GOD EATER ~狼の追跡者~   作:黒槍

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 第2話(3) 第零部隊に忍び寄る崩壊へのカウントダウン

「くっそ…こんな時に、ハヤは何やってんだよっ…!」

 

 

 

 

 

突然の爆発音に、突然の警報。

 

突然のサポーターの出現に、二度目の警報とそれに伴う施設内放送。

 

突然の事ばかりで、ククはそのつっこみスキルを、いま一つ有効に使えていなかった。

 

当然である。

 

つっこみを極めるには、師の下で最低20年の修業期間が必要なのだ。

 

そう簡単に有効活用できよう筈もなかった。

 

「ふふはは…ほふはえひははひはひは」

 

「っ黙れ変態っ!!」

 

綺麗な弧を描きながら、ククの手の甲がサポーターの肩をはたく。

 

溜めといい、タイミングといい、力加減といい、ククのつっこみはレベルが高かった。

 

割とどうでもいい。

 

ボールギャグを装着して自分の涎に溺れながら、ククのサポーターは涙目で言葉にならない何かを訴えていた。

 

頬を紅潮させて、とてもいい笑顔である。

 

これで美少女だというのだから、恐れ入るというか、酷く残念というか、人生の百分の一くらい損をしてしまった気分になってしまう。

 

ククは、汚らしい阿呆のような顔をしたサポーターからボールギャグを奪い取ると、青い顔でサポーターを睨みつけた。

 

「おい変態、公衆の面前で何やってるんだよ?」

 

「…公開放置プレイ?」

 

「やっぱり黙ってくれ……」

 

残念どころではない美少女サポーターを直視できなくなったククは、つい俯いてしまう。

 

すると、何だか甘い匂いが漂ってきている事に気付いた。

 

涎でべとべとのボールギャグからである。

 

(…変態じゃなければ、ただの美少女なのに……)

 

ククは人生の百分の一くらい損をした気分になりながら、涎でべとべとのボールギャグをサポーターに返した。

 

美少女サポーターの柔らかい手がククの手に接触するが、もはやそれすらも損でしかなかった。

 

「…って、違う!さっきの爆発と警報は何だよ?」

 

灰色の青春、略して灰春のワンシーンらしきものを演じた余韻も冷めない内に我に返ったククは、ようやく今が非常事態だという事を思い出す。

 

ところで、灰春だと桜が咲きそうな感じだ。

 

「クク様…お迎えに上がりました」

 

先ほどの聞き取れないハ行だらけの言葉は、そういう意味だったらしい。

 

「…分かったよ。で、俺は侵入者の迎撃をすればいいのか?」

 

訓練場から上がって来たばかりだったククは、何やら騒がしい上階を見上げながら言う。

 

「それは、既に私達が…ひぁっ!!」

 

「どうした!?」

 

そこで、突然サポーターが変な声を上げた事に驚き、つい心配して尋ねてしまった。

 

もしかしたら、負傷していたのを隠す為にあんな変態じみた事をとまで、ククは本気で考えていた。

 

「涎のべとべと…気持ちいい…ゾクゾク…」

 

「っ黙れ変態っ!!」

 

ククの渾身のつっこみが、サポーターの胸を直撃する。

 

その柔らかな感触に、ククは人生の百分の一くらい、得をした。

 

 

 

 

 

「…酷いな…これ……」

 

ラッキースケベ的なハプニングの後、サポーターから「お触りはダメ…でも、お叩きは歓迎…!」という、予想通りのリアクションが飛んでくるかと思いきや、普通に怒られてしまったククは、頬にできた不名誉な勲章を携えながら、二階に上がって来ていた。

 

そして、そのあまりにも凄惨な光景に、声を絞り出すのが精一杯だった。

 

任務の時いつも何気なく通っていた出入り口が、爆発物か何かで完膚なきまでに破壊されており、その爆発に巻き込まれたらしい瀕死の作業員や、戦闘で負傷したサポーターや、既に事切れている侵入者の血で、通路は赤く塗り潰されていた。

 

焼け焦げたような不快極まりない悪臭が、辺りを覆っている。

 

そこで、ごりっと、ククはその光景に気を取られ、何かを踏んでしまう。

 

「?何だこれ…」

 

黒く焦げた、棒状の物体だった。

 

それが、倒れているサポーターのちぎれた腕だという事に気付き、素早く足をどけて後ろに下がる。

 

「………侵入者は、爆発物を使うのか…」

 

今ので戦闘態勢に入る覚悟が決まったのか、それとも恐怖を抑え込むために声に出して、状況を整理しようとしたのか、ククはところどころ爆破された跡のあるエレベーター周辺を見つめながら、そう呟いた。

 

階層の表示が一階となっていた。

 

どうやら、侵入者達は既に一階にいるらしい。

 

盾の神機を取り出す。

 

神機が通常兵装に対して、どれだけの効果を発揮するのかは分からなかったが、試すだけの価値はありそうだった。

 

一方、ククのサポーターは、既に一階に向かってしまったようで、ククの背後から姿を消していた。

 

「…クク様…こっち」

 

いや、いた。

 

ククは、真上から聞こえてきた声の方へ頭と視線を向けると、ククを覗き込むように首を出しているサポーターと目が合った。

 

「そんな通路があったのか」

 

「緊急時以外は…使っちゃダメ」

 

それにしても、とククは思う。

 

梯子も階段もない通気口のような天井の穴に、音もなく上っているサポーター達は、一体どんな訓練を受けているんだろう、と。

 

「…いや、使わないし。そもそも俺じゃ、逆立ちしても届かないって…」

 

「………」

 

すると、どこか申し訳なさそうに、サポーターは梯子ロープを下ろした。

 

「あぁ、ありがとう…」

 

上のどこかにロープを引っ掛ける為の箇所があるのか、しっかりと固定されているロープを上りながら、ククは自身の不甲斐なさを呪いたい気分になる。

 

何故ならククは、ルーキーを除いて一番の若輩であり、神機の特殊性を買われて第零部隊に配属されたようなもので、その実力は部隊長レベルとは言い難いものだったからだ。

 

そんな事を考えている内に、ククは天井の裏側の通路に顔を覗かせる。

 

そして、見てしまった。

 

サポーターの下着と、サポーターがその華奢な腕で懸命にロープを支える姿を。

 

そうして、より一層複雑な気分を味わいながら、ククはサポーターの後ろについて行き、侵入者達がいるであろう一階へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

「…おかしい…ハヤがいないぞ…?」

 

侵入者達の真上、天井の裏からその動向を窺うククは、自分よりもずっと先に侵入者達の元へ向かったであろう、ハヤの姿が見当たらない事に気が付いた。

 

「…クク様…そんな事より、あれ…」

 

すると、横からサポーターがククの腕を引く。

 

それに促され、ククは視線を侵入者達の方へと戻す。

 

「…いないな…奴等、不在のようだ…」

 

「…本当か…?単に待ち伏せているだけじゃないのか…?」

 

「…いちいちいちいち、うっさいのよアンタ…!」

 

どうやら、主犯格は会話を交わしている三人であるらしく、三人の周囲に佇んでいる黒いローブとフードをまとった有象無象からは、まるで意思疎通を取る素振りが見られなかった。

 

ククの目が、何かに気付いたように鋭く眇められる。

 

「…奴等、爆発物を持っていないな…下での戦闘跡を考えると、相当量の爆発物を使った筈だ…弾切れか、それとも…?」

 

すぐ隣にいなければ聞き逃してしまいそうな速度でそう呟くと、ククは神機を抱えて立ち上がった。

 

「クク様…!もう少しで、応援が…!」

 

「なら、それまで奴等の足を止める…!」

 

サポーターが止めるのも聞かず、ククは意を決して穴に飛び込むと、シャッターで閉じられたカウンターを過ぎたところで言い合いを始めた三人の侵入者と、それを身動き一つせずに見守る群れに立ち塞がるように、降り立った。

 

それは、第零部隊の基本である。

 

単独任務や、単独行動…それが第零部隊の基本であり、第零部隊が最高の部隊と呼ばれる由縁であり、第零部隊が腕輪を外す目的の一つである。

 

撃退・討伐・調査・諜報・潜入・工作・破壊・奪取・回収・制圧、あらゆる任務を単独で行う事。

 

それが、第零部隊だった。

 

第零部隊に配属されて一年程度の期間しか経っていなくとも、ククは第零部隊の一員だった。

 

たとえ、ルーキーを除き一番の若輩だったとしても、である。

 

「っ!?誰だっ!」

 

ククは、力を抜いた格好でゆらりと立ち上がる。

 

それとともに、ククの神機からゆらりと黒い靄が立ち上がる。

 

「…本当は名乗れる名前はないんだが、敢えて名乗るとすれば…」

 

そして、徐に外した眼鏡を投げ捨てた。

 

「…ナンバー99だ。よろしく」

 

 

 

 

 

「ビンゴ…!これが爆発物のっ!!…正体だな」

 

剣戟を防ぎながら突き出された盾の、正面から突然飛び出した刃に貫かれ、統制された動きを取る黒フードの人形は爆発した。

 

しかし、全身の半分以上を守る盾に阻まれ、その爆発はククに対してほとんどダメージを与えられない。

 

「出たな、0…!」

 

「やっぱり待ち伏せされてるじゃないか…!」

 

「タイミング悪ぅっ!最悪じゃん!」

 

その様を見て、三人は三者三様な感想を漏らす。

 

そして、ククはその発言を聞き逃さなかった。

 

(0…?…存在が知られている…?第零部隊の存在は、本部の上層部しか知らない筈だ。どういう事なんだ…?上層部の関係者なのか?…それとも…)

 

ククは、サポーターにこの事実を知らせるべく、出来るだけ大声で叫ぶ。

 

「お前達は何者だ!!どうしてここの存在を知っている!!?」

 

「!?」

 

すると、気弱な雰囲気の覆面があからさまに慌てた風に文句を言う。

 

「君の所為で、彼にバレたじゃないか!どうしてくれるんだ!」

 

それを悪びれもなく鼻で笑い飛ばす覆面が、ローブからアサルトの神機を取り出した。

 

「はっ!ここに来た時点で、そんな事はバレているようなものだ!!そんな事より、相手はあの0だぞ?油断するな!」

 

どうやら、この三人の中にリーダーらしい人物はいないようだった。

 

そして、その覆面の一言で三人全員が神機を構えた。

 

「ええい!どうしてこうなるんだ!!」

 

「こっちのが分かりやすいし?それに簡単じゃん!!」

 

黒づくめの集団は、クク目掛けて一斉に襲い掛かった。




そう言えば、明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

あと、少し誤字修正。

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