「うーんとねー…ミミもよく分からないんだけどー、腕輪ってリミッター?みたいなものなんだってー」
「…それで、どうして神機を持っていかなくても大丈夫なんですか?」
目的地に着くまでまだ時間があるらしく、ルーキーは隊長に任務の内容を尋ねた。
しかし、まだ思い違いで得意げに胸を張った事を引き摺っているようで、隊長は不機嫌そうに「着いてから話す」と言い、詳細を話そうとはしなかった。
そう言われてしまうと仕方がないので、神機を持っていない事について尋ねると、隊長の代わりにミミが答えた。
「えっとねー…ここじゃ、あんまり詳しい事は言えないんだけどー。普通は、腕輪に抑えられてる機能って言うの?があってー、それを使うんだー」
どうやら、その辺りの細々とした内容が、第零部隊にだけ許された特権というものらしかった。
そして、それは操縦士には許されていない類の内容でもあるらしい。
「そ、そんなものがあったんですね……ち、ちなみに、それを使うと、どうなるんですか?」
まるで、探偵に推理の続きを促すかのような、知的好奇心の衝動的産物によって、二人の物理的距離と心理的距離が縮まる。
「それはねー…」
ミミは意味ありげに間を置くと、ルーキーの耳に口を近付け、こそばゆくなるような声で囁く。
「…帰ってからの…お楽しみだよ…?」
ふっと、ルーキーの耳に息を吹きかけると、ミミは悪戯っぽい笑みを浮かべて笑った。
「うわひゃあっ!!な、何するんですかぁ!」
ルーキーは、耳を押えてミミに抗議しようとすると、ミミは危うくヘリから落ちかねない位置に立っていた。
「ごめんねー、ルーキーちゃん。ミミはここで降りないとだからー」
ルーキーは気付いていなかったが、ヘリはいつの間にか高度を下げており、地上まで30m程度といった位置を飛行していた。
「お、降りるって!ヘリ、まだ着陸してませんよ!」
ルーキーは慌てて隊長の方を見るが、隊長はミミに手を振って見送っていた。
いつも通りの光景、という事らしい。
「じゃー、行ってきまーす」
ミミはパラシュートも何も装着せずに、その体躯を空へと投げ出した。
「み、ミミさーんっ!?」
本当に飛び降りてしまったミミに驚いたルーキーは、落ちないように恐る恐る下を覗き込む。
ところが、ヘリが高度を上げてしまった為に見えにくくなり、荒廃した大地や廃墟、薙ぎ倒された木々、高速で動く点と、ルーキーはミミの姿を捉える事は出来なかった。
「ふふふっ…忙しい奴だな、君は」
ルーキーの慌てようを見ている内に、少し恥ずかしさが引いてきたのか、隊長が調子を取り戻しつつあった。
「一応教えておくが、ミミはああ見えて恐ろしく強いぞ。何せ、近い将来に新しく導入を予定されている神機の使い手だからな」
新しい神機と聞いて、ルーキーの興味がそっちに移る。
「新しい神機!?」
単純な奴である。
「あぁ、そうだ。既存の刀身とは違う新しい神機、”槍の神機”だ」
「槍…スピアですね!」
きらきらと、まるで子どものように目を輝かせると、見た事も聞いた事もない神機に夢を膨らませ、ルーキーは話の続きを聞きたそうにする。
「勿論、ただの槍とは違うぞ。第零部隊最速のミミ独自のカスタマイズを受けた、正真正銘最速の槍……”ブラストスピア”だ!」
その気持ちを汲み取った隊長の絶妙な溜めが、臨界点を超えたルーキーの心を沸かせた。
「す、すごいです!強そうです!!見てみたいです!!!」
そんなルーキーの喰いつき具合に、隊長も徐々にのってきたらしく、隊長の目まできらきらと輝き始める。
「ふふふっ!しかも、それだけではない!!この槍の真骨頂は、文字通り最速でアラガミを仕留めるところにあるんだ!!!」
妙にヒートアップしている二人に、ハヤはドン引きしながら距離を取った。
「…テンションたけえよ。操縦担当が困ってんじゃねえか、って聞いてねえしよ…」
ルーキーと隊長の白熱したやり取りは、その後しばらく続けられた。
「…では、ハヤはここから西、私とルーキーは南西だ。前もって決めていた通り、合流地点はここだ。全員揃えば、私が帰りのヘリを呼ぶ」
ヘリから降り立った後、隊長はいつものように指示を出す。
さっきまでのテンションの高さは、一体どこへ行ってしまったというのか。
「了解」
それだけ言うと、ハヤは目的地に向けて走り始めた。
「我々も行こうか」
それを全く意に介さず、隊長はルーキーを促す。
「は、はい」
ルーキーの返事に頷くと、隊長はすたすたと歩き始めた。
(…は、速い…!)
まるでスリップストリーム下にあるような速度で、隊長はぐんぐんルーキーとの距離を離していく。
「ルーキー。本部配属で第零部隊の隊員と言っても、君はまだ新人だ。アラガミとの戦闘は荷が重いだろう」
それでいて平然と、ルーキーと会話を始めようとしている。
「そこで、今回のところは取り敢えず、私の指示を仰ぐだけでいい。勿論、無茶な注文をするつもりはない。安心してくれ」
ルーキーからの返事がない事に疑問を抱いていないのか、隊長はどんどん話を進めていく。
「とは言っても、ただ指示に従ってサポートに徹するだけでは、君の訓練になるとは思えない。そこで、一度アラガミと一対一で戦闘してみるのもいい手だと思う」
そして、話が終わったと思しきところで、ようやく隊長は背後を振り返った。
「君はどう思う?………」
隊長の背後を、一陣の風が吹き抜けた。
「隊長ー…!待ってくださーい…!」
遥か遠くに、ルーキーはいた。
その事に少なからずショックを受けたらしい隊長は、狼狽えながらルーキーに向けて叫んだ。
「そ、そんなに距離を取るなんて…!君は、私の事が嫌いだったのかー!!!」
「突然何を言い出すんですかー…!!」
この人も相当な自由人だと、ルーキーは思った。
眠くてぐだってしまった…
後半が面白くないと感じたのなら、その感覚は正しいです。
ちなみに後半とは、「ブラストスピアだ!」から後の事です。