「ふっ!ふっ!ふっ!ふっ!」
勇刀は鎌倉の管理局本部から程近い砂浜で平城から戻って早々素振りをしていた、その理由は帰りの移動中浦原からの助言にあった
(衛藤さん、取り敢えずスクナに撃ったあの技、いつでも使えるようになっといてくださいね〜)
「とは言われたもののどうすりゃ良いんだ?あの時の感覚ほとんど覚えて無いんだよなぁ」
勇刀の斬魄刀【斬月】は初陣においてひと振りで、地形を変えるほどの威力を持つ斬撃を放つ能力を有している事を、まざまざと見せつけた。
浦原はその斬撃をいつでもどこでも、威力を調節して自在に使えるようになれと言っているのだった
しかし勇刀は初めて撃った時の感覚を何一つ憶えていなかった、なので海に向かって素振りをしてなんとかしようともがいていた
「はぁ〜、撃った後爆睡してたのが駄目だったのかぁ?」
勇刀は砂浜に腰を下ろして考えるが何も浮かばず、そのまま寝転んだ
そして空をじーっと見上げえいると
「お兄ちゃんみーつけた!」
「可奈美か、どうしたんだ?」
「もうすぐお昼だから、一緒に食べようと思って探してたんだ」
「そっかもうそんな時間か、、、よしっ食堂行くか!」
「うん!」
可奈美がひょこっと顔を出してきた
「あっそういえば朱音様達に挨拶行ってなかった」
「えっ!?お兄ちゃんまだ行ってなかったの!?」
「あぁ、だから先に行って食べてていいぞ」
「ヤダ!カナも行く!」
「さいですか、んじゃ行くぞ」
「はーい!」
二人は並んで歩き、可奈美は勇刀の腕に抱き着いてご満悦の様子だった
そして局長室に着いて朱音に迎え入れられた
「衛藤勇刀、任務より帰還しました。」
「はい、ご無事で何よりです。お帰りなさい」
「ご心配をおかけしてしまい、申し訳ありませんでした。」
「いいえ、とんでもありません。私はもちろん特祭隊の全員が貴方を信じていましたよ」
「ありがとうございます。」
その後少々雑談を交えていると思い出したように朱音が話し始めた
「そういえば、お伝えしなければならないことがありました。こちらをご覧ください」
「六刃将五箇伝再配置計画?」
「はい、現在日本各地で荒魂の出現率は上昇しています。それにより市民の皆さんの不安も高まり、不満も噴出しているんです。」
「まぁ原因は…俺かぁ」
「えぇ、私達の報道規制をすり抜けて、先のリョウメンスクナノカミ戦での勇刀さんの敗北が速報で報じられてしまったのです。」
先の戦いで最終的には勇刀がリョウメンスクナノカミに勝利したが、その過程で報じられた衛藤勇刀敗北の一報は世間に多大な衝撃と不安を与えた
彼ら六刃将の強さ特に、衛藤勇刀の異次元とも言える強さと戦闘力は何度も報道され、漏洩事件前と比べ、荒魂の出現率が高まった昨今市民の心の拠り所は彼の強さ以外に無かった
平時の荒魂討伐で一度勇刀が出たならば、余計な封鎖や予防線を張る必要無く、最低限の交通規制で事足りる、何故なら彼が御刀を振るえば荒魂は暴れる事無くノロとなるからだ
そしてこの強さが首都圏に住む一般市民の心の支えになっていた
しかしこの大きすぎる安心感が仇となってしまった。
そう、衛藤勇刀の敗北という一報が、彼によって支えられていた平穏と安心という足場が、脆くも崩れ去ってしまったのだ
そしてその不安は地方に住む人々にも波及した、「もしかしたら自分達の住んでいる場所にも大荒魂が封じられているのではないか」と考える、そうなると話は六刃将の平時の配置に及ぶのに時間はかからなかった、あがった声の大部分は六刃将が首都圏に集中している事だった
これに対し刀剣類管理局上層部と政府高官はまず第一に衛藤勇刀は本部に置くことで合意した
そして勇刀以外のメンバーを各五箇伝へ配置する運びとなった
まず本部及び鎌府女学院へ衛藤勇刀と糸見海翔
美濃関学院は柳瀬尊
平城学館は十条和人
長船女学園は古波蔵綾人並びに益子勇仁
※綾小路武芸学舎は諸事情により今回の計画からは除く
配属日◯月◯◯日
「んーと?これは俺こっちに引越してくるみたいな感じになるんですかね?」
「はい、そういう事になります。」
「そうなると学校の方は…」
「そちらに関してもこちらで手配をしています。勇刀さんには特例で鎌府女学院高等部へ編入していただきます。周りが女生徒だけという環境は何かと不便とは思いますが、何かあれば遠慮なく仰って下さいね。」
一通りの説明を聞き、息を吐きながら背もたれに持たれかかり天井を見上げる
そして組織に属する者として、次に自分が取るべき行動をつぶやく
「そしたら、一度帰って荷物まとめて学校に挨拶行かなきゃな〜」
「それとこちらで滞在していただく寮に関しては、現在鎌府寮の隣に六刃将の皆さん専用の寮を建設中ですので、完成までは本部の来客用の宿泊室を使用して下さい。」
「了解です…って配属日明後日じゃん!!すぐに帰って家の掃除と挨拶回り行かないと!」
「ならカナも一緒に帰ってお手伝いするよ!」
「はい、そうしてあげて下さい。部隊編成に関してはこちらで調整しておきます。」
「それじゃぁ朱音様、本部長失礼します!」
「失礼します!」
二人はドタバタと出されていたお茶を慌ただしく飲み干し部屋を出ていった
「本当に仲の良いご兄妹ですね」
「多少妹からの好意が強すぎる気がしないでもないが、そこは衛藤兄がなんとかするでしょ」
「ねぇ紗南ちゃん、今回の再配置計画の事、どう思う?」
「…世論を鑑みれば真っ当な計画に映りはするが、どうもきな臭さが拭えない、特に綾小路がこの計画から除かれている所が…」
「表向きは長船女学園との位置関係による所が大きいということだけど」
「伏見先輩の意図が読めないわね」
「何も…無ければ良いのだけど」
「………」
そう言ってバタバタと部屋を出ていった勇刀と可奈美を見送った二人は今回の計画の不自然な部分を見た
今回の計画は朱音を含めた管理局上層部と首相を含めた政府高官達により立案されたものだった、当然朱音達管理局側は五箇伝全てが含まれるべきと考えていたが、政府側の意向により綾小路は今回の計画からは除かれることを前提にされていた、これは朱音達がいくら異を唱えようとも覆ることは無かった、その事を不審に思っていたが為の会話だった
局長室の窓から走って本部を出ていく勇刀達を朱音は憂い気な表情で静かに見つめた
その表情に込められる思いは…