GOD EATER ~狼の追跡者~   作:黒槍

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今後の展開を考えていたら、随分と時間が経っていました…

この章もしくは次の章で、ルーキーの謎が明らかになる気がします。




 第1話(2) ドキッ!女だらけのアラガミ討伐は数の暴力

「…ドクター、その……ルーキーの様子は、どうだ…?」

 

「はぁ……あのね?一日二日でどうこうなる代物じゃないって、昨日も言ったわよね?」

 

 

 

 

 

「それでは、行ってらっしゃいませ、エイン様」

 

一夜明けて、隊長はサポーターからの朝のマッサージを受け終えると、早めに出撃の準備を終わらせ、医務室に足を運んだ。

 

すると、医務室の前でドクターと遭遇する。

 

「…また来たのね。何と言うか、聞くまでもないと思うけど…要件は何かしら?」

 

ドクターは、隊長の顔を見た瞬間に呆れたように溜め息を吐くと、分かっているであろう事を念の為に、わざわざ、尋ねた。

 

そして、やはりその返事は分かっていた事であり、ドクターは重ねて溜め息を吐く。

 

ここしばらく、隊長はずっとこんな調子だった。

 

ルーキーの全身に広がっていたアラガミ化の侵喰が、日に日に右腕に縮小していっているという事を、こちらもわざわざ、尋ねるのである。

 

そんな、足繁くルーキーの元へ足を運ぶ隊長の姿は、ドクターの目から見れば異質であり、もっと言えば異常でもあった。

 

毎日毎日、まるでそれが義務であるかのような、ある種の強迫観念に囚われているように、隊長は医務室へと足を運ぶ。

 

隊長、隊長、隊長…そう、隊長。

 

人とは、他の人の在り方を映す鏡だという。

 

それが事実であるならば、隊長はまさに、隊長の鑑だった。

 

人を映す事なく、ただ一つの存在を映し続ける、プロジェクターのような存在。

 

異質で、異常で、人ではない気持ち悪さを持った、何か。

 

「…すまないな。自分でも上手く説明出来ないんだが…何と言うか、どうも気掛かりでな」

 

ドクターは、隊長の申し訳なさそうな顔を繁々と眺め、ぼそっと呟いた。

 

「…貴女のそれ、熱心というか、執心って感じね…」

 

ドクターの呟きを聞き取り損ねた隊長は、疑問符を浮かべてドクターの方を見る。

 

「何でもないわ。と、言いたいところだけど……そうね…貴女の事好きよって言った手前、冷たくしてみるのも一興だし、どんな反応をするのか興味がない訳じゃないけど……まぁ、自己嫌悪に対する、自己満足みたいなものね。ありがたく耳を傾けなさいな」

 

すると、ドクターは何やらよく分からない事を呟くと、隊長の額に人差し指を押し当てた。

 

「しっかりと地に足を着けておきなさい。でないと、足元を掬われてしまうわよ?」

 

次の瞬間、隊長は床に尻餅を着いていた。

 

「っい、いきなり何をするんだ!」

 

突然の事に驚いた隊長は、「ドクター知ってるよ。光の柱が大事だってこと。」みたいな、何とも言えない笑顔を浮かべるドクターに抗議しながら、手首を掴まれる。

 

そのまま手を引かれ、隊長は立ち上がった。

 

「最近、気を抜き過ぎじゃないかしら?隊長さん?」

 

そんな隊長を諌めるような口調で、ドクターは言う。

 

「………こんなところで気を張っていても、仕方がないだろう?」

 

隊長は、どことなく言い訳じみた物言いになってしまっている事に気付いているのかいないのか、ドクターから顔を背けた。

 

「…そうかしら?あの子が来る前の貴女なら、そんな甘えた事は言わなかったと思うけど?」

 

ぐさりと、隊長に鋭利な言葉が突き刺さる。

 

「…そ、そんな事は…っ!」

 

咄嗟に言い返そうとし、隊長はドクターと目が合う。

 

心の中を隅から隅まで覗き込んでいくような目が、隊長を見ていた。

 

「ないのかしら…?」

 

思わず目を逸らしたくなるような真っ直ぐな視線が、隊長の視線を掴んで離さなかった。

 

一歩、また一歩と、ドクターは歩を進める。

 

隊長は、何かしてはいけない事をしてしまったかのような、どうしようもない背徳的感情に襲われた。

 

「っ…!?」

 

そして、無意識の内に後ずさって壁に背中をぶつけると、床と壁の隙間に押し込まれるように、隊長はその場にへたり込んでしまう。

 

「…あの人の跡を継いで隊長になった頃の貴女に、今の貴女はよく似ているわ。夢中で、必死で、懸命で、貴女はただ隊長であろうとする。それ以上でも、それ以下でもなく、ただ隊長であろうとするの。だから、貴女は弱い」

 

隊長の目に、ドクターの無表情な顔が映り込む。

 

「弱さって言うものは、隠せば隠すほど増えていくわ。そして、そんな弱い者に隊長は務まらない……そうでしょう?私の相手にもなれない、かわいいかわいいエインちゃん?」

 

隊長は、何も言い返せなかった。

 

ただただ、ドクターの視線に射抜かれるがまま、言われるがまま、嵐が過ぎるのを待っていた。

 

そんな隊長に背を向けて、嵐は雨を降らせる。

 

「………貴女の努力は認めるわ。けど、それだけじゃ隊員は付いて来ないの。……もっと強く、もっと自分らしくなりなさい。あの人の真似なんて、貴女には出来っこないんだから…」

 

それだけ言い残すと、ドクターは医務室に入って行った。

 

廊下には一人、隊長だけが残される。

 

「………そんな事、分かっている……けれど……私は、隊長でなければいけないんだ……隊長の、代わりでなければいけないんだ……っ」

 

その言葉は、誰にも届く事なく、廊下の中に吸い込まれて行った。

 

 

 

 

 

「…あの…ドクターさん?今外にいた人って、もしかして…」

 

閉め切られたカーテンの向こうから、ドクターに話しかける声が届いた。

 

その声は控えめに、出来るだけ部屋の外に漏れないように発せられる。

 

「…そうよ、エインよ。毎日毎日、同じ事を聞いてくるんだから…」

 

呆れたようにドクターが言葉を返すと、その声はくすくすと笑った。

 

「…隊長、元気そうですね……もう一ヶ月以上会ってませんけど、少し安心しました」

 

どことなく嬉しそうなその声に、ドクターは少し申し訳なさそうな声を漏らす。

 

「…そ、そうね…」

 

まさか説教じみた事をしてしまったとは言えず、ドクターは素早くカルテを手に取ると、内容を確認するふりをした。

 

「…それより、僕はいつまでここにいればいいんですか?」

 

すると、その声はタイミングよく誤魔化せそうな内容の話を、ドクターに振った。

 

ドクターは、これ幸いとその話題に飛びつく。

 

「アラガミ化した原因が分かるまでよ。あと、貴方の持つ偏食因子の正体も、ね?」

 

これから楽しくなりそうだと意気込むドクターを尻目に、ベッドに横になっている声の主であるルーキーは、部隊への復帰を夢見て、今か今かと楽しみにしているのだった。




体調不良の為、しばらく週2か3くらいの投稿になると思います。
週1でした。

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