ハイスクールD×D Be The One   作:ユウジン

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前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「突如行われた吸血鬼との会談。そこで知らされるのは、なんとギャスパーの恩人が暴れていたこと」
龍誠「つうかよ、お前大分暗くね?」
戦兎「そりゃお前よ。父さんとあんなことがあったら落ち込むもんさ」
龍誠「意味提灯した挙げ句今回でもなぁ」
戦兎「言いたいのは意気消沈だと思うけど、まぁそんなことは置いといて、104話スタート!」


捕縛

「ここが吸血鬼の領土……ね」

 

陰鬱とした空気が漂う中、リアスはアザゼル・ギャスパー・祐斗の三人と共に吸血鬼のカーミラ派が支配する地に降り立っていた。

 

四人は案内人に導かれ、警戒しながら街を見る。つい最近戦いがあったとは思えなくらい静かで平穏だった。不気味なほどに。

 

「ヴァレリー……」

 

その中、ギャスパーは静かに彼方を見る。その方角に、ヴァレリーがいるのを感じているのだろうか。

 

「……」

 

するとアザゼルがポリ、と頬を掻く。そして、

 

「やっぱそういうことかよ」

『っ!』

 

アザゼルがそう呟いた次の瞬間。建物から多数の吸血鬼が襲い掛かる。

 

「ちっ!」

 

それはアザゼルは腕を振り、光の槍で蹴散らした。

 

「嫌な予感ってのは当たるもんだな」

「どういうこと?」

 

背中合わせになりながら、リアスたちはアザゼルに問う。

 

「どうもきな臭く感じただけだ。確信はなかったし、吸血鬼からの和平交渉の種を、手を取り合おうと訴えている俺たち三大勢力の者が蹴ることはできねぇからな。だがやっぱり罠かよ」

「そう言うことだ」

 

パチパチと拍手をし、その方を見るとエルメンヒルデと、

 

「兵藤一誠……」

 

更にもう一人、いやもう一体というべき怪物がいて、

 

「まさかヴァレリー?」

 

ギャスパーの呟きに、他の皆の表情が凍りつく。

 

「そう。ヴァレリーだ。この辺りの顔はまだ取り込まれてないからわかるだろ?」

「お前、まさか八坂の姫と同じ事を……」

「正解!とは言えこっちはもう侵食時期が長いからな。とっくに自我はないただの化け物さ。いやぁ、エルメンヒルデご苦労さん」

 

一誠はエルメンヒルデの肩を叩きながら礼を言う。

 

「エルメンヒルデ。どういうことかしら?」

「貴女方に言っていないことがあります。それはとうにカーミラ派は既にツェペシュ派に降伏していること。そしてもしカーミラ派が生き残りたければ、あなた方を差し出すこと。それが条件でした」

 

そういうが早いか、アザゼルが一誠に向け、光の槍を投げる。それを弾いたのは、一誠ではなくヴァレリー。すでに生身ではなくなった禍々しく醜い怪物の腕で弾き、こちらに突っ込んできた。

 

「木場!」

「はい!」

 

祐斗が素早く地面に手を付き、聖魔剣を地面から出して剣山のようにし、ヴァレリーの足止め。その間にアザゼルは地面に魔方陣を出して転移しようとしたが、

 

「おっと逃がさねぇぞ」

《Penetrate!》

 

次の瞬間アザゼル達の動き……と言うよりは、時が止まり動かなくなる。

 

「ギャスパー・ウラディと同じ停止世界の邪眼(フォービドウン・バロール・ビュー)……?」

「結構使い勝手は良いからな。アザゼルのやつ幾つか術式仕込んで逃走と妨害を行おうとしやがったが……まぁそれを透過して時を止めればこの通りだ」

 

さ、お前らアイツらを運んでくれ。一誠はそう言って吸血鬼達に指示を出して、アザゼル達を運ばせると、ニヤリと笑みを浮かべた。

 

「さぁて、楽しくなってきたぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい戦兎。一回休んだ方がいいんじゃないか?」

「んー」

 

リアスたちが出ていって数日。厳密には出ていく前から、殆ど寝ずに戦兎は作業していた。幾らなんでも無茶が過ぎると龍誠は言うのだが、戦兎は聞く耳を持たない。

 

「おい戦兎!」

「っ!」

 

流石にしびれを切らして、龍誠が無理矢理椅子を引っ張って、自分の方に向かせた。

 

「おい何すんだ!今忙しいんだよ!」

「お前なぁ!幾らなんでも無茶しすぎだ!親父さんのことで焦る気持ちもわかるけど一回冷静になれよ!」

 

龍誠の言葉に、戦兎は一瞬息を飲むが、

 

「……んだ」

「なに?」

「お前に何がわかんだ。親の顔も知らねぇくせに」

「っ!」

 

カァッと龍誠は胸の内が熱くなる感覚がして、次の瞬間には龍誠は渾身の拳を戦兎に叩き込んでいた。

 

「てめぇ。もう一回言ってみろ」

「っ!」

 

すると戦兎は素早く立ち上がり、龍誠を殴り返す。

 

「お前わかるか!父さんはな。俺の全てだ!俺の原点だったんだ!それがあんなことになって……お前にわかってたまるか!」

「っ!」

 

ギリッと龍誠は噛み締め、拳を握ってまた戦兎をぶん殴る。

 

「お前なぁ!」

「おいなに騒いでんだ!」

 

すると上の階から、騒ぎを聞き付けたヴァーリが駆け降りてきた。

 

「ちっ!」

 

そして殴り返そうとした戦兎の腕を掴み、ヴァーリは二人を引き離しながら怒鳴る。

 

「お前らこんなときになにやってんだ!一旦頭冷やせ!」

『……』

 

戦兎と龍誠はにらみ合い、戦兎がヴァーリの腕を払って席に戻って作業を始めたのを合図に、その場に満ちていた緊張は取れ、龍誠は舌打ちして屋敷に通じている扉のノブに手を掛け、

 

「……」

 

何かを言おうとしかけ、それをやめた龍誠はそのまま出ていく。

 

「おい戦兎。何がどうしたんだよ」

「別になにもねぇよ」

 

それだけ言って作業に戻った戦兎にヴァーリはため息をついて、

 

「無茶はすんなよ。お前に何かあるとみーたんが心配すんだ」

 

とだけ言って出ていく。

 

「……っ!」

 

それを見届け、戦兎は机を叩いた。龍誠に八つ当たり何てらしくない。

 

そう思いつつ作業は続ける。

 

(勝つんだ。勝って、父さんの目を覚まさせて……)

 

俺の存在が……やって来たことは間違ってないって証明するんだ。そう決意し、戦兎の作業は続くのだった。


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