破軍の動かない大図書館   作:無休

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第1話

 私には前世の記憶がある。

 

 

 

 その事に気付いたのは3歳から4歳の間。記憶が断片的すぎて、自分が男だったか女だったかも確証が持てない。何にハマっていたか、何を愛し何を目的に生きていたかも当初は思い出せなかった。だが前世における常識というものは思い出した。

 

 

 そこで自我を得た私はいくつかの事柄に気がついた。

 

 

 まずこの世界が前世とは違う世界であること。テレビや会話から伐刀者(ブレイザー)や魔導騎士といった聞き慣れない言葉や概念があること。

 

 つまり私は曖昧な前世の記憶を持ったまま異世界に転生した事になる。どのようにしてこちらの世界に転生したのかなどは一切不明。

 

 それに対しては驚きや不安もあったが同時に楽しみも沸いた。前世から見れば非日常の光景がこちらでは当たり前。騎士たちが武器と己の魔力を使用して戦う世界。こんな心が躍る事があるだろうか。

 

 

 二つ目、自分がその千人に一人の人材、伐刀者(ブレイザー)であること、使える異能は『魔導探究』。最初はなんだそれとも思ったが、今となっては私の生きる意味とも言える能力だ。

 

 

 三つ目、これは成長してある程度してから気づいたことだ。ふとしたことで、自分が前世でアニメやゲームにハマっていた事を思い出した。そして今の私の名前はパチュリー・ノーレッジ。そう前世の東方Projectに登場するキャラクターの一人。『動かない大図書』『七曜の魔法使い』『紫もやし』などの愛称で知られる魔法使いと同じ名前なのだ。

 

 名前だけならまだしも偶然の可能性がある。しかし、紫色の髪や本人を幼くしたかのような顔。自分で言うのもあれだが凄く可愛い。だって本当のパチュリーにそっくりだもの。

 

 

 .......何故だ。まぁこれが私の感想だ。なんだその程度かとつまらないと思うかもしれない。だが体験したらわかる。自覚した数日はこれ以外頭に浮かばない。食事中も他の何かをしている時も、寝る前でさえ脳内に浮かぶのはこの謎だけだ。

 

 

 何とか状況を呑み込んだ私は、ふと疑問に思ったことがある。私のこの体は人間だ。精神はともかく肉体は人間の両親から産まれた人間のものだ。パチュリーは生まれつきの魔法使いだった筈なのでそこが違う。

 

 憑依転生かと思ったが肉体と能力に差異がある。この時私が考えたのはどうせならちゃんと彼女になりたいという願望だった。人間から魔女になり、ひたすらに魔法の研鑽を。それが私の生きる指針となった。幸いな事にこの身に宿った能力は、永遠といえるような時間でも自分を飽きさせるようなことはしないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「《天壌焼き焦がす竜王の焔(カルサリティオ・サラマンドラ)》!!」

 

 

「《一刀修羅》!!」

 

 

 

 アタシは目の前の男の技量に、敬意と畏怖を込めて最大限の火力を誇る伐刀絶技(ノウブルアーツ)を振るう。相手は驚きの伐刀絶技(ノウブルアーツ)を出してきた。

 

 向かい合う男の伐刀者(ブレイザー)ランクはFランク。しかも能力は身体能力倍加。.......しかし現実はどうだ。相手が行ったことは、ただの身体能力の倍加ではなく数十倍。そしてあり得ないことに魔力も増加した。

 

 

 そのことに動揺したのか、アタシはすぐさま伐刀絶技(ノウブルアーツ)を振り下ろした。天井を貫く炎剣。それを標的に向けて降り抜いた。

 

 

 その時、視界の端で見てしまったものがある。それは観客席に座っていた一人の女子生徒。紫色の長髪、眠たげな目を浮かべている少女。それがアタシが振り下ろそうとしている炎剣の範囲に逃げもせずに座っていた。驚くこともせずその少女は炎剣に向けて手を伸ばす。そこから不思議な文様を描くドーム状の魔力防壁が少女を包んだ。

 

 気づいた時にはアタシの剣は止めようもないところまで降りていた。この模擬戦は《幻想形態》。肉体にはダメージは無く、体力を削り取るだけだ。それにこの試合には負けたくない。その思いで僅かばかりの謝罪とともに振りきった。

 

 

.......どうなった?

 

 

 結果を確認しようと正面を見る。まず対戦相手の男はいなかった。今のを避けたの!?これだけでも驚愕した。さらにピントを奥に向けると、魔力の防壁で護られた少女が跡形も無く消えていた。

 

 

 手加減したつもりは無い。躊躇ったということも無い。先ほどの一振りは今の自分の最大火力の筈だった。それが一人にはひらりと躱された。

 

 巻き込んだ少女は幻想形態の筈なのに消えて無くなっていた。その場には自分の攻撃の残痕だけが燻るのみ。狐につままれたような、そんな感覚。あれは幻だったのだろうか。

 

 二つの驚きに私の心は大きく揺らいだ。そして気がつけば動揺しているうちに、アタシは対戦相手に切られていた。体力を削り取れ、意識が強制的にブラックアウトする。覚えているのはそこまでだった。

 

 

 

 

 その後、意識を取り戻したアタシは理事長先生から先ほどの対戦相手、イッキについて聞かされた。才能に恵まれず、家族からもいないものとして扱われ、それでも夢を諦めきれなかった男。

 

 アタシはこの男の背中を追いかけようと決めた。イッキと切磋琢磨できればもっと上を目指せると感じた。いろいろあったけど良いルームメイトと出会えたと今なら思う。

 

 

 イッキと意気投合した後日、アタシは気になっていた事について尋ねてみた。私の攻撃を受けて消えてしまった人物。幻想形態の為怪我は無いとは思うのだが、何故消えてなくなったのか。内なる興味は尽きないが、特徴を教えるとすぐに答えは返ってきた。

 

 

「あぁ、それはたぶん2年生のパチュリーさんだね。彼女なら書庫にいると思うよ。気になるなら今からでも会いに行ってみる?」

 

 

 そうしてアタシは興味を持ったパチュリーと呼ばれる生徒に会いに行くことに。……それにしてもなんで書庫?図書館とかならわかるけど。

 

 イッキに案内された場所は春休みで僅かな人しかいない図書館ではなく、明らかに人がいるとは思えない暗い部屋。多くの棚が並び、所狭しと本が詰められている。

 

 

「.......暗いわね。本当にここにいるの?」

 

「それは間違いないと思うよ。基本的に彼女はここを出ないらしいから」

 

 

 そう言いながらイッキは暗い中、部屋の電気のスイッチを探す。しばらくしてやわらかな明かりが周囲を照らしだした。まるでランプのような優しい光。書庫の電球は特殊な物を使っているのだろうか?それにしても基本的にここから出ないってどういう意味かしら。

 

 

「あれ?」

 

「どうかしたの?」

 

「なんで明かりがついたのかなって?ステラがスイッチを見つけたのかい?」

 

「いいえ。私は何もしてないわよ」

 

「え?」

 

「.......え?」

 

 

 二人揃って疑問符を頭に浮かべた。そして改めて明かりをよく見てみたらフワフワと浮いているように見える。明らかに備え付けの物ではない。光そのものが漂うように浮いている。……まさか人魂?

 

 非現実的で嫌な想像を浮かべ、悪寒が背筋を走った。そして同時に一人の人物が奥の方から現れた。その人物が現れなければアタシは声を上げていたかもしれない。

 

 

 長い紫色の髪の先をリボンでまとめ、紫と薄紫の縦じまが入った、ゆったりとした服を着用した人物。月の飾りのついたナイトキャップのような帽子を被っている。ゆったりとした服装はまる就寝着のようにも思える。眠たげな表情をしたその人物は、アタシが昨日訓練場で見た少女に間違いはなかった。

 

 

「.......何か用かしら?」

 

「貴女がパチュリー・ノーレッジね」

 

「あら、噂の皇女様じゃない。何か本でもお探し?あいにくと物語は図書館の方よ」

 

「いや、本じゃなくて少し貴女に興味を持ったのよ」

 

「……客人は久しぶりね。ここじゃなんだし、ついてきなさい」

 

 

 パチュリーが書庫の奥へとゆっくりと歩み始める。それと同時に明かりが動いた。彼女やアタシたちの足元を照らすように光源が移動する。明らかにこの光源には彼女が関わっているのだろうと思い、アタシは素直に尋ねてみることにした。

 

 

「この光は貴女の能力なの?」

 

「えぇ、これも能力の一部よ」

 

 

 ある程度進むと、アタシたちの正面に机に積まれた本の山が見えてきた。そして積み上がる本の隙間から僅かに溢れる光が零れている。それは今アタシたちのそばで光る明かりと同じような柔らかな明かりだった。

 

 

「椅子用意するわね」

 

 

 そう言うと彼女は軽く指を振るう。なんの仕草だろうかと見ていると、周囲から二脚のダイニングチェアがプカプカと宙を漂いながら飛んできた。それはアタシとイッキの傍にゆっくりと着地する。

 

 

「え?何?ポルターガイスト!?」

 

「そんなわけないでしょ。これも私の魔法よ」

 

 

 べ、別に怖くなんてない。.......それよりも彼女はこの浮いてきた現象を自らの魔法と言った。物を浮かばせる、手を使わずに動かすと言えば《念動力(サイコキネシス)》系の能力者なのか。そうなるとあの明かりも、光源となる何かを操っていたのか。しかし、今一度よく見てみると何かを浮かばせているというような気はせず、ただの光に見える。

 

 

「どうぞ座ってちょうだい」

 

 

 彼女は考えるアタシを席に促す。アタシとイッキは本が山のように積まれた机に向かって腰掛ける。パチュリーはこの机の向こうにあるだろう椅子に座るのかと思っていると、彼女は逆側に歩みだした。

 

 すると同時に机の上の本の山が浮かび、別の場所へとゆっくりと丁寧に飛んでいく。開かれた机。それを挟んでアタシたちと向かい合うように座り、一際ぶ厚い本を眺めているパチュリーがいた。

 

 

「.......え?」

 

 

 前にはパチュリー。後ろにはパチュリー。私は二人のパチュリーを交互に見直す。一体何がどうなっているのか。視界を前後に動かし、何とか状況を読み取ろうとする。

 

 

「後ろのは私の《分身(アバター)》よ」

 

 

 私の正面に座るパチュリーが声を出す。そこから与えられた情報はアタシを混乱させるに充分だった。

 

 今度は分身?!この人一体何なのよ。魔力障壁は張ってたし、念動力(サイコキネシス)も使うし、分身も作っているし。もー訳わかんないわ。どんな能力を持ってたらそんなことが出来るのよ。

 

 

「とりあえず挨拶くらいは本体(こっち)でやるわ。初めまして、パチュリー・ノーレッジよ」

 

 

 一度だけこちらに視線を上げ、すぐさま読んでいたであろう本に意識を戻す。まるであまり興味は無いとでも言いたげな行動。

 

 

「で.......要件は何?」

 

「えっ……えーと、単なる興味っていうか、なんていうか……」

 

 

 自分が巻き込んでしまった人がどんな人物か知りたかった。ただそれだけの用。アタシのただの気まぐれ。しかし、尋ねる相手はどうやら読書に熱中している様で、迷惑かと思う心が言葉を濁す。

 

 

「用がないなら.......いや、そうね。少し貴女に質問しても良いかしら?」

 

「構わないけど、アタシに何を聞くの?」

 

「先日の模擬戦。あの中で私が気になった点があるのよ」

 

 

 そう言うと彼女は今まで開いていた大きい本を横にずらし、積み上がっていた本の一冊を目の前に開ける。そしてペンを手に取った。

 

 

「まず基本情報から。炎の自然干渉系で魔力量は平均の三十倍で合っているのよね?」

 

「ええ、合ってるわ」

 

「ではそれを踏まえて……あの最後の一撃、手を抜いた?」

 

「そんなことないわ。最後のは私の最高火力だったはずよ」

 

 

 あの時放った伐刀絶技(ノウブルアーツ)は私の中の最大火力。全身全霊の一撃だ。イッキの技量に敬意を込めた攻撃だった。そこに手を抜くなんてありえない。

 

 

「魔力量と出力に圧倒的差異が生じている。それも本人は自覚していない。.......魔力が多過ぎるから?いや、彼女より少ない魔力量でアレよりも出力を出せる者もいる。では、いったい────」

 

 

 パチュリーは手を口元に当て、何かを呟き出した。元々小声で早口気味だった彼女の言葉は途中から聞こえなくなった。こういうのを自分の世界に入ったと呼ぶのだろう。

 

 

「なんか.......凄い集中しているわね」

 

「彼女は騎士というより、研究者といったスタンスをとっているからね」

 

「あー、そういえばそんな雰囲気。わかる気がする」

 

 

 自分の中で考えを巡らせているのだろう。時々呟きが止まったかと思えば、再び口ずさむように聞こえない言葉を紡ぐ。

 

 

「でしょ?まあ、彼女のそんな態度に突っかかる人もいるけどね」

 

「.......突っかかる?」

 

「彼女は去年の七星剣武祭に破軍代表として出場したんだ。でも本人は勝ち負けに微塵の興味は無く、ただただ相手や出場者の能力について検証していたんだよ。誰に何を言われてもその方針を変えることはなく、普段はただひたすらここで研究している。その為ついた二つ名は《動かない大図書館》」

 

 

 意外だった去年の七星剣武祭の出場者だったとは。しかも結構独特な出場理由。

 

 

「みんなが目指す七星剣武祭で、一人別の目的で出ていたらそりゃ文句の一つも言いたいわよね」

 

「あら.......貴女も私に騎士道がなんたるかとでも言うのかしら?」

 

 

 ブツブツと何かを呟いていたパチュリーがこちらの会話に戻ってきた。その表情はまたかといったうんざりとした顔だ。眠たげな目がさらに細まっている。

 

 

「だってせっかくの七星剣武祭よ?出場したなら勝ちを目指すべきよ。貴女も魔導騎士になる為にここにいるのでしょう?」

 

「魔導騎士養成学校にいるからといって、誰も彼もが騎士になりたいと思うのは早計ね。私は魔導を極めることができるならどこでもいいわ。魔導騎士としての資格もあれば便利ね程度にしか思っていないわ。あと多くの伐刀者(ブレイザー)サンプルが集まるという点でこの場所にいるくらいね」

 

「同じ学び舎の生徒をサンプルって.......そんな言い方」

 

「私の能力的にも目的にも必要なことよ」

 

「そういえば貴女の能力って?」

 

「私の能力は『魔導探究』の概念干渉系能力。魔力による事象を解析し、自身の魔力で再現する能力よ」

 

「どういうこと?」

 

 

 魔力事象を解析?再現?なんか凄そうな.......でもちょっとよくわからない。

 

 

「ではわかりやすく簡単に。人の能力を解析して、自身のものとできる能力よ」

 

「はぁあ?!そんな能力あっていいの?!」

 

「わかりやすく説明しただけよ。そんなシンプルなものじゃないわ」

 

 

 最後まで聞きなさいと表情で告げてくる。

 

 

「まず相手の魔力がどのように作用しているのかを解析し、それを理解することが必要になってくる。それが簡単なわけないでしょう?」

 

 

 相手の魔力の作用を理解?私は頭に疑問符を浮かべた。彼女は一瞬だけ私の顔を伺い、すぐに本に視線を戻す。

 

 

「理解しきれてないって顔ね。貴女は自分の魔力がどのように炎になってるか考えたことあるかしら?それを解析して、理解するのはそれなりに時間がかかるのよ。だから私はずっと研究をしている。それで理解し終えれば、それは私の力となるのよ」

 

「つまり、僕たちが鍛錬する事と同じように、研究しているというわけだね」

 

「一括りにされても困るけど.......まあ、その認識でいいわ。貴方達バトルジャンキーが強くなりたいように、私はただひたすらに知りたいの。知れば知るほどに私の可能性は広がっていくのだから」

 

 

 アタシたちが強さを求めるように、この人は知恵を求めている。そう言われるとすっと納得できてしまう。アタシはこの人を否定できない。これも在り方の一つだと感じてしまった。.......それはそうとバトルジャンキーって、せめて武人と言って欲しいわね。

 

 

「話を戻すわよ。質問を続けるわ」

 

 

 そういえばそんな話をしていたような気がする。話がズレすぎていて忘れていた。

 

 

「貴女は魔力制御は得意?主観でいいわ」

 

「得意なつもりよ。評価でもB+貰っているし。幼い頃は制御できずに暴走してたから、制御する為に必死だったわ」

 

「幼い頃は暴走ね.......それはトラウマになっていたりする?」

 

「いいえ、むしろ苦労したから制御できた時の達成感の方が印象としては強いわね」

 

 

 ふむ.......と、パチュリーは再び思考し始めた。

 

 

「ねえ、いったい何が気になったの?」

 

「貴女の魔力量的にあの伐刀絶技(ノウブルアーツ)の火力はおかしいのよ。私の防壁くらいならすぐに壊せるほどの火力が出るはずなのに。私が多少の抵抗ができた時点でおかしいわ」

 

「.......じゃあなんで貴女は逃げなかったのよ?」

 

「わざと受けることで貴女の攻撃の出力を測ったのよ。私の魔力防壁の耐久力はわかりやすい基準となるわ」

 

「なんて危ない真似を.......幻想形態じゃなかったらどうするのよ」

 

 

パチュリーはアタシに向けて指を向ける。いやどちらかというとその奥か。そこには静かに佇む彼女に瓜二つの《分身》がいた。……まさか。

 

 

「あそこにいたのは私の《分身》よ。視界の同調はしていたけれど、やられてもなんの問題もないわ。そこの彼も言ってたでしょう?私は基本的にここから動かないと」

 

「基本的にって授業とかはどうするのよ.......もしかしてそれも《分身》で済ますわけ?」

 

「当たり前でしょ。正直、《分身》を出す価値も無いけれど、最低限の出席は必要みたいだから座らせているだけよ」

 

 

 本当に破軍学園に何しに来たんだろう。

 

 

「すぐに答えは出そうにないわね。まあ少し気になっただけだから、それまでと置いておくのも.......」

 

「えーー!ここまで引っ張っておいてそれは無いわよ!私が気になるじゃない!」

 

「私も暇じゃないのよ。他にも調べていることは沢山あるのだから」

 

「うぅ、でも.......」

 

「はぁ.......わかったわ。片手間でも良いなら考えておく。ただ、時間がかかるわよ。ある程度の確信を得れない事は教えたくないの。待つくらいのことはしてちょうだい。あと、催促とかしないでちょうだい」

 

 

 

 私は私の興味の対象を確認し、パチュリーは彼女の気になったことを聞き終えてその出会いは終わりを迎えた。その帰り際、私は彼女に一つ聞いてみたいことがあった。

 

 

「ねえ、最後にいいかしら?」

 

 

 どうぞ、と告げるように頷く。その視線は本から動くことは無い。ただ聞く耳はあるようなので尋ねてみる。一連の会話から気になったこと。彼女をここまで没頭させる動機とは何なのか。

 

 

「貴女は知識を集めて何がしたいの?」

 

 

 アタシは力を得て、自分の国を民を守りたい。彼女は知識を得て何がしたいのか。ここまで熱中して知恵を集めているのだ。何かしらの目的はあるように思える。

 

 

「知恵を集めて何がしたいか、ね。集めること自体が目的だけど、強いて言うなら.......そうね。

 

 

私はパチュリー(わたし)になりたいのよ」

 

 

 パチュリーは自らの目的をそう答えた。




没ネタ投稿でございます。更新の予定は未定。
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