タグでも募集しようかな~…
…失敗に終わりそうな予感がします。
「…向こうでドンパチやってるみてえだな……って事は、ククの野郎か」
「ククさんって、物腰が柔らかいですよね。ハヤさんとは真逆の感じで…いえ、何でもないです」
「盾が相手とか、余っ裕ぅ!」
長い長剣という、頭痛が痛いみたいな妙な表現を強いられる神機を使う侵入者は、他の誰よりも速くククの目前に迫ると、それを振り下ろした。
ククはそれを盾の神機で難なく受け止めると、その隙に周囲の確認を済ませてしまう。
その結果、応援はまだ来ず、爆弾人形は広がって接近してきていて、主犯格の三人の内二人は後方支援。
そして、移動と攻撃の反動でふわりと舞い上がったローブの中に、ぴっちりとした黒いタイツのようなものを着ていた長々剣神機の持ち主は、そのメリハリのあるボディラインから、性別が女である事が判明した。
少し罪悪感を覚えてしまうククだったが、仕方ない事だと割り切って、盾を支える左腕の力を緩めた。
「…ちょっ!えっ!?」
そのまま、ぐいぐいと押し込まれていた長々剣を引き込むように受け流すと、バランスを崩した女侵入者の脇腹に流れるような膝蹴りを叩き込む。
「うえっ?!」
「…余裕、ねぇ?」
あまりに綺麗に決まり過ぎて、内心で驚いてしまったククは、女侵入者が立ち上がれないところを見て、爆弾処理の方を優先する事に決めた。
すると、広がって迫ってくる爆弾人形のど真ん中を強行突破する訳にもいかず、取り囲まれないように端から順に片付ける事に決まる。
「うおりゃあああ!!!!」
雄たけびを上げながら連射してくる、アサルト侵入者の弾丸を盾で防いでから、ククはタイミングを見計らって走る。
盾から漏れる黒い靄が、飛行機雲のようにその後を漂った。
ククが最初に狙いを付けたのは、壁際から迫ってくる一体。
それは、ローブの中に隠し持っている神機のような剣を振るってくるが、ククの盾の前では無力過ぎた。
「効かないよ」
ククはそのまま盾を押し込み、剣を弾き返しながら人形の胴体に盾を密着させると、盾の正面から刃を飛び出させる。
そうして、人形は呆気なく刃に貫かれ、貫通した刃を隠すように爆発した。
「おっと…!」
直後、その爆発に紛れるように弾丸が飛んでくる。
ククは、それをしっかりと防ぐと、右側面から人形が迫って来た事に気付き、振り下ろされる剣に合わせて、盾を右側面へと向けた。
そこへ、一体の人形が投げ込まれた。
「やれぇっ!!!」
ククを前後で挟むように人形が滑り込む。
「!!」
すると、先ほどから一切射撃をしてこなかった、もう一人のアサルト侵入者がここぞとばかりに銃を構えた。
その照準は人形の方に向いておらず、まるで起爆スイッチを入れるかのような素振りで、射撃する。
そして、二体の人形が爆発した。
天地がひっくり返るような感覚に襲われながら、ククは壁に打ち付けられた。
そこへ、追い討ちとばかりに次々と人形が投げ込まれ、満足に盾を構えられないククは、度重なる爆発で生死すら危うい状況へと叩き込まれる。
筈だった。
その状況を変えたのは、投げ込まれる人形に飛来した金属製の短剣だった。
ククの目前に人形が落下するよりも速く、矢継ぎ早で投擲された短剣が人形を貫き、次から次へと弾き出していた。
そして、人形が爆発する。
すると、爆発によって弾き飛ばされた短剣がククの目前に散らばるが、もはやククは恐ろしいとも驚いたとも思わなかった。
(…このナイフは…)
見覚えのない短剣だった。
もしかしてもう応援が来たのかと思い、短剣が飛来した方へ視線を向けると、そこには見覚えのある人物が立っていた。
「はぁ…はぁ……間に合った…」
ククが天井裏に置いて来ていた、ククのサポーターだった。
ククの危機を黙って見ている事が出来なくなり、降りて来たのだった。
そんなサポーターの健気な姿は、ククの目には誰よりも格好よく見えた。
自分のピンチに颯爽と現れる、ヒーローのようでもあった。
それが、ククは許せなかった。
まるで、自分が無力だと思い知らされるような状況が、再び目の前に訪れてしまう事が、どうしても許せなかった。
嬉しくない訳ではない。
しかしそれよりも、そんな感情よりも、心の奥底から湧き上がるどうしようもなく濁った感情の方が、優越していた。
「…ねぇよ…っ」
敵の注意が、ククからサポーターへと向けられる。
サポーターがどれほど高い能力を持っていたとしても、数の暴力の前には非力同然な事を、ククは身をもって知っていた。
「…ざけんじゃ…ねぇよ…っ…!!」
ククの神機が唸りを上げて刃を突き出し、盾がその姿を変えていく。
ククの異変に気付いたサポーターが、敵に狙われている事にも気付かず、ククに駆け寄る。
「っざっけんじゃねぇよっ!!!!」
爆発でぼろぼろになった体に鞭を打ち、ククは駆け出していた。
変形を終えた神機を、左手から右手へと持ち替える。
そして、サポーターを狙った弾丸が、放たれた。
「…許さねぇ…」
ククの目の前に、サポーターが倒れていた。
連射された弾丸の一つが、ククを庇うように突き飛ばしたサポーターの背中を捉えていたのだった。
ぎりぎりと、ククの神機が金属同士を摩擦させるような音を立て始める。
いつしかそれは激しさを増し、火花を散らしながら回転を始めていた。
ククの神機は盾から姿を変え、白い刀身に巻き付くように、黒い刀身がとぐろを巻いていて、それに回転が合わさり、黒い靄が撒き散らされていた。
その様は、まるで小さな嵐が顕現したかのようだった。
「てめぇら、ぶっ殺してやる…!!!」
ククは一歩、また一歩と歩き出す。
その度に黒い刀身は唸りを上げ、白い刀身は火花を散らす。
ククのその姿をどう判断したのか、人形達はククに一斉に襲い掛かった。
「消えろ、カスがっ!!!!」
一突き。
ただそれだけで、人形の胴体は穿孔機に巻き込まれてしまったかのように、文字通り、粉々になった。
そして、人形が爆発する。
しかし、その爆発は神機の高速回転と黒い靄にかき消され、ククのもとまで届く事はなかった。
「…何て事だ…!」
一振り。
ただそれだけで、人形の体は黒い靄に覆われ、喰い尽くされた。
そして、人形が爆発する。
「これが、0だと言うのか…!!」
後は、人形達に為す術はなかった。
剣形態、盾形態、捕喰形態の全てを同時に兼ね備えたククの神機は、神の怒りを体現したかのように人形達を滅ぼしてしまった。
「…残るは、てめぇらだけだ…!!」
ククの鋭い視線が、アサルト侵入者二人を射抜く。
「こうなったら仕方ない…時間を稼いでくれ、アレを使う…!」
「…分かった」
一人が何やら機材を取り出すと、一人が一歩前へ進み出た。
「こい、0…!」
そして、アサルトの神機を構え、ククに向けて弾丸を連射する。
「無駄無駄無駄ぁっ!!」
それを、ククは神機を前に向けるだけで防いでしまう。
「うおおおおおおっ!!!!」
連射量で言えば、通常のゴッドイーターより幾分か多く、連射速度も高い。
が、相手が悪かった。
侵入者が放つ弾丸は、ただ一つの例外もなく、ククの神機によって弾かれ、かき消され、ククのもとへ届く事はなかった。
一歩、また一歩と、ククは歩を進める。
「くそがあああああっ!!!!」
そして、
「無駄だって言ってんだろうがっ!!!」
ククの神機が貫通した。
侵入者の神機を完膚なきまでに破壊し、侵入者の胴体を容易く貫いた。
皮膚を破り肉を切り裂き骨を削り内臓を掻き回し、貫き通した。
「…くそ…が……」
それが、その侵入者の最期の言葉だった。
「…残念だったね…今回はこちらの勝ちだ」
ククが顔を上げると、機材のスイッチらしきものに指を置いた格好で、残った侵入者が勝ち誇った声を上げた。
その時、ちょうど天井裏からサポーター達がやってきて、侵入者の逃げ道は完全に塞がれてしまう。
「クク様、後は我々にお任せを」
それでも、侵入者は勝ち誇った声を上げる事を止めなかった。
「…最後にいい事を教えようか。こんな事もあろうかと、下の階に特製の爆弾を仕掛けてきている。とあるアラガミの素材を材料にした爆弾がね!」
ククはそれを聞いて、二階の出入り口が破壊されていた事を思い出した。
嫌な予感が走る。
侵入者はスイッチを押すと、声高々にカウントダウンを始めた。
「10!9!8!7!」
ククは神機を盾へと戻してしまうと、倒れて動かないククのサポーターの元へと急ぐ。
「皆、下がれ!」
「6!5!4!3!2!1!」
そうして、サポーターを庇うように盾を構えると、カウントダウンが終わった。
「…0!!」
直後、凄まじい振動が下の階から伝わって来たかと思うと、辺りが眩しい光に包まれ、ククは気を失った。
「……く…いいね…今のうちに、撤退だ……」
侵入者は、誰よりも早く目を覚ますと、床の8割が爆発によって抜けているのを確認し、満足そうにそう呟いた。
神機を拾い上げて周囲を見渡すと、結局大して役に立たなかった長々剣神機の女を見つける。
にやりと、いい事を思い付いたように神機を構えながら、女に近づく。
「…くっく…いつもいつも文句つけてきやがって、いい気味だ。敵の捕虜になるぐらいなら、今ここで殺しておこう、そうしよう。くっく…!」
そして、気を失って動かない女の頭に銃口を向けて、弾丸を発射しようとしたその時、侵入者は空気を裂くような音と、腕が斬り落とされた事に気付いた。
「っ!!?ぐううぅぅっ!!!」
壁に大剣が突き刺さる。
「…シャッターに穴が開いたんで出て来てみれば、何だこりゃ?」
ハヤだった。
爆発によって大穴が開いたシャッターから出てきたところで、何となく大剣をぶん投げたのだった。
すると、偶然おかしな動きをする不審者の腕に当たってしまい、斬り落としてしまったという事である。
多分嘘である。
「…そんなところに…隠れていたのか…っ」
予想外の闖入者に驚きを隠せない侵入者は、これ以上の長居は危険だと判断し、腕と神機を抱えると、床に開いた穴に飛び込んだ。
「ちっ…逃げやがったか……」
ハヤは、追いかけようかと少し考えるが、下の階に転がっているククの神機とサポーターの姿を見つけ、追いかけるのを止めた。
「…頼むから、隊長の留守に死んだなんてのは止めろよ…?」
そして、ハヤはククを探しに、下の階へと飛び降りた。
誕生日だったので、少し遅れました。
ハッピーバースデートゥーミー。