GOD EATER ~狼の追跡者~   作:黒槍

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 第2話(2) 新人なのに実戦に投入されるルーキーは災難

「――あ、皆さん。任務の受注に来られたんですか?」

 

「あぁ、今日は四人だが、三つで頼む」

 

 

 

 

 

隊長がオペレーターと任務についての話をしている最中、ミミがルーキーに話しかけてきた。

 

「ねー、ルーキーちゃん」

 

すると、この世の終わりでも目の当たりにしたようなほど沈み込んだルーキーは、鈍い反応で声の方に振り返る。

 

「……………あ、はい……」

 

今のルーキーを絵にすると、クレヨンか何かで描かれた子どもの落書きか、もしくは一般人には到底理解の難しい前衛的な絵画になっていた。

 

目撃した全員に0/1D3のSANチェックを行わせかねない姿に、ミミは宇宙的恐怖は特に感じなかったものの、苦笑いする。

 

(…うわー、これはダメかもー…)

 

その序でに、ハヤの方にも視線を向けるが、ハヤは苦虫を噛み砕いたような、いつにも増して近寄りがたい表情をしていた。

 

(…こっちもかー…)

 

ちらっと、隊長がミミの方に視線を送るが、ミミの苦笑いの意味を理解し、酷く残念そうな顔をする。

 

(…そうか、駄目そうか…)

 

断じてダジャレではない。

 

ダジャレにしか聞こえない?なんと、君はそういう奴だったんだな。

 

そこに、サポーターと思しき女性が四人の側を通り掛かるが、名状しがたい負のオーラを敏感に感じ取り、わざわざお辞儀をしてからその場を立ち去った。

 

「はぁー…」

 

「はぁ…」

 

「???」

 

後には、どす黒い空気を放つ男二人と、溜め息を吐く女二人と、四人の様子に特に思い当たる節がないのか、笑顔で首を傾げるオペレーターだけが残されていた。

 

 

 

「では、本日の任務を発表する」

 

隊長の一声で全員の注目を集めると、ひらひらと小さな手が挙げられる。

 

「隊長ー、ミミはー?」

 

せっかちな事に、神機すら手に持っていないにもかかわらず、ミミは出撃用の出入口の方に体を向けている。

 

「あぁ、今から教える。まず、ハヤは西の海岸で確認された新種と交戦し、これを制圧。帰還後、交戦記録を報告してくれ」

 

隊長は、「今から教えると言ったな、あれは嘘だ」を地でやってのけると、頬を膨らませながら隊長の服を引っ張って抗議するミミの頭を撫で、ハヤに指示を出す。

 

「ちっ…面倒な奴かよ。いいぜ、了解」

 

それだけ言うと、ハヤはさっさと出入口に向かった。

 

「…!………」

 

ルーキーは、ハヤが神機を持っていない事に気付くが、何も言えずに黙り込む。

 

「次に…ミミ、止めないか。服が伸びてしまう」

 

まだ膨れているミミの頭を撫でながら、隊長は柔和な笑みを浮かべた。

 

「隊長が悪いんだもん、嘘吐きは泥棒の始まりなんだもんー!」

 

「はっはっは、すまないすまない。では、ミミは北の海岸でグボロの群れと交戦し、これを殲滅。帰還後、群れの個体数と種と、何か気付いた点があればそれも報告してくれ」

 

最後の方が少し投げやりになりながらも、隊長はミミにも指示を出す。

 

「むー…お魚ね、りょうかーい」

 

任務内容に納得したのか、やはりミミも神機を持たずに出入口に向かってしまう。

 

ルーキーは、さすがに黙っていられなかったのか、何か言いたそうな顔で隊長の方を見る。

 

「…あぁ、そうか。君にはまだ話してなかったな。我々、第零部隊の特徴とでも言うものを」

 

ルーキーの考えている事を知り得たのかそうでないのか、隊長は簡単な説明を始めた。

 

「我々第零部隊は、他の部隊にはない様々な特権を与えられている特殊な部隊だ。その活動内容は多岐に渡り、その活動範囲は海をも渡る。それほど重要な役割を持った部隊であり、それほど信頼のある部隊でもあるという事だ」

 

つまり…と、色々な細かい説明を省略し、理解しやすい事柄を抽出する。

 

「他のゴッドイーターにはあり、我々にはないものが、不可能を可能にするという事だ」

 

隊長は自身の右腕を差し出し、服を捲り上げる。

 

そこには、ゴッドイーターの証である腕輪がなかった。

 

「ゴッドイーターであるという事は、ただ一つの例外もなく、フェンリルの関係者という事だ。だが、我々の存在を知り得るものは、フェンリルの中でもごく限られた者だけだ。故に、我々は自身がフェンリルの関係者である事を隠す必要があり、隠せる必要がある」

 

…それが、適合率がどうのとか、演習成績がこうのとか、そういう謳い文句だけでは入れない所以だと、隊長は締め括った。

 

「………」

 

締め括った。

 

「…あの、それで何故、神機を持たなくて大丈夫なんでしょう…?」

 

ルーキーの指摘に、得意げに胸を張った隊長の顔が、見る見る赤くなっていく。

 

どうやら、ルーキーが抱いた疑問について、隊長は大いに思い違いをしていたらしい。

 

「…あぁ、それは、その、だな。だから、こう、腕輪がな?」

 

「…腕輪が?」

 

「~~~っ!」

 

隊長は、恥ずかしさのあまり耳の先まで顔を真っ赤にすると、出入口に向かって走り去ってしまった。

 

ルーキーは一人、ぽつんと取り残される。

 

「…腕輪が、何だったんだろう…?」

 

仕方なく、ルーキーは自分の神機を抱え、出入口に向かう事にする。

 

 

 

「ルーキーちゃーん!早く早くぅー!」

 

出入口の自動ドアが開くと、左右に奇妙な形状の手摺が付いた長い通路と、その遥か先にヘリポートが現れた。

 

というか、どう見積もっても4、500mくらいはありそうな、本当に長い通路だった。

 

「は、はーい!!うわわっ!!?」

 

慌てたルーキーが一歩足を踏み出すと、床が勝手に動き出し、大幅にバランスを崩しそうになる。

 

「きゃはははー!びっくりしたー?びっくりしたー?」

 

その様子を遥か先から見ていたミミが、悪戯っぽく笑っていた。

 

ぽかっと、まだ顔を赤くした隊長がミミの頭を叩き、ミミは渋々笑うのを止める。

 

「…うぅ、びっくりしたぁ…」

 

この通路は、自動で動く床になっているらしく、床と連動して動く手摺につかまる事で、歩く事なく移動できるものらしかった。

 

ルーキーは手摺をしっかりと掴むと、ヘリポートまで移動する。

 

「もう…ひどいですよ、ミミさん」

 

「うー…ごめんね、ルーキーちゃん」

 

頭を痛そうに押さえながら、ミミはルーキーに謝った。

 

「隊長殿、隊員の方はお揃いでしょうか」

 

すると、ヘリの操縦席から確認を取る声が聞こえてくる。

 

「あぁ、待たせてしまってすまないな。さぁ、出撃だ」

 

こうして、ルーキーの訓練と実践と初任務を兼ねた、任務が始まった。

 

(…あれ?…僕の任務って何だろう?)

 

始まった。

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