魔竜転生アクノロギア 意図せず原作をブレイクするようです。ただし別のな!   作:前虎後狼

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いよいよもって、あくのろさんは原作(原典)ブレイクを敢行するようです。


あくのろだいありー8 副題:ゆるすまじグリームヒルド

 

 

 

 

 

 

 

◎月◇日

 

 

一日経ってようやく頭が冷えた。

 

とりあえずグリームヒルドは死ね。

 

ひとまず落ち着いたところで、状況を整理しよう。

シグルドは状態異常忘却にかかりブリュンヒルデを忘れてしまった。

そしてグートルーネに惹かれてしまい二人は婚姻を結ぶ。

 

とりあえずグリームヒルドは死ね。

 

そんでもってこっからは原典による未来予測。

この後シグルドはグートルーネの兄にあたるグンナル、そしてホグ二と義兄弟の契りを交わし、シグルドはグンナルのブリュンヒルデへの求婚の旅に同行し、炎を超えられないクソザコナメクジグンナルに扮して代わりにブリュンヒルデへと求婚。とりあえずグリームヒルドは死ね。

そして、卑劣なるグンナルにより妻にさせられてしまい、二人の婚姻の晩にシグルドは正気に戻る。

ブリュンヒルデは自害を図ろうとするがホグニに止められ足枷を付けられる。シグルドはブリュンヒルデへと会いに行き、ブリュンヒルデが死ぬくらいなら自分は全てを捨てると訴えたが、ブリュンヒルデからはもう遅いと拒絶されてしまう。

とりあえずグリームヒルドとグンナルは死ね。

 

かくしてブリュンヒルデはグートルーネを一族郎党皆殺しにし、純粋なグッドルムを唆してシグルドを殺させた後、自らも炎に焼かれて自害した。

これが型月解釈であり、恐らくこの後辿るだろう結末だ。とりあえずグリームヒルドは死ね。ついでにグンナルも死ね。

 

因みに原典だとブリュンヒルデかグンナルかシグルドの誰かが死なねばならないとブリュンヒルデがグンナルへ告げ、ブリュンヒルデを失うことを恐れたグンナルは弟ホグニにシグルドをどう殺害するか相談したがホグニは義兄弟の契りを交わしていることとシグルドほどの武勇を持つ人間を失うことを嫌がりグンナルの相談を相手にしなかった。しかしグンナルは諦めず義兄弟の契りを交わしていないもう一人の弟グッドルムにシグルドを暗殺させた。

 

過程と動機が変わるが結末は同じ。

 

どの道救われぬ共倒れの道。正に北欧神話。共倒れの神話と揶揄されるだけはある。とりあえずグリームヒルドは死ね

 

結論。

 

とりあえずグリームヒルドは死ね。ついでにグンナルも死ね。

ホグニとグッドルムはまぁ許す。

 

さて、実際問題どうしようか?

 

結構不味いことになってるが、まだ取り返しはつく。

 

先ずはシグルド達がブリュンヒルデへの求婚の度へと赴き、ブリュンヒルデがそれを泣く泣く受けてしまう前にどうにかしなければならん。

 

あまり時間はない。猶予がないが、俺としては先ず確認しておきたいことがある。

 

グートルーネだ。

 

このグリームヒルドの悪意に、グートルーネは奇しくも知らぬままに利用されたのか。それとも知った上で乗ったのか。

俺としては、この子が最大の被害者にも思えてしまう。

 

明日、グートルーネに会いに行こうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

@月#日

 

 

 

 

 

 

 

ごめんねグートルーネちゃん。怖かったよね。あくのろさん怖かったよね。

 

そしてグートルーネちゃんマジ天使。あんなくそババァからこんないい子が産まれるとか遺伝子仕事しないで良かった!グッジョブ遺伝子!

 

では現状報告。やっぱグートルーネちゃんはノットギルティでファイナルアンサー。普通にシグルドを慕ってただけのようだ。

って事はシグルドがブリュンヒルデの事忘れたあと僅か数日でグートルーネちゃんと結ばれたのはグートルーネちゃん自身の魅力の賜物のようだ。

 

無理も無いね。こんな天使に微笑んで貰えるのなら幾らでも頑張れるわ。

というかあの堅物シグルドを見事に数日足らずで落とすとか、グートルーネちゃん罪深過ぎるわ。

 

さて、俺個人の懸念事項は拭えたので作戦を本格的に動かすとしよう。

グートルーネちゃんも手伝ってくれるみたいだから、尚更失敗はできん。

というか、ほんとごめんね。俺グートルーネちゃんにかなり残酷な事実突きつけて、挙句の果てに幸せ奪おうとしてるからね。

それでもシグルド様のためですからって笑うグートルーネちゃんマジ健気·········(泣)

 

よし、張り切っていこうか。

見てろよグリームヒルド!謀略と呼べるかすら怪しいが、謀略には謀略で返してやるぜ!!

 

オペレーション・ゼロレクイエム·········いや、これは死亡フラグが経つな。

 

 

では、オペレーション・マッチポンプ、発動!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギューキ王の宮廷にある一室。愛娘グートルーネ姫の寝室で、グートルーネは先日の謎の人物を脳裏に思い描いていた。

 

「あの方は、私の知らないシグルド様を知っているのでしょうか?」

 

つい先日結ばれた愛する夫、シグルドがロギアと呼び親しげに接した人物。

その人相はシグルドのように知に優れた面影無くば、冷静沈着と言えるような面持ちでもない。

武を除いては、恐らく真反対な二人。しかしシグルドは、かの男を盟友と呼び、全幅の信頼を寄せているように思えた。

 

謎な人物ではあるが、叶うならば話をしてみたい。

シグルドについての話を、彼の成した武勲を、成し遂げた武勇を、彼の口から聞いてみたい。

 

「でも、あの方は──」

 

あの男は、何かに怒っていた。

 

言っていた大半の内容が理解出来ずにいたグートルーネは、一つずつ噛み砕くように男の言っていた事を思い出す。

 

「シグルド様の忘れた記憶······」

 

記憶を失い、愛を忘れたのかと。彼は憤怒を顕にし詰め寄っていた。

真剣に、シグルドを思って怒っていた。

夫の事を案じて怒ってくれていた。

 

ではその起点となったものは何?

 

「ブリュンヒルデ───」

 

彼が口にしていたある物の名。

 

ブリュンヒルデ、大神オーディンに仕えしワルキューレ。神霊に最も近き、誇り高き戦乙女。

 

あの男が言っていた言葉通りなら。

 

「シグルド様はブリュンヒルデ様に?」

 

だが、それなら何故あの人は、シグルドは私の思いに応えてくれたのだろう。それが不義であると分かっていながら。

 

「何がどうなっているのでしょうか······」

 

グートルーネは訝しんだ。この出会いに、この運命に。

 

自分の預かり知らぬうちに一人でに運命が歩き始めたような、そんな予感を覚える。

 

そんな最中、人々が寝静まった夜の街、夜の寝室に、それは訪れた。

 

「貴様が、グートルーネだったな?」

 

彼女の待ち望んでいた、来訪者が。

 

「!そのお声は、先日の」

 

「流石に覚えていたか」

 

いつの間にか、外の情景を盗み見る窓が開かれ、そのすぐ隣の壁に背を預けてグートルーネを見据える、褐色の肌の大男。

 

「先日は済まなかったな。あの時の我は少しばかり混乱していた。さて、改めて名乗るとしようか」

 

褐色の大男は牙を剥き出しにして笑い、名乗りの口上を口遊む。

 

「我はロギア。英雄シグルドの盟友にして、その旅路に賛同した者───であるが、それも仮の指標でしかない」

 

そして、彼は真なる名を明かした。

 

「我が真名はアクノロギア。絶対なる個、闇の翼、魔をすべし竜。魔竜、アクノロギアである」

 

自らの総てを晒して、魔竜は姫君へと告げた。

 

「此度この場所へと参ったのはグートルーネ、他ならぬお前に今一度聞きたい事がある。決して、虚言は口にするなよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なる程、な。先日の言と一切の矛盾なし。その場の言い訳ではないな。まぁとはいえ、もしこの我を欺けるというのなら、そやつはきっと詐欺師の才能、或いは国政の魑魅魍魎となるに相応しい逸材足り得るだろうな」

 

グートルーネの齎した情報は、アクノロギアが知らぬ空白の六日間の詳細を明らかにした。

 

「実際に会って話したのはシグルドが訪れて二日目の朝。それからは共に過ごしお互いの事を赤裸々に語り合い惹かれあったと。ついでに言うならば閨事(ねやごと)はまだ済ましていない、か」

 

「は、はい」

 

グートルーネの語った出来事には一切怪しげな箇所は無く、普通の仲睦まじい男女の一時を過ごしたというのがよく理解出来た。

その過程で床を共にしたかという性事情までひけらかにされたのはとても恥ずかしいものであったが、グートルーネは必要な事だと黙って耐えた。

 

「なる程、なる程。そして残すべきはシグルドが訪れた一日目か。この時シグルドの奴はどこで何をしていたか聞き及んではおらぬか?」

 

「いえ、何も。強いて言うならば、シグルド様がここへ訪れてからすぐに父上と母上の待つ応接間へと通された、という事ぐらいです」

 

「ほう······?」

 

アクノロギアの目が細められ、視線の鋭さが増していく。

 

「なる程なる程。という事はやはり、我の予測通りであったか」

 

「?アクノロギア様?」

 

まるで尻尾を掴んだぞと言わんばかりに獰猛な笑みを浮かべ始めるアクノロギア。

 

「して、グートルーネよ。最後に一つ問いたい。貴様の母グリームヒルドは魔術師であるか?或いは魔術の一端を知っているか?」

 

「······申し訳ありませんが、私には判りかねます。そのような話を聞いたことは無く、また母上が実際にそれを行使した瞬間を目撃したことがない故に」

 

その受け答えに、アクノロギアは落胆すること無く頷きかえす。

この質問はダメ押しの裏付けが欲しかったが故のもの。

ある程度手段が分かっているアクノロギアからすれば、出来れば欲しかった確証程度の認識だ。

糾弾する証拠が無くとも、最悪はごり押すつもりでいた。

 

だが、

 

「ですが一度だけ、難解な式と材料の書かれたメモ書きならば、母上の部屋で見かけた覚えがあります」

 

その情報が、アクノロギアの勝利を確実にする。

 

「·········ククク、そうか」

 

魔竜の欲した材料は全て揃った。

 

「礼を言うぞグートルーネ。貴様の言葉が、死の運命に置かれたシグルドを救い出す鍵となる」

 

「えっ······それはいったいどういう!?」

 

「待て、順番に教えてやる。だがその前に、我はお前へ残酷な真実を告げねばならん」

 

突然の言葉に思わず取り乱すグートルーネを宥め、魔竜それを明らかにした。

 

「グートルーネ、貴様とシグルドの婚姻は仕組まれたものであり、それを画策したのはグリームヒルドだ。そしてこのままでは──」

 

「お前も家族も、愛するシグルドも全て、死に絶える結末を迎える事になる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グートルーネは、それを飲み込めずにいた。

 

褐色の男ロギア──否、魔竜アクノロギアが告げた真実。

 

シグルドには愛すべき人がいて、その愛すべき人の記憶を母が忘れさせて、自分とくっつけるべく画策していた事。

 

兄グンナルもそれを知って、シグルドが愛したブリュンヒルデを自分の妻に迎え入れるべくシグルドを伴い求婚する事。

 

その果てに待つのは、憎悪したブリュンヒルデによる全ての関係者の殺害。

 

誰も報われぬ哀しき物語が、終結へ向かおうとしていること。

 

到底、一度で飲み込み切れる情報では無かった。

理解など出来るはずがない。そんな話など。

三流の物書きでももっとマシなホラを吹くだろう。

しかしグートルーネは不思議と、それらが嘘だとは思えなかった。

むしろ、ストンと腑に落ちるものがあった。

 

上手く行きすぎていると感じた、謎の違和感がそれだ。

 

「母上がそんなことを······」

 

「我が言ったこととはいえ、よくすんなりと受け入れられたな」

 

「本当ならば信じたくないです。けど、昨日の光景が疑問を確信に変えてくれました」

 

それに、それが本当ならば、自分はとても罪深いことをしてしまった。

とても(あがな)えるものではない。

 

「さて、グートルーネよ。これを聞いてお前はどうする?」

 

「どうするとは?」

 

「我はシグルドに正気を取り戻させ、ブリュンヒルデの下へと連れていくつもりだ。そうなると、我は貴様から幸せを奪う賊徒である」

 

恐ろしき魔竜は、姫君へと選択の余地を与える。

 

「なぁグートルーネよ、貴様には選択の自由がある。幸福を守るために我に歯向かうか、何もせずに静観するか。好きに選べ、己が道を自ら選択せよ」

 

それは、魔竜のせめてもの恩情だった。

報われぬ恋が実ったというのに、それを自ら捨てなければならない。

 

そうなるくらいならいっそ───そう選択の余地を与えて、当人の意思を尊重しようとした。

 

無論、邪魔をするのならば排除するのは確実だ。

アクノロギアが優先するのは親しき友人達だ。憐憫を覚えない訳では無いが、いくら利用されたとはいえそれで情けをかけるほど、魔竜は優しくはない。

 

あくまで意思の尊重。どのような選択をしたとしても、それがグートルーネにとって最も正しく、後悔のない行いをして貰いたいという願いによるものだ。

 

「·········私は」

 

そして、一時とはいえ英雄の妻となった女は、選択した。

 

「アクノロギア様、貴方の言うシグルド様をお救いする方法を、私にもお教え下さい───私が、貴方の共犯者となります」

 

「──なに?」

 

それは、選択を提示したアクノロギアにも予想が出来なかった、第三の選択肢だった。

 

「貴方の言う通り、シグルド様が真に愛しているのがブリュンヒルデ様ならば、その愛は、真に向けられるべき者へと返すべきです。その相手は、私ではない」

 

「その通りだ。だが、それで貴様は納得が出来るのか?」

 

「納得は、恐らく出来ません。でも、これでいいんです」

 

思い出すのは、シグルドと過ごしたほんの数日の逢瀬。夢に見た、愛しき人と過ごす平穏。ほんの僅かな時間でしかなかった、されどその数日はとても煌びやかなもので、間違いなく幸せと呼べた時間だった。

 

たとえそれが、一時の幻想なのだとしても。

 

「シグルド様が生きてくださるなら。シグルド様が、幸せを掴めるのなら」

 

愛した人が幸せになってくれるなら、私はその幸福()を捨てさろう。

 

それは、グートルーネの示した何よりも強い覚悟だった。

 

夢を守るために命を懸け、魔竜へ歯向かい死ぬのでもなく。

 

全ての責任を投げ捨て、目も耳も心も塞いで、部屋の中に閉じこもるのでもなく。

 

そんなものよりももっと過酷で、残酷な、最も辛い選択を。

 

愛するものの為に、愛した人と別れる覚悟。

 

愛した人の幸せを願い笑顔で送り出す決意。

 

それは、自死を選ぶよりも尊く、気高く、そして悲愴な覚悟の選んだ道だった。

 

「そうか、そうか······」

 

闇の中で俯く彼の表情を、彼女は見ることは出来なかった。

しかし彼女は確信を持って言うだろう。

意図せず最も辛き道へ追い込んでしまった事に対して、己の至らなさを嘆いているような、そんな表情をしていると。

 

「さぁ、教えてください。私の共犯者よ。シグルド様を救うための一計を、片棒をこの哀れな小娘にも担がせてください。その為なら、私はどのような役をも演じてみせましょう」

 

 

 

 

 

 

さぁ、刮目せよ。

 

これより始まるは逆転劇。悲劇では終わらせぬ、痛快な大団円を迎える為に。謀略企てる魔竜とその共犯者たる英雄の妻は、最高の喜劇を紡ぎあげる。

 

 

 

時は、満ちたり。






あくのろさんによる盛大なデウス・エクス・マキナ

乞うご期待。
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