戦兎「兵藤一誠に敗北し、サーゼクスさんも亡くした俺達」
龍誠「だけど俺達はまだ諦めてないぜ!なにせ託されちまったからな!」
戦兎「あぁ、例え何が待ち受けていようと、俺達は戦い続けるぜ!」
龍誠「そんな感じの169話スタート!」
魔王サーゼクス・ルシファーの死は、冥界に衝撃が走った。
いや、冥界だけじゃない。その様々な勢力が動揺し、先日の戦いで大きく戦力を消耗していた。
特に、サーゼクスの死は、グレイフィアとリアスに大きな傷を残し、二人共部屋から出てこなくなってしまった。
そんな時、
「アジュカさんから呼ばれた?」
機材を弄っていた戦兎の元へ、そんな連絡が入った。
サーゼクスに並ぶ魔王、アジュカからの呼び出しに、訝しみつつも、呼び出しに応じて移動。
行き先は冥界にある、魔王城の一室。
そこには既に、他の仲間達が既におり、その直後にアジュカを筆頭にした、魔王達と、アザゼルにミカエルが入ってきた。
「急にどうしたんですか?」
戦兎はそう問う。いつもならリアスが会話を切り出すのだが、今は呆然としているため、とても話せる状態ではなかった。
すると、
「兵藤一誠との戦いについてだ」
アジュカがそう言うと、戦兎達は息を呑む。そして、
「私達はこの世界を放棄し、別の世界で再起を測ることにする」
「……は?」
戦兎は思わず、そんな言葉が口から出た。一体何を言ってるんだ?と。
「兵藤一誠の強さは先日痛感したと思う。今のままでは勝てない。ならば一度撤退し、対抗策を練る」
「待ってください!そんな世界中の人達を移動なんてできるんですか?」
「移動するメンバーは選別する」
「じゃあ他の人達は置いていくってことですか!?」
戦兎が身を乗り出してアジュカに問う。
「そうだ。全てを連れて行くことはできない。その為人数を絞り、それらだけ連れて行くことにする」
「そんなっ!」
戦兎はアジュカに抗議しようとすると、
「全滅するよりは良い」
「追いかけてきたらどうするんですか?」
「もし兵藤一誠が追いかけてきた場合、すぐにまた別の世界に移動する。それを繰り返し時間を稼ぎ、対抗策を練ればいい」
「そしたらいった先の世界はどうなるんですか!?」
「ならば他に手はあるのか!?」
アジュカは机を叩き、戦兎を睨みつける。
「俺達が倒します!」
「どうやって!」
「なんとかします!今はまだないですけど」
「話にならないな」
アジュカはため息を付きながら、椅子に深く座った。
「本気のサーゼクスですら、手も足も出なかった。君達は強い。だがサーゼクスには及ばない。そんな君達が戦ったところで勝てると思ってるのかい?」
「思ってます」
戦兎は、アジュカの目を真っ直ぐ見据えながら、そう答えた。
「分かった。ならばこうしよう。悪魔らしく、明日に私、セラフォルー、ファルビムの3人と戦い、それに勝てたら認めよう」
『っ!』
すると、突然のアジュカの提案に、その場の全員が驚く。厳密に言えば、セラフォルーやファルビムにアザゼル等の反応がないことから、恐らく戦兎立が納得しないのも承知の上で、元々こういう提案をするつもりだったのだろう。
「そちらは何人でも構わない。兵藤 一誠に勝てると言うなら、その可能性を私達に示してもらおう」
アジュカ達はそう言うと、席を立ち部屋を後にする。そして戦兎達が取り残されるが、
「ま、まぁ!一先ず明日あの3人を倒せばいいってことだな!」
龍誠は、そう言って気合を入れ、
「よし皆頑張ろうぜ!」
と皆を見る。だが誰もそれに答えない。
「み、皆?」
「ごめんなさい龍誠」
最初に答えたのはリアスだ。
「私は戦わないわ」
「……え?」
リアスは力なく答える。
「私はもう、戦えない」
それだけ言い残し、部屋を出ていく。それに続いて他の面々も部屋を出ようとした。
「お、おい皆!?」
龍誠が慌てて止めようとすると、
「龍誠君。僕も部長と同じだ。あの男に僕の剣は届かなかった。多分……この先も届くことはないと思う」
裕斗がそう言って出ていき、皆同じような表情でその場を後にしてしまった。
「もしかして……」
「あぁ、戦うのは俺とお前だけみたいだな」
二人だけ取り残され、互いに見合うと苦笑いを浮かべる戦兎と龍誠。
「逆にお前は良いのか?」
「当たり前だろ!お前が戦うなら俺も戦う!逃げ腰ならケツを蹴って戦う!」
フンス!と気合を入れる龍誠を見て、戦兎は笑い、
「俺等は逃げるわけにいかないもんな……」
「だな」
そう言いながら、互いの拳をぶつけ合わせるのだった。
「……」
「匙?」
帰り道、ボーッとしていると、ソーナに声を掛けられ、慌てて匙はそっちを見る。
「悩んでいるのですか?」
「ま、まぁ」
ソーナはそんな匙に、
「今の兵藤一誠の強さは異常です。このまま戦っても勝ち目はありません。貴方も分かっているはずです」
「それはまぁ……」
「勝ち目のない戦いに無理に挑むのは勇気ではなく無謀。違いますか?」
「違いません」
ソーナの口調は冷たいが、それは悔しさからだ。どれだけ考えても計算しても、勝つ道のりが存在しない相手。それが兵藤一誠である。
「この話はこれで終わりです。行きますよ」
「はい」
「……」
「ご機嫌斜めですね」
寝転がりながらいたヴァーリの元に、アーサーがお茶を持ってくる。
「うるせぇ」
「悩んでいるのですか?」
ヴァーリは答えない。そんな様子を見てアーサーは、
「変わりましたね」
「あ?」
「前の貴方なら、リゼヴィムを倒せるならどうなっても良いと思っていたでしょう?ですが今のあなたは、リゼヴィムだけじゃない。兵藤一誠も倒せるかを考え、不可能だと感じ、あの場を去った。今までの貴方なら考えられないことです」
「……」
ヴァーリはアーサーから目を逸らし、空を見る。
「変わった、か」
「ダメだな。俺は」
「サイラオーグ様?」
二人になった時、サイラオーグが突如そんな事を呟き、フウは驚く。
「マグダランも止められず、兵藤一誠にも勝てず、俺は何もできない」
俺は弱い。そう呟くサイラオーグに、フウは何も言えない。自分も同じだ。何もできず、ただそばにいただけ。
そして逃げようとしている。情けない限りだ。
「結局、何も俺は変わってないのかもな」
そんなそれぞれの思惑が交差する中、日が明けるのだった。