GOD EATER ~狼の追跡者~   作:黒槍

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 第3話(4) ルーキーのいない第零部隊の一ヶ月・後編

「…さてと、話を聞かせて貰おうか」

 

「…どういうこった…?」

 

 

 

 

 

地下二階の作戦会議室にて、隊長の尽力で何とか大事を免れたハヤとミミは、椅子に座って申し訳なさそうにしていた。

 

ミミは、心ここにあらずといった感じだったが。

 

「…ハヤ。お前が付いていながら、何て体たらくだ。反省しろ」

 

気を失って、目を覚ましたと思ったら椅子に座らせられていたハヤは、同じように座っていたミミを見て、大体の事情を察して反省する。

 

「怒り心頭で、気もそぞろになっちまってた…悪い…」

 

その気持ちは理解できるがと、隊長は前もってフォローを入れておく。

 

「実験の映像を全て鵜呑みにするとは、情けないぞ。映像があるのなら資料が残っているのが当然だと、次からは疑うようにしろ」

 

ハヤへの簡単な説教を終えると、隊長はミミの方へと視線を向けた。

 

ミミの肩が強張る。

 

「…それと、先ほど上に確認を取ったところ、お前達の報告書にあった実験は、ロシア支部のデータベース内に残っていたものだった事が判明した」

 

二人が驚いて顔を上げる。

 

「…恐らくだが、あの船には様々な支部の研究員が乗っていて、その実験内容もそれぞれの支部が管理しているという事だろう。少なくとも、フェンリル戦船支部の支部長が全てを管理していた、という可能性はなくなった」

 

ミミの瞳に涙が溢れ、今度こそ零れ落ちた。

 

「…ごめんなさい…ごめんなさいー…」

 

泣き出してしまったミミに、ハヤは焦り始め、ナナはあらら~と少し申し訳なさそうにする。

 

「…ミミ。何故謝る?何故泣く必要がある?」

 

しかし、隊長はミミの前に歩み寄ると、腰を落として視線の高さを合わせた。

 

「だって…だってぇ…」

 

そして、そっとミミの頭に手を載せた。

 

「お前達が調査に向かわなければ、戦船支部の支部長は本部に拘束されたままだったかもしれない。それどころか、より酷い状況になっていたかもしれない。そうなっていないのは、お前達のお陰だろう?」

 

子どもを慰めるように柔和な笑みを浮かべると、隊長はミミの髪を撫でる。

 

「よくやった」

 

それからしばらく、ミミの泣き声が作戦会議室に響いていた。

 

 

 

 

 

「…これ、何ー…?」

 

ミミとハヤが持っているのは、幅が1mほどのモップである。

 

「命令違反に対する罰だ。二階の隅から隅まで掃除しろ。埃が一つでも残っていたら、一からやり直しだ」

 

「何でオレまで…」

 

命令違反をしていないハヤは、不服そうに声を上げるが、隊長の一睨みで黙る。

 

「連帯責任という言葉を知っているか?」

 

知らねえよと言いたげに口をぱくぱくさせると、ハヤは諦めたように溜め息を吐いた。

 

「しっかたねえなあ…」

 

ぶつくさと何事かを呟きながら、ハヤは作戦会議室に入って行った。

 

それを追いかけようとするミミの肩を掴み、隊長はぼそっと呟く。

 

「…私は、第零部隊の隊長だぞ。困っている隊員を助けるのが、私の仕事なんだぞ。分かったか…?」

 

少し拗ねたように言う隊長に、ミミは思わず噴き出して笑った。

 

「あははっ!…うん、分かったー!」

 

その笑顔は、いつもより無邪気だった。

 

ミミが作戦会議室に入って行くのを見届けると、隊長は真剣な面持ちで呟いた。

 

「…ナナ、さっきの話がいよいよ現実味を帯びてきたようだ」

 

どこからかひょっこりと顔を出したナナは、隊長の言葉に頷く。

 

「…そうだね~…しばらく連中も動きにくい筈だから、明日には確認が取れそうだね~」

 

そうだなと相槌を打ち、隊長は振り返る。

 

「…あの男が本当に死んでいるか、な」

 

 

 

ナナの部屋に移動した隊長は、取引の結果が正当に反映されている事を確認すると、いよいよ本題に入る。

 

(…待っていろ、ルーキー。これで、私が君を助けてやる…!)

 

ナナが隊長の代わりに端末を操作し、アラガミ化後の生還例に関する資料を開いた。

 

すると、そこにはアラガミ化したゴッドイーターを生還させる為のプロセスが、書かれていなかった。

 

そんな事は、一切、書かれていなかった。

 

「……………どういう…事だ…?」

 

隊長は、端末に映った文字を一つ一つ追っていくが、何一つ正確な情報は、そこにはなかった。

 

生還した人物と、アラガミ化が発症した時期、生還した日付などは書かれていたが、どうやって生還に至ったのかがまるで曖昧だった。

 

ただ、生還率0%の壁が、そこにはあった。

 

「っ!…ふざけるな…!!これが、現実だとでも言うのか…!!諦めろと言うのか…!!……何で…っ……こんな…っ…!」

 

そう言って、隊長はその場に泣き崩れた。

 

どうしようもない現実に、打ちひしがれた。

 

奇跡…そんな言葉が、文の末尾を飾っていた。

 

人々に希望を与え、勇気を与え、アラガミをも退ける力を生み出してきたその言葉は、神ならざる者の無力を、ただ存分に知らしめているだけだった。

 

「………」

 

ナナは、何も言えなかった。

 

その代わり、せめて少女のように泣きじゃくる隊長の枕にでもなれたらと、隊長を優しく抱きしめていた。

 

そうして、長い一日が終わった。

 

 

 

 

 

「…隊長~…朝だよ~…?」

 

泣き疲れて眠ってしまっていた隊長は、ナナの腕の中で目を覚ました。

 

「………あぁ…」

 

今までの事が、酷く悪い夢を見ていただけのような、そんな風に感じられるほど柔らかな目覚めを迎えた隊長は、そんな訳はないと頭の中で否定し、まつ毛の先に涙を浮かべた。

 

「…やっぱり、昨夜は例のゴッドイーター達、来なかったみたいだよ~…」

 

風に吹かれたら、ふわふわとどこかへ飛んで行ってしまいそうなナナの声が、隊長の耳を優しく突っつく。

 

「………そうか…なら、あの男を…探しに行かなければ、ならないな…」

 

そうは言いながら、ぎゅっと、隊長はナナに抱き付いた。

 

「…だが……もうしばらく…こうしていても、いいか…?」

 

隊長は、静かに目を閉じる。

 

「…うん、いいよ~…」

 

ナナに髪を撫でられる感触を頭に受けながら、隊長はもう一度、深い眠りへと落ちて行った。





一ヶ月じゃなかった(白目)。

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