刀使ノ兄弟   作:腰痛持ち

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ニンテンドーswitchを買ってきてウキウキな腰痛持ちです。
今回から修行編に入ります。
勇刀流の指導はどんな感じなんでしょうか
それではどうぞ


8話 兄、指導へ

朝食を食べ終え境内に勇刀と可奈美達が集まっていた

「んじゃ!稽古を始めるぞ!と言いたいところだが……」

「どうしたの?お兄ちゃん?」

「お前ら……なんで制服姿なんだよ!!」

「何か問題ありデスカ?」

「おおありだわボケ!男の俺がいるのにそんなヒラヒラの短いスカートで稽古なんかするな!特にエレン!お前タイ捨流だろう!体術使うんだからお前が一番危ないんだよ!!」

「「「「「あっ……」」」」」

「私は別にお兄ちゃんになら見られても全然平気だけど?」

一人を除いて全員が自分の間違いに気づき、勇刀同様顔を赤くしていた

「解ったらさっさと可奈美を連れて着替えて来い!」

「「「「「はいぃぃぃぃぃ!!!」」」」」

「うぇえ!?ちょっと皆待ってよぉ~~~~!」

5人は可奈美を引きずり着替えに走って行った

その様子を見て勇刀は溜息を零す

「はぁ、先が思いやられる」

「大丈夫ですか?勇刀君」

「あぁ尊か思いっきり出鼻を挫かれたよ、そっちはどうだ?」

「えぇ今の所機動隊や親衛隊に動きはありませんよ」

勇刀は尊達に捜索活動にあたっている特祭隊や親衛隊等の動向を探らせていた

尊の報告によればまだこの場所を特定できてはいないようだった

「でもまぁ時間の問題だよな……」

そういって空を見上げ、流れる雲を眺めて期間限定の弟子達が戻ってくるのを待つ、

そして6人が戻ってきた

「お待たせしましたっ!」

「はぁ、取り敢えず水飲んで呼吸を整えろ、その間に稽古の説明するから」

「その前に質問良いか?」

「なんだ?薫?」

「普通稽古って言ったら朝早くからやるもんだろ?なのになんでこんな時間からなんだ?」

薫が指摘した通り現在時刻 午前9時を過ぎたころだった

「じゃぁ薫は朝っぱらから寝惚けた状態でやる素振りと確りと目覚めた状態でやる素振りどっちが集中できる?」

「そりゃぁちゃんと起きて飯食った後の方が」

「だろ?昔みたいに朝早くから起きて闇雲にやるのを俺は好かん!勿論時には精神論や根性論も必要だが、それ主体では強くなるのに時間がかかる!」

「確かに今の私達には時間がありませんからネ」

「そう、だからこその効率化だ、俺の稽古はだいたいそういうもんだから覚えとけ、んじゃまずはストレッチから始めるぞ、二人組になって最低でも30秒は伸ばせよ」

勇刀の指示の下で稽古が始まる

6人がそれぞれペアを組みストレッチを始める

勇刀はそれを真剣なまなざしで眺めて時折アドバイスする

「薫、もうちょっと深い呼吸を意識しろ」

「お、おう」

「薫!ファイトデース!」

「姫和は今よりもう少し伸ばしてみろ」

「わかったっ……」

「頑張れ姫和ちゃん!」

その後押し手を入れ替えてストレッチを終え

「さて身体も伸ばした所で素振りだ、これは各々流派があるから細かい事は言わんが、自分の流派の型を確りイメージして刀を振る、疲れて正しく振れなくなったら自分の判断で休憩していいぞ」

「そんな事で本当に強くなれるのか?」

「ただぼけーっと休むだけじゃない、確りと正しい素振りをしている自分をイメージしながら休憩しろ、身体は休めて良いが頭は休めるなよ」

「「「「「「はいっ!」」」」」」

そこからは黙々と自分の流派の基礎をおさらいして行く時間が始まった

それぞれが一心不乱に刀を振る、その動作は滞りなく滑らかだった、しかし

「ほら、振りが雑になって来てるぞ!素振りをしている間は集中を絶やすな、精神と神経を研ぎ澄ませろ!指先までじゃない御刀の切っ先まで神経を張り巡らせろ」

「「「「はいっ!!!!」」」」

「沙耶香ちゃんと薫は少し休め、素振りの型が崩れてきてる」

「まだ、振れる……」

「オレもだ!まだやれるぞ!」

「その意気や良し、だからこそ一旦休め、頭の中で理想の型をイメージしながらな、力の入れ時と抜き時を身につける為でもあるんだからな」

勇刀の言葉に渋々といったように木陰に入り休憩を始める二人を見て満足そうに笑い、他のメンバーに眼を向ける

「何度でも言うが刀は自分の体の一部だと思え、昼まではこれを毎日やるぞ」

「「「「「「はいっ!!」」」」」」

「ねねっ!」

6人と1匹は気合いの入った声で応え御刀を振り続けた

 

そして時刻は昼になり休憩を挿みながらとはいえ、御刀を振り続けた6人は限界になっていた

「だぁー!休みながらつっても流石にキツイ!」

「もう、腕が上がらない」

「くっ!これしきの事で腕が上がらなくなるなんて!」

「腕がぱんぱんデース」

「もう…ダメ」

「皆大丈夫?」

5人がヘ垂れこんでいる傍らで可奈美だけがけろっとした表情だった

「というか、なんで可奈美はそんなに元気なんだよ」

「私は時々、同じ事をしているからね~」

「お前は何処まで剣術バカなんだ」

「まぁまだ初日だし良いか、んじゃ俺と可奈美で、次にやる事を実演するから良く見とけ【帽子落とし】やるぞ」

「うん!!今日こそお兄ちゃんから帽子を落として見せるよ!」

勇刀は何処から取り出した帽子を被り両者が御刀を構える

「これからやる事は簡単だ、五分以内に俺が被ってる帽子を落とす、これだけだ」

「行くよ!お兄ちゃん!!はぁっ!!」

兄妹の剣戟が始まった

「帽子を落とすだけって、勇刀相手にそれが出来る奴が居るのか?」

「居ない…んじゃないかな」

5人の前で汗一つ掻かず、息一つ乱さず可奈美を圧倒している勇刀を見て改めて思う

なぜ衛藤勇刀はこんなにも強いのか、この圧倒的な力をどうやって手に入れたのか、勇刀に対して謎が深まった

「どうした!まだ2分しか経ってないぞ!!」

「まだだよお兄ちゃん!!」

「よぉしその息だ!!」

結局この日、可奈美は勇刀の頭から帽子を落とす事は出来なかった

「はぁっ!はぁっ!はぁっ!」

荒い息遣いで木陰に倒れ込む可奈美をよそに次の挑戦者を募った

「それじゃぁ次だ!どんどん掛かってこい!」

「私が行く!」

「次は姫和か、んじゃ今から5分間だ!よーいスタート!」

「はぁっ!!」

姫和は自身が出せる最速の迅移で距離を詰め、その勢いを利用し御刀を振るうがいとも簡単に防がれ

「くっ!」

「ほいっと!」

「うわぁっ!!」

弾き返された、しかしそれでも負けじと斬りかかるが、素振りでの疲労が剣の振りを鈍らせる

「剣が鈍ってるぞ姫和!そんな鈍い剣じゃ誰にも届かないぞ!!」

「くっ!!」

姫和は更に力強く剣を振るうがいつもの様な鋭さは無くただ荒々しいばかりだった

「我武者羅に振るうな!全ての流派には先人達が残した術理がある、それを無視するな」

「わかっている!」

「解ってないから力任せになってんだろうが、こういう時こそ基本に立ち返れ!自分より強い奴にあからさまな奇襲は通用しないぞ!」

「くっ!!」

姫和の頭には御前試合での奇襲がフラッシュバックしていた

タイミングも位置も速度も全てが完璧なはずだった

しかし折神紫にはそれをいとも容易く防がれてしまった

そこから姫和の動きにキレがなくなり立ち上がれなくなってしまった

 

「さぁて次は誰だ?」

「おいおいマジかよ、あの二人を相手して息一つ乱さねぇとか、ありゃ人間じゃないな」

「薫、ユウユウに失礼ですよ」

「それじゃぁ私が行く……」

「次は沙耶香ちゃんか、いいよかかっておいで!」

こうして勇刀と可奈美達の稽古は続いて行った、次第に勇刀の剣に食らいついていける様になってはいたが誰も帽子を落とすまでには至らなかった

 

 

 

「はぁ~~ユウユウの稽古は堪えますねぇ~~」

「そうだなぁ~、長船での稽古が生ぬるく思えてくる」

温泉に浸かりながら各々思った事を口にする

「あぁ、しかしこれで強くなれるのなら、私はやり遂げて見せる!」

「おぉ~ひよよんが燃えてるな、こりゃ頼もしい」

「私ももっと頑張る……海翔よりも強くなる」

「………」

「可奈美ちゃん?どうしたの?」

舞衣は先程から俯いたまま一言も話さない、可奈美に話しかけた

「……いつになったら、お兄ちゃんに追いつけるのかなって、はやくお兄ちゃんと同じくらい強くなって褒めてもらいたいのに」

これまで可奈美は剣術に置いては勇刀に褒めてもらえる事は無かった、それは彼が可奈美の夢を理解し、その夢を叶えられるようにする為だった

「多分ユウユウは心の中ではカナミンの事をすっごく褒めてると思いますよ。だってカナミンと稽古をしてる時のユウユウは、凄く良いスマイルでしたから」

「確かに勇刀さん可奈美ちゃんと稽古してる時が一番楽しそうに笑ってるよね」

「そうなの?」

「ハイ!カナミンはユウユウとの稽古に必死で気付いていないかもしれませンガ、すっごく優しい笑顔でしたよ!」

「…………」

「多分だけどよ、アイツはこの中の誰よりも、お前に期待してると思うぞ、ホントお前ら兄妹は妥協ってのを知らないよな」

「ところで普段の勇刀さんはどういう人なんだ?」

「おっ?どうしたヒヨヨン?まさかアイツに惚れたか?」

「えっ?……」

「なっ!?ちっ違うぞ!私はただ、あの強さの秘密は普段の日常生活にあるんじゃないかと思っただけだ!決してそんな浮ついた気持ちで聞いたわけじゃない!」

「なーんだ安心したよ、姫和ちゃんにお兄ちゃんが取られちゃうんじゃないかって、お兄ちゃんはカナのお兄ちゃんだからダレニモアゲナイヨ?」

「「「「「…………」」」」」

瞳から光が無くなった可奈美を見て5人は確信した

兄の事になると剣術とはまた別のベクトルでヤバいと

「マイマイは知っていたのデスカ?カナミンのアレ?」

「私もここまでのを見るのは初めてかな、1年生の時に可奈美ちゃんがホームシックになって勇刀さんが面倒を見に来ていたけど、その時はこんな風じゃなかったし」

「はぁ~~勇刀も大変だな、大変なのは彼女も一緒か」

「どうにか矯正しないと不味いんじゃないのか?このままだと手遅れになりかねないぞ」

「どうするの?……」

「そりゃ、勇刀より良い男を可奈美にぶつけるしかないだろ」

「ユウユウよりも良い男の人デスカ…」

5人が勇刀よりも良い男を想像する

(勇刀さんは強くて優しくて)

(勇刀は温かくて包み込んでくれる…撫でられると凄く安心する)

(勇刀は良く人を見てる奴だよな、稽古の時も真っ先に俺の状態に気付いてくれたし)

(ユウユウはすっごく頼もしいデスネ、仲間思いで皆を大切にしてくれるので、誰に紹介しても自慢できマース!)

(勇刀さんはまだ出会って日は浅いが、不思議と心から信じられる人だ、可奈美は勇刀さんに似たんだな、駄目だ)

 

((((((勇刀/さん/ユウユウより良い人が想像できない……))))))

 

「皆どうしたの?黙り込んじゃって?」

 

舞衣達の気苦労など露知らずケロッとした顔で5人を見つめる

その顔に5人は一斉に溜息をついた

 

「???」

 

可奈美はそんな5人の反応を見て小首を傾げて不思議そうにしていた

そして6人は風呂から上がって、同じタイミングで風呂に入っていた勇刀と合流しようとしていた

 

「あっ!お兄ちゃんだ、おにーちゃー……ん」

可奈美の眼に飛び込んできたのは楽しそうに舞草に所属する長船女学園の刀使達と談笑する勇刀の姿だった

見る見るうちに可奈美の瞳から光が消えて行った

そしてフラフラと勇刀に近づいて行く

「おい、ヤバいんじゃないのか?あれ?」

「でも勇刀さんも居るし、大丈夫じゃないかな?」

5人は固唾をのんでこの状況を見守っていた

「ねぇ…お兄ちゃん」

「よぉ、さっぱりしてきたか?」

「うん、お兄ちゃんは何をしてたの?」

「お前らが風呂からあがって来るまで暇だったから、この子達と剣術の話と、ちょっとしたアドバイスを」

長船の刀使達は兄妹の時間を邪魔しては悪いと、その場を去って行った

「じゃ身体が温まっている間にストレッチしとけよ」

「お兄ちゃん!髪梳かしてよ」

「何で俺なんだよ、舞衣ちゃんとかにやってもらえばいいだろ?」

「お兄ちゃんにしてもらいたいのーー!やってやってーー!」

自分に抱きついて駄々をこねる可奈美に根負けして勇刀は彼女の髪を梳かしてやる事にした

そして可奈美は満面の笑顔で勇刀の隣に座り櫛とブラシを手渡した

「はぁ~、何時までも手のかかる妹だな」

「お兄ちゃんの事大好きだから仕方ないよね~~、お兄ちゃんもカナの事大好きだもんね!」

「ちょーしにのるな!まったく」

「えへへ~怒られた~~」

 

 

「勇刀も勇刀で剣術以外じゃ可奈美に甘甘だな、こりゃブラコンが加速するわけだ」

「ワタシもユウユウにブラシして欲しいデース」

「可奈美ちゃん、凄く気持ち良さそう」

「勇刀に撫でられると、凄く安心して…心が温かくなる」

「サーヤはカナミンが羨ましいデスカ?」

「……私も勇刀にやってもらう」

「あっ!おい沙耶香!?」

「どうするんだ!?行ってしまったぞ!」

 

沙耶香はササッと勇刀の下へ行ってしまった。

4人も沙耶香を追いかけて行き勇刀と合流した。

「ねぇ勇刀…」

「ん?沙耶香ちゃんかどうかした?」

「私の髪も、梳かして……」

「えっ?」

「俺に?」

勇刀は沙耶香の発言に驚いていた、そして可奈美は固まっていた

沙耶香は真っ直ぐな眼で勇刀を見つめブラシを差し出す

一つ溜息をつき

「良いよ、ここに座って」

勇刀は自分が座っている長椅子の右側を手で軽く叩いて座る様に促すと、沙耶香もちょこんと勇刀に背を向けて座る

そして勇刀は沙耶香の髪を優しく梳かし始める

さて、ここで可奈美は今どうしているかというと

「………」

勇刀の背中にしがみついて離れなかった

その様子を見ていた他の4人も途方に暮れていた

しかし沙耶香にはそんな事は関係なく、気持ちいいのか眠ってしまった

「サーヤ眠ってしまいましたね。」

「仕方ねぇ俺達で運ぶか」

「あぁ悪いがそうしてもらえると助かる」

「まぁお前も頑張れよ」

「おう………」

「goodnight!ユウユウ、また明日デス!」

「あぁまた明日な……はぁ」

エレンが沙耶香を背負い

薫達もそれに続いて部屋に戻って行った

その場に残った勇刀は未だに背中にくっついている可奈美に声をかける

「そろそろ寝ないと明日に支障が出るぞ?」

「……」

可奈美は勇刀の背中に顔を押し付けたまま小さく首を横に振った

それ以上の行動を起こさない可奈美に話しかける

「なぁ可奈美は、俺が他の子達に優しくするのがそんなに嫌なのか?」

「……だってお兄ちゃんは、カナだけのお兄ちゃんだもん…」

「でもこれからはそういうわけにもいかないって、可奈美も解ってるだろ?」

「……」

可奈美は小さく頷いた

彼女も兄が御刀を手にしたと知った時に既に解っていた、今まで通りの様な兄妹の時間は少なくなると、兄に甘える時間が極端に少なくなる事も、頭では解っているでも心はそう簡単に勇刀から離れる事は出来ない

母親が亡くなってから父は出張が増え家に帰ってくる事も少なくなった、その為勇刀はまだ小学生であったにもかかわらず、炊事洗濯を頑張ってこなせる様にして、可奈美の剣の稽古にも嫌な顔一つせず付き合ってくれた、自分も友達と放課後に遊んだり、休日には友達の家に遊びに行ったりしたかっただろう、修学旅行にも可奈美を一人に出来ないと言って参加せずに一緒に居てくれた

そんな兄が大好きだ、この世界の誰よりも、だからそんな兄との時間が少なくなるのが心底受け入れられなかった

「なら良いんだ、何も可奈美と一緒に居られなくなるわけじゃないんだから、少し一緒に居られる時間は少なくなるけど確り時間は作れるようにするからさ」

可奈美は勇刀の言葉を聞いて頷くと少し力を緩めた

「それじゃぁもう寝るか!」

「お兄ちゃんと一緒が良い……」

「じゃ一緒に寝るか、行くぞ可奈美」

「じゃぁおんぶしてお兄ちゃん」

勇刀は多少苦笑いを浮かべたがそれでも笑顔で応じた

そして可奈美は勇刀の暖かく大きな背中でいつの間にか眠ってしまった。

この時だけは確かに兄妹二人だけの時間が流れていた

 




勇刀さん、それじゃあ妹はいつまでたっても兄離れしませんぜ

それではまた次回で!
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