「待って一誠。ごめんなさい。でもちょっと意味が分からないわ」
「ですよね。今俺が言った言葉は完全に矛盾してる。とはいえこういう表現しかなくてですね。まぁまずはあの世界と兵藤 一誠について説明し無いといけませんね」
一誠はそう言い、一度呼吸を整えてから再度話し出した。
「そもそもあの世界は何なのか。それは兵藤 一誠が兵藤 一誠になる前に願われ、作られたということです。自分の思い通りに行くように、力も何かも手に入れ、好き勝手に出来るように。できない事なんてない。不可能もない。どんな望みも叶えられるように。そんな風に願って作られた世界。言うなれば、根本的には兵藤 一誠に都合よく出来てるんですよ。あの世界はね」
だからこそ厄介なんです。と一誠は言葉を続け、
「だから兵藤 一誠は絶対に倒されない。一時的に追い込む事はできます。でも倒し切ることはできない。どんな攻撃を入れても、運良く外れたりしてゲームで言うなら体力が必ず1残って新しい力に目覚めて全快しちまうんです。あっちの世界ではグレートレッドは倒されてるんですが、それの力が大きい。ただこの力は兵藤 一誠本人には自覚がないようでしてね。まぁ何せこの力はアイツが世界を作る際に力を盛りまくった結果、偶然手に入った力。兵藤 一誠で居続ける限り、諦めなければ必ず望めるが叶う力。名付けるなら主人公補正。いや、ご都合主義とでも言うべきかな」
「じゃあお兄ちゃんがわざと見逃したのは……」
実奈が問うと一誠は頷き、
「あぁ、同じくらいの強さ同士で戦って偶に負けるくらいなら良い。一時の敗北も物語のスパイスだからな。でも俺のグランドジオウだと現時点では強さに開きがありすぎる。んでそんな実力差で追い込みすぎると、都合よくアイツは新しい力に目覚めて強くなっちまう。それでもオーマフォームなら負けはしない。何せこれなら相手より必ず強くなる。だがそれでも兵藤 一誠を倒すことはできず進化され、こっちも強くなって進化されてを永遠に繰り返すだけだ。そうしてればいつかアイツも自分の力に気づく。そしたらいよいよ手に負えなくなるだろ」
だから適度にボコしてお帰り願うしかなかった。そう一誠が言うと、祐斗が口を開く。
「そんな相手。あっちの世界の僕達に勝てるの?」
「無理だな」
きっぱりと一誠は言う。
「戦兎がどんなに奇跡を起こし、未来を変えても無意味だ。言っただろ?あの世界は、ある意味ではハッピーエンドが確約されてる世界だって。どんな事になっても、
「でもなんでそこまで知って……」
朱乃の言葉に一誠は、
「未来が見えた」
と答える。
「ある日突然だった。突然未来が見えて、俺はあの世界の成り立ちも兵藤 一誠の事も知った。何より戦兎がどんなやつかもわかった。真っ直ぐなやつで、諦めることを知らなくて何時でも必死だった。生きることを諦めなかった。そして最後は必ず兵藤 一誠に敗北する」
何度も戦兎を助けようとした。でもどのルートでも、兵藤 一誠を超えることはできなかった。何をしても兵藤 一誠の運命を超えることができない。
「未来と絶望が一気に押し寄せてきて俺は考えた。どうすれば未来を変えられるのかを。そして一つ思いついた。未来を変えなきゃいいんだと」
一誠の言葉に、皆は思わず顔を見合わせた。それを察した一誠は笑みを浮かべ、
「未来を変えるのは不可能なんだ。あの世界では兵藤 一誠は絶対だ。兵藤 一誠以上の運命を引き寄せる力を持つものはない。だがもし、この先の様々な経験や出会いから戦兎が全く違う未来を作ったんだとしたら……それなら可能性があった」
だから力を兵藤 一誠に奪われたままにしたんだ。と一誠は続けて、
「未来では兵藤 一誠は俺に力を全て取り返されて、異世界への進行を止めてしまうんだ。もう懲り懲りだってね。だがそれじゃ駄目なんだ。それでは戦兎にきっかけが与えられない。様々な出会いや事件が戦兎を成長させ、変化させる。その果てが未来を作り出すんだ。どんな結果であろうとも、異世界への進行には旨味がある。そう兵藤 一誠に思わせないといけなかった」
そして戦兎の方にも刺激を与えた。と一誠は言う。
「同時に戦兎には精神的に追い込まれてもらう必要があった。理由は一つ。ハザードレベル7.0に到達してもらう必要があったからだ」
「ハザードレベル?」
アーシアの問いに一誠は、まぁビルドに変身するための力みたいなもんだと教え、
「7.0はあの世界においてあらゆるルールや概念、法則を超えた力。兵藤 一誠との戦いにおいて、7.0に至っているのは絶対に必要だ。だがそれに到達するのは容易じゃない。と言うか、そもそも普通は無理。だが龍誠は既に一度それに至っている。だが龍誠がなれるなら、戦兎もなれる。二人の違いは何なのか。それは絶望から這い上がってるか否かだ」
一誠の言葉に、皆は思わず息を呑む。
「龍誠は過去に恋人を殺され、そこから這い上がることってクローズに変身できるようになった。かけがえのない親友の戦兎が兵藤 一誠の毒で犯される中、一人立ち上がってクローズマグマに変身した。そして戦兎の体を奪われ、変身能力すら失う中でも立ち上がり続け、変身能力を取り戻すだけじゃなくハザードレベル7.0に至ってみせた。だが戦兎は違う。アイツは身も心も絶望で押し潰されそうになっても這い上がったことはない。厳密に言えば、沈みきる前に解決策を考えちまうタイプだ。精神面で左右されることが少ない。新アイテム作ったりとかな。もしくは下手すれば自棄っぱちになってしまう。龍誠の体が奪われた時みたくな。精々が父親との決別の時くらいみたくね。それがあってジーニアスに目覚めたけど、それもあって戦兎自身の成長を阻害していた。兵藤 一誠を倒すには、ライダーシステムがあっての戦兎じゃなく、戦兎があるからこそのライダーシステムじゃなきゃならないんだ」
「もしかしてお兄ちゃんが戦兎さんの力を奪ったのって……」
ふとガッテンがいった顔をした実奈に一誠は頷くと、
「ジーニアスは反則でな。あれとクローズマグマは最早ライダーシステムの枠組みか外れつつある。この二つならアンチビルドも敵じゃない。と言うか、ルートによってはジーニアスであっさり勝つルートもある。でもそれだと戦兎の成長はない。だから俺はジーニアスの力を使えなくした」
「そして戦兎君だけを連れてきた。ってことかしら?」
流石リアス理解が早い。と一誠は褒めつつ、
「力を奪い、実奈と逃げればバイクで先導して追いかけて来る。ってのは予想通りでした。それで戦兎だけを連れてくれば、戦兎を一人にできる。いつだって仲間たちとともにあり、そして助けて助けられてきた戦兎にとって、初めての孤独。そして見知った顔から初対面のような顔をされ、この世界の惨状を責め立てられる。優しい戦兎からすれば、こんな精神的に来るものはないでしょうね」
「そう言えば一誠。私は彼があっちの世界のグレモリー眷属と言うのは聞いてなかったぞ?」
そりゃ言わなかったからな。と一誠はゼノヴィアに答えると、
「今言ったように、戦兎を追い込む必要があった。でも皆に話した状態でできたと思うか?リアス何か違う世界とはいえ、自分の眷属だと分かったら親近感くらい湧いちまう。でもそれではだめなんだ。徹底的に追い込まないと、7.0には届かない。実奈をあっちの世界に一度置き去りにしたのは、こっちの世界に一緒に連れて帰るとそうなると踏んだからだ。それに……」
それに?と皆が一誠に首を傾げると、
「例え演技でも、皆が嫌われ役をするところを見たくない。嫌われるのは俺だけで良かった」
「で、ですが最後にちゃんと説明すれば……」
それは駄目なんだよアーシア。そう一誠は言葉を遮り、
「俺は戦兎から嫌われてなきゃならなかったんだ」
意味がわからず、皆は困惑していると、
「さっき言ったように、未来を変えるのは不可能だ。だから俺は戦兎自身で未来を作るルートを作ろうとしてる。だが俺が深く交流し、絆が生まれたとしたら、未来を知るものが戦兎の物語に関われば、それはもう未来を変える戦いになってしまう。未来を知らない者同士であればいい。でも俺は駄目だ。俺は未来を知ってしまっている。知っているものが行動すれば、それは未来を作る行為じゃない。知ってる未来を変えようとする行為だ。だから俺は戦兎達と仲良くしちゃいけない。寧ろ嫌われるくらいじゃないといけなかった。当然だが事情も話せない。話せば俺が見た未来も話さなくちゃいけなくなる。そうなったら結局未来を知る戦兎の未来を変える物語にしかならない。それじゃ意味がない。だから戦兎と距離を取った。案の定今回はライドウォッチ生まれなかっただろ?そうじゃないと不味かったんだけどさ」
「だ、だけどさ!一誠くん頑張ったしこれで未来作れるんだよね?」
イリナの不安げな問いに、大丈夫だと答えたくなる衝動に駆られるが、
「難しいかもな。未来を作るってのは、実際変えることより難しい。変えるなら、既存の流れから変化させるだけで良い。でも作るのは、0からなかった流れを生み出す行為だ。ただでさえ、あの世界の驚異は兵藤 一誠だけじゃないしな」
「と言うと?」
ロスヴァイセが聞いてきて、一誠は頷くと、
「ビジター。あの世界ではそう呼ばれる存在で、本来は名前なんてない。だがその正体は、あの世界が生み出した自殺装置だ」
自殺装置。その言葉に皆が唾を飲むと、
「兵藤 一誠によって生み出されたあの世界は兵藤 一誠にとって都合良くできている。だが世界の意思そのものも味方しているわけじゃない。寧ろこれから起こる醜悪な結末を嫌い、自らの崩壊を選択した。だがそれだけで自ら崩壊はできない。だから世界が持てる力を全て吐き出して生み出したのはビジターだ。決して倒されない。ただそれだけの概念を纏ったそれは、兵藤 一誠自身を倒せないのを知っている。だからそれ以外の全てを破壊する事にした。あの世界でアザゼルたちが封印できたのは、世界が予め壊させようとビジターを産み落としたものの、兵藤 一誠が関わったもの破壊する存在だったビジターは本来の力を発揮できなかったからだ。だが今は違う。兵藤 一誠は生まれ、あの世界で色んな場所に関わっている。そしてビジターは決して倒されず、兵藤 一誠が話し、触って見て聞いて感じたもの、その全てを消し去り続ける。兵藤 一誠が他と関わるのを諦め、世界が消え去るその時までな。だがここで一つ問題だ。ビジターは兵藤 一誠の関わったものを滅ぼすのなら、それはあの世界だけなんだろうか?」
あ、と皆は目を合わせ、そんなまさかと見合うと、
「そう。ビジターの破壊対象は異なる世界もだ。勿論、俺たちのこの世界も含まれる。他の世界もだ。兵藤 一誠が侵略した世界は一つ二つじゃない。その膨大な数の世界が全て破壊対象だ。そしてビジターは目覚めたら戦兎達には止められない。さっき言ったように、兵藤 一誠に勝つ未来はない。だがそもそも、兵藤 一誠との決戦まで行ったルートが少ない。大半は途中で目覚めたビジターに敗北するルートだ。運良くビジターが目覚める前に決戦に持ち込んだのが、兵藤 一誠に敗北するルート」
「なんですかそれ……じゃあ今回先輩がやったのって無意味じゃ」
小猫は体を震わせながら、拳を握る。
「小猫。言っただろ?あの世界は、もう終わってるんだ。俺が今回やったことだって、道端に石ころ置いて誰か転ばないかなってくらい小さなものさ。普通なら転ばない。石ころ蹴っ飛ばすか、そもそも足に当たらない」
でも、と一誠は続けると、
「戦兎はどのルートで俺を助けてくれた。少なくとも俺は、あいつを友達だと感じた。だからそのために動くことは無意味じゃない。何かが起こるかもしれない。俺はその可能性がある限り……いや、無かったとしても、俺はそのために動くよ」
そう言い切り、皆は一誠を見つめると、
「質問いいかしら?」
「どうぞ」
リアスからの質問を一誠は促すと、
「今の話だと、龍誠君と戦兎君は7.0になれるのよね?他の子たちはだめなの?」
「無理ですね。あの二人だけが特別ですから。兵藤 一誠に兵藤 一誠の立場を奪われた龍誠と」
本来存在しない存在の戦兎君?とリアスが聞く。しかし、
「アイツはいますよ。バグでもなんでもない。ちゃんと役割を持った奴です」
『?』
意味がわからず、皆は首を傾げる。
「
「もしかして……」
実奈だけはわかったらしい。そして一誠は笑みを浮かべているとヴァーリが、
「兵藤 一誠。お前は言ったな。向こうの兵藤 一誠に異世界の進行をやめさせてはいけないと」
「あぁ」
「つまり今回のお前の選択は、ビジターが狙う世界増やす行為なんだな?」
皆が分かっていたこと。だがヴァーリはそれを敢えて口にした。そして一誠は頷き、
「あぁ。そしてそれだけじゃない。ビジターに襲われる前に、そもそも兵藤 一誠の侵略も受けることになる。俺がやったのは、被害者を増やすことに他ならない」
戦兎を救う可能性を求め、多くの世界を巻き込む。それが一誠の選択だった。
「どうすればいいのか。全部無傷で救う方法はないのか。そればかり考えた。でもこれしか思いつかなかった。もしかしたら戦兎が作り出す未来には、ビジターを倒して兵藤 一誠も倒す未来もあるかもしれない。そんな希望的観測を元に作った道標。それが今回の一連の戦いの真相だ」
一誠はそう言って息をつくと、他の皆も息を整える。
そんな光景を見ながら、一誠は願う。
(そんな都合よく行くはずがない。そんなの分かってる)
でも、と一誠は心の中で手を伸ばし、
(もし、俺が放った石ころに蹴っつまずく誰かがいるなら……)
《ブレイブストライク!》
「ラァアアアアアア!」
とある世界のとある場所で、ライダーキックを放つ姿があった。
黒の下地に、金属質の赤いアーマーをまとった姿で、額には王冠のようなパーツが着いていて、怪人にライダーキック叩き込むと同時に、爆発するとその爆心地に人が倒れいた。
それを確認するとバックルの王冠型のアイテムをバックルから外し、変身を解除すると、そこには黒髪の高校生くらいの少年で、大きくため息をつく。
「お兄お疲れ様」
「あぁ、ありがとう。
駆け寄ってきた少女に、少年は妃愛と呼び、妃愛と呼ばれた少女は少年を兄と呼ぶ。
「今日も無事生徒会業務並びに仮面ライダーキングの仕事も終わったね」
「生徒会業務はともかく仮面ライダーキングはなぁ」
そう言いながら少年は上を向き、
「帰るか。この人はこのあと来る警察に任せればいいし」
「そうだね」
妃愛は少年の言葉に肯定の頷きを返しつつ、少年の手を取ると、
「じゃ、帰ろっか」
「あぁ」
妃愛に引かれ、少年は歩き出そうとすると、
「ん?」
「どうしたの?お兄?」
「あぁいや。気のせいかもしれないんだけど……」
「よっと」
また世界は変わり、別の場所では中学生くらいの少年が空から落ちてきて着地し、背中を伸ばす。
「無事怪獣退治も終わりかな」
《あぁ、そうだな》
少年は声を聞き、ポケットからスマホのようなものを取り出すと、
「グランドさんもお疲れ様でした」
《陸人の方こそお疲れ様だ》
そんなやり取りをしていると、ふと陸と呼ばれた少年は空を見上げる。
《どうした?》
「いえ、なんか今お願いされたような気がして……」
スマホのようなものから聞こえる声は、首を傾げているようで、
「グランドさんには聞こえなかった?」
《すまんが何もだな》
そっかぁ。としつつも陸はまぁいいかと言い、
「とりあえず帰りましょっか。俺お腹すいちゃって」
《そうだな》
と陸はスマホをポケットにしまい直し歩き出す。
そんな彼の後ろには、青い宝石のようなものを胸につけた、巨人が立っているように見えるのだった。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
やっと、やっとここまで来ました。初期から考え続けていたお話がやっと書けました。
そう。この世界はハッピーエンドの世界です。どんなに回り道をしても、兵藤 一誠は必ず勝つ世界。それが戦兎達の世界です。さてここで明かされた世界の秘密。戦兎達は未来を作れるのか……
いやぁ、ジオウの一誠には中々嫌な役をさせてしまいました。この話で少しでも株が上がって頂けたら幸いです。
と言うわけで物語も終盤戦。新しく出た二人の戦士がどう関わってくるのか……そして兵藤 一誠との戦いの行方は、更にビジターもどう来るのか……そんな感じで次回以降も宜しくお願いします。