GOD EATER ~狼の追跡者~   作:黒槍

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評価頂きました!ひゃっほう!




 第3話(1) とにもかくにも災難続きのルーキーは災難

「…さて、各員…結果報告を……」

 

「た、隊長?こんなところで寝たら駄目ですよ!」

 

 

 

 

 

日は既に傾き、赤い夕陽は見る者全てに等しく、優しく包み込まれるように穏やかな感情を思い起こさせた。

 

眠気である。

 

そんな中、薙ぎ倒された木々の端に残った、森だったものの一部分に体を預け、隊長は眠っていた。

 

「……………」

 

よほど疲れていたのか、寝言を呟いたり腕を伸ばしたりしていたが、今は落ち着いている。

 

(…困ったなぁ……)

 

その為、隊長が起きるまで、ルーキーは周囲の警戒に当たっているのだった。

 

(…合流地点に早く向かわないといけないのに、場所が分からなくなっちゃって…)

 

そもそも、こんな状況に陥る羽目になったのは、アラガミの群れとの戦闘の所為だった。

 

(…隊長は、疲れ果てて眠っちゃったし…)

 

ルーキーは着地の失敗で合流地点が記憶から抜け落ち、隊長は疲労困憊で眠気に支配され、仕方なく、休憩も兼ねてこの場で休む事にしたのである。

 

(…やっぱり、人生最悪の日なんだろうか……)

 

もしかしたら、ハヤかミミが探しに来てくれるかもしれないと、ルーキーは希望的観測に現実逃避するが、それは今のところ妄想か空想の産物だった。

 

(…そうだよ。そもそも、こんな日に限って災難が立て続けに起こるなんて…あの時だって…)

 

と、ルーキーが妄想の中で今日の出来事を振り返っていると、ルーキーの顔が不満げに曇った。

 

(…あの時……アラガミが、僕の故郷を…姉さんを……)

 

そして、ルーキーは悔しげに奥歯を噛み締める。

 

(…姉さん…僕、ちゃんと就職できたよ……やっと、夢にまで見た、姉さんの力になれるんだ…)

 

ルーキーは、あれだけの高さから落下していながら、傷一つ付いていない神機を握り締め、夕日の向こうに万感の思いを馳せた。

 

(…僕、死んだ事に、なってるけど……)

 

ルーキーの顔が、不安げに曇った。

 

 

 

 

 

「っ?」

 

おかしな気配を感じたルーキーは、慌てて目を覚ました。

 

どうやら、夕日に込められた不思議な魔力に当てられて、「ルーキーはねむってしまった!」していたらしい。

 

隊長の方に視線を向けると、隊長はまだ眠っているらしかった。

 

「…何だろう、今の…?」

 

先ほど感じた妙な気配に、どこかデジャヴじみたものを感じ、ルーキーは周囲を見渡す事にする。

 

夕日は、まだ沈んでいなかった。

 

…その夕日に全身を隠すようにして、誰かが立っている事にルーキーは気が付いた。

 

隊長は目を覚まさない。

 

太陽の眩しさをこれほど邪魔だと思った事がなかったルーキーは、黒い影もろとも太陽に抗議の視線を送る。

 

すると、ルーキーの視線の意味を察したのか、その影は徐々に大きくなり、ルーキーから太陽の恩恵を奪っていく。

 

ルーキーの脳裏に、見覚えのあるフォルムが浮かび上がった。

 

…左腕に剣形態、右腕に銃形態の神機を持った、謎のゴッドイーター。

 

それは、昼間にルーキーが居住区で見掛けた物陰に酷似していた。

 

それと同時に、初めて隊長に質問をして返された言葉を思い出す。

 

(…確か、僕は謎のアラガミと交戦して死んだ事に……)

 

確かに隊長は、ルーキーにそう言っていた。

 

そして、その場には謎のゴッドイーターがいた。

 

謎のアラガミではなく、謎のゴッドイーターが。

 

(…もしかして、あれは…ゴッドイーターじゃなくて、アラガミ…?)

 

…それは一歩、また一歩と、ルーキーの元を目指して近付いてくる。

 

しかし、ルーキーの方からは、その姿を明確に捉える事は出来なかった。

 

(…また、頭が…っ…)

 

ぐらぐらと、頭の奥が揺れているような感覚に、ルーキーの意識は再び遠のいて行く。

 

「…隊長……逃げ……」

 

そこで、ルーキーの意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

「…ほーらー、ルーキーちゃんも起きてー」

 

気の抜けるような、間延びした声が響いた。

 

「ん…んん……?」

 

それは、ルーキーだけでなく隊長の耳にも届いているようで、隊長はあと32秒と細かい要求をしている。

 

隊長(はあと)。

 

(…あれ、僕も寝ちゃってたのか…)

 

ルーキーは大きく伸びをすると、改めて周囲を見渡す事にする。

 

(…あれ?…何か、デジャヴ…)

 

ミミと何やら交渉を始めた隊長と、少し離れた所で辺りを見渡しているハヤがいた。

 

…既に日は落ちかけているが、恐らくこれ以上沈む事はないだろう。

 

「もー、じゃあ20秒だけだよー」

 

「…んー…駄目か…?」

 

欠伸をして、白露のような水滴をまつ毛の端にのせると、隊長は見上げるようにミミの瞳を覗き込み、じっと見つめた。

 

「……し、仕方ないなー、30秒だけだよ?もー…」

 

普段と立場が逆転している二人を眺めながら、ルーキーはもう少し眺めている事にした。

 

「ふふふっ…ありがと、ミツミ…」

 

「み、ミミはミミだってばー!もー!もーー!!」

 

隊長(はあと)。

 

ルーキーは、何だか心が洗われるような、不思議な癒し効果を受け、そろそろ立ち上がる事にした。

 

「…ミミさん達、どうしてここに?」

 

合流地点から随分離れた位置に移動して来ている二人に、ルーキーは尋ねる。

 

「…ルーキーちゃん、今何時だと思うー?」

 

どうやら、ミミは少し怒っているようだった。

 

「え…っと……19時半くらい、ですか?」

 

その瞬間、ミミは笑顔になり、つられてルーキーも笑顔になり、隊長も笑顔になった。

 

「22時だよ?」

 

「………え…?」

 

ルーキーは、新種のレーザーを受けてしまったかのように、凍結した。

 

「…え…っと……日、まだ沈んでませんけど…?」

 

自然解凍が始まり、ルーキーは多少の明るさを保っている太陽を引き合いに出す。

 

「そっかー、そうだねー。ところで、白夜って知ってるかなー?」

 

ルーキーは、再び凍結した。

 

「…シ、シラナイデス」

 

それらのやり取りを離れて見ていたハヤが、ぼそっと呟く。

 

「…今日本部に配属されて来た芋野郎が、んなもん知ってる訳ねえだろ…」

 

あまりにも的確かつ意味深な指摘に、ミミはハヤの顔をじっと見た。

 

「…な、何だよ」

 

ミミの突然の喰い付きように、ハヤは妙に落ち着きがなくなる。

 

「…調べたんだ?」

 

ハヤは視線を逸らして、辺りを見渡し始めた。

 

「調べたんだー!!?」

 

ミミは決定的な証拠を手に入れ、隊長に目配せする。

 

「ち、ちげえし!!つ、つーか、オレが何を調べたっつーんだよ?!」

 

ハヤのその問いは、起き上がった隊長がミミの代わりに答えた。

 

「はて。私はルーキーの出身地について、皆に話した覚えはないが」

 

ルーキーは、何の話かはまだ分からなかったが、流れ変わったなという事は分かった。

 

「…いも?…あ、ジャガイモですか?」

 

と、芋がジャガイモを指している事までは分かったが、それ以上の事は分からなかった。

 

「ルーキーちゃん、ルーキーちゃん。ここにジャガイモがあるとするでしょー?」

 

これが5分後の貴様の姿だ…と言いたい訳ではなく。

 

「ジャガイモはねー、とある国の生産量が有名なんだー」

 

残念!ハヤの言い訳はここで終わってしまった!

 

「…ちっ、分かったよ!白状すりゃいいんだろ!?調べたよ!!悪いかよ!!」

 

ハヤの叫びに隊長は頷き、ミミはにやにやし、ルーキーは沈み込んだ。

 

(…そうだよね…僕、ハヤさんに嫌われてるみたいだし……知りもしない奴なんかと、一緒に命懸けの仕事なんて、したくないよね……)

 

何やら沈み込んでいるルーキーの様子に、隊長は何事かを思い付き、もう一つおまけに頷いておいた。

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