ようやく、GE2のストーリークリアしました。
でも、この作中では赤い雨は降らない気がします。
…きっと他の人がやってると思いますし…
「…あっ!ドクターさん!?これは、その…!」
「……ルーキー?……それを読んでしまったからには、貴方には覚悟してもらう必要があるわね…!」
「…という事で、貴方には全面的に協力してもらう事にするわね」
「はぁ…」
結局、カルテの内容を隅から隅まで読んでしまったルーキーは、戻って来たドクターとの会話を再開する事になった。
その内容は、専らカルテに書かれていた内容であった。
「まさか、貴方がドイツ語を読み書き出来るとは思いもよらなかったけれど…それなら、話は早いわ。どこまで読んだのかしら?」
ドクターは、それほど焦った様にも困った様にも見えず、むしろ話す手間が省けたと言わんばかりに話を続ける。
「全部です…」
「そう。じゃあ、簡単に説明するわね。まず、アラガミ化から生還すると、身体能力を含む諸々の能力が、人間では考えられない程のレベルまで強化されるわ。その理由は、体細胞の多くがオラクル細胞に置き換わる事によるものだと考えられるわね。と言っても、私が知っている例はミミしかいないから、ほとんど私の憶測なんだけど…」
ドクターの話は続く。
「あの子の場合は、アラガミ化による侵喰を途中で止められた事で、あの子の偏食因子が制御の仕方を記憶してしまった事と、それを機に、あの子自身がある程度自由に偏食を扱えるようになってしまった事が原因ね。だから、あの子は半分アラガミのようなものなのよ?」
それを聞いて、ルーキーはミミの言っていた言葉を断片的に思い出し、少し納得する。
「あの、質問いいですか?」
その中で、納得できなかった、というより、理解出来なかった事を頭の中でまとめる。
「何かしら?」
「偏食因子って、そんな臨機応変に作用するものなんですか?」
それはね、とドクターは解説するように言い出し、言葉に詰まった。
「………ごめんなさい。実は、その辺りはよく分かっていないのよ……ほら、私、科学専門じゃないから、ね……私に分かったのは、偏食因子か何かがコアの役割を果たしたんじゃないか、って事だけなのよ……本当、ごめんなさい……」
そして、ドクターは申し訳なさそうに二度も謝ると、ルーキーの不安感を煽った。
「………それって、僕が何でアラガミ化から生還したのかも不明って事じゃ…?」
気付いてはいけない事に気付いてしまったように、ルーキーは青い顔でドクターの方を見る。
「……う、う~ん……そう言う事に、なるかしらね…?」
「………」
やっぱり質問しなければ良かったと、本当にそう思うルーキーであった。
「…ドクター、ちょっといいー?…」
落ち込むルーキーに何と声を掛けていいか焦るドクターの耳に、助け舟を出すかのようなタイミングで、ミミのそんな声が聞こえた。
この声に、ルーキーは慌ててベッドの中に潜り込み、ドクターは何でもないような風を装い、コーヒーを口に運びながら返事を返す。
「ミミ?入っていいわよ」
すると、苦々しい顔をしたドクターと、困ったような顔をしたミミの目が合う。
「ど、どうしたのー?」
「こ、コーヒーが熱かっただけよ。そっちこそ、何かあった?」
その言葉に、ルーキーはベッドの中で首を傾げていた。
「う、うん。さっき本部から連絡があったらしくてねー…それで、緊急任務が出されたんだけど、メンバーが指定されててー…その中に、ルーキーちゃんと隊長が…」
その言葉に、ルーキーは思わずベッドから首を出していた。
「………そう。あの子なら、多分…多分、大丈夫だとは思うけど…」
「そ、そうなんだー、良かったー……えっとねー…それで、隊長の事なんだけどねー…」
ミミは言いにくそうに言葉を詰まらせると、遠回しに言う事にする。
「…ところでドクター、記憶喪失って知ってるー…?」
「…勿論、知ってるわ。身体的ショックや精神的ショックによって、記憶の一部もしくは全部を失う症状の事よ。ところで、まさかとは思うけど…」
ドクターが尋ねようとしている事を察し、ミミは頷いた。
「…うん…そのまさかみたいなんだー…」
すると、ドクターは徐にコーヒーを口へと運び、苦々しい表情で呟いた。
「…今すぐエインを連れて来なさい…」
そう呟いたドクターの声が低かったのは、コーヒーが熱いという事が理由ではなさそうだった。
射抜くようなドクターの眼光に驚き、ミミは慌てて医務室を飛び出していく。
「…あの、ドクターさん…?」
ミミの足音が遠ざかっていったのを確認すると、ルーキーは恐る恐るドクターに声を掛けた。
「…貴方は、しばらく工房に行っていて頂戴…ここを出て、廊下を真っ直ぐよ…」
「はい、行ってきます…」
ルーキーは、ドクターから有無を言わせない圧力を感じ、逃げ出すようにして医務室を後にした。
それからしばらく経った頃、医務室のドアが開けられた。
「…ドクターとは誰の事かと思ったら、何だ。貴女の事か」
その言い草に、ドクターは隊長が置かれている状況を大体理解したらしく、より高圧的に椅子に座り直した。
「よく来たわねエイン…あら?今は、かわいいかわいいシオンちゃん…かしら?」
二人の強烈な睨み合いが、医務室を一瞬で殺伐とした空間へと変えていった。
医務室でドクターと隊長の苛烈な戦いが繰り広げられている中、そんな事は露知らずといった感じで、ルーキーは工房の前に立っていた。
「…勝手に入って、いいのかな…?」
ルーキーのイメージする工房は、剣や盾にハンマーで焼きを入れているような、随分と前時代的な工房だった。
しかし、いくら耳を澄ませても、ハンマーの音どころか物音一つ聞こえない。
ルーキーは、どうやら自分のイメージする工房とは違う場所であるという事を理解すると、意を決して工房の中に足を踏み入れる事にする。
一歩足を踏み出して自動ドアをくぐり、そして、ルーキーは見た。
見渡す限りの神機、神機、神機。
一本一本がそれぞれケースのようなものに収められており、その様はまるで神機の博覧会のようですらある。
その壮観さに目を奪われてしまったルーキーは、ただ一言さえも声を発せず、ただただ驚嘆の溜め息を吐くばかりだった。
工房という名称から、暗くて暑くて油っぽいイメージを抱いていたルーキーだったが、そんなイメージは既に無限の彼方へ飛び去ってしまっていた。
気付いた時には、飾られている神機を眺めながら、工房を足音と呼吸音だけが響く世界のように認識していた。
飾ってあるものは美術品などではなかったが、少なくともルーキーにとっては、そのように映っていた。
それからどれくらいの時間が流れたのか、ルーキーは見覚えのある神機が飾られている事に気付いた。
「あれ…これ、僕の神機だ」
今まで眺めてきた遠距離式の神機の中でも、特に細いフォルムを持った神機。
その細さは、神機でなければアラガミの攻撃を一撃受けるだけで折れてしまうのではと思わせる程か細く、儚げに映った。
「……レージングドローミ……これが、貴方の神機……?」
「うわひゃあっ!?」
突然の声に驚き、ルーキーは思わず変な声を上げてしまう。
ルーキーの隣には、いつからそこにいたのか、少し嬉しそうな表情の少女が立っていた。
「え?え?…えっと…どなたですか…?」
少女が何故嬉しそうなのか見当もつかず、それが余計に混乱を招き、ルーキーは動揺しながらも何とか名前を尋ねる事に成功した。
それが少女にも伝わったのか、少女は少し申し訳なさそうな顔になり、ぺこりと頭を下げる。
「……驚かせて……ごめんなさい……ここの受付……です……」
ようやく落ち着きを取り戻したルーキーは、謝られている事に申し訳ない気分になり、謝り返す。
「い、いえ、こちらこそ、ごめんなさい…!その、勝手に入ってしまって…!」
ルーキーがそう言うと、少女は頭を上げて笑顔を浮かべた。
「……ここ、いつも手入れしてるの……気に入って貰えて……嬉しい……」
それを聞いて、ようやくルーキーは少女が何故嬉しそうな顔をしていたのか納得した。
どうやら、少女はいつも工房の掃除をしているらしい。
「…そうだったんだ……その…すごく綺麗で、驚きました…」
「……!」
ずっと見られていた事に気付かなかった事を恥ずかしく思いながら、ルーキーがそう言うと、少女は顔を赤くして俯いてしまった。
「?」
どうやら、何かのフラグが立ったようだった。
「…丁度いい時に、戻って来たわね…」
ルーキーが医務室に戻ってくると、そこは医務室ではなかった。
例えるならば、アラガミとゴッドイーターが戦った跡だろうか。
壁には銃弾が貫通した跡が残り、ベッドや机は一つ残らず両断されていて、酷い有り様である。
「…あの…ドクターさん…これは…?」
そして、ルーキーの視線の先には、気を失って倒れている隊長の姿があった。
「…ふふん…やんちゃな子犬を躾けていただけよ……それより、エインを担いで下まで降りるわよ…」
ふらっと、ドクターの体が一瞬だけ安定感を失う。
「…さすがに…治療して貰わないとね……」
どうやら、二人して狭い医務室の中で神機を振り回していたらしく、二人ともぼろぼろになっていた。
そして、世の中にはショック療法と呼ばれるものがあるという事を、ルーキーは知っていた。
しかし、これが新たな始まりになろうとは、ルーキーは知らないのだった。
少し遅れましたかね…?
お待たせしました、一週間分空けての投稿です。