ドウモオヒサシブリデス
ヨウツウモチデス
オマタセシテゴメンナサイ
マダガンバッテイキマスノデヨロシクオネガイシマス!!!
浦原商店地下勉強部屋
「ほらほら~!どんどん動きが鈍って来てますよ~!集中しないとホントに殺しちゃいますよ~!」
「くっ!このっ!!」
「おっと!」
浦原は攻撃直後の一瞬の隙きを突いた反撃を身を翻して回避すると勇刀と間合いを空けた
今日も今日とて修行と称した死合いが繰り広げれている
しかし何の成果も得られないまま、時間だけが過ぎていた、スクナが再び動き出すまで猶予は無くなっていた
「ん~、それにしてもまったくと言っていいほどなんの進歩も成果も出ないっすねぇ」
「はぁはぁ!くそっ!時間がねえってのに!」
「しかし大したものだ、貴方と同じ歳の子はもうとっくに音を上げてますよ。まさしく鋼の精神力、不屈の心ってヤツっすね」
「…俺は俺がやるべきことをやってきただけだ、そんな大層もんじゃねーよ」
「つくづくその歳には見合わない力をお持ちだ…色々合点がいきましたよ。」
そう言うと浦原は懐から手袋を取り出した
「浦原さん、その手袋は?」
「今のままでは埒があきませんから手法を変えます。ここからは勇刀サン次第ですから頑張ってくださいね〜」
「えっ?それってどう…い……」
浦原が手袋をはめた手を勇刀の目の前にに翳すと勇刀は意識を失い倒れてしまった。
「なるはやでお願いしますよ…」
勇刀の意識は暗い海のようなところに沈んでいた、そして気が付くといつかの平原へとやってきていた
空は相変わらず紅く浮かぶ雲も黒く、踏みしめる大地は枯れた木々が点在する殺伐とした、あの平原だった
しかしいつもと違うのは既に目の前に黒ずくめの男が立っていた
「勇刀、お前にとって恐怖とはなんだ?」
「は?」
「恐怖とは敵ではない、恐怖とは戦いの中で無くてはならない物だ、勇刀、恐怖を捨てるな、恐怖を恐れるな、恐怖を恥じるな」
「…なんだよそれ、久し振りに会ったと思ったらそんなことかよ…俺は母さんと約束したんだ、妹を…可奈美を護るって!だから俺は恐怖を棄てたんだ!強くなるために!可奈美を護るために!それを今頃になって!!!!」
「なぜ憤る、奴と対峙した時お前は感じた筈だ、脚が竦み、身体が強張り、心が凍てつくような恐怖を、それはお前が恐怖を捨てきれていなかったことの確たる証明だ。」
男は憤る勇刀に諭すように語りかける
しかし一方で勇刀は鎮まるどころか益々苛烈さを増していった。
「違う!俺は!俺は!!!!」
勇刀はいつの間にか右手に握っていた御刀を男に向けて振るうが、御刀は男の手の甲に当たっただけで砕け散った
「っ!?」
「何故お前の刃がこれ程までに脆いか、わかるか?」
「………」
「それは何も詰まっていないからだ、信念も覚悟も感情も…ただ刀の外見を模しているだけの鈍だ」
「っ!!!ふざけるなぁあああああああああああああああ!!!!!!!」
勇刀は、怒りに任せて御刀を振るう
その度に刃は砕けたが、次に振るうときには元通りになっていた
しかし、それでも男は引くこともなく、臆する事も無く自身へ振るわれる刃を受け止め、砕き続けた
勇刀の叫びと空を切る音が、殺風景な丘に響いた
平城学館道場
稽古中の休憩時間に可奈美は道場の外壁に寄りかかって座り、ドリンクをラッパ飲みしていた
「ぷはぁーーー!生き返る~~~~~」
「可奈美、行儀が悪いぞ」
「えぇ~~良いじゃん!姫和ちゃんもやってみなよ気持ち良いよ!」
「遠慮しておく」
「そっか……」
会話が途切れた二人の間を沈黙が支配する
両者とも会話をするでもなく
目線を合わせるでもなく
ただお互いに思い思いの場所を見ていた
「可奈美」
「ん?なーに?」
「もう大丈夫なのか?」
「……正直、まだ辛いよ」
「………」
「でも、もう俯かないって決めたから…今度は私がお兄ちゃんを護る」
この言葉を聞いて姫和は微笑みながら
お前らしいなと呟くが吹き抜けた風がその声を掻き消していった
姫和は立ち上がり道場へ戻っていく
「え?姫和ちゃん何か言った?」
「大したことじゃないさ、戻ったら私と立ち合ってもらうぞ」
「本当に!じゃぁ早く戻ろう!早く早く!!」
彼女の言葉を聞くや否や可奈美は目を輝かせて姫和の背中を押して道場へと戻って行った
道場からは少年少女達の活気ある声が響いていた
決戦の日は確実に近づいていたが、その事を知る者はまだ居なかった
男は地に倒れ伏す勇刀を見つめて、言葉を投げかける
既に勇刀は死に体で生きているのか怪しいほどだった
それでも男は勇刀に語りかける、彼を信じて、必ず立ち上がると
「勇刀よ、お前は知らねばならない、幼き日から常勝無敗、最強を誇ったが故に師の他に知る事が無かった敗北という物を命のやり取りにつき纏う恐怖という物をお前は、知るべき時が来たのだ」
彼は動かない、しかしそれでも男は続けた
「これから先お前が乗り越えるべき壁は更に高く、今以上に厚く硬い強固な岩壁だ、猶予は無いぞ」
人は弱いからこそ、強くあろうと志し歩みを進める
時に挫け倒れる、しかしまた立ち上がり前を向き歩み始める
これを繰り返していく内に人は強く逞しくなっていく
誰もがそうであるように
彼も…衛藤勇刀もまた、この歩みの
だが、必ずや勇刀はこの道を踏破するといことを男は無意識のうちに確信していた、
そして男は逞しく強くなった勇刀の背中を夢想した、力強くなった彼が自分をその手に携え戦う姿を
次回「胸の内」