ゴッドイーター原作の小説、少しずつ増えてきてますね!
もっと盛り上がっても、ええんやで?
「…ようやく終わったぜ…後はこの報告書を提出すりゃあ、任務完了ってな」
「…ハヤ。朝から任務とは、頑張っているようだな。いい事だ」
フェンリル戦船支部から戻って来た後、ハヤは実験室で調べた事を報告書にまとめていた。
支部長が管理していたという実験室…あの場でハヤが目にしたものは、酷く陰惨なものだった。
支部内に侵入してきたアラガミを迎え撃つ為に、一人のゴッドイーターが甲板に降り立った。
甲板の端にいた研究員と少女が気付き、振り返る。
すると、突然その少女は隣にいた研究員を喰い始めた。
研究員は驚いて悲鳴を上げるが、すぐに鮮血に飲み込まれて静かになってしまう。
アラガミが、少女とゴッドイーターを隔てるように立ち塞がると、ゴッドイーターの銃口が火を噴いた。
少女はただ、肉の塊を喰い漁っていた。
場面が変わり、研究員が何やら実験は成功しただのと喚き散らかしていた。
他の研究員も大声で何事かを叫びながら、データを取っていた。
そんな映像が残っていた。
それらをまとめ、ハヤは内心に渦巻くどうしようもない感情を押さえ付けながら、部屋を出る。
すると、同じタイミングで食堂のドアが開かれ、中から出てきた人物とハヤの視線が合う。
「…た、隊長…!」
ハヤの脳裏に、引き摺っていた感情を遥かに凌駕する怒りに満ちた言葉が蘇る。
「…ハヤ。私は忙しいと言っている。私は馬鹿が嫌いだ。反省と学習をしないからだ。そして、私はしつこい男が嫌いだ。ハヤ。私の言いたい事が分かるな…?」
あまりのショックに、アラガミ相手にも着けた事のなかった両手を、ハヤは床に着いていた。
そんな、生涯忘れられないような敗北を喫した相手が、ハヤの目の前に現れていた。
ハヤは青い顔で反射的に報告書から手を離してしまうと、目の前が真っ暗になった。
「…どうしたんだ?具合でも悪いのか?顔色が悪いぞ」
隊長の額が、ハヤの額に当てられる。
報告書が床に散らばった。
(………っ????!!)
あまりのショックに、アラガミ相手にも着けた事のなかった背中を、ハヤは床に着いていた。
「隊長がハヤに頭突きした~!パワハラだ~!いけないんだ~!」
熱でもあるのかと額を当てたつもりだった隊長は、後頭部から思い切り床に倒れ込んでしまったハヤとの接触の瞬間を、ナナに見られていた。
「ち、違う!違うから!ハヤ、大丈夫か!?」
見事に気を失っているハヤを、起こしてやろうとしゃがみ込むと、隊長は床に散らばった報告書に目が行った。
「…フェンリル戦船支部…調査報告書…?」
隊長は散らばった報告書をかき集めると、ハヤを放置したまま報告書に目を通す。
「…これは……神機に関する実験と…アラガミ化に関する実験か…?」
そこで、隊長は妙な事に気付いた。
「…ないぞ」
「ハヤ~?生きてる~?」
ハヤの横腹を突っつきながら、ナナは隊長の隣にしゃがみ込んだ。
「偏食因子に関する実験が、この報告書には入っていない…!」
それは、隊長とナナがデータベースにアクセスして調べた、言い換えれば支部に保存されている情報だった。
それが、ハヤの調査報告書には含まれていなかった。
「…おい!ハヤ、起きろ!目を覚ませ!!」
ハヤの胸倉を掴み、隊長はハヤの体を揺さぶる。
「…うわ~…ハヤ、かわいそ~…」
しかし、ハヤは一向に目を覚まさなかった。
「…くっ…」
隊長はハヤから手を離すと、調査報告書をナナに押し付けた。
(…まだだ。あのハヤが、調査や諜報を好んで受けるとは思えない…誰かの任務に同行したか、誰かの代わりに受けた筈だ…)
隊長は、部屋を回るべきか、オペレーターに尋ねるべきかで迷い、オペレーターに尋ねる事に決めた。
「ナナ。ハヤを見張っていてくれ。何か嫌な予感がする」
それだけ言うと、隊長は一階に向かった。
(…どういう事だ。あの方と本部と、両方から同じ任務が出されている……そして、調査内容がまるで噛み合っていない……これらが意味するところは……!)
「…ミミ。その報告書を、私に渡せ」
今まさに、オペレーターに調査報告書を提出しようとしていたミミを、既のところで呼び止めると、隊長はそう言った。
「た、隊長?ど、どうしたんですか?」
オペレーターは訳も分からずに狼狽えるが、それを隊長は無視する。
「…それは………ダメだよー、渡せない」
隊長の言葉に首を横に振ると、ミミは報告書を胸に抱えた。
「これは、命令だ」
「ダーメ!」
そして、隊長命令をも突っ撥ねた。
「これは、ミミの大切な報告書なの。これがないと…」
ミミは悪戯っぽく微笑むと、続けて言った。
「…ミミが復讐できなくなっちゃうよ?」
はっきりと、ミミは言った。
復讐だと、そう言った。
「…復讐…?」
ミミの言葉の真意を確かめるように、隊長はミミの言葉に疑問を返した。
「そうだよー、復讐。ミミは、この部隊に入った時に決めてたんだー。いつか必ず、ミミや仲間を苦しめた奴に復讐するんだって」
ミミは胸に抱えた調査報告書を広げると、中身を暗い瞳で見つめる。
「…隊長は、知ってた?この部隊に来る前、ミミはこの支部にいたんだー。それで、新しい刀身の試験体だって言って、アラガミ化実験の実験台にされてたんだよ?」
その瞳には、様々な苦痛の色が垣間見えた。
「…ミミを処分した、昔の仲間に会ったよ…アヤノ、ミミを処分した時の事、何度も夢に見てるんだ……カイ、最近仲間を処刑したんだって言ってたよ…」
ミミの瞳に涙が溢れ、それを零してしまわないように、ミミは耐える。
「…ミミと同じように、苦しんでる人にも会ったよ……ねぇ、隊長…そんな人達の為に、ミミが復讐する事は、悪い事なのかな?そんな人達を苦しめてる支部長は、悪い人じゃないのかな?」
隊長は…肯定も否定もしなかった。
「…悪いが、私はそんな事に興味はない。私は第零部隊の隊長だ。それ以上でも、それ以下でもない」
そんな事よりも、隊長にとっては報告書の方が重要だった。
「…え…?」
それが上手く伝わらなかったのか、ミミは意外そうな顔をした。
「…私にとっては、私達が調べた情報と、お前達が調べた情報が、全く噛み合っていない事の方が重要だ。そんな事は、本来あり得ない事だからな」
隊長は、ただ淡々と自分のペースを保ち、自分の要件を述べ、それは相手に考える余地を与える。
「私達は、あの方との取引でフェンリル戦船支部について調査を行った。ところが、お前達の調査報告書に書かれている内容と噛み合う部分がなかった。妙だとは思わないか?」
気付いた時には、ミミは動揺していた。
「…な…何が言いたいの?」
そして、流れが変わっていた。
「…どちらか、いや両方の可能性もある。情報が間違っているんだ。そして、これは私の予想だが…」
隊長は、ゆっくりと言葉を繋げる。
「その件に、支部長は関わっていない」
第2章は、実はミミ回だったという。