GOD EATER ~狼の追跡者~   作:黒槍

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 第4話 P.S.ルーキーは本当に災難だったのか?

「ちっ…いよいよ、暴れ始めやがった…!」

 

「………隊長、今いないんだよねー?……じゃあ……」

 

 

 

 

 

地下五階の、普段は使われていない部屋に、ルーキーだったものは拘束されていた。

 

今やその拘束は外れかけ、アラガミ化し損ねている左腕と左足で、文字通り何とか足止めしている状況に過ぎなかった。

 

…ルーキーの面影は、虚ろに開かれた左目以外には、既になかった。

 

右腕は不釣り合いなほど大きく長くなり、手のひらからは刃を覗かせ、手首の周囲に並べられるように無数の神機が整列している。

 

右脚は順関節と逆関節の二本に分かれ、バネのような外観になっている。

 

胴体はそれらに合わせて大きくなっているものの、人間の腹部と胸部を大きく逞しくしただけのようだった。

 

頭部は片方だけ鉄パイプ大の角が生え、片方は不自然な髪の毛で隠れている。

 

顔は、仮面のようなもので隠れており、左目だけが虚ろにどこかを見つめている。

 

真っ黒に変色した左腕と左足は、中途半端なところでアラガミ化が止まっていた。

 

最後に、全身を黒い体毛で覆われており、唯一頭部に残っている髪の毛だけが、黒ではなかった。

 

…その姿は、ウロヴォロスとボルグ・カムランを連想させるような、奇妙で奇怪なもので。

 

「―――――っっっ!!!!!」

 

咆哮。

 

それは、防音設備によって地上にまで響くものではなかったが、第零部隊の為の施設全般には響き渡ったようだった。

 

同時に、拘束が完全に解かれた。

 

ルーキーだったものは、ドアと壁を右腕で叩き壊すと、部屋から出る。

 

そして、右脚に全体重を掛け、一気に跳躍した。

 

五階から二階までを、その頑丈な体で貫通していき、真っ直ぐ出入口に向かう。

 

「どこ行こうってんだ?」

 

地下二階、作戦会議室で待機していたハヤとミミが、それの背後に立っていた。

 

ハヤの右腕には巨大な大剣の神機が握られ、木の棒でも持っているかのように、肩をとんとんと叩いている。

 

ミミの左腕にも大きな、傘状になっている部分が三ヶ所ある、槍の神機が握られていた。

 

「――――っ!」

 

頭だけで振り返ったそれに、ミミが一歩だけ歩み寄る。

 

「…ルーキー、ちゃん…?」

 

虚ろな左目が、ミミの姿を捉えたのかどうかは分からないが、その返事は振り下ろされた右腕だった。

 

ミミの立っていた場所が崩れ、大きな穴がそこに開いた。

 

「馬鹿かてめえっ!そいつはもう、新入りでも何でもねえ!ただの敵だっ!!」

 

横に大きく跳んで回避したミミは、俯いて顔を隠したまま、静かに神機を構えた。

 

「…分かってるよ、そんな事……わたしが、一番……」

 

そして、靴を乱暴に脱ぐと、穴の中に投げ入れる。

 

「…ごめんね、ルーキーちゃん」

 

それの耳元でそう呟くと、ミミはそれの右腕に神機を突き刺した。

 

「はっ!最速は伊達じゃねえってか!!」

 

虚ろな左目が大きく見開かれ、いつの間にか右腕に乗っかっていたミミの方を見た。

 

「――――っっ!!!!」

 

ミミの神機の一つ目の傘が光り、槍の先端が爆発した。

 

次いで二つ目の傘が光り、大きく爆発した。

 

「―――――――っっっっ!!!!???」

 

止めに三つ目の傘が光り、ミミは爆発と同時に神機を振り上げる。

 

それの右腕が完全に切断され、焼け焦げた臭いが周囲にばら撒かれた。

 

片腕を落とされたそれは大きくバランスを崩し、仰け反った。

 

「…っ!」

 

…まるで、それは動く通路に乗ったルーキーのように。

 

「おら、暴れんなよ!!」

 

ミミに続いてハヤが、それの右脚に飛び掛かり、その途中に一瞬で一回転をはさむと、黒いオーラを纏った神機を力一杯薙ぎ払った。

 

「――――――っっっ!!!!!???」

 

それの右脚が順逆両方、容易く斬り飛ばされ、ハヤは勢い余って背後の床を大剣で砕き通した。

 

もう一つ、大きな穴が開いた。

 

「…いよいしょっ!っと」

 

床にずっぽり刺さっていた神機を、事もなげにずるりと引き抜くと、ハヤは移動すら出来なくなったそれの胴体に切っ先を向ける。

 

「…ちっ…また、こうなんのかよ…」

 

その呟きは、ミミにも届いていたらしく、ミミもそれの顔面に槍の先端を向けた。

 

「…ごめんね、ハヤ…」

 

「はっ!何でてめえに謝られなきゃなんねえんだ。これは、オレが納得して決めた事だ。てめえに謝られる謂れはねえよ」

 

そう言うと、ハヤの神機の切っ先に異形の顎が現れる。

 

「…そうだねー…」

 

…踏み出した一歩は、どこかで誰かが救われない、新たな世界の歪みきった結末の一つに過ぎなかったのかもしれない。

 

 

 

 

 

「…っ……何て事だっ……私は、間に合わなかったのか……!」

 

出入口に向けて左腕を伸ばした、変わり果てたそれを、隊長は見てしまった。

 

「……いや…まだだ…!まだ、終わっていない…!」

 

隊長は、懐から取り出した書類の束に目を通すと、神機を手に取った。

 

「…私は、フェンリル本部直属部隊特別諜報部、通称・第零部隊の、隊長だ…!…ふふふっ…私が隊長である限り、簡単に死なせはしないぞ。ルーキー…!」

 

…物語は、まだ終わらない。





第1章、これにて完です。

新種アラガミの名前の募集は終了しましたが、もしかするとまた募集するかもしれません。
また出す時とかに…

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