GOD EATER ~狼の追跡者~   作:黒槍

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 第2話(4) 新人なのに実戦に投入されるルーキーは災難

「…どういう事だ。こんな異常事態、前代未聞だ…!」

 

「た、隊長…!」

 

 

 

 

 

目的地周辺に辿り着き、任務というかピクニック気分で歩いていた隊長とルーキーは、アラガミの群れに囲い込まれていた。

 

と言っても、別に隊長がぼんやりしていた訳ではないし、そういった任務を受けていた訳でもない。

 

気が付いた時には、アラガミの群れに取り囲まれていたのである。

 

まるで、アラガミの方が目的地周辺を目指して移動してきたかのように。

 

「…すまない、ルーキー。本当は訓練になるアラガミを選んだつもりだったが…どうやら訓練どころではなさそうだ」

 

隊長は、ルーキーの胸倉をしっかりと掴む。

 

「あ、あの、隊長…?」

 

「高度からの着地の練習だ。出来たら合流地点まで行ってく、れっ!」

 

ルーキーが何事かを尋ねる暇もなく、ルーキーの体はアラガミの遥か上方で放物線を描いていた。

 

「う、わ、あああーーー!!!!」

 

アラガミの包囲網から、ルーキーは脱する事に成功する。

 

おおよそ25m程度の高さまで上昇を続けると、ある地点で完全に上方向への速度が0になり、ルーキーは一瞬の安息を得た。

 

が、次は落下が始まる。

 

今まで感じた事のない浮遊感が、ルーキーに襲い掛かった。

 

普通の人間なら落下死してもおかしくない高度からの落下に、ルーキーの心拍数が跳ね上がる。

 

もはや、自分が落ちているのか地面が迫って来ているのか分からない状況の中、唯一ルーキーに分かった事は、着地しなければならないという事だった。

 

しかし、神機を抱えている事に加えて、経験した事のない空気抵抗の中、姿勢を制御する事すらままならない。

 

そうこう考えている内に、ルーキーの目前に地面が迫ってくる。

 

(…こうなったら…や、やけくそだー!)

 

ルーキーは抱えていた神機を思いっ切り振り回し、反動でなんとか足で着地出来る体勢になってくれないかなと思った。

 

甘かった。

 

「げ」

 

さながらボールのように地面に叩き付けられ、バウンドし、ごろごろと5、6回ほど転がると、ルーキーはそこから動かなくなった。

 

「…少し、飛ばし過ぎたか…?」

 

アラガミの包囲網の中で、隊長はぴくりとも動かなくなったルーキーの様子を窺う。

 

ちなみに、バウンドと回転を含め、ルーキーが移動した平面距離は大体100mくらいだろうか。

 

ところで、100mというと、サッカーのフィールド一つ分くらいの距離がそうである。

 

アラガミから離れる事には成功したが、その背後には、一つのボールの尊い犠牲が見え隠れしていた。

 

まさに、踏んだり蹴ったりである。

 

「…大丈夫だ。我々は、第零部隊だからな。多分、大丈夫だ。きっと、問題ない。恐らく、気を失っているだけだ。そうに違いない…」

 

隊長は、青い顔で冷や汗を流しながら呟くと、アラガミの群れを一瞥する。

 

オウガテイルが5尾、コクーンメイデンが4個、シユウが3羽、ヴァジュラが2頭、そして、新種が1匹。

 

「…そうと決まれば、後はお前達を片付けるだけだな…!」

 

右腕ではなく、左腕の袖を捲り上げ、隊長はアラガミの群れに飛び込んで行った。

 

 

 

 

 

「…う……うぅ…」

 

全身を走る激痛で目が覚め、ルーキーはうつ伏せの状態で顔を上げる。

 

後生大事に抱えていた筈の神機が、数m先に転がっていた。

 

(…あぁ、そっか…着地に…失敗して…)

 

ルーキーは、取り敢えず立ち上がろうと腕を突っ張って、失敗する。

 

「っ痛たたた…」

 

どうやら、骨は何とか折れてはいないが、筋肉の方が断裂しているらしかった。

 

(…そうだ…アラガミの群れが…)

 

そこで、ようやくアラガミの群れの事を思い出し、次いで、囲いの中に取り残された隊長の事を思い出す。

 

「隊長っ!!………」

 

慌てて振り返ったルーキーの視線の先には、思わず血の気が引くような光景が広がっていた。

 

「…た………隊……長……?」

 

…切断された脚、喰い千切られた腹部、黒焦げになった腕、地面に搾り出された液体。

 

そして、神機と思しき刀身が突き立てられた顔が、虚ろな目でルーキーの方を見ていた。

 

「――――――――っっっ!!!!!???」

 

声にならない悲鳴が、辺りに響き渡った。

 

 

 

「…した…キー…!…どうした、ルーキー…!」

 

ルーキーの目の前には、傷一つない綺麗な隊長の顔があった。

 

「はぁ…!はぁ…!…た…隊長……?」

 

大事ないと分かって安心したのか、隊長は安堵の溜め息を吐いた。

 

「良かった……打ちどころが悪くて、脳の一つや二つ、うっかり損傷させてしまったのかと思ったぞ…」

 

隊長は実は、ルーキーの事を嫌っているのだろうか。

 

ボール扱いの次はイニシャルG扱いと、びっくりするほど酷い扱いである。

 

「あの…隊長?」

 

がっしりと隊長に肩を掴まれた状態のまま、ルーキーは恐る恐る尋ねる。

 

「何だ。ルーキー」

 

ルーキーは薄らと涙を浮かべながら、隊長の無事と隊長の背後を確認した。

 

「…後ろにアラガミいますけど?」

 

ふふふっ…何だそんな事かと、隊長は素敵な笑顔で答える。

 

「君の分を残しておいたぞ!」

 

ありがたいのかありがたくないのか、よく分からない隊長の心遣いに、ルーキーは涙が流れそうだった。

 

「…ありがとう、ございます…」

 

隊長に肩を借りて立ち上がると、ルーキーは改めて周囲を見渡した。

 

アラガミの死骸が、所狭しと散乱している。

 

…脚を切断されたものや、腹部を喰い千切られたもの、腕を黒焦げにされたものなど、どこかで見たような死骸も転がっていた。

 

そんな中、見るからにぼろぼろで、顔を神機か何かで貫かれたような跡があるアラガミが、ルーキーの前に立ち塞がった。

 

(…虫の息みたいだなぁ…)

 

隊長がルーキーの神機を拾い上げると、ルーキーはそれを受け取り、アラガミの顔面を狙って引き金を引いた。

 

炎を帯びた”オラクル弾”がアラガミの傷口に命中し、アラガミはひっくり返って動かなくなった。

 

「やったなルーキー!」

 

しゅるしゅると、隊長は腕に何かを巻き付かせながら、ルーキーに親指を立てて見せる。

 

「…これ、何の訓練ですか?」

 

隊長は得意げに答えた。

 

「アラガミを倒す訓練だ!」

 

隊長の腕に巻かれていた何かの姿がなくなると、ルーキーはそれを目で探しながら思った。

 

(…それは、何かが間違っている気がする…)

 

 

 

 

 

「あれ、合流地点って…どっちでしたっけ…?」

 

「どうやら、道に迷ってしまったようだな」

 

こうして、ルーキーの初任務は終わりを告げたのだった。





眠かったので、またぐだって…

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