魔竜転生アクノロギア 意図せず原作をブレイクするようです。ただし別のな! 作:前虎後狼
*月※日
シグルドさん速いです!あくのろさんじゃなかったら絶対に追いつけなかったよ!
あの馬早すぎるわ!なにあれ?ソニック?ハリネズミじゃねぇソニックなんてソニックじゃないよ!
我が友って言ってるけどなにあの馬、人語解せるの?天才すぎひん?
そして速い!クーガー兄貴も認めるくらい速いわ!速さ足りてるがな!
そして人間態とはいえそれに追いつける程の
身体はいいとして俺の精神が持つかなぁ、不安になってきた。
ちなみに例の馬、グラニって名前の子に触らせてもらおうと近づいたけど一瞬で距離とられたで候う。あくのろさんだからね!仕方ないネ!(泣)
Λ月μ日
人間態のまま走るのにもだいぶ馴れた。
忍者になれるのも時間の問題かなこれは?別に目指してないけど。
そろそろ十傑集走りにも手を出してみようかなと思う今日この頃であった。
ダカダカしながらユクゾー!
そんなこんなで本題、シグルドに連れられるまま大地を駆けているとなんか燃えてる館が目に映った。
アイエエエ!?燃えてる!?館燃えてるナンデ!?
幻覚でもなんでもない、たしかにこのあくのろさんアイは燃えてる館を視認してるであります!!
内心あわわわわわ状態の俺を余所にシグルドは淡々と説明してくれました。
なんでもあの館の中には眠らされた
そこまで聞いてから俺もようやく思い出した。
あっ、こっから先ブリュンヒルデとシグルドの初邂逅イベントじゃん。
Fateお決まりの悲劇モード入るぞこれ。
間違いなく鬱展開になること間違いないよ。誰か鬱フラグブレイカー呼んできてー!!
そんな葛藤というかちょっと考えてる隙にシグルドさんは単身強行突破。
館に貼られてる防御結界のようなものをグラムさんで豆腐のように斬り捨てて行きやがりました。
そんで数分後。クソ長ぇ槍を携えた美人、ブリュンヒルデを連れて凱旋。
流石シグルド!俺達にできない事を平然とやってのける!そこにシビれる、あこがれるぅ〜!
·········やっぱ俺いらなくね?
ν月Ξ日
二人と一匹と+α(俺)の共同生活が始まった······!旅は?
なんだろうねこの二人。惹かれ合うの早すぐるよ。そのままベッドでゴールインまで秒読み開始ですかね?余計な(下)世話でしたねすいません。
しかしなんだろ、このなんて言えばいいんだろうね。
あの二人のやり取り見てるとね、自然とニヤニヤしちゃうのよね。
くっさいセリフを真顔で言い切るシグルドと赤面しちゃう初心なブリュンヒルデ。こう付かず離れず?ちがうかな?おっかなびっくりに手を出そうとして空中で泳いでる猫みたいな、そんな感じ。
やだ、見てて超愉しい······!これが愉悦か······!
それを傍から眺めてる俺とグラニ。
なんかグラニがご主人様とられて不服そうな顔してるけど、まあいいかって悟ったような顔してるよ。
グラニよ、分かる。分かるぞ。俺もそうだ。
共に見守っていこうではないか。
なんかグラニとの絆がちょっとだけ上がった気がした。(願望)
尚、まだ触らせてはもらえぬ模様。解せぬ······
Ο月π日
なんかブリュンヒルデがシグルドにルーン魔術を教えるらしい。
いいねー夫婦の共同作業。えっ?まだだって?いやもう実質夫婦だろ。
見てるこっちが胸焼けしそうなくらいイチャついてるのに何言ってんだ。
でも不思議、別に怒りは感じないのよね。
自分はリア充爆発しろ!な側だと思ってたのに、あの二人が睦みあってる様子見るだけでご飯何杯でもいけそう。いいぞもっとやれ。
それにしてもルーン魔術ねぇ、文字書いて行使するってのがなんかレビィちゃんやフリードみたいな立体文字や術式魔法に通ずる何かがあるな。
あっちよりも難解そうだけど。
あれこれあってシグルドは見事ルーン魔術を取得。流石。
ついでに俺もどうかって言われたけど、俺は魔術の論理を理解はできないと思うから無理だと思う。
ただあくのろさんの滅竜魔法、即ち魔を食らう滅竜魔法ならもしかしてと思ってね。
うん、文字通り喰らわせて頂きました。
実際に食べてみるとあれだね、味はしないはずなんだけどなんか感覚的に好き嫌い美味い不味いのあれこれが分かる気がする。
これは今後重用するな。
んでもって喰らわさせてもらったブリュンヒルデのルーン魔術の通りに虚空でルーン文字っぽいものを指先で描いてみる。
そしたら同じようなのが出来た。もちろんブリュンヒルデのようにはいかなかったけど。
最近シグルドの存在で薄れてた気もするけど、本来のあくのろさんのスペックなら造作もないよね。これもあくのろさんボディのちょっとした応用だ······
あとなんかブリュンヒルデがすっげー驚いてたように見えたけどなんやったんやろ。できるとは思わなかったとか?安心しろ、俺もだ。
戦乙女の長姉、ブリュンヒルデはかの竜を恐ろしくも優しい竜だと感じた。
かつては半神であり、古き女神だった者。
最も初めに造られたが故に、神々に最も近い形で造り上げられた、至高の戦乙女。その身に秘められた神核は、他の
元々は模範的な戦乙女だったが、大神に忠実な僕として死した戦士たちをヴァルハラへと導いてきた彼女は、ある時オーディンの意図とは異なる相手を勝たせてしまった事で大神の怒りに触れ、神性の多くを奪われ炎の館に封じられることとなり、館の内で眠り続ける呪いに就くこととなった。
そうして、彼女はいつまでも館の内で眠り続ける運命だった。
その呪いから、彼女を救い出すものが現れなければ。
その者の名をシグルド。
最強と呼ぶに相応しい無双の英雄が、この炎の館へと足を踏み入れたのだ。
全ては彼女を助けるために。
もちろん、彼女は困惑した。どうしてと、自分を助けてなんになると。
竜殺しは言う。
グリーピル王の予言によれば、ヒンダルフィヨルの山頂の炎の館にて、戦乙女ブリュンヒルデを救い、そして愛すれば破滅する。
しかし、シグルドは運命に逆らうつもりでいた。
己が炎の館を訪れたのは、囚われた戦乙女を救うため。それだけだと。
そして、その後に続いた言葉に、ブリュンヒルデは耳を疑った。
「当方は賢者の予言に逆らうつもりでいた。是なる永劫の炎に捲かれた館より乙女を救いはしても、愛する等とは有り得ぬと信じていた。だが───」
愛すれば破滅する。もう一つの運命の辿る結末を知って尚、彼は──
「一目惚れと言うのだろうな」
竜殺しの英雄と戦乙女。
二人の運命は、ここに交わった。
眠りの呪いから解放され自分を愛すると言ったシグルドに連れられて久々に館の外へと出ると、二つの影が二人を出迎えた。
片方は、灰色の毛並みを持つ美しき神馬。
その立ち姿は、何処かスレイプニルを思わせる程に凛々しく、神々しい。
そしてもう片方。
それは人の形をしていたが、ブリュンヒルデはそれが人ではないものだと直感で悟る。
乱雑に伸ばされた灰色ともくすんだ銀ともとれる長髪、そして褐色の肌と怪しく浮かぶ紫の紋様。
こちらを見据える鋭い双眸からは、まるで品定めをするかのような興味の視線を注がれる。
そして、その身から滲み出る隠しきれぬ闘気と、神性に近しい理解の及ばぬ魔力の波動。
「っ、貴方は──」
勝てない。
かつて半神とも言われたブリュンヒルデでも、眼前の人の姿をとった嵐を沈めることは不可能に近いだろう。
神格が落ちた今では尚更、隣に立つシグルドでさえ討つことは難しい。
もしかすると、自分達戦乙女を鋳造したかの大神でさえも、この者を卸すことは出来ない。
こんなものがこの北欧に存在していたのか。
理解不能の権化、強大な力を持ち大神より授かった原初のルーンを扱える、神霊以外では勝てぬものの無い自分が初めて畏怖すら覚えた。
「呑まれるな、ブリュンヒルデ」
気づけば、自らの肩に手を添えて労わるように、そして守るように身を寄せて、強大な魔力の波動に呑まれかけた意識をシグルドが引き上げてくれた。
心配はないと笑いかけて、恐怖に染まった少女の心をゆっくりと暖め解してくれる。
段々と、動悸のような浅く短い呼吸の連続もゆったりとしたものに戻り始め、表情にも安堵の色が浮かび始めた。
「紹介しよう。彼等は我が友、我が盟友。神馬スレイプニルを父に持つグラニ、そして──」
続く言葉は、当人から紡がれた。
「──我はロギア。シグルドの旅に賛同し己が愉悦を満たす、人の
謎の幻想種、ロギア。
この時の彼は、ただただ恐ろしい怪物に見えた。
シグルド達が訪れて、早くも数日が経った。
とはいえ、その数日がブリュンヒルデにとっては困惑の連続で、そして未知の体験ばかりであった。
ワルキューレ達は元来、「勇士の魂を集めるシステム」として生み出された存在である。そのため、機械的で無機質な言動、思考が挙動の節々から見て取れる。
これはワルキューレという存在がの直接の原典での扱いである「死神」としての一面が強調された結果が色濃く表面化しているせいだと思われる。
一見すると、外見も口調も性格も一人ずつ違うため、個性があるように思えるが、それは定義によるもので、根本原理は同一である。
それはもちろんブリュンヒルデにも同じことが言える。
だからこそ、根本的に人間とは感性や思考の仕方が違うために、ブリュンヒルデにとって人間の生活と営みはとても新鮮なものに感じられた。
実際、彼女にも変化が現れ始めていた。
囚われたブリュンヒルデに再び自由を与え、愛を語り、恋を教えた。
竜殺しの英雄、シグルド。
共に草原を駆け抜けて、喜びを分かちあった。
シグルドの盟友にして愛馬、グラニ。
そして──抱いたことのない恐怖を呼び覚まし、驚愕を想起させてくれた。
人へと変じた幻想種、ロギア。
彼等との出会いは確かに、ブリュンヒルデを人へと近付けていた。
「シグルド、あぁシグルド。私、変なんです」
ワルキューレとしてのブリュンヒルデに生じた、これまでにない異常。
それは彼女の価値観が人へと近づきつつある証左であった。
抱くようになった感覚はとても暖かくて、優しいもの。
「胸の奥がじんわりと暖かくて、心地がいいんです。でも、少し怖い。良くないものではないのに、それが何か分からなくて、不安に思ってしまう」
だが、それが何かは分からない。
造られたものであるがゆえ、そう機能が制定されていたが故に、彼女は人の感じるそれを理解出来ないでいた。
「恐れることはない」
その恐怖を、シグルドが拭い去る。
「暖かく感じること。心地よいと思うもの。それは喜びであり、人が好いと感じた際に発露する、最も優しき感情だ」
知を知らぬ無垢な幼子へと教えを授けるように、戦乙女の恋人は愛しきものへと語りかける。氷のようだと揶揄された表情はふんわりとした雪のように柔らかく、言葉という形を与えられた音はまるで春風のようで。
「時に人は、それを幸福と呼称する」
「ブリュンヒルデ。わが愛よ、我が運命の君よ。当方はお前に全霊をもって愛を捧げ、お前と共に添い遂げると誓おう。例え運命が、我等を引き裂きにかかるとしても。当方はこの熱を忘れはしない」
「はい······!私もです、シグルドっ······!」
今日も今日とて、ヒンダルフィヤル山に風が吹く。
それは人のゆく道を遮る悪意あるものではなく、暖かに祝福するかのように、二人の背中を押すかのように、とても優しい風だった。
「フン、仲睦まじい事だ。竜殺し、そして戦乙女よ」
寄り添う二人が振り返れば、そこには同居人である謎の多い人物。
身体中に走る紫の紋様が妖しく光る褐色の男、ロギアだった。
シグルドと共にこの地へと訪れた、とてつもない力を秘めた者。
聞けばシグルドとは近しい存在にして、似て非なるものだと言っていた。
それが意味するものがなんなのかは理解が及ばなかったが、シグルドに近しいものというのは、彼に驚愕させられることで身をもって知った。
彼、シグルドにルーン魔術を教えていたときだ。
シグルドがロギアへお前もどうだと誘い、それにロギアがのったことで始まった臨時講座の際に、ロギアはルーン魔術を自分に向けて撃つように指示した。そんな事をすればタダでは済まないと忠告しても、ロギアは構わずにやれと意見を曲げない。
仕方なくブリュンヒルデはなるべく威力を抑えた魔術を放とうとして、火のルーンを示すルーン文字を虚空に描いた。
瞬間、何も無い無の空間から突如として赤く揺らめく焔が起こり、炎の魔弾は一直線にロギアへ向かって撃ち出された。
威力を抑えたとはいえ、ブリュンヒルデが行使したのは大神より授かった原初のルーンによるルーン魔術。
その魔弾が帯びる熱量は生半可なものではない。
目にすれば、きっと直前の瞬間に避けようとするだろう。
そう思っていた。
しかしロギアは動かない。
向かってくる魔弾の前で腕を組んだまま仁王立ちを続けていた。
眼前から押し寄せる死に近づく炎を見続けて、次の瞬間。
ロギアは大きく口を開け、迫り来る炎を飲み込んだ。
そう、飲み込んだのだ。
吸われて行った炎は跡形もなく消え去り、ロギアは食事をして汚れた口元を拭うかのように腕を動かす。
これだけでも十分に驚きだが、さらなる驚きは直ぐに訪れた。
先程ブリュンヒルデが虚空に刻んだものと同じルーン文字を描いて、
これには流石のブリュンヒルデも、そして傍観していたシグルドも空いた口が塞がらない。魔術を喰らい、そして自分のモノにして見せた。
否、彼の場合は取り込んだと表現した方が正しいのかもしれない。
問題なのは、彼が行使したモノはルーン魔術ではあるが、厳密には大神オーディンが見出した原初のルーンであるということだ。
ただ喰らっただけで、それを自分のモノとして納めてしまった。
それを言えばシグルドも同じようなものだが、なにせこれに関しては度合いが違う。
どうやったのかと聞いても、これが我の魔法であるとはぐらかされるのみだ。
そんな驚愕を次々と与えてくれた男が、心底可笑しそうに笑っていた。
「呑気なことだな。予言によれば貴様らは互いに愛そうとした瞬間に破滅する運命に見舞われるという。茨の道だと分かっていながら全力で駆け抜けようとする貴様等はいやはやどうして」
「友よ、お前はおかしな事だと嗤うのか?」
クヒッと笑って、シグルドの問いに答えを返す。
「あぁ、実におかしいとも。そうなる未来が確定し、他の者が止めているというのに、それでも貴様は足を止めはせん。見ていて最高に愉しいとも。お前達の、足掻いて藻掻いて、尚も逆らおうとする姿は······」
棘のある言葉だが、その声音には堅さは一切無く、まるで眩しいものを見るかのような
共に話し、過ごしてみて、ほんの少しだけ彼の事がわかった気がする。
彼は恐ろしくもあるけれど、同時にとても優しき者である。
神のような威圧が放たれることもあれば、静かなる木のようにそこに悠然と佇み眠る。
そして時折、寄り添い合う二人を見ては、先に述べたように眩しいものを見るかのような表情をむける。
その眼差しには、慈愛が満ちていた。
「善い、実に善い······」
戦乙女の長姉、ブリュンヒルデはその者を恐ろしくも優しい人だと感じた。
あくのろさん、ルーン魔術習得の巻。
そして、運命が廻り始めた······