龍誠「戦兎の体が奪われ、俺も変身能力を失い意気消沈する俺達だったが……」
サイラオーグ「仕方ない。そんなお前達にはコメントにもあった俺のスペシャルファッションショーをだな」
ヴァーリ「やめろやめろ!何だその誰も喜ばねぇその企画はよ!」
サイラオーグ「喜ぶだろ!少なくともこれを見てくれる人たちは!」
龍誠「勿論そんな地獄みたいなショーはない99話スタート」
「はぁ……」
「ん?」
ヴァーリはいつの間にか住み着いている戦兎の家で、美空が大きな息を吐いていた。
「だ、大丈夫か?みーたん」
「あ、うん。お兄ちゃんどこ行ったのかなって……」
戦兎は現在行方不明扱いで、戦兎の母によって捜索願いを出されている状態だ。まぁ裏で悪魔サイドの手が回ってるので、実際の警察は動いてないのだが、それを知らない美空は不安だろう。
「……」
(あぁ悩むみーたんも可愛い!って、今みーたんは兄である戦兎が行方不明で不安なんだぞ!?それなのに興奮してどうする俺!いや、だがそんなときだからこそ、今のみーたんには支えが必要なんじゃないのか!?そう!これはやましい下心じゃない。ただ一人の男としてみーたんを支えようとしてるだけだ!と、取り敢えず……まずは男らしく肩を抱いてトゥルリラトゥルララトルゥルルルルルルルルルルルルルル!)
ヴァーリは全身から変な汗を掻きながら、美空の肩に手を伸ばそうとした次の瞬間!
「おいヴァーリ・ルシファー!来い!」
『っ!』
(くっ!邪魔が入った!)
美空が慌てて立ち上がると、ヴァーリも慌てて美空から離れて、伸ばしてた腕振り始める。
「何してたんだ?」
「いやちょっとスタンハンセンの練習を……」
今時の子供はわからんだろ。と返しつつ、サイラオーグは美空に聞かれないように、ヴァーリに耳打ちをする。
「兵藤一誠が駒王学園に現れた」
「なにっ!?」
少し時間を戻し、龍誠は体育のためジャージに着替えて外に出ていくと、
「龍誠!」
「ん?なんだよ藍華」
藍華が走ってきて、龍誠の横に来る。
「何かさ……アンタ戦兎の失踪に関してなにか隠してない?」
「べ、べべべべべべべべ別に?」
なんの前置きもなく降られた話題に、龍誠の口笛を吹きながら目を逸らして、嘘を吐く。あまりにも下手くそ過ぎる嘘に、藍華はため息を吐きながら、
「ゼノヴィアっちもアーシアも紫藤さんも……皆何か隠してるけど、聞いてもはぐらかされるし」
「そ、それはだな……」
悪魔の事は言えないし、ましてや戦兎は今、兵藤 一誠に体を奪われた状態だ。それを説明することはできない。
だが藍華は聡い所がある。それに加え、何だかんだ言いつつ、藍華は情が深い所がある(この辺は戦兎と同じだ)ので、戦兎が突如行方を眩ましてる状況と言うのは、気が気でないらしい。
それは確かに分かる。しかし説明はできない……何て考えたとき、
『っ!』
突如爆発音が響き、その方を見ると火の手が上がっている。
「な、なにあれ……事故?」
「お?あれはクローズじゃねぇか!?」
藍華が呆然とする中、ローブを纏った集団が現れ、龍誠は藍華を守るように構える。
「なんだお前らは!」
「俺達?俺達は魔法使いさ。協会からは離れちまったけどな。今は、
そう言って魔法使い達は杖の先から炎を作り出し龍誠に向けて発射。避ければ藍華に当たるため、龍誠はガードしようとしたが、
《スクラップフィニッシュ!》
《クラックアップフィニッシュ!》
『はぁ!』
龍誠に向かって飛ぶ炎を掻き消し、ヴァーリとサイラオーグが立ちふさがる。
「げっ!マジかよ!他のライダーまで来やがった!折角今ならクローズは変身できねぇから楽勝だったのによ!」
「は!変身できねぇ奴を狙うくらいならよ、俺と遊びやがれ!」
ヴァーリは叫びながら、ローブの男達に飛び掛かり、
「失礼します」
「え?うっ!」
その間に藍華の背後に立ったフウが、藍華の首筋に当て身をいれて意識を奪い、
「彼女は運んでおきます」
「あ、悪い」
フウとライが藍華を連れて校舎に引っ込むと、
「オラァ!」
クローズチャージに変身した匙が他の所を襲っていたローブの男達を蹴散らしながら、外に飛び出してきた。
「大丈夫か?皆!」
「匙!そっちこそどうなんだ?」
「学校の中にも何人か入ってきてる。ウチの眷属や、グレモリー先輩達も迎撃や避難に動いてるけど、結構不味い。あっちこっちで襲撃されてて手が足りないんだ」
匙はそういいながら、レバーを下ろしてエネルギーを両手に集めると、
《スクラップブレイク!》
「はぁ!」
地面に両手を叩きつけ、エネルギー噴射で周りにいた奴等を吹き飛ばしたその時、
「ぐぁっ!」
「匙!」
匙を突然の衝撃波が襲い、匙を襲った。
「な、なんだ?」
ダメージはそんなになかったらしく、素早く立ち上がると、その方を見た。そこには他のやつらと同じくローブを身に付けた男がいたのだが、どこか他の奴等とは雰囲気が違う。
「目的は達しました。いきますよ」
「あいよー!」
雰囲気の違う男が指示すると、他のやつらも魔方陣を作り出して撤退し始める。
「逃がすか!」
「おっと!」
サイラオーグが咄嗟に妨害しようとするが、再度雰囲気の違う男が攻撃し、サイラオーグも怯んだ間に撤収を終え、その男も姿を消した。
「大丈夫ですか?」
「あぁ」
龍誠に答えつつ、サイラオーグは自分の手を見る。
「どうしたんですか?」
「うむ。万丈 龍誠。お前は魔法と魔力の違いを知ってるか?」
「え?まぁ確か魔方陣を書いてやるのが魔法で書かないのが魔力ですよね?」
えらくざっくりした説明だな……と匙が思わず呟く中、サイラオーグは頷き、
「大体それでいい。そしてな、今の力なんだが、魔方陣を使った感じがなかった。それに、受けたときの感覚なんだが、魔法使い達の魔法とはすこし違う。この感覚は……」
魔力の感覚だ。サイラオーグの言葉に、皆は唾を飲み込む。
魔力は悪魔の力。つまりあのローブの男は悪魔だと、サイラオーグは暗にそう言っていたのだった。