっ!今度こそ貫いてやる!」

「よせ姫和!挑発に乗るな、冷静になれ」

 

二人の斬撃は完全に受け止められていた、渾身の一太刀が通じず二人の表情を見て嘲笑うかのように煽る

 

「ならこいつはどうだ!!飛天御剣流!龍槌閃!!」

 

 ムッ!コノ技ハ!!

 

「勇刀!」

「勇刀さん!!」

「お兄ちゃん!」

 

 チィッ!!!

 

二人を煽る一瞬の隙を突いて空高く飛び上がった勇刀は自由落下の速度を利用し荒魂に振り下ろしを叩きつけた、荒魂は片腕で防御するが御刀の刃が深々と切り込みを作っていた

腕を押し出し勇刀を振り払うと勇刀を見つめて目を細めた

 

 ソノ技、飛天御剣流継承者カ、マサカ当世デモ拝メルトハナ、緋村ハ息災カ?

 

「あぁ?確かに俺の師匠の名前だが確実にお前の知ってる人間じゃないぞ」

 

 ソウカ、左頬ニ俺ガツケタ十字傷ガアル緋色の髪の優男ナンダガナァ、流石ニ死ンダカ

 

「おいおい、なんの冗談だそりゃ、師匠の人相とドンピシャじゃねぇか!おい荒魂!その人の口調はござる口調だったりしねぇよな!」

 

 ン?タシカニ当時デモ珍シイ口癖ダッタガ、マサカ貴様ノ師匠ガアノ抜刀斎!緋村剣心ソノ人ダッタトハナ!!コレハ傑作ダ!ナラバ手ヲ抜イテハ緋村ニモ申シ訳ナイナ!

ココカラハ全霊デ相手ヲシテヤル!

オォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!

 

荒魂の雄叫びは雲を呼び雨を降らせた

そして周囲からノロが地表に吹き出し目の前の大荒魂に集まっていく

もとから巨大だった身体はさらに巨大化し巨躯の大鬼となった

 

「何でこんな大荒魂が、今までスぺクトラムファインダーに引っ掛からなかったんだ……」

 

 俺ハ今マデ封印サレテイタノダカラ当然ダナ!アノ緋村剣心デサエ俺ヲ倒シキレズニ折神家ト共ニ封印スル他ナカッタノダカラナ、ヤツノ頬ノ傷モソノ時ニツケタ物ダ

 

「勇刀!雨が降りだした今なら流刃若火も使える!!ここで倒しきるぞ!!!!」

「…………」

「勇刀!!!!」

 

和人の本能がここでコイツを斬らなければいけないと警鐘を最大で鳴らしていた

そして雨が降りだした今の状況なら刀剣解放を行っても被害もある程度押さえられると判断し、勇刀に進言するが肝心の勇刀は大荒魂を見上げて呆然としていたが和人の声でハッと気を戻した

 

「っ!…和人」

「呆けている場合か!!ここでコイツを叩かなければどれだけの被害が出るか解らない…ぞ…」

「総員撤退!!!!殿は俺が務める!展開中の部隊も即時撤退!討ち漏らしがあっても構うな!!この部隊の指揮権は和人に任せる!」

「正気か勇刀!!おい!!!」

「お兄ちゃん!」

「勇刀さん!!」

 

 一騎討チカ!イイゾ!ノッタ!

 

勇刀は和人達に撤退命令を出し、大荒魂を山奥へ誘引していった

そして突然の撤退命令に困惑した和人だったが、取り巻きの荒魂はほぼ討伐が完了していたため、他の部隊には山の麓までの撤退命令を出し待機させた

 

「兄さん!このままでは勇刀さんが危険です!いくら勇刀さんでも、あの荒魂には一人ではとても!…兄さん?」

「勇刀のあんな表情は初めて見た、あの荒魂に心の底から恐怖している顔だった、体も震えていた、勝てないとはっきり自覚しているんだあの大荒魂に」

「お兄ちゃんが………っ!」

「可奈美!!」

「衛藤!!クソっ!アイツが素直にこんな指示に従うわけが無いだろう!」

 

可奈美は和人の話を聞いて不安な表情で勇刀が向かった方へ駆け出し姫和も後を追った

和人も救護班の要請と観測の強化そして消火班の準備を指揮所に要請し二人を追った

 

「おぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

 遅イワ!!

「グッ!…はぁはぁはぁ!」

 

 コノ程度カ、奴ノ弟子ト言ウカラドレ程カト期待シタガ、足元ニモ及バン塵屑トハナ

 ダガ俺ニ勝テヌト悟ッテ部下ヲ下ガラセタ判断ハ誉メテヤロウ

 

勇刀の写シは既に剥がれ、再度張り直す事も出来ず生身で戦っていた

体には多くの切り傷があり息も絶え絶えで、御刀を杖代わりにしてやっと立っていた

 

「うるせぇな…こんな所でアイツ等を死なせるわけには、行かねぇんだよ」

 

 ソウカ、自ラハ捨テ石カ、見上ゲタ覚悟ダ、ソノ覚悟ニ免ジテ苦シマヌヨウニ終ワラセテヤル

あぁ、こんな所で終わりか…ゴメンな可奈美、お前が幸せになるまでそばに居てやれなくて、母さんゴメン、俺約束護れなかった…

 サラバダ!

 

その瞬間、山その物を揺らすような地響きが襲った、その衝撃の中心部分は抉れてクレーターのようになっていた

 

あれ?なんだか柔らかくて、温かい何かに包まれてる様な、これがあの世か…あぁ天国でも雨は降るんだな

 

「いちゃん!…お兄ちゃん!起きてよ!!目を開けて!お兄ちゃん!!」

「っ!可奈美!お前何してんだ!!早く逃げろ!死にたいのか!!」

「嫌だ!お兄ちゃんを見捨てて私だけ生き残る位なら私も一緒に死ぬ!!!!独りぼっちは嫌だ!!!!」

 

 小僧ノ覚悟ヲ無駄ニシテ死ニニ来ルトハ愚カナ、シカシ中々ドウシテ、逃ゲノ兄トハ違イ気骨ノアル小娘ヨ!

 

「うるさい!お兄ちゃんはお前なんかに絶対負けない!!!」

 

 ソウカ、ナラバ兄妹モロトモ死ヌガイイ!

 

「可奈美!!!!!」

「お兄ちゃん!?」

 

 甘イワ!ソノ程度デ、コノ爪ヲ防グコト能ワズ!!

 

二人を串刺しにしようとする爪の線上から可奈美を自分の後ろに引っ張り御刀の腹で突きを受け止めた

 

「なっ!?ガハっ!くそっ…たれ… 」

「…お兄…ちゃん?」

 

 貴様マサカ…ソウイウコトカ、貴様ガ器カ

 

可奈美を庇い突きを受け止めた御刀を爪が貫き、更に勇刀を貫いた

そして爪を引き抜かれ、勇刀が倒れ血だまりが広がって行く

勇刀は霞んでゆく視界で最後に見たのは涙を流している可奈美の顔だった

 

 チッ情けねぇな…

 

「万象一切灰燼と成せ!!!!流刃若火!!!!!」

 グォオオオオッ!!!小癪な!!

「姫和!!二人を回収して後方に下がれ!!」

 

突如荒魂の周囲を燃え盛る炎が包み込み、荒魂との間に炎の壁ができた

 

「はいっ!可奈美っしっかりしろ!可奈美!!」

「…………」

「勇刀さんを死なせたいのか!!!!!」

「っ!やだっ嫌だ!!死んでほしくない!!」

「なら気をしっかり持て!!兄さんが時間を稼いでくれている内に救護班の所へ行くぞ!」

 

姫和は茫然自失となっている可奈美を心にもない言葉で無理やり立ち上がらせる

 

「城郭炎上!走れ!!」

 

 小癪ナ、シカシコレデ終イトイウニハ惜シイ、刀使共!一月ノ後マタ会オウ!

 ソレマデニ腕ヲ磨キ!刃ヲ研イデオケ!

 

和人が大荒魂を燃え盛る炎の壁で包み込み行動を制限させたと同時に可奈美と姫和で勇刀を抱えて、麓まで一気に駆け抜ける

結局大荒魂が追いかけてくることは無かったが、3人の心が休まることはなかった

 

そして麓にて待機していた、特祭隊員が見たものは自らの足で立つことすら出来ず、二人の少女に抱えられた、血塗れの勇刀の姿だった

 

その光景をみた平城の刀使達は一様に口を揃えた

「現実の光景だとは思えなかった」と

そしてこの報は平城学館から一斉に折神家や伍箇伝へと伝わり、世間へと報じられた

 鎌倉危険廃棄物漏出問題後の東京防衛戦に始まり、その後の混乱を終息に向かわせた功労者の負傷、そして戦線離脱の報せは、刀使達は勿論一般市民の不安を煽るにはこれ以上無い出来事だった

 

今回4人が交戦した大荒魂の詳細は秘匿され、

和人から報告を受けた平城学館学長、五條いろはは折神家に緊急対策本部の設立を打診し、折神朱音が承認し補充要員として

折神家からは勇刀以外の六刃将の5人

美濃関学院からは柳瀬舞衣、安桜美炎

鎌府女学院からは糸見沙耶香、七之里呼吹、潘つぐみ

長船女学園からは益子薫、古波蔵エレン、瀬戸内智恵

遅れて綾小路武芸学舎からは木寅ミルヤ、山城由依

が各校から選抜され派遣された

 

たった一人の抜けた穴を補う為に手練れの刀使が15名も増援として送られた事に各学長の危機感が伺えた

 

「これがあの時に起きたことだ……」

「和人君、話してくれてありがとうございました。君が最後まで冷静で居てくれたお陰で勇刀君は一命をとりとめる事が出来たんです。君は何も間違ってなどいません。」

「それでもっ俺にもっと力があればっ……」

「和人君そんなに思い詰めちゃ駄目よ、その大荒魂と対峙した全員が誰一人欠けること無く居るのは貴方のお陰なのよ」

「あぁ、オレもお前はよくやったと思うぞ、誰一人死なせずに生きて帰って来たんだからな、それに勇刀はこの程度で死ぬ程柔じゃない」

 

薫の言葉にその場に居た全員が頷き、眠り続ける勇刀を見る

その瞳には勇刀への信頼と確たる決意が宿っていた

唐突に今まで沈黙を保っていた呼吹が和人に確認した

 

「それで?その大荒魂ちゃんは一月後に動き出すって言ってたんだよな?」

「あぁ、そうだ」

「呼吹さんまさか」

「あぁ?勇刀の代わりにアタシ達がその大荒魂ちゃんをブッタ斬るんだよ!その為にここに派遣されたんだろーが!やることやってたら一月なんてあっという間だぜ!」

「私もふっきーに賛成!!もっともっと強くならなきゃ!勇刀さんが起きたときに強くなった私達を見せつけて驚かせよう!」

「私も…美炎に賛成、勇刀に頼ってもらえる様になる」

「沙耶香ちゃん…」

 

「おい、どうすんだよ副隊長、あいつ等はやる気みてぇだぞ」

「僕らもやりますよ。御刀の力を各々高めなければいけませんから、早く行きますよ。純粋な物理攻撃なら君が一番なんですから」

「今度はぼくもがんばるから!和人兄ちゃんが燃やしても僕が凍らせて消してあげるからね!!」

「あぁ…頼んだぞ海翔」

「ほらほら!勇仁君早く行くよ!!」

「わかったから押すなよ!」

 

「勇刀君…待っていますよ」

 

全員が一斉に稽古場に向かったが、尊はその場に残り勇刀に言葉をかけてその場を後にした

しかし可奈美はその場に残り勇刀を見つめていた

その顔は暗く沈んでいた

 

 

 





 「まさか勇刀君がやられるなんて」

「刀使達の士気低下は避けられないか」

   「本当ですか!?すぐに手配します!」

  「私だけじゃなくて、ここにいる全員が知っている人よ」

「「「「「「「はぁ!?!?!?!?!?!?!?」」」」」」


      「ハッ!まさか、テメーからそんな言葉が聞けるとはな!今更何言ってやがる」


「てめぇ相手じゃ、これでも足りねぇよ!」


 「誰だ!病院で派手に暴れてるのは!」

「ねぇ、なんで無視するの!?ちゃんと答えてよ!」

       「はいはーい!待ってましたよー!」

  
   「邪魔しないで!!」


次回
  『離別と再会』
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