もしあなたが大切な人を幸せにしたいとか……どうすればいいと思いますか?
自分の文才が乏しい故に表現が変なところもあるかもしれません。
それをどうか踏まえてご覧ください!
人を幸せにすることは実は案外難しいものかもしれない。どんなに高価なプレゼントや食事、思いのこもった言葉を送ったとしてもそれが相手にとってどんな意味を成しどんな感情をもたらすか。それは本人しかわからない。強いて言えばエスパーか超能力者くらいしかね…人々はそんな人を羨ましいだのいうが、やっぱり僕は、相手の本当の心とか真意は知らない方が実は幸せなんじゃないかって思う。
あの日は確か、クリスマスが近い時期だったかな…
「弘前くんおつかれ。相変わらず容量はいいわね。」
「あ、はい!そうですか?自分はそんな仕事ができる方ではないと思うんですが…」
「まぁ私が認めてんだからあんま気にしないの。じゃあもうシフト上がろっか。」
「わかりました!」
僕には好きな人がいる。それが彼女こと網島先輩だ。初めてバイトの研修で会った時に一目惚れをして、なんとか距離を縮めようと店長に協力してもらってシフトを同じにしてもらってる。でも彼女にはすでに同い年の彼氏がいるのだ。もちろん彼女みたいな美人な人を彼女にできるだなんて最初から思ってない。それでも、彼女と働いてる時が今一番幸せだからこの先輩後輩の関係でも心地いいと思っているのだ。
「…もう10時回ってますね…」
「そうだねー。今日も不安だから付いてきてもらえるかな?にひひ」
「も、もちろんです!是非とも!」
そして、僕にとっての最高の時間はこれ。彼女と二人きりで話せる帰宅時間。こんな美人と帰り道を一緒に歩くことができるなんて本当に幸せものだ。
「それじゃあ僕先に出口で待ってます。」
「うん。ありがと〜」
いつも通り、ロッカールームに行き、着替えを終え、荷物をまとめて出口を出る。外は店内と違い息が白くなるほど寒い。
だけど
今日はどんなことを話そう。
という期待が僕の心を胸いっぱいにして、こんな寒さも吹き飛ばしてしまった。
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「そろそろ家に着く頃だねぇ。」
「そうですね。今日も寒いので体を暖かくして寝てくださいね。」
「弘前くんは私のお母さんか何かなのかな?もー言われなくてもしますよー。」
「そんなこと言ってこの前咳き込んでいたじゃないですか。網島さんが心配だから言ってるんですよ。」
「はいはーい。」
いたずらな調子で笑いながらこちらを見下ろす。僕より身長の高くてめんどくさがりやの彼女は、僕とってまるでやんちゃな男子高校生みたいなものだ。そういうところがたまらなく好きなんだけどね。
すると住宅街の隅っこに置いてある小さなクリスマスツリーを見て、僕に語りかけた。
「そう言えばもうクリスマスだねぇ。弘前くんは予定決まってるの?」
「決まってないですね…多分友達と遊ぶか家でダラダラしてますよ。」
「何だそのやる気のなさはー。今年のクリスマスは人生で一度のクリスマスなんだぞー。」
「そんなこと言った今日もこの数秒もみんなそうですよ。」
「まぁそうなんだけどねぇ。」
願わくば、あなたと一緒に過ごしたかったものなのだが…
次に僕は彼女に同じ質問を返した。
「網島さんはクリスマスどんな予定なんですか?やっぱり彼氏さんと一緒に過ごす感じですよね。」
そう聞くと、それまでおちゃらけた調子だった彼女の様子が一変して、僕から目をそらして俯いた。
「…あー、それなんだけど…まぁ、家で過ごす…みたいな?まぁ大したことはしないつもりだよ。」
「……もしかして、うまくいってないとか?」
僕は、この反応に少し喜んでしまった。もちろんだ。もしかしたら先輩とクリスマスを過ごすという最高の展開があり得るかもしれないと。いけないとわかっても、そう期待してしまった。
「んー…そんなことはないんだけどね!ただ毎年過ごしてるから今回はいいかなーなんて、みたいな?」
「あーそうですよね…ちょっと気持ちわかります…」
「そうなんだよ…あ!もう着いたね!じゃあまた明日ね!バイバイ!」
「…さようなら。」
そう言い、僕は手を振って別れを告げた。
やっぱりダメだよな。
僕は一瞬で撃沈した。今年も寂しいクリスマスか…まぁ、彼女と僕では天と地ほどの差がある。そんな二人が幸せを共有できるわけがないか。
さっきまで暖かかった心がどんどん冷えていく。
去りゆく彼女の長い髪を木枯らしがブワッと美しくたなびかせた…
翌日、今日はクリスマスイブの前日。街もうちの店もすっかり綺麗なイルミネーションを飾って、華やかなムードだ。僕は相変わらずここ数日、バイトでリア充どもを相手にしている。
これからクリスマスだからってお前ら浮かれすぎだ…くたばってしまえ!
と思い、つまらなそうにロッカールームに向かおうとしたところそこには網島さんがいた。
「あ…やっほー…弘前くん。」
「あ、網島さん…こんばん…
わ?…」
僕は戸惑いを隠せなかった。なぜなら
彼女の美しかった長い黒髪が、バッサリと切り落とされていたからだ。
「網島さん…髪…」
「あぁ、これね…いやぁ昨日の夜自分で切ろうとチャレンジしたけど思いのほかうまくできなくてね…後ろで縛ってなんとか対処してる感じ。」
彼女は切られた髪をくるくると指でいじる。
「そうですか…」
証拠は全くないが、僕にはその言葉が嘘であることを確信した。
普段から彼女と話してる僕だからわかる…今日の声色は明らかに暗い。髪を切るのに失敗したからとかじゃあ、彼女の場合こんな風にならない。もっと明るくお笑い草程度に僕に語るはずだ。
「そういうことだから、あんま気にしないで…じゃあまた後で。」
そう言い、彼女がロッカールームの扉に指を触れようとした瞬間
僕は走って彼女の腕を掴んだ。
「…っちょっ!」
抵抗する彼女を無視して長袖セーターの袖をめくる。
あぁ、やっぱりか。
僕は見てしまったのだ。
彼女が結んだ髪をクルクルといじっていた時、
手首に火傷らしき爛れた跡が出来ていたのを。
「何ですか…これ…網島さんがやったんですか!?」
「っ!離して!」
彼女が僕を振りほどき、急いで袖を元に戻す。
驚きと戸惑いの表情の二人。
お互い見つめあい、沈黙が続いた。
数十秒ぐらい経ったあとだった。
僕の方から先に口を開いた。
「網島さん…あなた…彼氏さんと実は上手くいってないんですよね…昨日の態度からすぐにわかりましたよ。そして…その髪の毛と火傷の跡…何か関係があるんでしょ?話してください…」
僕の言葉に彼女は諦めと後悔の表情を浮かべる。
するとロッカールームの扉に手をかけ、
「入って…」
と僕に言った。
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ロッカールームに入ると、彼女はいきなり自身の服を脱ぎ始めた。
「ちょっ…//何して!」
「いいから!」
彼女の普段聞かない怒声に僕は冷静になる。
セーターを脱ぎ、下着を脱いでブラだけになる。
少し躊躇った様子を見せながらもくるっと振り返り僕に背中を向けた。
そこには、
先ほどの手首と同じような焼けて爛れた跡が背中にビッシリとついていた。
「!!!」
「うん…まぁ…そういうこと…」
くるっとまた振り返り、服を着始める。
愕然とした。予想の通りではあったが、まさかここまで酷いとは思っていなかったのだ。
「今の彼氏とは…大学一年の頃から付き合い始めたの…最初はすごい優しくて、素敵な人だったんだけど…だんだん周りの人に影響されて、気性や金使いとかも荒くなって、酒とかタバコも始めたの。私は何とかしなきゃって思って部屋を片付けたり、掃除すると…こういうことをしてきて…」
「じゃあ…昨日も…?」
「うん…部屋に帰ると彼がいて…私の冷蔵庫にあるものほとんど食べ尽くしてたのね…だからそういうの辞めてって言ったら…私の手首を掴んで熱湯をかけてきて…」
「…髪は…」
「………ショートヘアが好みになったから切れって言われて……イヤって…言ったら………」
「………」
怒りよりも驚きが先に来た。あんなにお調子者で僕に対して気さくに話しかけてくれてた彼女が裏ではこんな辛い状況を背負っていたのか…と。
どうして早く気づいてあげられなかったんだろう…
驚きの次は自分に対する怒りが来た。しかし、結局最後に行き着いたのは、やはりその男の横暴な行動に対しての怒りだった…
「どうして…別れないんですか…」
「……さっき言ったように、あの人は元々いい人だったの。だから私がもっとちゃんとしてれば…あんな風にならなかったって後悔してるの…だから…私が絶対に更生させるまで別れてやらないと思って…後、今のままの彼じゃ…私が助けなかったら、誰も助けてくれないもの…」
「網島さん!あなた何か勘違いしてませんか!?自分だけで人の問題を背負いこんで自分だけが辛くなっていく!そんなの本当の恋人の関係じゃないですよ!早く別れた方があなたのためになるはずだ!」
「わかってるわよ!………でも、彼は…彼は…」
彼女の瞳がどんどん潤っていく。僕はどうすればいいんだ。悩んで悩んでひねり出そうとした。
だけど、思いついた言葉はこれしかなかった。
「網島さん…僕と付き合ってください。」
「…え?」
「ずっと前からあなたのことが好きでした…かつてのその人がどんだけいい人だったかは僕にはわかりません!でも!!僕は少なからず、あなたが今のその人といることが幸せではないと思ってます。僕はあなたを救いたい!幸せにしたい!最初は確かに一目惚れだったけど、今は生半可な好意だけでこの言葉を口にしたわけではありません!お願いです!」
僕の言葉を聞き、彼女は表情は驚きから笑顔に変わった。
だがそれは救えない寂しさを醸し出していた。
「君のお嫁さんは…本当に幸せになりそうだな……ごめんね…弘前くん…
君の気持ちは…私にはもったいないよ…あの人は…もう私がいないとダメだから…それに…
まだ彼のこと愛してるから。本当にごめん…」
あぁ、やっぱりか。
その瞬間僕の中の何かが切れた。
正確にいえば何かが壊れたのかもしれない。
正常な判断など既にできなくなっていた。
「網島さん!」ガバッ
「え?…ちょっ!」
僕は彼女を押し倒し、無理やりキスをしてしまったのだ。
しかし、そのキスは自分の快楽のためだけでなく、彼女の心を癒すような優しく長いキスだった。
「…ぷはっ……何してんのよ…」
僕の目からは大粒の涙が溢れて止まらなかった。
「ごめんなさい…もう…僕には…これしかできなくて…ただ…こうしか……」
息を飲み込み、何も抵抗しない彼女の頬を撫でて語りかけた。
「網島さん…今から僕はあなたをレイプします…やめる気は無いです…警察に言って、牢屋にぶち込んでもらおうと構いません…ただ…決して…あなたを傷つけたりとか、乱暴にすることはしません…それだけは…信じて欲しい…
こうでもしないと…僕は…何もかもが…壊れて……
あなたのことが忘れられないまま…歩み出せなくなるから………」
僕の頬をを冷たい涙が覆い尽くしていく。
--ゆっくりと服を脱がす。
ぼくの体は指先まで震えて未だに涙が止まらない。
彼女は僕をひたすら冷たい目で見ている。
互いの思いは交差し、
二つの涙が混ざり合い、無機質な人形の肌を伝っていった。
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その日から僕と彼女の関係は一線を超えてしまった。彼女はバイトを辞めて、僕一人だけが残った。店長には何かあったのかと聞かれたが、もちろん言えるわけもなくそのまま時は過ぎ去った。
あれからもう2年。今日はクリスマス。街もうちの店もすっかり綺麗なイルミネーションを飾って、華やかなムードだ。僕は相変わらず、バイトでリア充どもを相手にして1日を終えた。
今日がクリスマスだからってお前らイチャイチャしすぎだろ…くたばってしまえ!
と文句を垂れながら、着替えを済ませて出口に向かう。今日も平凡な1日が終わる…はずだった。
出口を出たその先には、
寒そうに膝を抱えて出口で待ちかまえて座る網島先輩がいた。
「…ヤッホ。弘前くん。」
「…久しぶりです。」
「本当だね…あの後…会ってなかったからね…」
「そうですね…」
彼女は立ち上がりグググっと背伸びをした後、僕に近づきながら語り出した。
「あの後さ…私。すぐ別れたの…なんか吹っ切れちゃって…w
抱え込むのがバカらしくなったのかな?まぁでもあんまり覚えてないや。あの時は…もうよくわかんなくて何も考えれなかったけど、今思うと弘前くんにありがとうって言うべきだなって思ったの…」
彼女の瞳は相変わらずとても綺麗で輝いていた。
「僕は…ありがとうと言われるようなことをした記憶はありません…」
「…そうかもね…普通に考えると…でも、お礼がどうしてもしたいの…
この後…予定ある?」
その時、二人の間に冷たい風が吹いた。
「……ないですよ…」
「ニヒヒー…♪良かった…
じゃあ行こっ!」
あの日とは違う満面の笑みで僕の腕をひっぱっていく
彼女が僕の行為にどのような意味を見出し、感謝をしてきたかも、なぜ今日という日に僕に会いに来たのか、今はとても理解できない。もし理解したとしても、もしかしたらそれは単なる勝手な解釈で真意ではないかもしれない。でもそれでいい。
あの日、
あの瞬間、
歩み出すことができた僕らは
あの時失ったクリスマスの日で
またお互いは新たな道へと踏み出すことになった。
その事実だけで僕は幸せになれる気がする。
-僕を連れ行く彼女の、再び長くなった髪を木枯らしがフワッと美しくたなびかせた…
いかがでしたか?
なんか真面目に人の相談に答えたらスルーされるけど、たわいもないことを言ったらそれを継続してやる人が出てくるなぁという体験を基にしてみました。違うかな?w
感想を貰えると本当にやる気が出ます!
くどいですが感想をもらうと本当にやる気が出ます!
今回はシリアスでしたがほかの連載小説でヤンデレ夫婦もの描いてます!癒されたい人!デレデレ好きな人!ぜひご覧になってください!