ハイスクールD×D Be The One   作:ユウジン

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前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「ユーグリットに襲われ、俺達は新たに目次録の獣と言う存在を知る」
龍誠「しかしクローズマグマのアップグレードちゃんとできたのか?」
戦兎「ふふーん。そこが未来の天才物理学者・桐生 戦兎様に任せなさいよ」
龍誠「しかしあの兵藤 一誠の野郎。どこまでも面倒なことをするやつだぜ」
戦兎「だがそれでも俺達は諦めないぜ!ってな感じの120話スタート!」


必要な存在

広い屋敷の中を生気のない顔で歩く男が一人いた。彼はマグダラン・バアル。【元】バアル家の次期当主で、サイラオーグにその座を奪われ、現在は何者でもなくなってしまった男だ。

 

兄のサイラオーグと違い滅びの魔力を受け継いでいる。しかしそれが戦いに活かされるかと言うと、また別の話だ。

 

本人の性格は至って荒事には向いていない。どちらかと言うと穏やかな生活の方が性にあっている。しかし周りの環境がそれを許さず、幼い頃より虐待にも近い英才教育を施されてきたが、それでもサイラオーグに敗北し、地位もプライドも周りの関心も全て失った。

 

今や居ても居なくても変わらない。存在を認識されてるのかすら怪しい。

 

ただ毎日食べて寝て、その間に趣味の園芸に興じる。そんな日々だ。誰も自分を気にかけない。誰も自分を必要としない。

 

「マグダラン?」

「あ、兄上」

 

そこに丁度やって来たのは兄と、よく兄がつれているポーンだ。確か双子だった筈だが、片割れは戦いで命を落としたと聞く。

 

「息災か?」

「えぇ」

 

短い会話だ。それはそうだろう。サイラオーグにも引け目があった。自分を通すために、弟を引きずり下ろしたという思いは。

 

そして弟を今の状況に追いやったという思いも……

 

勿論マグダランも、サイラオーグには何とも言えない感情が渦巻いている。

 

そんな二人の会話は、母親違いとは言え兄弟の会話には見えないものだった。

 

するとサイラオーグは、

 

「そ、そうだマグダラン。今度アガレス領でシトリー家のソーナが学校を建てるんだが、お前も見に来ないか?その……いい気分転換になると思う」

「き、気が向いたら……」

 

マグダランはその場から逃げるように去っていく。そんな様子を見ていたフウは、

 

「よろしいのですか?追われずにならなくて」

「いや、アイツも俺と長話はしたくないだろう。恨まれているだろうしな」

 

そうフウに返すサイラオーグは、少し寂しげな表情を浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ」

 

マグダランは自室に戻ると、床に座り込む。

 

何が学校に来ないかだ。外に出るのも怖くしたのは何処のだれだと心で叫び、同時にそんな自分がひどく惨めに思えた。

 

その時、

 

「酷い兄だなぁ」

「っ!誰だ!」

 

マグダランは咄嗟に身構えた。だが姿は見えない。一瞬聞き間違えたか?と思ったが、

 

「気分転換だってよ。自分がお前から奪っていったくせにな」

「なっ!?」

 

今度は背後から。マグダランは滅びの魔力を手に集め、背後に放った。だがそれは簡単に払われてしまい。

 

「な、何者だ!」

「俺は兵藤一誠。お前を救いに来たのさ」

「救いにだと?」

 

兵藤 一誠という名前には聞き覚えがある。と言うか知らないわけがない。

 

今世界中を騒がせている禍の団(カオス・ブリゲード)のリーダー。

 

それが何故ここにいるのか……そんなマグダランの思惑をよそに、一誠は近寄る。

 

「酷い兄だなぁ?サイラオーグは」

「っ!」

 

マグダランは思わず口をつぐむと、

 

「いや、サイラオーグだけじゃないな。お前の周り奴等も酷いもんだ。お前に勝手に自分の望んだ道を歩かせようとして、それが潰えると掌を返す。お前の思いなんて全無視さ」

「だ、黙れ!」

 

マグダランは1、2歩後ずさる。

 

「だがそんなお前に話がある」

 

一誠はマグダランに詰め寄り、

 

「マグダラン。禍の団(カオス・ブリゲード)に来ないか?」

「い、行くわけがないだろう!わ、私はバアル家の……」

「バアル家のなんだ?誰も期待しないし、見もしないお前がバアル家のなんなんだ?」

一誠の言葉に、マグダランは言葉を詰まらせる。

 

「お前はサイラオーグに負けた。滅びの魔力を持たないとお前自身も蔑んだサイラオーグに負け、地位も名誉も何もかもを失い、無為に毎日を過ごす。ただそれだけの存在だ。そう周りはお前を見ている」

 

だが俺達は違う、と一誠は言う。

 

「お前が俺たち禍の団(カオス・ブリゲード)には必要だ。お前の力がな」

 

一誠は言葉を続け、手元にエボルドライバーを出した。

 

禍の団(カオス・ブリゲード)ならだれもお前を不要などと言わない。だれもお前を否定しないし、マグダラン・バアルになることを強要しない。ただのマグダランでいいんだ」

 

エボルドライバーをマグダランに渡しながら一誠は言い、

 

「もし気が向いたら来るといい。なに、またすぐ会えるさ。俺達はいつでも歓迎してるぜ?」

 

一誠はそのまま姿を消し、マグダランはエボルドライバーを持ったままその場にへたり込んでしまいながら、内心で呟いた。

 

(私が必要とされてる……か)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これでよし……と」

 

カチャリとキーボードのエンターキーを押して、戦兎はウーンと背を伸ばす。

 

「終わったの?クローズのアップグレード」

「あぁ。まあな」

 

背後から声を掛けてきた黒歌に、戦兎は答えながら振り替える。

 

今の黒歌は大きめのTシャツしか着てない。風呂上がりの黒歌はこう言ったラフ過ぎる服装しかせず、前までは文句を言っていたが、今はもう諦めた。突っ込んでもからかわれるだけである。

 

そして彼女の手には煎餅がある。すっかり黒歌は戦兎の家に馴染んでおり、他のヴァーリチームの面々も好きに暮らしている。

 

元々はこの家は戦兎の先祖が代々継いできた土地に建っており、家族三人で住むには大きすぎる家だ。だからヴァーリチームの面々に部屋を与えてすっかり下宿状態なのだが、母は賑やかで楽しそうだし、美空は兄しかいなかったからかルフェイや黒歌に結構なついており、戦兎も今の状況を気に入ってはいる。だがせめて黒歌のこの服装に関してはどうにかならんか……と思うがヴァーリや美猴辺りに言っても、

 

「言っても聞かん」

「右に同じく」

 

と言われてしまって相手にならない。

 

「どんな感じにアップグレードしたの?」

「ま、色々な」

 

戦兎はそう言いながら、クローズマグマナックルとクローズマグマフルボトル。それにジーニアスフルボトルも見せる。

 

「あれ?クローズマグマだけじゃないの?」

「あぁ、ジーニアスフルボトルも或人さんから貰ったビルドプログライズキー使ってアップグレードしたんだ。序でにこの間作ったクロコダイルフルボトルとリモコンフルボトルの力も追加してな」

 

そう言って肩を戦兎が回すと、ゴキゴキと音がする。

 

「悪魔になってから徹夜とかぶっ通しの作業がしても比較的平気になったけど、やっぱ流石に疲れたな。寝るわ」

 

と大きなあくびを戦兎がすると、黒歌に突然肩をさわられた。

 

「あ?」

「少しじっとしてなさい」

 

黒歌に言われるまま、大人しくしているとじんわりと肩が暖かくなり、そこからその熱が全身を巡って行く。

 

そうしていくと、体の疲れなどの悪いものが流れていくような感覚が来た。

 

「確かに悪魔なら徹夜したりある程度は無茶が聞くけどね?それでもちゃんと体は労んなさい」

「すまん」

 

ポリポリと頭を掻くと、今度は黒歌に後ろから抱き締められる。

 

「はぁ!?」

「……」

 

突然抱き締められ、戦兎は思わず背中に感じる柔らかさに狼狽えた。口が避けても言えないが、小猫にはないものである。

 

「おまっ!だから冗談でもこういうことすんな!」

「冗談じゃないって言ったら?」

 

何時ものような飄々とした声音とは違い、真面目な物だった。

 

そんな黒歌に戦兎は眉を寄せつつ、

 

「お前に好かれる理由がない」

「私達の父親ってね?科学者だったのよ」

 

そんな中、突然の黒歌の告白に、戦兎は口をつぐむ。

 

「父親って言っても、遺伝子上ってのが正しいくらいでね。愛されたことはないし、父親らしいことは一度もして貰ってない。撫でられたことも抱っこされたことだってない。よく言えば研究一筋。正直に言えば家族に興味がない男だった。まぁ母親を研究材料序でに都合の良い性処理道具位に思って使ってたらできた子供ってだけだったから、そんなもんだったのかもしれないけどね」

 

ギュッと、黒歌の腕に力が籠った。

 

「だから私は科学者ってのが嫌いだった。私にとっての科学者ってのは、自分に寄せる好意も道具にして、自分の知的好奇心を満たすクズみたいな連中だからね」

「……お前の両親って?」

「あぁ、もうどっちも死んだわ」

 

あっけらかんと黒歌は言うが、どこか寂しげな口調だ。

 

「だけどね、アンタを見てると科学者ってのも悪くないかなって思える。あんな父親でも……自分に好意を寄せる女性を実験台に使うような男にも、母が惚れる何かはあったんじゃないかなって思える。あんなクズでもさ、父親だから良いところはあったんだって思いたいんだよね」

「小猫は知ってるのか?」

「言えると思う?」

 

小猫から黒歌以外の家族の話を聞いた覚えはない。まぁこちらから話題を余り振らないのもあるが。

 

「なんか……ごめんね」

「ん、おぉ」

 

妙にしおらしい黒歌に、少し戦兎は驚きつつも、振り払おうとした手を下げ、

 

「お前……顔赤くね?」

「あんたってホントにデリカシーってもんがないわね」

 

何て事を言って、ガリッと軽く爪を立てられると、戦兎は黒歌の上昇したのか、少し暖かくなった体温を感じつつも、苦笑いを浮かべるのだった。

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