もっと言えば、体験版みたいな感じ。
え?PSP2i?あれはスペシャルだから…
第1話(1) ルーキーのいない第零部隊の一ヶ月・前編
「…え~っと~…閲覧制限掛かってるよ~………」
「私の権限でパス出来る筈……おい、ナナ!終わるまで寝るんじゃない!!」
ルーキーが地下五階に拘束されてから少し経った頃、しばらく自室に引き籠もってめそめそしていた隊長だったが、専属のサポーターに励まされ、何とか自室から出る事に成功する。
「エイン様…綺麗なお顔が台無しですよ。お洗顔致しましょう」
失敗した。
二時間後、全身マッサージやら何やらを終えて、いつもの凛々しい顔を取り戻した隊長に、専属サポーターは満足そうに言った。
「うん、完璧でございます。やはりエイン様はこうでなくては。しかし…お肌の汚れは落ちませんでした…何故でしょう…?」
「…この褐色は生まれつきだ」
とにかく、ようやく自室から出る事に成功した隊長は、アラガミ化に関する資料を集めるべく行動を開始した。
(…さて、まずは何から手を付けるべきか…)
第零部隊は、基本的に自由放任といった部隊なので、緊急の案件さえなければ、任務を受けずに過ごす事も可能である。
それは何故かというと、この部隊の特殊性を考えれば納得のいく理由で、可能な限り存在を隠す必要があるからである。
そんな中、存在を隠し過ぎる隊員が、隊長の目の前をふらふらと横切って、食堂の中へと入って行った。
(…よし。助手を雇うとしよう)
そろそろお昼時ではあったので、隊長も食堂に行く事にした。
蒸かしたジャガイモとバターを皿に載せ、コップに入れた水を持って、後ろ頭がぼさぼさの隊員の隣に隊長は座る。
(…紅茶…だけ?…)
その隊員は、隊長が隣に座った事にも気付いていない様子で、半分…どころか、ほぼ眠ったまま紅茶を飲んでいた。
「…おい、ナナ。紅茶に失礼だぞ。起きろ」
少し大げさな事を言っているような気になるが、隊長はこれが一番効果的な事を知っていた。
「…ん~…それも、そうだね~………」
どこかに納得できる余地があったのか、その隊員はいまだ夢心地な雰囲気を放ちながら、寝た。
寝た!?
「…おい。ナナ。紅茶に対する冒涜だぞ。祖国への裏切りだぞ」
仕方ないので、隊長はどんどん紅茶の重要度を上げていく事にする。
「…んん~…起きる~…」
このやり取りは、しばらく続いた。
「…という事で、手伝ってくれないか?」
昼食を終えて、隊長はまだ紅茶を飲んでいる隊員に助力を請う。
「…ミルクティー飲みたいな~…」
交渉成立した。
「全く…普段寝てばかりいるから、給料に響くんだ。というか、ミルクすら買えないのかお前は…」
隊長は、髪の毛ぼさぼさな隊員の髪を手櫛で整えてやると、あまりの髪質の良さにすぐ整ってしまう。
「買えてるよ~…足りないけど~…」
紅茶が空になった。
「ああ~!なくなった~!」
それと同時に、隊員の目が完全に覚めた。
「手伝ってくれたら好きなだけ飲ませて」
「やる~!」
隊員は喰い気味に返事する。
「…こいつの故郷は、紅茶教でも信仰してるのか…?」
隊長は呆れるように呟いた。
「…でもさ~…隊長何でこんなの調べてるの~?任務~?」
ぺたぺたと端末を操作しながら、眼鏡を掛けた隊員は隊長に尋ねる。
「ナナは知らなかったか。新入りがアラガミ化したのでな…」
隊長の暗い調子に、へ~と興味なさそうに返事をすると、隊員は調査結果を報告する。
「…はい、0件~」
その報告に、隊長が泣きそうな顔をした。
「…ジョークだよ~?」
鼻をすすりながら、隊長は隊員の頭に手を置き、力一杯握り込む。
「ナナ。そういう悪趣味なジョークは、時と場合を弁えろ」
ぎりぎりと、隊員の頭が悲鳴を上げる。
「痛いよ~…!でも、隊長元気で嬉しいよ~…!」
どうやら、隊員なりに気を使った結果らしい。
「で、何が出てきた?」
隊員は、眼鏡を軽く持ち上げて涙を払うと、内容を適当に要約する。
「…えっと~…アラガミ化後の生還率は、ほぼ0%~」
隊長の目に涙が浮かぶ。
「…でも、アラガミ化後の生還例は二件ほどあるね~…詳細は支部長クラスの権限が必要みたいだけど~」
涙を拭き取った隊長は、緊急通信を繋いだ。
「…私です。アラガミ化に関する情報の閲覧制限を解除して貰えますか?」
「うわ~…直訴だ直訴だ~…権力って怖いな~…」
フェンリルの長を相手に、隊長は一言二言で交渉を行うと、緊急通信を終えた。
「…ナナ。フェンリル戦船支部の調査に切り替えだ」
どういう経過があったのか、突然そんな事を言う隊長に、隊員は尋ねる。
「…そっちの報酬は~?」
ちゃっかりしている隊員に、隊長は笑顔で答えた。
「追加業務だ。両方手伝えば報酬をやろう」
船を使いたければ黒コショウを持ってこい、ただし盗賊と一悶着あるがな!と言わんばかりのブラックな事を平然と言ってのけると、隊長は先を促した。
「…前払いシステムがあってもいいと思うな~…」
不服そうに隊員がごねると、隊長は切り札を出した。
「紅茶の葉を全て燃やされたくなければ、私に協力しろ。その代わり、全て終わったら倍に増やして」
「やる~!」
自分で言い出しておきながら、隊員の将来が心配になる隊長だった。
キャラの詳細は、後でキャラ回を用意しますので、その時に。
あと、2章は深く読まない方がいいです。
軽く読み飛ばす事をおススメします。