「ここは…どこだ」
勇刀が目を覚ましたのは正に異様と言う他ない場所だった
空は血の様に赤く染まり流れる雲は何よりも黒い、大地も黒く染まり足踏みをすると脆い炭を踏み砕いたような乾いた音がした
暫く歩くと目の前に枯れた木が疎らに生えている小高い丘の様な場所にたどり着いた
「………」
勇刀は引き寄せられるような何かを感じてその丘を登って行く、そして頂上に近づくにつれて今まで静かだった心がざわめき立っている事に気付いた、そしてそのざわめきが丘を登れば登るほど強くなることにも、そして頂上に着いた時、勇刀の目の前には地面から自分の身長と同じ位の高さまで吹き出ている靄の様な物があった
「なんだ…これ、っ!?」
勇刀が靄に触れると意識は暗転し視界は黒く塗りつぶされた
「んっ……あれ?ここは」
「起きましたか?」
「尊?……っ!?マジで何処だ此処!!」
勇刀が目を覚まして最初に見たのは尊の顔だった、尊は目を覚ました勇刀を見てほっと息をついた、勇刀は眠っていたベッドから飛び起き周囲を見渡すと石牢の様な所に閉じ込められていた
「おい、アンタの連れ漸く起きたか?」
「えぇ、今目が覚めた所ですよ、勇仁君」
「呑気なもんだこんな状況で」
「ちょっと勇仁君!言い過ぎだって!」
すると他の牢屋からも声が聞こえて来た
「なぁ尊、俺達以外にもいるのか?」
「えぇ、僕等の他にあと4人は居るようです。今声をかけてきてくれたのが益子勇仁君と古波蔵綾人君です。軽く情報交換はしてありますが全員突如として現れた荒魂にのみ込まれて気づいたら此処に居たそうです。」
「俺達と全く同じだな、違うのは場所ぐらいか」
「そうですね……」
話している最中牢屋の錠が突如外れる音が響いた
二人は顔を見合わせそっと檻の外にでる
「どういう事だ、勝手に鍵が開くなんて」
「考えても仕方ありません。他のみんなも出てきたみたいですよ」
「何だってんだ、ホントによ!」
「はぁ、勇仁少しは落ち着きなよ」
「…………」
「…………」
「さてと、まず自己紹介でもするか」
「こんな時にどういう神経してんだ?」
「こういう時だからこそだと思いますよ。何も知らないよりは名前だけでも知っておいた方が良い」
「つーわけで俺は衛藤
「僕は柳瀬
「ちっ年上かよ、益子
「はぁ~、僕は古波蔵
「十条
「糸見
「まぁこの先どうなるかわかんねぇけど取り敢えず宜しくな」
全員の自己紹介が終わると勇刀は満足げに微笑むと外へ続くであろう扉がひとりでに開いた
「行くしかないよな?」
「それしかないでしょう、確実に罠でしょうが」
「ならとっとと行こうぜ、こんな辛気臭ぇ所に長居なんざしたくねぇ」
「それに関しては勇仁君に賛成かな、ここ嫌な感じだし」
「俺も異論は無い」
「僕も早くお家に帰ってゲームしたい」
全員の意思を確認し6人はすぐさま行動を開始した
牢屋を出て通路に出るとそこからは一本道だった
「なんか進めば進むほど嫌な感じが強くなってるって感じるのは俺だけ?」
「僕も同じですよ衛藤先輩、あの扉の向こうからビシバシ感じます」
「先輩なんて堅苦しいの無しにしようぜ」
勇刀は目の前にある扉を開いた、その先に見えたのはひらけた空間だったそしてその中央に人影があった
「随分と遅かったな」
聞こえた声は女性の声だった、その一声でその場に居た全員が身構える
「なんだ、ただの女の声がスゲー圧じゃねぇかっ」
「ただ者じゃない、何者だっ!」
「あれはっ!折神…紫っ」
「折神紫!?なんでそんな人がこんな所に!?」
「アンタが俺達をここに連れて来たのか?」
「あぁそうだ、お前達は選ばれたからな」
折神紫は仁王立ちのまま言葉を紡いでいた、
「けっ!折神家の御当主様が人攫いなんざ、趣味悪いなっ!!」
「待て勇仁!」
「ぐえっ何しやがんだ!!」
勇刀は紫に突っ込もうとした勇仁の襟を掴んで止める
「馬鹿かお前!闇雲に突っ込んでどうするつもりだ!」
「一発ぶん殴る!」
「勇仁君ってホント昔から脳筋だよねぇ」
「殴るにしてもまず状況を良く見ろ、それに今の俺達の目的はここから脱出する事だろう本来の目的を忘れるな」
「ちっ!だけどどうすんだよ実際!アイツを越えなきゃここから出られねぇだろうが!!」
「その出口が見つかってねぇのに突っ込んでどうすんだよ!」
「おそらく出口は反対側の扉しかないようですね」
「さてと、取り敢えず俺が行くからどうにかこうにかして扉まで走れ」
「はぁっ!?テメェ!他人には行くなって言っといて自分は行くのかよ!?」
「お前よりかは戦えるからな、尊他の奴等の事頼んだ」
「了解です。」
「ほぉ私に一人で挑んでくるか」
「あぁ、時間稼ぎ位なら十分だからな…行くぞ!!」
「……っ!?」
「はい?」
勇刀は脚に力を込めて駆けだしたと思った次の瞬間には折神紫の前にいたそして構えていた拳をそのまま振り抜いた時咄嗟に受け止めた折神紫ごと殴り飛ばし天井と地表の中間地点に飛んで行った
その光景に勇刀を含んだ6人は茫然として開いた口が塞がっていなかった
「っ!ぼけっとしてる場合じゃねぇ!早く行くぞ!!」
「そうですねっ皆行きますよ!」
走りながら折神紫の飛ばされた方をみると動き出す気配は無かった
「死んでませんよね?あれ」
「折神家の当主を殴り飛ばすとは、衛藤さん貴方は一体」
「俺が知りたいよそんなの!そもそもあの一連の動作で一番混乱してんの俺だから!走って近づこうとして駆けだしたら目の前に瞬間移動っぽいのしてるし!構えてた拳振り抜いたらあんなにぶっ飛んでくし!」
和人の言葉に半ば投げやりになって答える
「お兄ちゃん凄いね!!どうやったの!?」
「普通に走ろうとしたらあぁなった」
「ホント!?じゃぁ僕もやってみるね!えいっ!!」
「おい!まっ!」
「へぶっ!」
海翔は脚に力を込めて飛び出すと加減を間違えたのか反対側の壁に激突した
「良く解りもしない力をいきなり使うなって」
「うぇ~~、でも痛くない!」
「遊んでいる余裕は無いと思うが……」
「そうですね、早く行きましょう」
扉を開くと階段が続いており登りきるとまた前と同じ様な空間に出た
「今度は誰も居ない様ですね」
「なら走るが吉だな!」
そいて中央部分に差し掛かった時
「待って!何か来ます!」
「何が!?どこから!?」
「恐らく正面、何かは出てきてみないと…」
尊が何かを感じ取り走るのを止めると目の前の地面から荒魂が現れた
「こんな所に荒魂だと!?どうなってやがる!」
「しかも6体も…なんでこんな」
「早く突破しなければいつ折神紫が追ってくるか解らないぞ」
「心配するな私ならもう追いついた」
「「「「「「!?」」」」」」
「前門の荒魂、後門の折神紫、絶体絶命、八方塞がりってやつか」
「安心しろ、私にはお前達を殺す気は無いお前達は希少な存在だ」
「何だと?」
「最初に行ったはずだお前達は選ばれたのだと、余興もこれまでにしよう」
折神紫が指を鳴らすと荒魂が変身し勇刀達を連れ去った荒魂になった
「こいつ等あの時の!」
「全員散らばれ!固まってると一網打尽だ!各々隙を見て出口を目指せ!!」
「ほぉ……」
「どういうわけか知らんが俺と海翔ので力の使い方はざっくり聞いたろ!ぶっつけ本番だが今すぐ慣れろ!!」
「「「「無茶苦茶言うな!!」」」」
さて見せてもらおうかお前達の力を
益子 勇仁
「ちっくしょうが!!やってやるよ!!!!化け物どもが!!かかってこいやぁ!!」
「いや逃げなよ勇仁君!!」
勇仁は拳を振りかぶり荒魂に突撃して行った
古波蔵綾人
「って!他人の心配してる場合じゃない!僕も逃げ切らないと!」
必死に逃げ回るが振りきることが出来ずに追い込まれる
「くっ!このまま何もできずに捕まるのってなんか情けないよね男として…だったら!一発ぶん殴る!!」
糸見 海翔
「わ~~い!鬼さんこちら!!」
海人は力の使い方のコツを掴んだのか鬼ごっこ感覚で素早く逃げ回っている
「あははは!!こっちこっち!えいっ!!」
そして逃げては殴る逃げては殴るを繰り返していた
十条和人
「ちっ!こんな所で捕まるわけにはいかないんだ、待っていろ姫和っ!」
和人は迫りくる荒魂に正面から挑み殴り飛ばす
「おぉおおおおおおおおおおお!!!!!」
柳瀬 尊
「皆散らばってしまいましたか、しかし勇刀君の咄嗟の判断力には驚きました。指揮能力もあるなんて、っ!なんでこんな力が僕達に!折神紫は何か知っていそうな口ぶりでしたが」
「おぉーい!尊!余計なこと考えてないで逃げる事に集中しろ!」
「解ってますよ!あぁもう!しつこい!!」
思考しながら的確にルートを見つけて移動する尊ではあるが考えばかりが先に立ち時折追い詰められる場面があったが他の4人に倣って殴り飛ばした
「全員なんとかやれてるみたいだな、一部からは積極的に殴りに行く音が聞こえるが捕まらなければいいか」
しかしどうする?このまま逃げてても埒が明かないが荒魂を倒す手段なんて無いし
あぁ~~どうすっかなぁ!折神紫は手を出さずに眺めてるだけ、動く気配すらない
やつの目的は何だ?仕掛けてくるならそろそろ頃合いの筈だが
そのとき折神紫が肘をまげて親指と中指の腹を合わせて擦り音を鳴らすと
俺達を追っていた荒魂がそれぞれ特異な変化を起こした
勇仁を追っていた荒魂は巨大な手となり左手はいとも容易く勇仁を掴み右手で握っている刀の切っ先を勇仁へ向けて刺し貫いた
綾人を追っていた荒魂は頭の先に生えている切先の様な角を伸ばし綾人の中心を正確に貫いた
海翔は全身を氷漬けにされ、動けない所を刃で貫かれた
和人は燃え盛るが焔で出来た剣で貫かれた
尊は身体が桜の花びらの様になる荒魂に周囲を囲まれ花びらに包まれて貫かれた
「尊!!皆!!!」
「人の心配をしている暇があるのか?」
「っ!?がはっ!!!!」
俺は5人に気をとられている間に日本刀に形を変えた荒魂に貫かれた
そこで俺の意識は刈り取られた
6人は倒れ動かなかった
「救護隊6名を回収し地上の医務室へ搬送しろ」
折神紫の声を聞き目指していた扉から担架を持った集団が現れ手際よく6人を其々の担架に乗せると撤収して行った
「さてここからが見物だな……」
折神紫もその場から立ち去って行った後に残されたのは荒れた大地だけだった
ここで行われいて居た事は勇刀達と折神紫の7人しか知らない
『……此処はさっきの丘か』
勇刀はまた牢屋で目覚める前の丘に立っていた
『ホント何なんだここ…』
【また会ったな】
『っ!?あんた誰だ?』
声が聞こえた重く厳かな老いた男性の声が俺は声のした方へ振りかえると黒いマントを纏った男が居た
【私は■■だ、衛藤勇刀】
『なんだ聞きとれない?』
【そうか、まだ無理かでは私はお前に届くまで何度でも叫び続けよう、暫しお別れだ、衛藤勇刀】
『おいっ!アンタ一体!!』
俺は訳もわからぬまま男に手を伸ばすがその手は空を切り男は足元にあった靄の様なものに塵となって吸い込まれて行った。
「んっ……眩しいな……」
「起きましたか?勇刀君」
目を覚ました勇刀は窓から差し込む日差しで目を覚ますとふかふかのベッドの上だった
他の5人も既に起きていた
「またお前が最後かよ、良く寝るな」
「あぁ、そうかまた俺が最後か悪いな……てかお前ら怪我はどうした!?!?刺されたんだぞ!?」
「あぁそれなら」
「なんかわかんないけど起きたら治ってたんだ~~、不思議だよねぇ~」
「そうなのか…んでここは何処だ?観た所病院みたいだけど」
「ここは折神家所有の医療施設だそうだ、要は折神紫の御膝元だ」
海翔が端的に傷の説明をし和人が場所を説明した
「ん~~折神紫の目的がさっぱりわからない、アイツは俺達で何をしたいんだ?」
「それは私が説明してやろう」
突如部屋の扉を開いて現れたのは折神紫本人だった
突然の登場に全員固まっていた
「全員動ける様だな、なら私について来い、お前達を集めた目的を説明してやる」
勇刀達は何も言わずに予め用意されていたサンダルをはき部屋を出た
部屋の外には親衛隊が待機していた
「僕は折神紫親衛隊第1席獅堂真希だ、一瞬でも怪しい動きをすれば即座に切り捨てる、覚悟しておいてくれ」
「まぁ事此処に至ってそんな事をしても無駄だと言う事は皆さん既にお解りの事と思いますわ」
折神紫の半歩後ろに獅堂真希が付き勇刀達の後ろに親衛隊2席此花寿々花が付き常に監視された状態だった
(はぁ、良くやるわホント、折神紫の実力が噂通りで御刀を差してるなら護衛なんて要らないだろうに、仕事熱心なこって)
勇刀は折神紫の様子を観察していた
「では行くぞ」
「「はい」」
親衛隊の二人が返事をすると折神紫は歩き出した
そして一行が向かったのは同じ建物の地下だった、エレベーターで表示されている回数よりも下の階に止まり、扉が開いた先に遭ったのは広い洞窟の様な地下空間だった
そして中央部には6本の日本刀が地面に突き刺さっていた
「なんだこりゃ?ひでぇな、全体錆まみれじゃねぇか」
「これは御刀?」
勇刀達はじっくりと刀を見ていると獅堂と此花が折神紫に疑問を投げかける
「紫様、これは御刀ですか?」
「あぁ、そうだ」
「しかし刀使でもなく、しかも男性の彼等に何の関係があると言うのです?」
「見ていればわかる、ではその御刀を地面から引き抜け」
6人は無意識のうちに柄を握り地面から引き抜いていた
そして突然風が巻き起こり砂を巻き上げ折神紫達の視界から6人を消した
「なっなんですの!?」
「これは一体っ!!」
「この気配……成功したか!」
徐々に風が治まり人影が視認できるようになってきた
「くっそ!なんだこりゃ!砂まみれじゃねぇかチクショウ!」
「うへぇ~ザラザラして気持ち悪いなぁ」
「何がどうなっているんだ!」
「ぺっぺっ!もぉ~~埃っぽいのきらーい!」
「何なんですかもう!色々わけが分かりません!」
其々錆びた状態ではない日本刀を手にして姿を現した
「最後の一人はどうした?」
「なぁ、なんか俺の刀だけ…よっ!」
「そんな、在り得ませんわ、御刀があんな」
「何て巨大な御刀だ、彼の身の丈とほぼ同じだなんて」
「なんか違くない?」
最後に残っていた勇刀が持っていた刀は巨大化し勇刀の身長とほぼ同じ大きさになっていた
「なっなんだその馬鹿でけぇ刀はっ」
「大きい…」
「馬鹿な……」
「うわ~!すごーい!!」
「勇刀君…君は一体」
「大きさの割に軽いな、なんかしっくりくるって言うか手に馴染むっていうか…」
「紫様!これは!いっ、たい…」
「良いぞ!そうでなくてはな!」
真希は問い詰めた紫が鋭い眼光で笑っているのをみて底知れぬ畏怖を抱いた
「これよりお前達は私の部下となり親衛隊とは別の部隊として戦ってもらう!お前達は荒ぶる魂を切り祓う刀使ではない、お前達は荒ぶる魂を狩る者、死神だ!」
「死神……」
こうして彼等は唐突に折神紫から荒魂と戦う術を手に入れた、奇しくも姉妹達と同じ力を得て戦いに身を投じて行くことになる
はい、キャラクターが増えました。
そして名字ですね、全員メインキャラクターの家族です。
そして最後の御当主様の台詞は少々強引すぎるような気もしてます。
斬魄刀ですが、主人公のはもう解りますよね(笑)
最後に一言
ルビって便利ですよね
それではまた次回