新種の名前、一つ頂きました!ひゃっほう!
「さて。各員、結果を報告してくれ」
「だから、操縦担当が困るっつうの」
全員無事に合流地点まで辿り着き、隊長がヘリを呼んだところで、今回の任務はこれにて終了という空気になった。
そこで、操縦士が小耳に挟んでも問題ない程度の内容で、感想のような簡易報告が行われる事になる。
これは、操縦士の存在を完全に失念した隊長の意向に沿うように、ハヤが提案したものである。
「こっちはねー、お魚
魚を食べるとお腹が膨らむし、腹持ちもいいのさ電脳世界のモンスター的な意味で。
ちなみに、○の中に「じ」が入ると、新たな宗教観が生まれそうで生まれなさそう。
「さ」が入ると、赤ペン先生の正体は実は…いや、やめておこう。
「つ」が入ると、竜はもうほとんど関係ない冒険6の途中でエンカウントしそうで嫌だね。
「おい、不謹慎だぞ」
隊長がミミの言い回しに苦い顔をした。
「えー?」
ミミは、自分のどこに悪いところがあったのか、頭を捻って考え始める。
「そういや、結局オレんとこ、アラガミがいなかったぜ」
ハヤが思い出したように言うと、隊長は申し訳なさそうな顔をした。
「すまない…想定外の事態が発生したので、私が代わりに片付けておいた」
すると、ハヤは哀れむような顔をした。
「…その新種と最初にやりあう奴は、同情するぐらい可哀想な奴だな…」
隊長は心外そうに憤慨する。
「ど、どういう意味だ!」
その程度の脅しでは怯まず、ハヤは言葉を続けた。
「隊長は反則的過ぎんだよ。特にあの神機、ニーズヘッグだっけか?あんな破天荒な戦い方、誰が真似出来るってんだよ」
さすがに、ハヤの言い分に一理あるのか、隊長はぐぬぬ顔で反論を飲み込んだ。
「いやー、ハヤもどうかと思うよー?」
ところが、頭を捻っていた筈のミミから、不意打ち射撃が飛んだ。
「はあ?どこが………」
ハヤは、続きを言う事が出来なかった。
「ねー?神機とかー、戦い方とかー、この部隊からして特殊なんだから、言い出したらきりないよー」
ミミに諭され、ハヤもぐぬぬ顔で反論を飲み込んだ。
「じゃー、話戻そっかー」
試作機を使っているミミが言うと、並々ならない説得力があり、それにより全員がミミの意見に同意したようだった。
「…そう言やあ、合流地点に向かう途中、ヴァジュラがいたぜ」
素直に話を戻したハヤの話に、隊長はまたもや申し訳なさそうな顔をする。
「…すまない。私が取り逃がしてしまった奴だ」
すると、ミミとハヤは隊長を呆然と眺めた。
「…嘘だろ…」
「…敵前逃亡は重罪とか言う、隊長がー…?」
言っていた。
ところで、今さらだが、ルーキーが空気と化していた。
(…僕、投げられて、墜落して、気絶して、止め刺しただけだ…)
「ルーキーちゃんは何かあるー?」
何とか話を振られまいと、ステルスフィールドを張っていたルーキーだったが、普通に話を振られる。
ステルスフィールドとはいったい…うごごごご…
「え…えっと……」
その時、ルーキーの頭に謎のキーワードが浮かんできた。
…謎のゴッドイーター。
「………謎の、ゴッドイーターがいました」
ルーキーの放った言葉に、全員の間に緊張が走った。
「…それはいつだ?」
隊長の声から、柔和な雰囲気が消える。
その事に驚き、ルーキーは少し口ごもってしまう。
「え…っと…隊長が眠って少し経ったくらいの…夕日が沈みかけた頃…です…」
緊張の糸が一本、緩んだ。
「どんな人だったー…?」
心なしか目つきが変わっているミミが、慎重に尋ねてくる。
「…ひ、左腕に剣形態、右腕に銃形態の神機を持った人、です」
「ありえねえ…!腕輪付きにんな芸当、出来る訳が…!」
真っ先に、ハヤが真っ向からの否定に入った。
しかし、隊長はそれを止めると、今後の行動に対する建設的な意見を述べる。
「ハヤ、少し落ち着け。ルーキーがゴッドイーターに見えたからと言って、腕輪付きとは限らない。それに、”二つの神機を同時に使役するゴッドイーター”という事なら、特定するのは容易だ」
そして、その意見に付け加えるように、ミミも意見を述べた。
「…もしかすると、反乱分子の手先かもねー。ゴッドイーターに関する技術を流して、よその機関で独自に研究する連中がいない訳じゃないしねー」
どうやら重大な話に発展してしまったらしく、ルーキーはわたわたと、端の方で三人の作戦会議を聞いている事しか出来なかった。
「!…ちっ…操縦担当がいるんだっけな。この話の続きは、帰ってからにしようぜ」
つい話にのめり込み過ぎて、簡易報告の目的を見失っていた事に気付いたハヤが、話の中断を申し出た。
それには全員同意したようで、簡易報告はここで終わった。
「…すみません、皆さん…僕が余計な事を言い出した所為で、こんな大事に…」
もう少しで本部に辿り着くというところで、ルーキーはあれきり黙ってしまった全員に謝罪した。
それは、来た時と打って変わって重苦しい空気になってしまった事に、責任の一端を感じたからなのかもしれない。
しかし、その言葉は隊長の言葉で存在意義を無くした。
「…謝るのは私の方だよ。それに、君は私の代わりに例のゴッドイーターを見付けてくれていたんだ。褒められこそすれ、責められるような事を君はしていない」
ルーキーは、隊長の穏やかな表情に驚き、ミミに視線を移した。
「そうだよー、ルーキーちゃん。お手柄だよー」
その視線の意味を察したのか、ミミはいつも通りの気の抜ける声で、隊長の言葉に賛同していた。
ミミの言葉に後押しされ、ルーキーの視線が勇気を振り絞ってハヤに向けられる。
「………ちっ…オレは褒めやしねえぜ。てめえはやる事やっただけだ」
そんなハヤに、悪戯っぽい笑みを浮かべたミミが呟く。
「ハヤー、それ褒めてるよー」
「いちいち、うっせえんだよ!くそ…!」
ハヤとミミの掛け合いに、重苦しかった空気が軽くなっていく。
(…皆さん…ありがとうございます……)
そんな、来る時よりも明るい雰囲気の中、ルーキーは声には出さないまま、”部隊の仲間”に向けて感謝の気持ちを抱いたのだった。
ゆっくりと、ヘリが降下を始めた。
自殺、ダメ、出来るだけ。