説明回は長いので、細々したものが嫌いな人は、しばらく放置がいいかもです。
(…?…あの人、病人なのかなー…?)
「こんなとこで何やってんだ!バッカかオメーはっ!医務室に戻れってーの!」
所在なげにミミが支部内を歩いていると、足元まで届く白い病衣を着た少女が、何やらぶつぶつと呟きながら歩いてきた。
作業員か研究員なのか、少なくともゴッドイーターではないようだった。
その少女を、聞き覚えのある声が呼び止め、医務室まで引っ張って行こうとする。
まるで、少女誘拐事件のワンシーンを見ているような気分になるが、その引っ張っている男の顔を見た瞬間、ミミは帽子を深く被った。
(…うぅー…エンカウント率、高いよー…)
その男は、少し前にこの辺りで、存在感のスキルについて口論していた男だった。
それはつまり、顔見知りという事である。
「…いない…いないの…どこを探しても、あの人がいないの…!ねぇ、あの人は今どこにいますか?教えて下さい…!」
病人らしき少女は、そう言ってその男の足元に縋ると、男は非常に嫌そうな声で言い放った。
「…アイツはオレが処刑した!だから、もういねーよ!さっさと現実を見ろよ!期待の新型様よ!!」
男はその勢いに任せて少女を床に叩き付けると、少女の頭を踏み付けて一瞥する。
「ううっ!?た…助けて下さい…曹長…私を…置いて行かないで、下さ…」
ぶつぶつと、少女は幻でも見ているかのように呟く。
「……くそ、気持ちわりー女…!さっさと医務室に戻ってろ!!」
その時、男が足を振り上げたのが見え、複雑な感情が湧き上がるのを感じたミミは、少女と男の間に割り込んだ。
「っ!?」
ミミの腹部に男の足がめり込み、その場から排除される。
帽子が、宙を舞った。
「う……けほっ…」
運のいい事に、男からミミの顔は見えなかったようで、信じられないといった顔をした後、ミミの姿を凝視した。
「…っ…!?……ちっ…!くそが、情報監査官のおまけかよ…!」
その姿が、先ほど見掛けた情報監査官の小間使いだという事が分かると、逃げるように男は吐き捨てる。
「おいガキ!もしあのクソメガネにチクってみろ!二度と本部に帰れなくしてやらー!覚えとけよ!」
それだけ言うと、男はさっさと走って行った。
後には、病人少女とミミと帽子だけが残された。
やったね、ミミちゃん!…いや、止めておこう…
(…痛たたた………カイ、前はあんな奴じゃなかったのに…)
ミミはゆっくりと立ち上がり、飛ばされた帽子を拾うと、被る。
「…貴女、大丈夫…?」
すると、倒れたままの少女が、ミミに声を掛けてきた。
「…うん、平気だよー」
ミミはそう言って少女に手を差し伸べると、少女の体を引っ張り上げる。
「…ありがとう……でも、もしかしたら、怪我してるかもしれない…医務室まで行こう…?」
そう言うと、ミミの手を掴んだまま、少女はぺたぺたと歩き出した。
道端で転んでしまった姉妹が、手を繋いで帰っているような光景が、そこにはあった。
「ほら…動かないで…肘、擦りむいてる…」
少女は、手慣れた手つきでミミの肘を消毒すると、絆創膏を貼る。
「…あ、ほんとだー…ん、ありがとー」
使った薬やらを片付けながら、少女は呟いた。
「…貴女達は、私達の事を調べに来たんでしょう…?」
ミミは、何の事か分からずに首を傾げる。
「隠さないで…自分がどういう存在なのか、私は十分に分かってる…」
少女は、腕輪も何も付いていない細い腕を差し出すと、そこから神機のようなものを取り出した。
「嘘…!」
先ほど男が言っていた新型神機が、少女の神機だった。
「…私は、アラガミ化から生還した、数少ないゴッドイーターだから…」
「私がアラガミ化したのは、去年の事…その時、私の体は二つに分かれて…アラガミ化でアラガミとなった私は腕輪を…」
医務室のドアがノックされ、誰かが入ってくる。
(…え…同じ顔…?)
「…アラガミ化しつつあった、ゴッドイーターの方の私は、神機を侵喰したらしいです…」
少女と全く同じ顔、全く同じ背丈の少女が、控えめに入ってきた。
「…ちょっと、待ってよー…!…それって…えー…?」
突然の出来事に、ミミは二人にストップをかける。
「…と言っても、詳しい事はほとんど分かってなくて……あの人が…うぅ…っ…!」
病衣を纏った方の少女は、頭を抱えて座り込んだ。
「お、お姉ちゃん…を、アラガミ化から戻してくれた人がいるんですが…支部長の実験を本部に告発した後…処刑されて……お姉ちゃんはそれ以来、ずっとこの調子で…」
そう言いながら、病衣の少女を抱きかかえると、妹という事にしているらしい少女は、姉という事にしているらしい少女をベッドに寝かせた。
「…その人の名前は…何て言うのー…?」
ミミの問いかけに、言葉を交わさずに二人の少女は話し合う。
「…フェンリル戦船支部、第四部隊所属、コノエ曹長…です…すいません、下の名前は知らなくて…」
「…コノエ曹長ねー」
ミミはその名前を反芻しながら、ルーキーの事を思い出していた。
(…もし、コノエって人が生きてたら…ルーキーちゃんを助ける方法、教えてくれたのかなー…)
「…隊員を処刑ですか。なかなか、穏やかではない事をする方達だ」
ハヤは、副支部長が語った最近の出来事をメモしていると、何やら怪しげな出来事があった事が分かった。
「我々としても、そのような事をするのは早計ではないかと反対していたのですが…支部長代理が独断で、ある部隊長に特別任務と称してそれを実行させたのですよ…」
どうやら、副支部長の言い分としては、支部長代理が勝手にやったので自分達は悪くない、と言いたいらしい。
「それに、その日の前日はアラガミの群れが襲来するという、前代未聞の異常事態が起こった後でしたので、誰も支部長代理の暴走に気が付かなかったのですよ…」
ハヤは、その支部長代理という存在が気になり、尋ねる事にする。
「ところで、その支部長代理とやらは今どこに?」
すると、副支部長は急に歯切れが悪くなる。
「…それが、ですな…支部長代理は、本部から一時的に派遣された方でして…しかも、後から本部に確認を取ってみると、そんな奴はいない、派遣した覚えはないの一点張りで…責任の所在を追及する事すら出来ない状況でして…」
それを聞いて、ハヤはある可能性に辿り着いた。
「…つまり、本部の内部に支部長代理を匿っている一派が存在しており…そして、その一派は支部長の失脚を防ごうと、証拠を隠滅して回っていると?」
そんな事を言われるとは思っていなかったのか、副支部長は酷く驚いた。
「…驚くほどの事でもないでしょうに。情報監査官という役柄上、時として反乱分子でさえフェンリルに存在しているという事を思い知るのです。一枚岩ではないのですよ、フェンリルは…」
それは、ハヤが第零部隊として暗躍してきた感想だった。
「…そうですな…支部長も、その一人に過ぎなかったのですな……人間とは、何と愚かしい生き物なんでしょうなあ…」
しみじみと、副支部長はそんな事を言った。
「…では、支部長が管理していたという、実験室へ案内をお願いしましょうか。恐らく、そこに隊員を処刑してでも隠したかったものがある筈です」
「ええ…ご案内しましょうとも」
そうして、二人は下への階段を下りて行った。
原作からの乖離が顕著に出てくる箇所。
二次創作+オリジナル設定のクオリティなんてこんなものです。
さて、設定厨さんがアップを始めた頃でしょうか?