ハイスクールD×D Be The One   作:ユウジン

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前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

龍「ライザーに戦いを挑むも敗北してしまった俺たち」
戦「しかも負けたら負けたでぴーぴー泣いてさぁ」
龍「泣いてねぇわアホ!」
戦「事実でしょうが!そんな感じの11話スタート!」


WAKE UP

「う……」

 

龍誠は体に走った痛みに目を開けると、ベットに寝かされていた。ここがどこだか一瞬分からず顔を動かすと自分の寮の部屋であることに気づき、そこに戦兎が入ってきた。

 

「よう」

「おれ……負けたんだな」

 

一番重症を負ってな。と戦兎が言いながら着替えを渡すともう二日も寝ていたことやリアスがリタイアして敗北となったこと、アーシアがずっと治療してくれたことを教えてくれる。

 

「部長は今夜式を挙げるってさ。どうする?」

「どうするって?」

 

戦兎の言葉に龍誠は首を傾げた。

 

「助けにいかねぇのか?」

「俺が?結局俺じゃ勝てなかった。お前が行けよ。キードラゴンなら勝ち目もあるだろ」

 

いや、キードラゴンじゃライザーを倒しきれないから俺でも無理だろうな。と戦兎が言うと龍誠は皮肉った笑みを浮かべた。

 

「お前は正義の味方じゃねぇのかよ」

「正義の味方であると同時に科学者志望なんでね。勝てる方法を探してからいくのさ」

 

戦兎の言葉に龍誠がそんなのあるのかよと言う。すると戦兎はドラゴンフルボトルを差し出した。

 

「これはライザー相手でも効果的だった。だがこれは俺では使いこなせない。だが龍誠。お前なら使いこなせるはずだ」

「お前まさか……」

 

そう龍誠が呟くと戦兎は頷き、

 

「お前が変身しろ。龍誠」

「アホか」

 

龍誠は首を横に振る。俺じゃ無理だと……それを聞いた戦兎は龍誠の胸ぐらを掴みあげた。

 

「じゃあ見捨てていいのかよ龍誠!悔しいけどな。今の俺じゃライザーには勝てねぇ。確かにキードラゴンならいい線はいく。でもそこまでなんだよ!戦ったときに分かった。アイツは強い。フェニックス家の才児だって言われる理由がよくわかった!でもドラゴンの力を100%以上使いこなせるなら話は別だ。勝ち目が見えてくる。お前がやるしかないんだよ!」

「ふざけんな!無理だよ俺には!結局俺はあのときからなにも変わっちゃいない。必死に忘れようと思ってお前とかとバカやってたけどダメだ。カッコつけてたけど限界だ。今じゃ無力感ばかり強くってまたライザーと戦う気力が全然沸いてこねぇ……こんな状態じゃ勝てるもんも勝てるわけがねぇだろ!」

「じゃあ逃げんのかよ!あのときみたくまたグダグダと一人落ち込んで自分を責めてなんとなく折り合いつけて誤魔化し誤魔化し生きていくのかよ!しってんだぞ!今だに香澄ちゃんの墓参り毎月毎月甲斐甲斐しく行ってるのもツーショット写真待ち受けにしてんのもたまに名前呼んで泣いてんのもな!」

「俺の勝手だろうが!お前になにわかんだよ!」

 

そう叫んだ龍誠は戦兎を突き飛ばすと扉を乱暴に開け閉めしてどこかにいってしまう。その直後にアーシアが飛び込んできた。

 

「あ、あれ?龍誠さんは?」

「ん?ほっとけよ。すぐに戻ってくる」

 

そう言いながら戦兎が立ち上がると、

 

「お怪我はありませんか?」

「うぉ!」

「きゃ!」

 

今度は部屋の隅にいつの間にか立っていた、グレイフィアが声を発し戦兎とアーシアはギョッとしながら身構えてしまう。

 

「い、居たんですか?」

「えぇ、いつもニコニコあなたの背後におります」

 

いやめっちゃ無表情じゃんと突っ込みつつ戦兎はグレイフィアになにしに来たのか聞く。

 

「これを渡しに来たのです」

 

そう言ってグレイフィアが出してきたのは魔方陣が描かれた一枚の紙だった。

 

「今夜の結婚式にはグレモリー眷属の皆様も参加されるとの事ですので皆様もいらっしゃられるのかと」

「んまぁ……龍誠が戻ってきたら俺と二人でお邪魔させてもらいますよ」

 

え?私は?とアーシアが見てくるが彼女にはお留守番してもらおう。どうせ祝いになんかいく気ないし。

 

それに対してグレイフィアも戦兎が何を言おうとしてるのかを理解して、

 

「成程。それでは魔王・サーゼクス様からの伝言です。もしリアスを助けるつもりならば乗り込んできなさい。そうすればライザー殿にもう一度戦うチャンスをこちらで用意すると」

「それはありがたいですね」

 

戦兎がそう言うと、グレイフィアはですがと続けた。

 

「龍誠様もこられるのでしょうか?今の状態では正直……」

 

大丈夫ですよ。とグレイフィアの言葉を戦兎は否定する。

 

「信じてますから。アイツを俺は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ!」

 

道端に転がった石を蹴り飛ばした龍誠はイライラした様子で歩いていた。

 

分かってる。分かっているのだ。この結果に納得いってないのは自分だって同じだ。

 

ライザーにドラゴンフルボトル無しで戦いを挑んだ最後の時、意識を失う直前に見た最後の光景。それはリアスが泣いていたと言うことだ。

 

負けを確信した悔しさで?違う。彼女は駆け寄りながら最後に自分に掛けた言葉は、

 

《ごめんなさい》

 

だった。自分の我が儘に巻き込んだことは特訓の時も謝られた。だがその時とは違う。彼女は自分がボロボロになって結局戦兎の言うとおりなら一番の重症を負わせたことに彼女は後悔をしたんだ。

 

自分の願いを叶えるための行動で眷属を傷つける。それが眷属思いな彼女にとってどれだけの苦しみだったか想像に難くない。

 

だが好きな人を作りその人と結婚したい。そう思うのが変か?その願いも悪魔の事情でねじ曲げられるのか?

 

そこまで考えて龍誠は首を横に振った。だがどうしようもないことだ。自分は弱い。結局今まで頑張ってみたがダメだった。戦兎には変身すれば勝ち目があると言われたが、正直もう一度頑張ってダメだったときどうすればいい?次こそ本当に立ち上がれなくなってしまう。

 

それが怖い。だったら動かずおとなしくしてる方が楽だと思いながら歩を進めているといつの間にか墓地が見えていた。ここの墓地には香澄の墓がある。

 

戦兎が毎月といっていたが、悪魔になってから来るのは初めてだな。確か悪魔って神社や寺にも入れないんだよな……まぁここは墓地だけだし多分入れるだろと足を踏み入れると案の定入れた。マジで神社や寺は消滅する可能性があるので口を酸っぱくして言われたが、ここは大丈夫そうで助かったと思いつつ慣れた足取りで進んでいくと香澄の墓が見えて来る。

 

墓の前にいくと龍誠は手を合わせ、来れなかった分の出来事を話していく。悪魔になったこと、アーシアやリアス達との出会い。そしてライザーとの戦いと敗北を……そして全て話し終え、龍誠は大きく息を吐いた。その時、

 

《だから今日は落ち込んでたんだね》

「え?」

 

龍誠はどこかで聞き馴染みのある声にポカンとしながら頭を上げ、そこにいたのは……

 

「香澄?」

《久し振り》

 

墓石の上に腰を掛けた彼女は最後に着ていた中学時代の制服を纏った彼女がいた。

 

「なんで……」

《何時も居たよ?ただ龍誠が見えてなかっただけで》

 

悪魔になると霊感が上がるのか?だが龍誠にとってはどうでもいいことだ。

 

「香澄……俺」

 

そう言って龍誠が手を伸ばそうとするとそれを香澄は拒絶した。なぜか分からず彼が困惑していると、

 

《ダメだよ。私の相手をしている時間なんかないでしょ?》

「そんなことは!」

 

あるよ、と香澄は龍誠にいった。

 

《私はもう死んじゃったの。でも龍誠は生きてるんだから前を見ないと》

「ダメだよ香澄……俺は」

 

龍誠は何かを言いかけるが、それを香澄は止める。

 

《なんで私がいるか分かる?私ね、龍誠が心配なの。それが未練でずっとこの世にいるの。だからさ、そろそろ私の事を忘れて新しい人を好きになって?》

 

出来るかそんなもん!と龍誠は叫ぶが香澄は笑みを浮かべる。

 

《出来るかじゃなくて、やるの。じゃないと私いつまでも成仏できないよ。お願いだから私の大好きだった龍誠に戻って?じゃないと私……悪霊になっちゃう》

「っ!」

 

龍誠は俯き眼を逸らしながらも言葉を発した。

 

「でも俺はお前を……なのに幸せになっていいのかよ。お前を守れなかったが俺がまた誰かを好きになる資格なんてあるのかよ!」

《あるに決まってるじゃない。と言うかならないと許さない。私の分まで長生きして、幸せになって?お願いだから何時も前向きで、色んな人から愛された龍誠に戻って、そのリアスって人を助けてあげて》

 

龍誠はうつむいたまま暫く喋らず、それから口を開くと、

 

「お前を忘れるかもしれない」

《うん。私の墓参りなんかふと思い出したときで充分だよ》

 

その言葉に龍誠は少し深呼吸して、

 

「分かったよ。お前がそういうなら、俺は行くよ」

 

背を向け歩き出す。くそ、涙が止まらない。分かるんだ。もう香澄に会えるのはこの一回切りだって。

 

《それでいいんだよ》

 

その後ろ姿を見送りながら香澄は自分の体が消えていくのを確認する。漸く未練はなくなった。これでちゃんと逝ける。

 

《頑張れ。龍誠》

 

その最後の言葉が龍誠に届いたのかは……分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しっかしでっけぇなぁ。しかも似たような建物が幾つもあるし」

 

地面に出現した魔方陣から姿を現した龍誠の呟きに戦兎は頷きを返す。

 

さて、先程突然帰ってきた龍誠に有無を言わさず戦兎は魔方陣でリアスの結婚式会場に連れてこられた。とは言え、会場と言ってもたくさんある上にとんでもなくデカイ屋敷のどれかひとつで行われるのであろう。

 

まずそれから探すのか……

 

「取り敢えず入れば分かんじゃね?」

「だなぁ。行くぞ龍誠」

 

そう言って取り敢えず目の前にあった一つに入ると、まず大きなエントランス。つうかこのエントランスの大きさだけでも充分な大きさがある。シャトルランでもできそうだ。

 

「あら、貴殿方は」

『ん?』

 

二人が奥に進もうと足を進めたところに縦ロールの髪型をした少女が降りてきた。なんかどこかで見た雰囲気があるがどうでも良い。確かこいつは、

 

「お前は確かライザーの眷属だよな?」

「えぇ」

 

戦兎の言葉に縦ロールの少女は頷き、龍誠はこんなのいたっけ?みたいな反応をしている。

 

「俺戦った覚えないんだよな」

「そういや部室で見た記憶はあるけどレーティングゲームでは見てないな。別のところでやられてたのか?」

 

その言葉に彼女は首を横に振り、私は特別でしたから別の場所で待機してましたわと言った。その特別とは?と戦兎と龍誠は首を傾げていると、

 

「私の名前はレイヴェル・フェニックス。貴殿方が戦ったライザーは私の兄ですわ。だから私は戦いには参加せず……ってなんで二人揃って距離を開けるんですの?」

『妹がハーレムに……』

 

あの女好きの極みとも言えるあのライザー眷属なのだがそれに妹?それ意味するものと言えば、

 

『引くわぁ……』

「かんっぜんにあらぬ誤解をしておりますわね!私はお兄様とはなにもありませんわ!ただあの人が妹萌えとかワケわからんことをいって眷属にされただけですわ!」

「ああ言ってるけど、あの手のタイプはお兄様には私がいないとダメですわねとかいって面倒見てる口だぜ?」

 

うっ!と戦兎の言葉にレイヴェルは言葉を詰まらせる。自分でもこうダメなやつほど面倒を見てやらねばと思ってしまうタイプなのは自覚があるのだ。それは内心では認める。だがそれを口に出して認めるかは別で、

 

「と言うか今更何をしておりますの!?もう式は始まりましたわよ!?」

「あぁ、その結婚式を滅茶苦茶にいで!」

 

強引に話を代えたレイヴェルに馬鹿正直に答えようとする龍誠をぶっ叩いて止めた戦兎は、ちょっと色々あって遅れたんだけど会場どこだっけ?と聞く。

 

「ここをずっと行って建物を三つほど通り抜けると結婚式会場に建物まるごと抑えてありますから、そこまでいけば係りの者がいますから、連れて行って貰えば宜しいですわ」

「なんでそんな遠くなのにお前はいるんだ?」

「散歩してただけですわ」

 

と聞いてきた龍誠に答えると戦兎と龍誠はありがとなと言って行ってしまう。そこでレイヴェルはふと、

 

「って今式を滅茶苦茶にっていいましたわよ……ね?」

 

レイヴェルが振り替えると既に全力疾走中の二人が見えた。そして、

 

「待ちなさい!」

「おい!なんかレイヴェルってやつ空飛びながら追い掛けてきたぞ!?」

「まじかよ!?ここ室内だぞ!」

「走るよりこっちの方が速いからですわ!」

 

戦兎と龍誠はギョッとしながら走るが、レイヴェルは何と火球まで放ってくる。

 

『あぢぢぢぢぢ!』

 

顔の真横や足元に炎が来て跳び跳ねながら二人は走る。

 

「てめぇ!室内で炎とか正気か!?」

「特殊な結界があるから魔王クラスが力を放ったならともかく、私程度であれば貴殿方を燃やすなら出来ますが、ここの物は被害が出ませんわ!」

 

なんてこったい!と戦兎は叫びながらベルトを出すと装着し、ラビットフルボトルとタンクフルボトルを振って挿す。

 

《ラビット!タンク!ベストマッチ!Are you ready?》

「急いで変身!」

《鋼のムーンサルト!ラビット!タンク!イエーイ!》

 

変身を急いで完了した戦兎は、更にライオンフルボトルとスマホを出して、

 

《ビルドチェンジ!》

「行くぞ龍誠!」

 

ライオンフルボトルを挿したスマホを空中に放り、バイクに変形したところを戦兎は龍誠を抱えて乗り、地面に着地すると同時に龍誠を後ろに乗せて走り出す。

 

「室内をバイクでとかなに考えてますの!?」

『室内で空飛んで火球撃ってくる奴に言われたくねぇよ!』

 

レイヴェルに二人は仲良く突っ込むと、戦兎は道を逸れて階段を上がる。

 

「おい戦兎!なんで階段を上ってんだよ!建物を突っ切っていけば良いんじゃねぇのかよ!」

「こっちの方がショートカットできるからだ!あと黙ってろ舌噛むぞ!」

 

そう戦兎が叫ぶと、最上階のテラスに着いた。そして、

 

「行くぞ!」

「え?」

 

戦兎はエンジンを吹かして、なんとテラスから飛び出してしまう。

 

「えぇえええええええ!」

「だから舌噛むっつうの!」

 

戦兎は叫びながらバイクのタイヤが壁に触れたのを感じると、アクセルを更に吹かして強引に進む。

 

「か、壁を走ってるぅうううう!」

「未来のてぇんさい物理学者に掛かれば壁を走るバイクくらい余裕なのさ!」

 

そう言いながら戦兎は壁から隣の建物の壁に飛び移りどんどん進んでいく。するとすぐに、

 

「見えたぞ龍誠!あれだ!」

「マジか!」

 

窓から見えたリアスとライザーの姿に戦兎は叫び、龍誠も見ると見えた。あの深紅の髪が。

 

そして戦兎はバイクの向きを調節して、

 

「彼処の窓が空いてる。そこから突っ込むぞ!」

「なぁ、別にそんなアクション映画みたいなことしなくって彼処から入るだけなら空飛べば良くね」

「バカ。ブレーキ掛けたらバイクが落っこちるでしょうが。これ結構重いんだからな!」

 

バイク大事かよ!と龍誠が突っ込む中戦兎は更にスピードを上げて、

 

「いっけぇえ!」

「だったら空飛べるバイク作れよぉおおおおおお!」

 

一方その頃。

 

「結局三人は来ませんでしたね」

「そうですね」

 

祐斗と朱乃はドリンクを片手に浮かない顔で立っていた。今回のレーティングゲームでの結果に思うところがある。だがそれを口にするには力が足りない。ライザーから力付くで奪うには……すると近くにいた小猫がキョロキョロし、朱乃がどうしたのかと聞くと、

 

「今戦兎先輩と龍誠先輩の声が……」

 

声?と朱乃が呟いた瞬間、

 

『おぉおおおお!』

『え?』

 

思わず会場にいた人々がポカンとする中、窓から飛び込んできた戦兎と龍誠はバイクごと何と会場の真ん中に設置されていたウェディングケーキに衝突しケーキを見事に爆発四散させた。

 

『えぇええええ!?』

 

突然に出来事に驚愕の悲鳴にも似た声が出る中、砕け散ったケーキの残骸から龍誠が頭を出す。

 

「ぷはぁ!死ぬかと思った」

「お兄様!ここに向かって乱入者が……」

 

龍誠が体に付いた生クリームを食べながらケーキから這い出てると、レイヴェルもやってくる。そんな光景を見ながらライザーは肩を震わせつつ龍誠に詰め寄る。

 

「貴様!いきなり窓から飛び込んできたかと思えばケーキに突っ込んで爆発四散だと!?これは冥界の一流のパティシエが作ったものだぞ!」

「めっちゃ美味いぞ」

 

誰も味の感想は聞いてない!とライザーは突っ込みつつリアスを見る。

 

「リアス。君も眷属にどういう教育をしてるんだ!全く、結婚した暁にはその辺もしっかりと……」

「させねぇよ」

 

何?とライザーは龍誠の言葉に眉を寄せる。

 

「結婚式は中止だ。部長は俺が連れて帰る」

「何をいってるんだ?負け犬の分際で」

 

そう言い合って睨み会う中、まあ待ちたまえと何者かが出てくる。

 

「サーゼクス様?」

 

ライザーの言葉に龍誠は、サーゼクスと言うことは魔王か?しかも部長のお兄さん?と首を傾げる。確かによく似ているな。

 

「私が呼んだのだ。今日の余興としてね」

 

どういう事ですか?とライザーが聞くと、

 

「いやはや前回のレーティングゲームは実に面白かった。特に終盤のこちらの龍誠君の何度も立ち上がり戦う姿も、そこでバイク入り込んだ生クリームをせっせと取ってる戦兎君が一時的に追い詰めようとした瞬間も良かった。だがフェニックス家の才児と呼ばれるライザー君と戦うにはリアスでは少々分が悪すぎた。そこでもう一度戦ってみないかと思ってね。あの時の熱き戦いの再現。中々良い余興だと思わないかい?勿論ライザー君。君が嫌であれば無理にとは言わないが」

 

ニコニコしながら言うサーゼクスに、ライザーは少し嘆息しながらも、

 

「いえ、サーゼクス様にそこまで言われて断れません。引き受けましょう。それでどちらと戦うのですか?」

「俺とだよ」

 

龍誠はヤル気満々といった風情で居り、それを見たサーゼクスは龍誠に問う。

 

「では龍誠君。私の我が儘に付き合わせるのだしこの戦いに勝てば何か願いを叶えて上げよう。何かあるかい?」

「部長を返してもらいます!」

「龍誠……」

 

全く迷いなしで寧ろ食い気味に龍誠は言い、リアスが困惑の表情を浮かべる中サーゼクスは頷きを返し、

 

「では場所は私が用意する」

 

そう言ってサーゼクスが指をパチンと鳴らすと周りが光に包まれ、気付くと龍誠とライザーの二人を中心に広い闘技場へと転移させられた。

 

「ふん。まぁいい。今度こそその精神を叩き折ってくれる!」

 

そう言って炎の翼を出すライザーに、龍誠はドラゴンフルボトルを持って構える。

 

「やってみろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『戦兎(君)(先輩)!!!』

「うわ!全員でいきなり詰め寄ってこないでくださいよ。びっくりするなぁ……」

 

もうバイクは一度帰ってから洗浄するしかないなと諦めた戦兎は変身を解除して龍誠とライザーの戦いを見ていたのだが、そこにリアスを筆頭に他の眷属達まで詰め寄ってきたのだ。

 

「貴方達なに考えてるのよ!」

「なにって……ライザーをぶっ倒しに?」

 

と言って首を傾げる戦兎に祐斗が口を開く。

 

「倒すって言っても君もあのライザー氏の強さは知ってるよね?」

「あぁ、だから勿論策がある」

 

戦兎の言葉に策?と皆が首を傾げる中、戦兎は更に言葉を続ける。

 

「ビルドドライバーを使うには条件があります。それはハザードレベルが3.0以上であること。あ、ハザードレベルって言うのはフルボトルの成分にどれだけ耐性があるか、そしてその力を如何に使いこなせるかを現したレベルで、それが高ければ高いほど変身したときの力が増します。因みに俺は今は3.1あります。そして龍誠は今2.9……このレベルを上げるには現時点ではボトルの使用に慣れるしかなくて変身やボトルを使っての戦闘をこなすしかない。そして変身できない龍誠はボトルを使って上げるしかない」

「まさか貴方……今この土壇場でそのハザードレベルと言うやつを上げさせて変身させる気なの!?」

 

ご名答です。と戦兎は言い、

 

「俺では無理でしたがアイツならドラゴンフルボトルを使いこなせるはずです。あれならライザーとやりあえる」

「ハザードレベルというのはそんなに簡単に上げられるものなんですか?」

 

と聞いてくる朱乃に戦兎は首を横に振る。

 

「俺は今思えば瓶詰め(ボトルチャージ)の影響かフルボトルに触れてる時間が長かったからか元々ハザードレベルが高くてですね。それでもやっと3.0になったのが中学の3年の頃。それから何度も変身して最近やっと3.1になりました。正直0.1上げるのだってかなり大変です。ぶっちゃけこの土壇場で3.0にするなんて無茶も良いとこですね」

「じゃあなんでそんなことさせたの!親友なんじゃないの!?」

 

そう言って詰め寄ってくるリアスに戦兎は声を低くし、

 

「親友だからそんな無茶も出来るって信じてんですよ。アイツはアンタを取り返す為にここに来た!アイツは誰でもない。あんたの為にもう一回立ち上がってライザーに戦いを挑んだんだ!だからアンタは信じてろよ!アイツはアンタの兵士(ポーン)だぞ!」

 

そう言って戦兎は龍誠を見る。現在明らかに不利だ。だが戦兎は龍誠の目に光が点っているのを見て確信する。絶対に行けると。

 

その頃、龍誠もライザーの炎を避けながらドラゴンフルボトルを強く握る。やはり強い。不死身と言うのを差し引いても強い。だが不思議と足は止まらなかった。

 

心が軽い。何処までも行けそうな位身も軽い。今なら何でも出来そうで、力がみなぎってくる。

 

もうなにも後ろめたいことはない。なにも思い悩むことはない。

 

ライザーはこの場で戦兎以外で唯一龍誠の変化に気づいていた。前回は何処か強迫観念の元に戦ってる感じがあった。だが今の龍誠は良い意味で肩の力が抜けている所為か当てられない。そして一撃一撃が鋭く、そして重い。しかも回数を増すごとにその鋭さと重さも増していっていた。明らかに不味いとライザーは早々に勝負を終わらせることを選択し一度距離を取ると巨大な火の球を作り出す。

 

「これで終わりだ!」

 

そう言って放たれたライザーの火の球を龍誠は見据えると、ドラゴンフルボトルを握った拳を握り直した。いつまでも逃げてても仕方ない。逃げてても勝てない。ならどうするか?戦うしかない。戦って……ライザーをぶっ倒すしかない。

 

「俺はもう……逃げねぇって決めたんだぁあああ!」

 

その時、龍誠の体を蒼い炎のようなオーラが覆った。特にドラゴンフルボトルを握った右手には力が集まっているのかそれが強く、そのエネルギーをぶつけるようにライザーの炎をぶん殴ると、

 

「なに……?」

 

ライザーが眼を見張る。何故なら前回では手も足も出なかったはずの自分の火球。それを龍誠は何とパンチで消し飛ばすと言う荒業をやってのけたのだ。

 

「俺は、お前に負けねぇ」

 

一方その頃、龍誠の戦いを見ていた戦兎のポケットから何かが飛び出してきた。

 

「これは……」

 

祐斗が驚きながら見ると、それは蒼いドラゴンのような機械だ。それを見た戦兎も少しビックリしながらも、

 

「行けるんだな?」

 

その問いに答えるようにドラゴンは一鳴きすると戦兎はビルドドライバーを出して渡す。

 

「龍誠を頼んだぞ」

 

ビルドドライバーを受け取ったドラゴンはまた鳴きながら龍誠めがけて突進。それを見送りながらリアスは戦兎にあれはなにかと聞いた。

 

「あれはクローズドラゴン。龍誠専用の変身アイテムです。龍誠のハザードレベルが3.0を越えたら起動するようにしておいたんですよ」

 

つまりあれが動き出したと言うことはと言いながら戦兎は改めて龍誠を見る。

 

「さぁ、ぶっ倒しちまえ」

 

戦兎がそう呟くと龍誠も何かが此方に飛んでくるのを確認し、それが投げてきたものをキャッチする。

 

「これはビルドドライバー?」

 

龍誠が驚く中、クローズドラゴンも動くのを止め、龍誠の手に降りてくる。それを見た龍誠は意味を理解し、

 

「使えってことだな!」

 

そう言うと同時に龍誠はビルドドライバーを装着しドラゴンフルボトルを振る。

 

それからクローズドラゴンに挿すと、

 

《ウェイクアップ!》

 

その音声が流れると更にクローズドラゴンごとビルドドライバーに挿した。

 

《クローズドラゴン!》

 

そして龍誠はレバーを回し、フレームが出現すると同時に右手で拳を作って左手を軽く殴ってからポーズを決める。だがそれをいつまでも見ているライザーではない。

 

「何をする気か知らんが二度目はない!今度は拳で消せない炎を喰らわせてやる!」

 

そう言ったライザーは先程より巨大な炎を作り出すと龍誠に向かって放つ。観客席にすら届くほどの熱を持ったそれは龍誠に襲いかかる。だが龍誠は動かない。それを見たままあの言葉を言う。

 

何時も戦兎が言う正義の味方になる為の合言葉。勿論それは、

 

「変身!」

 

それと同時に炎は着弾し、ライザーは勝利を確信した。観客達もそう思った。だが一部が見逃していない。あの爆炎の中から立ち上る一匹の蒼き龍の姿を!

 

《Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!》

「なに!?」

 

ライザーは眼を見開きそれを見た。自分の渾身の炎を吹き飛ばし、中から現れたドラゴンを彷彿とさせる姿へと変身した者。まさかあの転生悪魔か?と驚く中、変身を完了した龍誠はライザーを見る。

 

「今の俺は……負ける気がしねぇ!」


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