戦「ライザーとの戦いから暫く、俺達は束の間の平穏を味わっていた」
龍「しかぁし!問題はすぐそこまで来てたのだ!例えばこのいで!」
戦「バカ!ここで喋ったらダメに決まってるでしょうが!と言うわけで新たな事件が起こる第14話スタート」
もう一人の上級悪魔
あの時とは違う。俺は変わったんだ。もうあの時の俺じゃない。なのに何故誰も認めない。何故誰も俺を関わらせない。何故俺を除け者にする。
許せない……許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない。
ならもういい。俺を認めないなら全てを力付くで御して見せよう。全てを呑み込み俺の物にしよう。
魔王も天使も堕天使も全て従わせる。それが俺が──になれる方法なのだから。
「へぇ~。これが小さい頃の龍誠と戦兎ねぇ」
可愛いですと明らかに龍誠しか視界に入ってない眼で写真を見つめているのはリアスとアーシアである。
さて、本日は部室というか部室がある旧校舎が清掃のため立ち入りができず、オカ研のメンバーは戦兎の家に集まっていた。そしたら何時も友達と言うと龍誠しか連れて来なかった戦兎の母が感激しすぎて、こうやって昔の写真まで引っ張り出してきたのだ。因みに美空は、
「はい。これでいいですか?」
「ありがとうございます」
と小猫にサインを書いてあげていた。何でもファンだったらしい。結構美空は根強いファンが多いと言うのは知っていたが、それが後輩にもいたと言うことに戦兎は驚いていた。
「羨ましいです。戦兎先輩はあのみーたんと生活ができるなんて……」
「全然いいもんじゃないよ?何せとんでもない暴くいでででで!」
アッハッハと笑いながら言う戦兎だったが、いきなり美空に耳を引っ張られ物影に連れて行かれる。
死んだな……と龍誠が思っていると、
「ねぇ龍誠君」
「ん?」
戦兎の安らかな眠りを祈る……と悪魔は頭が痛くなるのでしないで御愁傷様とだけ思っていると、祐斗が話しかけてきた。
「これなんだけど……」
「ん~?あぁ、これか!懐かしいなぁ。昔遊んだ友達の写真だ」
祐斗に見せられた写真には、小学生時代の龍誠と戦兎と更にもう一人の子供が写っている。
「昔ヒーローごっこしたときの写真か……こいつ何処かに越していったからもう長いこと会ってないんだけどこれがどうしたんだ?」
「この剣だよ」
何故いきなりこの写真を出してきたのか分からず龍誠が首を傾げていると、写真の三人の背後に飾られていた西洋風の剣を指差した。
「これはね。聖剣だよ」
「あぁ~」
「なに唸ってんだよ」
そんなことがあった次の日、教室で飯を食べていたが唸りだした戦兎に目の前で食べていた龍誠が声をかけた。
「ビルドの強化アイテムがどうしても完成しないんだ。ボトル作って魔力を込めてイメージするんだけど、どうしても爆発しちまうんだ」
魔力とその辺の下りはこそこそ話しつつ言うと、龍誠はふぅんと言いながらパンを口に放り込む。
「やはり一からじゃなくて今ある奴と組み合わせる感じで行くか……」
頭を掻きながら戦兎は最後の一口を放り込み弁当を片付けると、龍誠と立ち上がりながらアーシアの元に行く。
「アーシア。行こうぜ」
昼休みは生徒の憩いの時間であるが、近々部活対抗の球技大会があるのだ。なので昼休みを使ってその辺の打ち合わせをする予定で各自昼食を取ったら集まるようにと指示があり、食べ終えた二人がアーシアに声を掛けると、
「おやおや。彼氏の到着かな」
「ぴっ!」
アーシアと一緒に食べていた眼鏡をかけた三つ編み少女が言うと、アーシアは椅子から転げ落ちそうになる。
「ちちちち違いましゅ!龍誠さんとはそう言うわけでは!」
「おやおやぁ?私は彼氏としか言ってないのに戦兎と万丈のうち態々万丈個人を名指しするんだぁ?」
ぶわ!と耳まで真っ赤にしたアーシアはワタワタしながら鞄に荷物をしまう。
「藍華。あまりアーシアを苛めるなよ」
「ついねぇ~」
戦兎の言葉に藍華と呼ばれた少女は舌を出す。そのやり取りを見てアーシアは首を傾げた。
「あの……お二人は知り合いなんですか?」
『従兄妹な(んだよ)(のよ)』
えぇ!?とアーシアが驚き、龍誠は知らなかったのか?とアーシアを見る。
「こんな発明バカと親戚って言うのは遺憾だけどね~」
「俺こそおめぇみたいなド変態女となんてごめんだよ」
まあこんな風に言い合っているが別に仲が悪い訳じゃない。ただお互いそれぞれの交遊関係があるので、学校ではそんなに絡まないだけなのだがアーシアは驚きだったようだ。しかし、
「でも、お二人が親戚と言うのは言われてみればちょっと似てるので分かる気がします」
『なんで(だよ)(よ)アーシア』
根っこは良く似てるのだから、アーシアの反応もしょうがない。
「俺と藍華のどこが似てんだよ」
何となく持ってるオーラとふとしたときの言動がなのだが、部室に向かう途中でも戦兎はずっとブツブツ言っている。それを聞いた龍誠は苦笑いを浮かべるが口には出さない。
言うと怒るからなと思いつつ部室のドアに手をかける。そして中に入ると、
「あれ?」
中には眼鏡をかけたスレンダーな知的な美少女と背丈の高いそこそこイケメンな男がいた。
「あら龍誠とアーシアに戦兎。丁度良かったわ。紹介するわね。彼女は私の幼馴染でこの学園では支取 蒼那と名乗ってるけど本名はソーナ・シトリー。上級悪魔の一人よ」
「え!?部長以外にも上級悪魔いるんすか!?」
と龍誠は驚くが、戦兎は余り驚いておらず、
「確かこの間の結婚式にいましたよね?」
「えぇ、覚えていたんですね」
「そりゃ自分の学園の生徒会長がいれば覚えますよ」
そう。戦兎が言うように彼女は生徒会長として学園集会の場で良く見る。なので人の顔を余り覚えない戦兎ですら珍しく覚えていた。
寧ろその辺は龍誠の方が曖昧で、
「へぇ~。俺生徒会長の顔全然覚えてなかったわ」
「そりゃあ貴方は集会が始まった途端に寝てますからね」
お茶を飲みながら言うソーナに龍誠は視線を逸らす。戦兎もこいつが集会で起きてたのを見たことがないなと思いつつ、近くにいた男も見る。
「やっぱりあんたも……」
「おうよ!俺は匙 元士郎。お前のことは知ってるぜぇ桐生戦兎ォ……」
余り良い記憶じゃなさそうだなこの表情は……と戦兎は視線を逸らすが、匙はこっちまで態々来てこっちの頭を掴んで向かせてくる。
「丁度良いや。お前には一度言っておきたかったんだよ。謎の実験やって学校の備品を何度壊したんだ?ん?」
「き、記憶にございませんな」
実際証拠は残してない。だが何度か実験やって学校の備品をちょこっと壊したのは事実だ。なのですっとぼけるが匙の中では犯人は戦兎で確定してるらしい。間違ってないのだが……
「大変だな戦兎」
「お前こそトイレの鍵だの壁だのと壊してるだろうが万丈」
「忘れちまったな」
悪魔になる前から腕力の加減ミスって良く壊してたので龍誠もすっとぼけるが、匙はプンプン怒っている。それを見たソーナは、
「その辺の追求は後日で良いでしょう。今日はこの書類を受け取りに来ただけなのですから」
どうにかして逃げよう、と戦兎と龍誠は決心しつつソーナを見る。リアスと二人で話している姿を見たことはないが幼馴染だったというのは驚きだ。するとソーナもこちらを見て、
「桐生 戦兎君。先日のレーティングゲームは見させてもらいましたが素晴らしいものでした。多くの眷属撃破に貢献し、ライザー眷属のクイーンを単独で撃破。更にライザーを追い詰めていました。ビルド?と言いましたか。あれはまだ全てを見せてはいないのでしょう?」
まぁはい。と戦兎は返した。ベストマッチは全部見つけていないが見つけているのだって前回のレーティングゲームで出していないのもある。ベストマッチじゃないトライアルフォームと呼んでるのだけでも引き出しの多さは結構自信がある。
「そして万丈 龍誠君。まさか貴方がライザーを倒すとは思いませんでしたよ。流石に
「え!?万丈があのライザー倒したんすか!?つうか
ソーナの言葉に匙が驚いた。その匙にソーナは頷きを返して、
「少々、いえかなり猪突猛進ではありましたが、あそこまで迷いのない攻めは闘うとなれば驚異でしょうね。搦め手を考えないと……」
ブツブツ言いながらソーナは顎に手をやり思考に老ける。それを見てから匙は龍誠を見て、
「お前……マジで
「おう!お前は?」
龍誠の問いに匙は、ポーンの駒4つ。とだけ言って肩を落としてしまう。
「あれぇ?ポーンの駒四つって言ったら価値だけならナイトやビジョップ以上でルークに次ぐはずなんだけど全然対したことないなぁ……」
「いやいや駒4つって戦兎と同じじゃん」
え?お前も4つなの!?と匙は戦兎を見る。それに対して戦兎は頷きを返して、匙は益々落ち込んだ。
「俺って井の中の蛙だったんだな……」
「ですが匙さんも凄いと思いますよ?」
え?と匙が顔を上げるとそこにはアーシアがおり、優しげな笑みを浮かべながら、
「何時も学校中を駆け回りながら花壇の整理や校庭の土を均したり沢山の書類を運んでいる人がいらっしゃるなと思っていたんですけど匙さんだったんですね。顔は知っていたんですけど名前を知らなくて。でも毎日すごい頑張ってるなぁって思っててそう言う風に頑張れるって言うのは駒の数は関係なく凄いと思いますよ?」
アーシアの言葉に、匙はタパーと眼から涙を流したかと思えば、
「女神や」
「はい?」
「俺は初めて神ってのはいるって確信したぜ……いで!」
何か意味わかんないこと言い出したかと思えば、お祈りしだして勝手にダメージを受けている匙に戦兎と龍誠は、こいつ大丈夫か?みたいな眼で見る。
「ありがとアーシアさん。俺明日からも頑張れるよ」
「そうか。頑張れよ」
とちゃっかり匙はアーシアの手を握りだそうとした。しかしそれを見逃さず龍誠が間にサッと割って入って代わりに自分の手を握らせた。
「てめ!邪魔すんじゃねぇよ!」
「お前こそなにちゃっかりアーシアに触ろうとしとんじゃタコ!」
なんだとぉ!んだよぉ!と、にらみ合いに発展する二人。すると、
「いい加減にしなさい。匙」
「っ!」
空気が凍りつき、匙だけではなく龍誠まで後退る。たった一言ソーナが発した言葉がここまで恐ろしいとは……
「ではリアス。失礼します」
「ええ。またね」
お茶を飲み干したソーナは立ち上がると、匙に声を掛けて部室を立ち去っていく。
「こぇえ……」
「真面目なのよ」
龍誠の呟きにリアスは笑いながらそう答えたのだった。
「しっかし駒王学園にまだ悪魔がいたとはな」
「つうか駒王学園自体悪魔に限らず、ああいった人外何かの受け入れも行っているらしいけどな」
ソーナの一件の後、戦兎と龍誠は帰路についていた。こうやって二人だけと言うのも随分久し振りな気がする。前はこれが普通だったのに今じゃ二人だけの方が珍しいとは想像できなかった事だ。
「それにしても今日は何かな?」
「今日はアジの開きって言ってた」
お前の好きなやつじゃんと龍誠が言い、戦兎は笑みを返した。だが家の玄関の前についた瞬間、
『っ!』
ゾク!っと二人の背中に悪寒が走る。頭も少し痛むしなんだこれはと眼を合わせる。だがなんか嫌な予感がした。龍誠のような第六感がない戦兎ですら訳のわからない不安に襲われ、慌てて家に入る。そして足早にリビングに行くと、
「母さん!」
「あら戦兎に龍誠君。お帰りなさい」
そう普通に返してくる母がいて戦兎は一息、だがリビングのテーブルには見知らぬ二人の少女がいた。
「戦兎君に龍誠君!お帰りなさい。変わらないね」
『は?』
その二人の少女のうち片方の栗色の髪の人懐っこそうな表情の少女が椅子から立ち上がってこっちに来る。
「久し振り!」
誰?と戦兎と龍誠は首を傾げてしまい、彼女もあれ?と不安そうな顔になった。すると母が、紫藤 イリナちゃんでしょ?と言い、二人の脳内で何かの回路が繋がっていく。
そう、脳裏によぎるのは昔一緒にヒーローごっこして遊んだ子供……そうか懐かしいなぁっていうか!
『お前女だったの!?』
「二人には男だと思われてたの!?」