父親というのは
「ひぃいいい!」
駒王町の町中にある、商店街のアクセサリーショップの店主が怯える中、そこに立つ化け物はアクセサリーを荒らす。
「た、か、ら」
「は、はひぃ?」
「おでのだがらぁあああああ」
「ひぇええええ!」
叫び、暴れ出す化け物から逃げだし、逃げ切った店主は言った。
「黒い羽を持った化け物だ」
と。
「よしできた!」
先日の一件から2日。戦兎は解析ソフトを掛け、無事に忍の遺品から隠しファイルを見つけ出した。
「何があったんだ!?」
横から見てくる龍誠と一処に中を見てみると、そこにあったのはラビットドラゴンのことについて。
「そうか。父さんはハザードレベル7.0を超えた物同士の進化したボトルの組み合わせを考えていたんだ」
「つまりこれなら兵藤 一誠を倒せるってことか?」
「いや、これは結局不完全みたいだ。やっぱりドライバーに負担がかかるし、長時間キープもできなければ安定性もない。父さんはここから先が思いつかなかったみたいだ」
他のファイルは……と思いみてみると、
「なんじゃコリャ」
「これは……」
龍誠は何が書いてあるのか分からないようだが、戦兎はこれを見てなにか勘づいたみたいだ。
「まだ未完成だけど、もしかしたら」
と戦兎が何やら思案していると、
「戦兎ー!ちょっと来てー!お客さーん!」
「ん?」
母から呼ばれ、来客のもとに向かうのだった。
「はじめまして。仮面ライダービルド」
そこにいたのは巨大な猫。七つの尾を持ち、
「フカフカだー!」
と美空はお腹に顔を埋めている。
「離せー!」
と何故か、黒歌は前足で抑えられているが。
「アタシは
「へ、へぇ」
デカい猫って威圧感凄いなぁ。と思うものの、美空はモフモフを満喫しているし、母は、
「冷たいお茶です」
「気遣かってもらって済まないね」
いえいえと普通に受け入れている。我が家の女性陣ども強すぎだろと思うが、あまり気にしてもしょうがないかもしれない。
「そ、それで参曲さんはどういった要件で?」
「いや何、このバカ娘と白音に良い人ができたっていうからどんな男かと思ったんだけど、中々にいい男じゃないか」
「因みに何で黒歌を取り押さえてるんで?」
「このバカ娘は勝手に出てって最近まで連絡もよこしやしなかったんだ。良い人ができたってのも白音から手紙が来なけりゃ分からなかったよ」
「だって怒るでしょ?」
「当たり前だろうがバカ娘!」
バシンっと猫パンチが放たれ、家が揺れる。
「あ、すまない」
「いえいえ」
成程これは頭が上がらないパターンか、と苦笑い。
「そうだ戦兎。参曲さんお土産までくれたのよ」
と母が出したのは桐の箱。その中には鰹節が入っていた。
「凄くお高いやつよこれ。今夜はこれで煮物にしましょうか」
ホントなんで違和感なく受け入れてるんだこの母親は。と戦兎は相槌を打ちながら思う。
先日悪魔であることを明かしたあとも、変わらず母親として一緒にいてくれる彼女には感謝しかない。
「ま、見たところ噂通り中々いい男じゃないかい。藤舞にも見せておやりよ」
「藤舞?」
「母親のことよ」
黒歌が参曲の前足の下から這い出ながら教えてくれる。
「暫く墓参りも行ってないだろう?」
「分かってるわよ」
何てやり取りをしていると、
「失礼します」
と小猫がやってきた。
「お久しぶりです」
「おや白音。あなたも元気そうで何よりだ」
一礼しながら小猫は戦兎を見ると、
「部長がお呼びです」
「え?なんかあったっけ?」
えぇ少し。と小猫に言われ、戦兎は分かったと言って立ち上がると、
「ちょっと行って来るわ」
「あ!私も!」
黒歌はここぞとばかりに手を挙げる。だが、
「なら私も行こうかね。二人がお世話になってる人だ。挨拶の一つもしないと……って黒歌。あからさまに嫌そうな顔するんじゃないよ」
「そう小猫と黒歌の後見人なのね」
「いつもお世話になってるね」
いえいえこちらこそとリアスは頭を下げつついると、戦兎が、
「それで何かあったんですか?まさか兵藤 一誠関係で?」
「まだわからないわ。でも先日、駒王町の雑貨店が襲われたの」
何?と思わず戦兎達が顔を見合わせると、
「店主に怪我はないわ。でもその人が言うには、羽が生えた化け物だったらしいのよ」
と、店主の証言を元に描いたらしい羽は、悪魔の羽だ。
「どこかのはぐれ悪魔が出たのかしら?」
「どうかしらね。ただ現場を見てきたけど、僅かに魔力の残滓があった。悪魔の仕業であることは間違いないわね」
朱乃に、リアスが答えると、
「そもそもなぜ雑貨店が襲われたのでしょうか?他の店に被害は?」
祐人がそう問うと、
「不思議なことに雑貨店だけだったそうよ。ただ別にその雑貨店も普通のお店でね。強いていえば、猫関係の雑貨やアクセサリーが中心のお店ってくらい」
戦兎達も、その店については知っている。なんてことのない猫好きの店主が経営する普通の店だ。
「後その化け物は、宝はどこだって言ってらしいわ」
「宝ぁ?」
一体何のこっちゃと龍誠は混乱。
「まぁひとまず、その化け物が何者なのかは分からないけど、探し当てる他はないわ。皆には悪いけど、何人かずつに分かれて捜索を行ってほしい」
『了解!』
「で?こっちでの二人はどうなんだね?」
「そうですね」
戦兎は普通サイズの猫になった参曲を連れ、町を探索する。
最初は小猫や黒歌も来ると言っていたのだが、参曲が二人で話させてほしいというので、二人で来ている。
「って感じです」
「全く。黒歌のやつは」
呆れながらも、どこか優しげな参曲の声音に戦兎は、
「俺からもいいですか?」
「なんだい?」
「二人の両親についてなんですけど」
「アンタ聞いたことないのかい?」
「あまり詳しくは……父親がかなり酷かったというのは聞きますけども」
「そうだね」
参曲は渋い顔をしながら、
「藤舞も厄介な男に惚れちまったのさ。挙げ句に実験の失敗でおきた事故で二人共死んじまった」
そう言いながら、天を見上げると、
「実験にしか興味がなく、藤舞を要求処理に使って認知すらせずに死んだ男。藤舞が惚れた相手に言うのも何だけど、クソ野郎だね」
「成程」
当然だが中々辛辣だ。
「ん?」
何て思いながら歩いていると、眼の前に一人の男が立っていた。
「しろ……ね」
「アンタはっ!」
参曲が巨大化し、毛を逆立て警戒する。良くわからないが、小猫の本名を呟く男に、戦兎も警戒する。
「あずけた……たからをよこせ」
「宝だと?」
確か雑貨屋を襲った化け物も、宝を寄越せと言っていたはずだ。そう思っていると、
「よこせぇえええええ!」
男は背中から悪魔の羽を生やし、あっという間に恐ろしげな化け物に姿を変えていく。
「何だあれ……っ!」
「来るよ!」
飛び掛かってきた化け物を横に飛んでかわすと、
「今更現世になんの用だい!」
「知り合いですか?」
戦兎が問うと、参曲は叫ぶ。
「コイツは黒歌と白音の父親だよ!」
「え!?でも確か人間では!?」
そこが訳わからないんだけどね!と参曲も言いながら避ける。
「たから!わたしのたから!よこせええええ!」
「一体何の事を言ってんだよ!」
戦兎はビルドドライバーを装着し、ボトルを振り、
「変身!」
《鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イエーイ!》
タンク側で受け止め、ラビット側で蹴り返す。
「しろね……わたせ、わたしのたからを!」
「もしかして、俺を小猫だと思ってるのか?」
なんでだ?と思うと、
「恐らくだけど、あんたの体には白音や黒歌の匂いがついてる。そのせいだよ」
成程、と戦兎は頷くと、
「たから、たから、たから!わたせぇえええ!」
再び襲いかかってくるのを、戦兎は回避しながらドリルクラッシャーで斬る。しかしまだ追い掛けてくる。そこに、参曲の猫パンチが炸裂し、吹き飛ばした。
「そもそも宝って何の話なんですかね?」
「さてね。ただ白音達を指しているわけじゃないのは確かだよ」
それはわかる。と頷くと、化け物は立ち上がり、
「わたしのすべて。わたしのじんせい。かくすならゆるさんぞぉおおおおお!」
咆哮を上げ、空気が震える。しかし、戦兎は、
「……ふざけんなよ」
「仮面ライダービルド?」
参曲が戦兎を見る。戦兎の体から滲むのは怒りだ。
「さっきから宝宝叫んで。俺を小猫だと勘違いして襲ってきて。ふざけんなよ!これが本当に小猫本人だったら、父親に襲われてたってことじゃねぇか!」
グラグラと腸が煮えくり返る想いだ。
「小猫だと認識したうえで、意味も分からず襲ってくる。父親ってのは……そんなもんじゃねぇだろ!」
《グレイト!オールイエイ!ジーニアス!》
戦兎はジーニアスボトルを装填し、レバーを回す。
「ビルドアップ!」
《完全無欠のボトルヤロー!ビルドジーニアス!スゲーイ!モノスゲーイ!》
ジーニアスフォームになった戦兎は、高速移動で近づくと殴り飛ばした。
「お前のせいで、黒歌がどんだけ苦しんだと思ってんだ!」
戦兎は殴り飛ばした先に回り込むと、蹴り返す。
「科学ってのは家族を苦しめるためのものじゃない!家族も世界も全部幸せにするためのものだ!それをできなかったアンタは、科学者失格だ!」
戦兎はフルボトルバスターを発射しながら叫ぶ。
「でもな。アンタに俺は感謝もしなきゃいけない。あなたがいなければ、黒歌も小猫も生まれてない。そしたら俺達は出会えなかったんだ」
戦兎はフルボトルバスターを捨て、レバーを回す。
《ワンサイド!逆サイド!オールサイド!》
「だからお義父さん!俺が教えます!アンタが教えなかったこと。家族の温かさも家族の形も、科学ってのは幸福を生み出すってことも、全部俺が教えてみせます。だから……っ!」
《Ready Go!》
「娘さんたちを、俺にくださぁああああああああああああい!」
《ジーニアスフィニッシュ!》
戦兎の渾身の蹴りが炸裂し、化け物は爆発するとそのまま消滅した。
「随分激しめなプロポーズだねぇ」
参曲はそう言って笑う。
「どっちかって言うとご両親への挨拶では?」
「確かにね」
と言いながら参曲は通常猫サイズになると、
「ホントはね。アンタを見定めようと思ってたのさ」
「でしょうね」
なんとなく、そんな気はしてた。二人で話したがった辺りから。
「結果はどうでした?」
「合格だよ。アンタ、いい男じゃないか。同じ科学者とは思えない」
「ああいうのが珍しいんですよ」
戦兎は変身を解除する。すると、そこにリアス達がやってきた。
「一体何があったの?」
リアスの問いに、戦兎と参曲は顔を見合わせる。
「謎の悪魔に襲われました。正体はわかりません」
そう言って、正体は濁す。後でリアスにはちゃんと報告するが、小猫や黒歌の前では憚れたのだ。
「そう。じゃあ一先ずは問題は解決したのね?」
「えぇ」
戦兎の頷きに、リアスは納得すると、
「それじゃあ帰りましょうか」
彼女のその言葉に、皆は歩きだすと、黒歌と小猫が来た。
「なんかあったの?」
「何も」
「ホントですか?」
「ホントだって」
戦兎は笑みを浮かべて返すと、参曲と目が合い、
『……』
言葉を交わさず、意思を伝える。今回の一件は、まだ話すことはない。でもこの先機会ができてから話す。それを参曲はそうかいと言わんばかりに顔を逸らすのだった。
「そうか」
先日の事件から二日後、サーゼクスの元にアザゼルが報告を持ってきていた。
「小猫達の父親復活は兵藤一誠の仕業だろう。そして目的はおそらく」
「ナベリウス家の実験のデータか」
サーゼクスは眉を寄せる。
ナベリウス家。それは黒歌が以前眷属をしていた家であり、人工的に悪魔を作るという実験を秘密裏にしていた。
「その過程の事故で亡くなっていたが、生き返らせることでその記憶を奪ったか」
「あぁ、戦兎の話を聞く限り、自我が崩壊していた。恐らく記憶を絞りとり尽くされた結果だろうな」
「そして残った記憶で、娘に預けた研究データを探したということか」
「リアス達がウルトラマングランドというやつのところに行ったときに、見たことのない悪魔と出会ったと言っていた。恐らく研究自体は兵藤一誠が完成させてて、捨てられた後に残った本能で研究データだけを探してたってことだろうな」
その研究データは?というサーゼクスに、アザゼルは、
「分からん。どっかにはあるんだろうけどな」
そうか。と頷き、
「話は変わるが、決行の日が決まった」
「遂にか」
決行の日。それは兵藤 一誠に総攻撃をかける日のことだ。
「2月末。3月前に終わらせる。リアスの卒業式に出れなくなってしまうからな」
「妹思いなこって」
アザゼルがそう言って苦笑いを浮かべるが、サーゼクスは真面目な顔をして、
「アザゼル。お願いがあるんだ」
「あん?なんだよ」
「もし僕に何かあったときは、皆を頼む」
おいおい縁起でもねぇな。と言おうとしたが、サーゼクスは真面目な顔だ。
「ってかそういうのは戦兎達に頼めよ」
「残念だが彼等にはもっと別の事を頼む予定でね。その点君はもう提督ではないし暇だろう?」
「暇じゃねぇよ」
呆れつつも、アザゼルは分かった分かったと頷き、
「だがなにもないのが一番だからな?」
「当たり前だ」
そんなやり取りを二人はしながら、笑い合うのだった。