GOD EATER ~狼の追跡者~   作:黒槍

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 第1話(3) ルーキーのいない第零部隊の一ヶ月・前編

「うらあっ!!くたばれやっ!!!」

 

「ハ、ハヤ?…訓練場にいるとか、珍しいな…」

 

 

 

 

 

高速で飛び交う的を、まるで止まっているトンボを落とすように砕き斬っていくハヤ。

 

その度に、床に敷き詰められた衝撃吸収用の特殊な砂が、天井目指して上っていく。

 

それはもはや、訓練というかハヤのストレス発散道具みたいな様相を呈していた。

 

件のハヤは、空中で素早い一回転を加えながら、片手で床もろとも的を砕いたり、砂に埋まったままの神機を軸に大回転を決めつつ、着地と同時に凄まじい勢いの付いた叩きつけを放ち、的と床を砕き斬ったりしている。

 

「ぶわっ!?」

 

そんな、砂丘でダイナマイトを投げて遊んでいるような、とても心凍える光景に気を取られた眼鏡青年は、思いがけず降り注いだ砂に伸し掛かられた。

 

「…ああ?いたのかよ、お前」

 

あまりの重量に、うつ伏せで砂とキスしている青年に向かって、ハヤは素っ気なく話しかけた。

 

ぷはっと、砂から頭を出した青年は、どこからともなく取り出した眼鏡をかけた。

 

「…ハヤは相変わらずだな…!注意散漫も甚だし…ぺっぺっ!」

 

口に入ったらしい砂を取り除く事に専念する眼鏡青年を無視し、ハヤは周囲を見渡しながら続ける。

 

「…今日は妹と一緒じゃねえのな」

 

砂の中から何とか這い出て、口の中から砂を吐き出すと、眼鏡青年は苦々しく答えた。

 

「ふん…嬉しい事に、今はターゲット変更中だ」

 

そう言われ、ハヤは残念なものを見る目で上を見上げる。

 

恐らくその視線の先にいるのは、黒髪ロングで猫耳メイドという格好の、マゾが服着て歩いているようなサポーターなのだった。

 

「…お前といい、お前の妹といい、ついでにサポーターといい…キャラが濃過ぎんだよ。少しは自重しやがれってんだ」

 

「おい、勝手に俺を含めるな!というか、俺をあの変態サポーターと一緒にするなぁ!!」

 

ハヤの呟きに対し、心外だと言わんばかりに眼鏡は叫んだ。

 

最近の眼鏡ってすごーい、だって叫ぶんだもん。

 

「…じゃあ、お前の妹に言って止めさせればいいじゃねえか」

 

ハヤがそう言って指摘すると、眼鏡青年はさっきまでの勢いをなくした。

 

「いや…まぁ、それはそうなんだが……何て言うんだ?その…断りきれなくて…」

 

そして、急にそんな事を言い出した眼鏡青年を見て、ハヤは一歩引いて言った。

 

「こっちくんなヘタレ眼鏡、メガネ菌が移るっての」

 

子どものいじめのような常套句が、ハヤの口から飛び出す。

 

「メガネ菌ってなんだよ?!ヘタレ菌じゃないのかよっ!!」

 

それに素早い突っ込みを入れると、眼鏡青年はヘタレ眼鏡にレベルアップした。

 

どどどん、どどどん、どどどんどん、おぅっ!

 

「…と、ところで、ハヤは何で訓練場にいるんだ?いつもなら隊長と一緒に…」

 

ヘタレ眼鏡がそう言って話題を変えると、ハヤは固まった。

 

「…ほう、なるほど、そうか、そういう事か。今日は妙に絡んでくるなと思ったら、とうとう隊長に嫌われてしまったんだなぁ?」

 

ヘタレ眼鏡の眼鏡がきらりと光ると、黒いシルエットの顔が悔しげに歪む。

 

「…は、はあっ?な、何訳の分からねえ事を言ってやがる…!て、適当ぶっこいてんじゃねえ!」

 

ハヤの苦し紛れに、ヘタレ眼鏡は「せやかてハヤ、誤魔化すっちゅう事は、認めたっちゅう事やないんか?」的な視線を返すと、

 

「いやいや、もう何も言うな。ハヤも結局は一人の男だったって事だ。まぁ、お前が隊長の事を好きでも、隊長はお前の事を好きにならないと思うがな!」

 

と言って、倍返してやった。

 

「…………………」

 

顔面蒼白で砂に手をついたハヤに、「勝ったぜ」と勝ち誇った顔を向けると、ヘタレ眼鏡は晴れ晴れとした気分で訓練場を後にした。

 

 

 

 

 

「あれー?ククだー!」

 

訓練場で訓練をする予定だった事をすっかり忘れてしまっていたヘタレ眼鏡は、任務でも受けておこうかと、一階まで上がって来ていた。

 

「やあ、ミミ。ミミも任務を受けに?」

 

そこで、ミミと遭遇した。

 

「え、違うよー?ミミはねー…」

 

思わずどきっとするような仕草で髪をかき分けると、ミミはヘタレ眼鏡に歩み寄る。

 

「…え?え?」

 

ゆっくりと、這い寄るように、時間を掛けて、ヘタレ始めた眼鏡の前まで移動すると、ミミはヘタレ眼鏡の背後に合図を送った。

 

「…ククを探しに来たんだよー。ねー、ルルー?」

 

その瞬間、ヘタレ眼鏡の全身が強張り、首だけで背後を振り返る。

 

「…探しましたわよ?お・に・い・さ・ま?」

 

圧倒的存在感に、今まで背後に気付かなかった事をヘタレ眼鏡は不思議に思うが、時既に遅し。

 

「…ル、ルル、何で、ここに…!」

 

と言い終わる前に、がちゃりという音がした。

 

「お兄様のサポーターったら、ねだって来てばかりでつまらないんですもの。だから、お兄様の部屋に置いて来てしまいましたわ」

 

ずっしりと、ヘタレ眼鏡の首に重いものが装着される。

 

「さぁ、お兄様…参りましょう…?」

 

それは、金属製の首輪だった。

 

「ひっ!…た、助けてくれ、ミミ…!」

 

ヘタレ眼鏡は、首輪につながれた鎖で逃げ出す事が出来ず、ミミに助けを求める。

 

「ごめんね、ククー。ミミ、これから神機の調整しないとだからー」

 

失敗した。

 

「お兄様…もしかして、私のお願いを断るおつもりですの?…ひどいですわ…!私は、お兄様の事をこんなにもお慕いしていますのに…!」

 

ぐいぐいと、首輪が首に食い込む感触におぞましいものを感じながら、ヘタレ眼鏡は引き摺られる。

 

「ル…ルル…!首…!首、締まるから…!」

 

断りきれないというか、断る事すら許されなかった。

 

「あぁぁ…!!素敵ですわ、お兄様…!もっと、もぉっとぉ…!!その素敵なお顔を、私にお見せになってぇ…!!」

 

目に涙を浮かべ、徐々に顔が青くなっていくヘタレ眼鏡兄貴の行方を知る者は、誰もいなかった。




話の流れとか、説明とか、不可解な点がありましたら、活動報告の雑談用で、可能な範囲でお答えします。

…何でもはダメですからね?

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