SSSS.GRIDMAN うたかたのそらゆめ【完結】   作:カサノリ

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英・雄

 その景色を、誰もがじっと見つめていた。

 

 とある異世界人は、

 

「……馬鹿野郎」

 

 と、心底がっかりしたような、寂しそうな顔で吐き捨てた。

 

 ハイパーエージェントは、

 

『どうしたんだ、シグマ……?』

 

 と、仲間の変化に絶句した。

 

 とある神様の少女は、

 

「なんか、つまんない」

 

 と、『彼』を見る時のワクワクが感じられず、目を伏せた。

 

 そして、内海将は、画面を見ながら汗を流していた。

 

 戦いが行われている。青い巨人と、黒い怪獣の。いや、それは戦いと呼べるものではなかった。

 

 巨人が、シグマが怪獣を地面へ引き倒し、我武者羅に殴りつけている。怪獣も抵抗して、爪を突き立てるが、刺さった個所からシグマの体が再生し、痛みも感じないように殴り続ける。執拗に、怪獣の頭部がひしゃげ、血や破片を散らかしても、殴り続ける。ためらう様子はなかった。

 

 いつも拮抗、あるいは怪獣が優勢な、二人のパワーバランスは、完全に逆転していた。シグマのなりふり構わない戦い方が原因か、それとも、何かドーピングでもしているのか。画面を見る内海達からは分からない。

 

 シグマは、リュウタは顔を殴るのに飽きたのか、立ち上がると、怪獣の腕を取り、捩じ上げた。地面に倒れた怪獣はじたばたと暴れるが、もう恐ろしさを感じる存在ではない。太い腕がリュウタによって伸ばされ、

 

『がぁああああああああああァア!?』

 

 くぐもった怪獣の悲鳴。奇妙な方向へと、腕が折り曲げられた。骨どころか、肉も裂けたのだろうか、血が上空へと吹き上がる。その血を浴びながら。夜景に立つ巨人は、悪魔のようにしか見えなかった。

 

「……いや、こりゃ、あれだろ?」

 

 サンダーブレスターみたいな。そういう残虐パワフルスタイルだろ。あいつ、ウルトラオタクっぷりは相当なもんだし、そういう戦い方だって知っているから、と。

 

 内海は引きつり、周りを見渡すも、誰も肯定を返さなかった。ただ押し黙り、六花に至っては、あまりの惨状に目をそらしてしまっている。

 

 それが、これはリアルだと改めて突きつけられているようで、内海はさらに顔を白くした。

 

「なんだよ、みんな!! 大丈夫だって! あいつ、何だかんだヒーロー好きだしさ! ……一日二日で、闇落ちとか、そんな……」

 

 誰に言うでもない言い訳は、

 

「……っ!?」

 

 シグマが電柱やビルを凶器に変えて、無抵抗となった怪獣を殴り始めたところで止まる。

 

 まだ明かりがついていた、もしかしたら避難者がいたかもしれない建物。それを、そこらに生えている雑草のように引っこ抜いて、怪獣へと叩きつけていた。

 

 内海は、知らず拳を握り締める。

 

「おい……」

 

 声が漏れて、何度もジャンクと、外を見比べて……。

 

「あの野郎!!!」

 

 六花たちの制止の声を無視し、内海将は、夜の街へと走り出した。それだけは、内海は許せなかったから。

 

 

 

 怪獣を殴っても、何の感触もなかった。

 

 自分は所詮、ヒーローに張り付いたごみのような存在だと。人間だと思わなければ、痛覚も何もない。どれだけ殴っても、切り裂かれても痛みはない。シグマの声も、もう届かない。アレクシスが言うように、シグマは俺の意識を消さないため、コントロールを明け渡している。だから、彼の声をシャットアウトすることも可能だった。

 

 体や痛覚、シグマの存在は邪魔。

 

 残った全てを振り絞り、俺と言う存在が維持できなくなるまでに怪獣を殺すだけ。

 

 あれだけ苦戦していた物真似野郎にも、延々とフルパワーを出し続ければ、なんてことはなかった。

 

 どうせ、最期。

 

 後先考えなければ、いくらでも無茶ができる。殴って、抉って、捻り上げて。それだけじゃ足りず、適当なもので殴れば、次第に、怪獣は弱っていく。もう、ヒーローらしさなんて、関係ない。

 

 憎い。

 

 こいつくらいは殺したい。

 

 瓦礫と血にまみれて、まだ絶命していない物真似野郎を見下ろし、もう一度、蹴りを入れる。

 

(分かってるよ、これはただの憂さ晴らしだ)

 

 敵意とか、必ず倒さなければいけないなんて、感情じゃない。こいつの存在自体が許せなかった。生きていること自体が許せなかった。俺が消えた後、こいつがのうのうとアカネさんに傅いていることを想像したら、嫉妬で気が狂いそうだった。

 

 俺もこいつも同じ、アカネさんの被造物。

 

 だったら、価値がないのも同じ。

 

 けれど、怪獣はアカネさんの傍にいるなんて。

 

 ヒーローになってしまった俺は、戦うことしかできないのに。その戦いも、意味がなかったのに。こいつら怪獣がいなければ、俺は何も知らないまま、アカネさんと一緒だったのに。

 

 だから、せめて、こいつくらいは。

 

 それだけは済ませて、消えたかった。

 

「さっさと、くたばれよ!!!」

 

 もう、誰へ向けた憎悪か分からない。意外としぶとい怪獣へか、それとも、俺自身にか。渾身の力を込め、怪獣の腹を蹴り潰すと、空へと土埃が巻きあがる。ヒーローなんて、口が裂けても言えない、酷いトドメ。

 

 怪獣は血を吐き、痙攣して、ピクリとも動かなくなった。頭部で光っていた、赤い目のような器官は、光が薄れてひび割れている。追加で二度三度と蹴りを入れても、反応はなかった。

 

(……おわ、った?)

 

 地面へとへたり込み、周りを見渡す。

 

 爆弾でも落ちたかのように、瓦礫と土埃に変わった街。ビルが何個も引き倒されているのは、怪獣じゃなくて、俺が使ったから。それを見て、どっかがうずくが、これも造り物だと無視することにする。

 

「……馬鹿みたいだ」

 

 結局、怪獣を殺しても、達成感はわかなかった。

 

 自分が思っていた通り、馬場隆太という存在が最低だということに、改めて思い知らされただけ。消え去ることにも、抵抗はなくなる。ハイパーエージェントは、こんなヤツを捨てて、別の造り物に取り憑けばいいと。

 

 嫌悪と比例し、力が抜けていく。

 

 さっきまで、限界どころか、身体が焼け焦げるほどの出力で戦い続けたから当然だ。そうしたくて、戦った。だから、変身を解かず、このまま俺が消えて、シグマが自由になるまで待とうとして、

 

『ふざ、けるな……』

 

 聞こえた声は、憎しみに溢れていた。

 

「……は?」

 

 俯けた頭を上げる。

 

 目の前。倒れ、絶命したはずの怪獣から、黒い光が噴き出していた。強く、暗く、光なのに、周りを飲み込むような、矛盾した存在。身体にそれを纏わせながら、怪獣が立ち上がった。

 

『俺は、グリッドマンと戦うために生まれた』

 

 怪獣が言う。

 

『グリッドマンに勝つために生まれた』

 

 グリッドマンへの憎しみを。

 

『ヤツを殺すためだけに生まれた』

 

 そして、

 

『貴様のような、ニセモノと、戦うためじゃない……。貴様なんかに、倒されるためじゃない』

 

 俺への、憎しみを。

 

 怪獣の存在価値を、使命を奪おうとする邪魔者へと。

 

 だから、怪獣は、

 

『俺が俺であるために、邪魔な貴様を殺す……!!!』

 

 光が爆ぜる。

 

 思えば、予兆はあった。俺の攻撃を、こいつが防いだ時から。通用していた攻撃が防がれた。それは、怪獣の特性通り、敵へ対応して力を増したということ。

 

 こいつは認めたくないだろう。けれど、シグマへの認識が変わっていたに違いない。グリッドマンの周りを飛び回る蠅ではなく、怪獣が存在証明を果たすために、排除しなければいけない敵として。

 

 

 

『グリッドマンを、貴様らを殺すために生まれた怪獣』

 

 

 

 これまでの戦いを、経験を昇華し、怪獣が変化する。

 

 光から現れた敵に、もはや怪獣という言葉は相応しくなかった。人型の細いフォルムに、怪獣形態を思わせる鋭い鋭利な鎧。それらは例外なく漆黒に染まり、頭部には爛々と緋色のモノアイが光っている。

 

 その姿は禍々しいグリッドマン。

 

 もう怪獣とは呼べない。

 

 闇の巨人。

 

 

 

『俺は、アンチ……。アンチグリッドマン……!!』

 

 

 

 続く瞬きの間に、俺の左腕が、肩口から無くなっていた。

 

「……っ!?」

 

 驚き、急いで腕を再生させる。だが、

 

『死ね』

 

 アンチグリッドマンが背後にいた。

 

 腹部に違和感。刃が胸から生えている。しかし、こちらだってもうゾンビのようなもの。痛みもなければ、関節も自由自在。刃を掴んだまま、上半身を百八十度回転させ、こちらも剣を突き立てる。

 

 けれど、分かっていた。

 

 これは無駄な抵抗。

 

 ヒーローになり損ねて、街まで壊した役立たずが俺だ。ベリアルのような悪役にも劣る半端者。人造ウルトラマンの方がよっぽどキャラが立っている。

 

 そんな俺が、闇の巨人に通用するはずがなかった。

 

 光の刃は、根元から両断される。全身を闇色の刃が切り刻む。腹を、目を、脚を。回復させた傍から、またも斬られ、最後には、憎悪と共に怪獣が光を放った。

 

『これで終わりだ……!!』

 

 轟音と、光と、回転する視界。

 

「……ぁ」

 

 ビームを打たれたのか、それとも、ウルトラダイナマイトか。

 

 いつの間にか、瓦礫をベッドにしていた。両手と両足に感覚がない。かろうじて繋がっているが、きっと黒焦げ。シグマのカッコいい姿は、見るも無残だ。俺なんかが憑かなければ、シグマだって真っ当にヒーローをやれたはずなのに。

 

 けれど、しぶとくも俺はまだ生きていて。

 

『……シグマ、逃げるんだ!!』

 

 遠くから声も聞こえる。

 

 何かが格闘している音。次いで、爆発音と共に戦闘機がビル群へと落下した。ヴィットかな。防衛隊の戦闘機って考えると、だいたい役割を果たしたような。

 

「……はは」

 

 笑えてきた。

 

 だって、グリッドマンが、アンチグリッドマンと戦っている。俺なんかを、グリッドマンは助けようとしている。アンチグリッドマンが俺へと向かうのを、防いでいる。

 

 キャリバーを構えたグリッドマンと、敵の実力は拮抗して見えた。けれど、グリッドマンもグリッドマンで、上空で怪獣を倒してきたばかり。既に、額のランプは点灯して、退場は近いようだ。だからこそ、アンチグリッドマンもグリッドマンとの決着は望んでいない。奴は全力のグリッドマンを超えたいはずだから。まずは邪魔者を完全に排除したいだけ。

 

(別に、俺のことなんてほっといてくれていいのにさ)

 

 なんで、こんな虚構の世界で、必死に戦えるんだろう。グリッドマンが、異世界人だからだろうか。それとも、使命があるからだろうか。

 

 そんな姿を見るごとに、結局はヒーローになれなかった俺への嫌悪が募っていく。

 

 どうせ、もう、動けない。人間に戻っても、シグマとしても、アカネさんのために出来ることはない。だったら、不出来なヒーローもどきらしく、闇の巨人のかませで終われば、ドラマとして盛り上がるだろうなんて、グリッドマンが時間切れで退場するまで、待っているつもりだった。

 

 小さな声が、聞こえてくるまでは。

 

 

 

「バカヤロー!! なんてヘタクソな戦い方だ!! 周りを見てみやがれ!! なんも守れてねえじゃねえか!!」

 

 

 

「……っ」

 

 内海の声だった。

 

 いつものように、ジャンク越しに声を放っていると思って、だが、すぐに違うと分かる。

 

 首を傾げ、見下ろした地面。そこに豆粒のような人がいた。内海だった。ウルトラオタクが、瓦礫の中、煤に塗れて立っていた。

 

 俺の傷から漏れた光の粒が、ぽつりぽつりと内海に当たっては消えるが、彼は気にする素振りもない。視線は、怒りながら俺だけに向けられていた。

 

 なんて無茶を、と思い。ここに来て言うことが、パクった台詞か、と思い。けれど、言い返す気はない。

 

 どうせ、内海だって造り物だ。

 

 そんな俺の無視にも構わず、内海は声を張り上げ続ける。

 

「なんだよ! あの戦い方!! サンダーブレスターも、もう少しうまくやるぞ!! しかも負けてんじゃねえよ!! 前みたいな、カッコつけた戦いはどうしたってんだ!!」

 

 無視すればよかった。

 

 もう、関係ないんだ。ここで内海が巻き込まれて死んだところで、また一つ、アカネさんのおもちゃが消えるだけ。

 

 けれど、

 

「ウルトラマンなら、あんな戦い方しねえよ! ちゃんと街も、人も守りながら戦うんだよ! それくらい分かんだろが!!」

 

 けれど、

 

「っ……! うるせえんだよ!!!」

 

 俺は、内海へと怒鳴り返していた。

 

 無意味だと思った。小さな、何もできない内海の言葉なんて、聞かなくてもいいと思った。けれど、何度も何度もウルトラマンを持ち出されて。それを聞き流そうとするほど、胸を掻きむしりそうになり、怒鳴らずにはいられなかった。

 

 何もわかっていないオタク野郎に、言わずにはいられなかった。

 

「どうでもいいんだよ!! 怪獣も! グリッドマンも! ウルトラマンも! 全部!! ぜんぶ!!

 みんな造り物なんだ! みんなニセモノなんだ!! 戦ったところでアカネさんも助けられない! 無駄だった! 全部無駄だったんだよ!!」

 

「……っ」

 

「なんなんだよお前は!? 好き勝手なこと言いやがって! なんにもしない奴が! ただのオタクが! ウルトラマンなんて現実にいないのに! こんなヒーローごっこに、勝手に期待してんじゃねえよ!!」

 

 内海の物言いが嫌いだった。

 

 あの時だって、こいつが自信満々にウルトラマンを持ち出すと、何だか頑張るのが正しいと思ってしまった。ウルトラマンらしく戦いたいと思ってしまった。所詮、ウルトラマンはフィクションなのに。そんな存在なんて、現実にはいないのに。

 

「もう黙ってろよ! 俺にはウルトラマンなんて無理だったんだ! あんなふうに、誰かを助けるなんて無理だったんだ!」

 

 アカネさんが好きだ。大好きだ。愛してる。

 

 こんな状態なのに、まだ気持ちがあって、だからこそ、考えるほどに自分が自分で無くなっていく。何をして良いのかすら分からない。

 

 怪獣は所詮、アカネさんのストレス発散。対象は、アカネさんの作ったオモチャたち。子どもの怪獣遊びと同じ。止めたとしても、最後は、一緒にいられない。

 

 そんなの、どうすればいい。

 

「……もう、諦めさせてくれよ。……もう、無理だよ」

 

 シグマの姿になってまで、こんな、泣き言を言って。

 

 内海だって、見損なったはずだ。見限ってほしいと思う。そのまま、かっこいいグリッドマンとヒーローごっこをやっていて欲しい。

 

 どうせ最後は消えるとしても、俺みたいに腐るよりも、何も知らないままでも、グリッドマンの活躍に一喜一憂している方が内海らしいから。

 

 けれど、内海は――

 

「……ざけんなっ」

 

 内海はその場を離れなかった。

 

 暴言を浴びせかけた俺の近くにずっといて、うつむき、握った拳を震わせている。そして、小さく、唸るように言うのだ。

 

「おまえの言ってること、わけわかんねえよ。ニセモノとか、造り物とか。新条のことも、何にも分かんねえよ……!!」

 

 でも、

 

「馬鹿野郎! 無理とか言ってんじゃねえよ!! 諦めてんじゃねえよ!!」

 

 顔を上げた内海は、ただ、叫んだ。

 

「分かってるよ! 俺だって! ウルトラマンはただのフィクションだよ!! 

 この歳になってもウルトラマンとか! 分かってて、それでも好きだからオタクやってんだよ!!」

 

 怪獣に、ウルトラマンに。

 

 街を壊す脅威に、人を守るヒーローに。

 

 空想の造り物が織りなすドラマに、魅了された。何年たっても、離れることなんて、考えられなかった。周りの連中が離れていっても。

 

 お前もそうだろ、と内海が訴えている。

 

「ウルトラマンも怪獣も空想だ! でもさ! それでも好きだったんだろ!? カッコいいって思ったんだろ!!? あんなふうになりたいって思ったんだろ!!? じゃなきゃオタクやってねえよ!! 俺も、お前も!!!」

 

 潰してやろうと思った。

 

 ごちゃごちゃと叫んで、もう死にたい俺をひっかきまわして。無駄な希望を、無責任に与えようとする豆粒を。同じ造り物を壊してやろうと思った。

 

 俺はもう、感触がない拳を振り上げて――。

 

 内海へと、振り下ろした。

 

「……っ」

 

 けれども、当てられなかった。

 

 視界がにじんで、内海が何処にいるかも分からなかったから。そうでなくても、きっと潰すことなんてできなかった。

 

 怯まずに叫び声が聞こえてくる。子どもみたいに夢を信じたまま、大きくなってしまったオタクの声が。

 

「グリッドマンはウルトラマンじゃねえよ! 戦いもリアルだよ! 俺は何にもできない役立たずだよ! 

 ……でも、俺はワクワクした! 本当のヒーローが来てくれたから!! 怪獣だって倒せるし、不可能なんて無いって思った! 俺たちが夢見たヒーローが! 本当に来てくれたんだ!!」

 

 どこまでも勝手な、子どもみたいな物言い。けれど、それを聞いていて、不意に昔のことを思い出した。

 

 ウルトラマンを観ていたことを。

 

 最初は、怪獣が街を壊したり、ヒーローが戦う姿がカッコよかった。防衛隊の戦闘機がカッコよかった。隊員もカッコよかった。そんなカッコよさだけで毎日眺めていられた。

 

 だが、それは子どもまで。

 

 一度、ウルトラマンを見るのが、恥ずかしいと思ったときがある。小学校の三年だったか、四年だったか。なんだか大人びた考えから、ウルトラマンを卒業して、漫画とかを趣味にしようと思ったとき。

 

 最後に、少しテレビで見て、グッズも捨てようとして。

 

『……俺も、光になりたいな』

 

 久しぶりにウルトラマンを見た。ティガの最終回を見て、涙が出てきたんだ。

 

 だって、すごい面白かったから。感動したから。俺は素晴らしい物語を見ていると思えたから。

 

 みんなが無茶だと、絶望しか待っていないと、工夫して、挑んで、それでも希望が潰えそうなときに。

 

 世界中から声が届くんだ。

 

 希望を信じる光が集まって、ウルトラマンが復活して。それで、あれだけ恐ろしかった邪神は、ただの怪獣になって倒された。どんな時も諦めなかった人間が、闇を掃った。

 

 観終わった時に、ウルトラマンを捨てるなんてこと、できなかった。

 

 きっと、それが、ウルトラマンが憧れになった時。もしかしたら、これもニセモノの記憶かもしれないけれど、瞼が熱くなる思い出。

 

 そして、今、

 

「今! お前がそのウルトラマンなんだよ! お前が、俺たちの夢のヒーローなんだよ!!」

 

 あの時のように、ウルトラマン好きが、俺を見ている。こんな絶望しかないような状況で、声をかけている。俺をヒーローだと思っている。

 

「そのお前が! お前だけは、ウルトラマンを否定すんなよ! 頼むから、否定しないでくれよ!!」

 

 内海が、泣きながら。いつかの俺と同じことを、泣きながら訴える。

 

 俺が、ウルトラマンらしくないことをしたことを。諦めて、自棄になって、それで全部を壊そうとしたことを。内海は自分の事みたいに怒っていた。

 

 だって、本当は内海だって。

 

「俺だってグリッドマンになりたかったんだ! ウルトラマンになりたかったんだ! それで新条がヒロインだったり、そんな物語の主人公になりたかった!!

 ……でも、違うんだろ? 俺は選ばれなかったんだ。お前が選ばれたんだ!! だったら、ごちゃごちゃ言ってないで、戦えよ!」

 

 俺だって、逆の立場だったら、そう思っていた。だって、こんなの、羨ましい。ヒーローに変身できて、怪獣から街を守って、助けたい誰かもいる。

 

 そんな、子供の夢が現実になっている。

 

「ヒーローごっこ上等じゃねえか!! だったら待ってんのはハッピーエンドだよ! ご都合主義でも、ハッピーなごっこ遊びにしないといけねえじゃねえか!! こんなとこで諦めんな! 最後まで、なんでもいいから、できることをやるんだよ!」

 

 ウルトラマンは空想の産物。そんなのわかり切ったこと。

 

 けれど、俺たちはそんなヒーローに憧れた。造られた唯の映像は、俺たちにとって夢のヒーローになった。生きる力を、正しいことをしようという勇気を与えてくれた。

 

 そして、

 

(……シグマは力を貸してくれた。本当のウルトラマンみたいに)

 

 俺たちの空想は叶った。ご都合主義は、一度、起こったんだ。殺されてしまった俺は、どんな形でも、帰ってこれた。

 

 シグマが俺を助けたいと言ってくれたから。

 

 きっと、リスクばっかりだったのに。それでも、諦めないでいてくれる。こんなになっても、見捨てないでいてくれる。

 

 そして、俺が守りたかった人も、

 

『リュウタ君』

 

 もう一度俺と出会って、あの時と同じように名前を呼んで、それで、はにかむように笑顔をくれた。

 

 まだ、彼女は悪魔になっていない。

 

 まだ、俺は消えていない。

 

 まだ、この世界は存在する。

 

(守るものが何もない? できることも何もない?)

 

 そうして、滲む視界のまま、俺は立ち上がった。

 

 

 

『とどめだ! ニセモノ!!』

 

 

 

 アンチグリッドマンが、グリッドマンを退けて、俺へと、俺たちへと攻撃を放とうとしていたから。

 

 グリッドマンとそっくりなモーションで、グリッドマンとは違う禍々しい闇を。射線には宝多さん達のいる『絢』もある。足元には内海もいる。

 

 だから、俺は。

 

「……シグマ! ……頼む」

 

『もちろんだ』

 

 闇が奔って、俺の視界を真っ黒に染め上げ……。

 

 そして、闇が晴れた。

 

「り、リュウ、タ?」

 

 内海の呆然とした声。

 

 その声が、後ろから聞こえてきて、少し安心する。情けない俺だけど、ちゃんと守ることができたと。友達を救えたと、分かったから。

 

 目の前に立つ、アンチグリッドマンが俺へと尋ねてきた。

 

『何のつもりだ……?』

 

「……」

 

『貴様はもういい……!

 ただのニセモノ! グリッドマンもどき! 奴には届かない半端者……!!

 なぜ、おまえが立ち上がる!? どうして、力尽きない……!!?』

 

 何もかも諦めていた俺へ。内海を、街を庇って、奴の光線を受け止めた俺へ。それでも、倒れなかった俺へと。

 

「……馬鹿だよな、俺」

 

 もう何もできない? 全部がニセモノ? あの悪魔に言われるまま、諦めて、腐って、本当に情けない。

 

 でも、そんな俺だけど、諦めたくはなかった。自分の憧れを裏切りたくなかった。

 

 まだ、アカネさんがいるから。信じてくれる友達もいるから。俺だって、生きているから。何が待っているか分からないけれど、ヒーローが力を貸してくれるから。

 

「この世界が、俺たちが偽物でも……」

 

 アカネさんの造りもので、おもちゃ箱で、俺たちの命に何の価値がなくても。怪獣を倒すことが、ただ、アカネさんのストレス発散の邪魔にしかならなくても。

 

 それでも、内海は、記憶喪失の俺を友達だと言ってくれる。一緒にウルトラマンを見て、くだらない話で笑いあって、それで、俺の寂しさを埋めてくれた。こんな場所まで、危険を冒して走ってきて、励ましてくれている。

 

 響は、行く場所のなかった俺を、泊めてくれた。しょうもないウルトラ話も、楽しそうに聞いてくれた。ぼんやりしているけど、きっと心の奥底からまっすぐで、同じように好きな子がいて。それで、戦いでは、いつだって助けてくれた

 

 宝多さんもそうだ。記憶喪失の俺を信用して、男同士のノリにも呆れながら付き合ってくれたし、情けない俺に、お礼を言ってくれた。

 

 それだけじゃない。バイトをさせてくれた店長。憎いけど、それでも気にかけてくれた兄貴。一緒にグランドを走り回ったサッカー部の友達。それに、気づかないうちに死んでしまった、殺されてしまった問川も、初デートの時、おせっかいなアドバイスをくれたんだ。

 

『アカネには、ぜったいに赤いペンダント!! こっそり買って渡せばポイント高いよ!!』

 

 なんて。きっと、アカネさんは気づいていないけれど。

 

 造られた存在でも、みんな、人形なんかじゃない。大切な、友達で、仲間で。そんな、みんなと、アカネさんと過ごした毎日は輝いていた。あの日々は色づいていた。

 

 だから、

 

「アカネさんが好きだから。愛しているから……!」

 

 アカネさんにとって、俺たちが造り物でも。

 

 あんなに良い友達を、『いらない』って、笑いながら殺す子になってほしくなかった。暗い部屋で一人で嗤うんじゃなくて、みんなの真ん中で、幸せに笑って欲しかった。心の一つだって、あの悪魔に渡したくなかった。

 

 だから、もう一度、願いごとを握りしめる。たった一つ、胸に刻んで走った願い事を。

 

『アカネさんを幸せにしたい』

 

 戦いが終わったら、俺は消えるかもしれない。アカネさんと会えないかもしれない。

 

 でも、俺たちにはヒーローが二人もいてくれるから、このヒーローごっこの最後には希望が待っている。

 

 だから、もう!!

 

 

 

「ここから、一歩も、下がらない!!!」

 

 

 

 溢れる優しさで、悪さえ癒したヒーローのように。

 

 最強最速の敵にだって、ひるまず立ち向かったヒーローのように。

 

 絶望の淵に立たされても、絆をつないだヒーローのように。 

 

 全ての歴史を連ねて、無限の力に変えたヒーローのように。

 

 勇敢に新しい時代を切り開いた、ヒーローのように。

 

 不可能な目標にだって果敢に進み続けた。無敵の怪獣にだって諦めず立ち向かった。

 

 そんな、ウルトラマンに憧れてきた俺だから。こんな歳になっても、ウルトラマンが大好きな俺だから。

 

 彼らのように大切な人を守っていきたいから。

 

 後ろで見てくれる仲間の前で、似合わなくてもヒーローの名前を叫びたい。

 

 

 

「俺は、グリッドマン……。グリッドマン・シグマ!!!」

 

 

 

 叫び、構え、闇の巨人へと走る。

 

 全身が痛んだ。

 

 痛みが、戻っていた。

 

 体も、鎧も、ボロボロになっている。それでも、力は全身に満ちていた。ただ、『あの時』のように、何も考えずに走って、アカネさんを、みんなを助けるために。今は、この怪獣を、止める。

 

『……っ!!』

 

「ッ!!」

 

 ぶつかり合って、身体が仰け反った。力には、大きすぎる差がある。怪獣の時よりも、もっと。けれど、負ける気はしなかった。ただただ、身体が熱くて、無いはずの鼓動が聞こえてくるほど。

 

「シグマ、情けなくてごめん! こんな俺でごめん! けど、もう一度、力を貸してくれ!!」

 

『任せろ! 共に行くぞ、リュウタ!!』

 

 声が支えてくれる。きっと、限界ギリギリでも、耐えられる。

 

(なんとか、一発。撤退させるくらいに、でかい一発を!!)

 

 そうして、敵を押さえながら、何か方法がないかと考えを巡らせていた時だった。

 

 

 

 

『アクセスコード、バスターボラー!!』

 

 

 

「……!!」

 

 そんな掛け声と共に、側面からジャンプして突っ込んできたのは、ドリルが付いた戦車。それが、アンチグリッドマンへ勢いよく衝突し、不意を突かれた奴は、もんどりうって倒れる。

 

 俺と敵との間に、ドリフトして停まる戦車。その意外な助っ人へと、俺は小さな声で疑問を零した。

 

「ボラー……? なんで?」

 

 あんなにみっともない姿を見せたのに。一番正義感が強く、厳しいボラーは、俺を見損なったと思っていた。なのに、なんで、助けてくれるのか。

 

 するとボラーは、鼻を鳴らし、ぶっきらぼうに言うのだ。

 

『ほんと、いつまでたってもぐずぐずしやがるし、文句はいっちょ前の癖にヘタレるし。こんなに街も壊して、いじけて、どうしようもねえ奴だって思うけどよ』

 

「……その」

 

『けどな! 最後の最後でも、踏みとどまれたなら上等だ!!』

 

 明るい声。なんだか、厳しい先生が初めて褒めてくれたような声。顔が見えないボラーが、笑顔を向けてくれた気がした。

 

 そして、俺たちは並んで、アンチグリッドマンへと向かう。

 

『説教は後! 今はあいつを倒すぞ!!』

 

「どうやって……」

 

『決まってんだろ! 合体だ!!』

 

 合体。

 

 グリッドマンのように。ボラー達の力を借りて、強化・パワーアップ。けれど、それは可能なのだろうか。ずっと、グリッドマンだけの装備だと思っていた。俺には使えない力だと思っていたし、ボラー達も何も言わなかった。

 

 だが、ボラーは確信を持って、呼びかける。

 

『名乗ったんだろ!? お前はグリッドマンシグマなんだろ!? だったら、不可能なんてねえんだよ!!』

 

 だから、

 

「……っ、ああ!!」

 

 俺も、憧れたグリッドマンみたいに。

 

 光と共に、俺の、シグマの体にボラーの鎧が装備される。バスターグリッドマンとは少し違う。グリッドマンの時は肩にあったツインドリルは、俺の両腕に。キャタピラが変形したランチャーは、両肩に。

 

 バスターグリッドマンは見るからに遠距離型だったけれど、シグマの時は近距離型。

 

 叫ぶ言葉は、自然と頭に浮かんできた。

 

 

 

「武装合体超人!!」

 

『バスターグリッドマン・シグマ!!』

 

 

 

 なんだよ。本当にできるじゃないか。

 

 シグマ、あれだけ無い無いって言ってたのに。

 

『すまない。勘違いだったようだ』

 

「……ははっ。まったくさあ」

 

 戦いの中だってのに、あんなに最悪な気分だったのに。もう、笑えるなんて。シグマもジョーク言うんだ。

 

『笑ってねえで、さっさとケリをつけるぞ!!』

 

 ボラーの元気な声に従い、アンチグリッドマンへ肉薄する。

 

 敵は闇色の剣を出して、俺を斬りつけようとするが、さすがはボラーのドリル。刃こぼれもせず、攻撃をはじいていく。そしてパワーも、さっきまでとまるで違っていた。力強く、押し負ける気もしない。

 

 これなら、勝てる。

 

『……っ、なぜだ!!』

 

 状況の変化に、戸惑い、アンチグリッドマンが叫ぶが、構わず、ドリルを叩きつけた。体勢を崩したところで回転させ、両手で突き。シグマスラッシュのエネルギーが、回転する刃になってドリルを纏っていた。

 

 打ち込んだ衝撃と、困惑と悔しさにゆがむ奴の顔。綺麗に決まった攻撃で、アンチグリッドマンが遠くへと吹き飛ばされる。

 

 でも、まだ決まりじゃない。アンチグリッドマンは立ち上がりながら、駄々をこねる子どものように叫び、暴れた。

 

『俺は! お前を! お前たちを殺さなければいけない! 倒さなければ、俺は俺でいられない!! なのに、なぜ、お前たちは強くなる!? なぜ、倒れない!!?』

 

 答えは、決まっている。

 

 俺の後ろでウキウキ顔のウルトラオタクが、腕を振りかざし飛び跳ね、愛さえ知らないモンスターへと指差し叫んだ。

 

「よーく聞きやがれ怪獣! 誰かを守るヒーローは!! ぜってえに負けねえんだよ!!!」

 

 ああ、まったく。

 

「そういうのって俺の台詞のような……。でも」

 

 俺達にとっては当然の理由だ。

 

『……っ、そんなもの!!』  

 

 内海の答えが意外だったのか、怯みながら、アンチグリッドマンが両腕に闇を溜める。さっきと同じ、いや、怒りで増幅したのか、さらに威力は上だろう。

 

 だったら、こっちも。

 

「シグマ! ボラー!!」

 

『ああ、リュウタ!』

 

『一気に決めるぞ!!』

 

 両腕のドリルを構え、そこへと力を込めていく。感覚はシグマスラッシュ。そこへ回転と放出のイメージを加えた。

 

 これ一発を出せば、必ず敵を倒せる。それが、必殺技。

 

『バスターグリッド――』

 

「シグマ、スラッシュ!!!」

 

 放たれる光線。螺旋を描きながら、怪獣へと向かう光のツインドリル。

 

 アンチグリッドマンも負けじと闇を放つ。だが、シグマと、ボラーが、力を貸してくれる。後ろには応援してくれる奴がいる。そんなシチュエーションで負けるなんてありえない。

 

 一瞬の均衡。

 

 しかし、ドリルで掘り進むように、俺の光線が押し始め、

 

『なぜ……! なぜだ……!!?』

 

 疑問の声と共に、アンチグリッドマンが爆発した。

 

 

 

 そして、

 

『殺せ……』

 

「……」

 

 アンチグリッドマンは、地面に倒れたまま、諦めたように言う。あれだけ禍々しかった鎧は、俺と同じようにボロボロになり、威容もなにも残されてはいなかった。

 

 不意を突こうとしている様子もない。

 

 力なく、アンチグリッドマンがつぶやく。

 

『俺は、貴様らを殺すために生まれて……。結局、それを成せなかった。……もう、俺が存在する意味はない』

 

 最後は泣き言みたいに。

 

 俺は、その言葉の通りに、無抵抗な巨人へと腕のドリルを突きつけ――、

 

「……やめだ」

 

 ボラーとの合体を解除した。

 

『……なんの、つもりだ』

 

 怪獣が意味が分からないという様に、ようやく俺を見た。

 

 それはそうだ。助ける理由はない。こいつは怪獣で、アカネさんの衝動を代行する存在。こいつがいなければ、アカネさんの罪が増えることはない。もう、これ以上、彼女に壊して欲しくないと、さっきの決意を想えば、とどめを刺すべきだと俺も分かっている。

 

 けれど、

 

『なぜ、見逃す……』

 

「……俺だって、分かんねえよ」

 

 こいつが、あの子どもみたいな怪獣が、必死に成長して、力及ばなくて、自分を無価値だと断じている。その姿が、打ちのめされていた俺と重なったからだろうか。最初に抱いていた、殺してやろうという気持ちはなくなっている。

 

 でも、それだけじゃない。俺は、目を閉じて、憧れているヒーローの姿を思い浮かべた。それで、心は決まった。

 

「……ウルトラマンは、こういう時、とどめは刺さないからな」

 

『ウルトラ、マン?』

 

 なんだ、人間態も持ってるのに、怪獣に変身できるのに、知らないのか。

 

「俺たちの、夢のヒーロー。……一度くらい、観てみろよ」

 

 きっと怪獣だって楽しめるから。

 

『意味が、わからないぞ……』

 

 そう言って、アンチグリッドマンは姿を消した。

 

 悪いけど、俺だって色々ありすぎて、自分の気持ちが分からないんだ。怪獣に説明するなんて、無理だった。

 

 大きく息を吐く。

 

 内海はまだ後ろで『勝った、勝った』とはしゃいでいる。俺も、せっかくの初勝利に、少しは喜んでも良かったが、ボロボロになった、俺が大部分を壊した街を見ると、そんな気にはなれない。何人、このがれきの下にいるのか。怪獣どころか、俺だって人を何人も。

 

 また自己嫌悪に沈みそうになる俺へ、シグマが声をかける。

 

『リュウタ』

 

「……シグマ?」

 

『手を前に出してくれ。……私も、記憶を取り戻した。そして、君となら、できる力がある』

 

 そう言うシグマに従って、両手を前に構える。

 

 言われるまま、戦意ではなくて、ただ、この街を直したいと、人を救いたいという気持ちを込めて両手に集中すると。それが現れた。

 

「……っ!! これ……」

 

 攻撃に使うビームとは違う、穏やかで、柔らかい光。それが両手からあふれ出て、街へと降り注ぐ。すると、壊れたビルが、家が、道路が、元通りに再生されていく。

 

『フィクサービーム。私たちが持つ、癒しの力だ。人も物も、直すことができる』

 

「……ほんと、ずっるいな」

 

『そ、そうなのか!?』

 

 いや、どうしたらいいんだ。色々と罪悪感とかあったのに、こんなにあっさり解決してくれたら。俺は苦笑いを浮かべながら、湿った声でお礼を言う。

 

「ありがとう。やっぱり、シグマはヒーローだよ」

 

 まだ、終わりじゃない。

 

 問題は山ほどある。アカネさんやアレクシスについて、内海達に説明しなければいけないし。その後はアカネさんを助けて、世界の問題も解決しなくちゃいけない。

 

 ああ、ほんとに色々あるけど。

 

 夢のヒーローと、友達がいてくれたら、何とかなるような気がしていた。




>NEXT「友・達」




作品構想以来、ずっと書きたかったシーンをお送りできました。

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