「…そうと決まれば、後はお前達を片付けるだけだな…!」
「!?」
時速70km近い速度で、ルーキーを遥か100m先まで
そこで、何かの手違いでお気に入りの服が破れてしまわないように、あらかじめ左腕の袖を捲り上げておく。
(…ふふふっ…懐かしいな。前に破いた時、オペレーターの子に”コバサメさん”のアップリケを付けられたな。あれは恥ずかしかった…)
――コバサメさん。
少し前に、オペレーターの子に個人的に流行ったらしい、サメが主人公のアニメーション作品である。
あらすじとしては、全ての生物がまだ海にいた頃、世界の王者として君臨していたコバサメさん。
それが地殻変動を経て、その地位から転落死…いや、転落し、今や体もすっかり退化してしまい、他の魚のおこぼれで食い繋ぐ物乞い生活。
しかし、コバサメさんは希望を捨ててはいなかった。
いつかまた、世界の頂点に君臨する事を夢見て、今は耐え忍ぶしか…
「え?きゅ、吸盤すか?これは、あれっす、か、飾りっす」
耐え忍ぶしか…
「いやいや、別に、物乞いって楽だわーなんて思ってないっすよ?ほんとっすよ?マジっすマジっす!」
…コバサメさんは、今日も世界の頂点目指して、ゴマをするのでした。
「物乞い王に、オレはなるっすー!」
(…小物だ。干物にされてしまえばいいのに…)
あのような恥辱は二度と味わいたくないと、隊長はそう誓ったのである。
そんなどうでもいい事を考えながら、隊長はアラガミの群れに飛び込んで行った。
最初に狙いをつけたのは、にっくきコバサメさんによく似たオウガテイル。
「喰らいつけ!!」
隊長は左腕を振り上げ、オウガテイルに飛び掛かる。
すると、左腕を侵喰するように黒い痣のようなものが広がり、そこに巨大な異形の顎が現れた。
「―――っ!」
オウガテイルは悲痛な叫び声のようなものを上げると、異形の顎に頭から胴体にかけてをばりばりと咀嚼され、足と尻尾をひくつかせながら絶命した。
よい子の視聴に耐えられるようなアニメーションで表現すると、襖の向こうで影絵みたいな感じだろうか。
それはアウトだよ!
しかし、正しい表現の抑え方だ!
アニメ業界は、日夜死闘を繰り広げているようです。
「…ふふふっ…相変わらず、酷い味だ…」
顔に飛び散った返り血を舐め取ると、隊長はどこからともなく現れた神機を右手で掴み、残っているアラガミの位置を確認する。
その時、同族が一瞬で喰らわれた事に、本能的に力量の差を感じ取ったのか、オウガテイル達は後ずさった。
ところに、隊長の神機が鞭のように不可思議な軌道を描きながら肉薄し、その全てを貫いた。
串焼きならぬ、串刺しである。
「弾けろ!!」
そして、隊長の声に合わせて神機が振動し、オウガテイルに刺さっている箇所から無数の爆炎を噴き上げる。
串刺し改め、串焼きである。
「ウェルダンは、お嫌いかな?」
ただの炭と化したものをウェルダンとは、隊長なりのジョークなのだろうか。
隊長が神機を振るって、神機にこびり付いた炭を削ぎ落とすと、神機は元の長さへと戻った。
その神機は、さながら蛇のように隊長の右腕に巻き付くと、隊長の苦笑を誘った。
「そうか、ウェルダンは嫌いか。すまなかったな」
隊長は、瞬間移動でもしているかのような足捌きでステップをすると、コクーンメイデンから放たれた追尾弾を回避する。
「…当たる訳がないだろう?」
そう言って、神機を突き出す。
貫き、引き抜く。
貫き、引き抜き、貫き、引き抜く。
一体目のシユウが飛び込んでくるが、頭を踏み台にして宙を舞う。
神機を振るい、最後のコクーンメイデンは呆気なく二つに分かれた。
ところが、隊長の着地後硬直を狙ってジェットストリームアタックをしていたらしい、とても賢いシユウが遅れて二体突っ込んでくる。
「おぉ!新しい発見だ!」
隊長はどこか嬉しそうな声を上げると、洗練され過ぎていて誰も真似出来ないような動きで、「早く諦めてください!隊長には不意打ちきかない!」という悲痛な声を呼び込んだ。
隊長の神機が地面から飛び出て、二体目のシユウの頭を串刺しにし、直後に地面へと叩き付ける。
そして、そのままの流れで三体目のシユウの頭に左手を翳し、脚と翼を残して喰い千切った。
「やれやれ、ルーキーに加勢させなくて正解だった」
その一部始終を目撃した一体目のシユウは、「こんな奴がいるところになんていられるか!俺は逃げるぞ!」と、あからさまな死亡フラグを立てて逃げ出す。
しかし、知らないのか、ボスからは逃げられない!
隊長に回り込まれてしまったシユウは、咄嗟にその場を回転して、鋭利な翼で牽制しながら飛び上がった。
そこに、しゅるしゅると、隊長の蛇の如き神機がシユウの脚に絡みつく。
神機を振り払おうとシユウはもがくが、もがけばもがくほど神機は強く絡みつき、脚から胴体、胴体から頭、そして…
ぼとぼとと、大粒の液体が地面に滴り落ちた。
次いで、骨格やら何やらを完全に逸脱したシユウだったものは、太陽に手を伸ばした格好のまま、焼け焦げて墜落した。
「…敵前逃亡は重罪だ。覚えておくといい」
圧倒的な強さを存分に見せ付けた隊長は、真・神喰無双の制作でも依頼しているのか、一行に収まるセリフを次々と発する。
「…おや?」
隊長は、残っているアラガミの確認を行うと、ヴァジュラが既に逃げ出していた事に気付いた。
つまり、残っているのは新種だけという事になる。
(…見た事のないアラガミだ。ハヤが相手をする予定だったアラガミか…?)
そのアラガミは、ボルグ・カムランの堕天種のようだった。
ただし、全身を分厚い氷の鎧が覆っており、それ故に盾は氷の槍に置き換わっており、尾剣はほぼ氷で出来ていた。
あからさまに弱点丸出しの、騎士道精神旺盛なアラガミに、隊長は容赦なく神機を突き出す。
「!?」
が、神機は氷の鎧に完全に遮られ、落とした鎖のように纏められた。
「くっ…弾けろ!!」
神機が対象を貫いていなくても問題ないのか、神機から爆炎が噴き出す。
ボルグ・カムラン堕天種は、案の定炎によって氷の鎧を剥がされ、同種共通の弱点である口を露出した。
「何っ!?」
途端に、反撃とばかりに槍を広げて回転し、周囲を薙ぎ払うように尾剣からレーザーを放出する。
自分の周囲を完全に射程に収めた攻撃に、宙を舞う隊長は驚きを隠せなかった。
一見、氷の鎧という弱点を晒しているだけかと思いきや、防御を鎧に任せ、盾を槍に変えた事により、より攻撃的なスタイルを確立している。
更に、弱点をついて油断しているところに、攻防一体・回避不能の回転攻撃。
そして、
(!…あのレーザー、地面を一瞬で凍らせたのか…!)
盾で受ければ神機を凍りつかせ、回避すれば足元を凍りつかせるという、隙を生じぬ二段構え。
加えて、ボルグ・カムランの四脚であれば、氷に足を取られて滑るという事もないだろう。
まさに、ボルグ・カムランという種の完成形とも呼べるアラガミだった。
隊長は、着地と同時に神機を地面に突き立てると、滑らないように注意しながら身構える。
(…そして、その隙に氷の鎧を復元する、と……まさか、こんなアラガミが出現してしまうとは…!)
隊長と新種アラガミの戦いは、長時間続いたという。
ヴァジュラとの戦闘は、さすがに辛かったので割愛しました…
ヴァジュラかわいいよヴァジュラ、後ろ足ズバズバ。
ところで、活動報告の方で、ボルグ・カムラン堕天種(仮)の名前を募集しています。
11/14、は発売日だった…
という事で、11/13の23:59まで募集する予定ですので、よろしければご協力頂ければと思います。