血筋
『みーたん!みーたん!』
一糸乱れぬ動きで、ペンライトを振るのは、ヴァーリを先頭に置いた集団である。
美空の歌に合わせ、声援を送る。
(あー!今俺生きてるー!)
ヴァーリは今、生を実感していた。
最後の戦いから半年が過ぎ、ヴァーリは平穏の中で生きていた。
推し活と時折旅したり、美空が望んだものを手に入れにいったり。
今日も応援のための法被を来て手製の団扇まで作ってきていた。準備万端も良い所。充実した推し活には念入りな準備が大切なのだ。
そんなことを思いながら歩いていると、
「ヴァーリ・ルシファーですね」
「あん?」
突然声を掛けられ、ヴァーリは振り返る。ルシファーの名前までされるとはろくな要件ではないな。等と思っていた所に、
「っ!」
突然殴られ、ヴァーリは後ずさる。
「何しやがる!」
「ぬるい」
眼の前の男は、歯軋りしながらヴァーリを睨む。
「ルシファーの血と名を受け継ぎながら何だこの体たらくは!」
「はぁ?」
なんか良く分からないが叫ぶ相手に、ヴァーリは意味がわからんと首を振る。
「お前、旧魔王派のやつか?」
「旧魔王派だと?違う!私達こそが真だろう!」
なんか前にもそんな事言ってるやつがいたなぁとヴァーリは思いながら、眼の前のやつを見る。
自分と同じ、髪色に、目鼻立ちもよく似ている。っていうか、全体的に自分とそっくりだ。
「お前何者だ?」
「俺はラヴィ。ラヴィ・ルシファー。真の魔王にして、最強の悪魔だ!」
そっか。とヴァーリは頭をかき、
「お前俺の親戚かよ。まぁ爺も父親も色んなところで女作ってたからな。どっかに親戚が居ても驚かねぇよ」
「馬鹿が。私はリゼヴィム様のクローンだ」
「は?」
突然の告白に、ヴァーリは思わずポカンとしてしまう。
「リゼヴィム様は己の肉体が衰えてい言うことを危惧していた。故に若い肉体を作り、己の精神を移植しようとした。だがお前の打ち取られ、計画は中断された」
「で、お前が生まれたってわけか」
「そう。リゼヴィム様にこのお体を献上するのが私の生きがいだったのに。貴様のせいで全てが無駄になった」
敬愛ねぇ、とヴァーリは眉を寄せる。
「んで?今更何の用だよ」
「うむ。これより真の魔王として、偽りの魔王達に鉄槌を下す。お前も来い」
「アホか。なんで俺まで」
「リゼヴィム様に手をかけたお前だが、私は心が広い。お前の強さがあれば、戦力になるだろう。真の魔王のと血を引く者として、戦わない理由はないと思うが?」
成程全く話が通じない。っていうか、コイツ目が逝ってやがる。とヴァーリは頭を掻くと、
「どちらにせよ、お前を生かしておくとろくなことにならなさそうだな!」
ヴァーリはそう言って、スクラッシュドライバーを装着し、
《ロボットゼリー!》
「変身!」
《潰れる!流れる!溢れ出る!ロボットイングリス!ブラァ!》
仮面ライダーグリスに変身したヴァーリは、ラヴィに向かって走り出すと、
「なに!?」
ラヴィもスクラッシュドライバーを装着し、ロボットゼリーを装填。
《ロボットゼリー!》
「変身」
《潰れる!流れる!溢れ出る!ロボットイングリス!ブラァ!》
何とラヴィもグリスに変身し、ヴァーリと拳を交える。
「元々グリスのアイテムは
「なるほどな!」
ヴァーリはラヴィを蹴り飛ばしながら追撃を掛けるが、
「くっ!」
「お前と俺ではスペックが違う。俺は純粋な悪魔にして、ルシファーの力を何倍にも高め、使う事ができる様に作られた。俺はパーフェクトな悪魔だ」
「そうかよ!」
ヴァーリはビームモードにしたツインブレイカーを、ラヴィの足元に撃って視界を塞ぎ、その間にビルドドライバーとグリスブリザードナックルを取り出した。
「それがグリスブリザードか」
「これで終わらせてやるよ!」
ビルドドライバーを装着し、グリスブリザードナックルとボトルを出す。あが、
「悪いが。それは出来ない」
ラヴィがヴァーリに手を向けると、ヴァーリの体から力が抜ける。
「な、何だ!?」
驚きながらも、ヴァーリは変身しようとするが、ナックルにフルボトルを装填した瞬間、電流が走る。
「がはっ!」
地面に転がり、ヴァーリが咳き込むと、ラヴィは落としたナックルとフルボトルを拾い、ヴァーリの腰からビルドドライバーを奪い取る。
「俺は全てのルシファーの頂点に立つ悪魔。ルシファーの力を奪い、一つにできる」
「俺の体から、ルシファーの力を!?」
「そう。そして俺の中には、お前の力もある。残念だよヴァーリ。だが安心したまえ。お前の力は、俺が有意義に使ってやろう」
ラヴィはビルドドライバーを装着し、グリスブリザードナックルにフルボトルを装填。するとラヴィの力を取り込んだナックルとフルボトルが変質し、どす黒く禍々しいものになる。
「成程。想定外だが面白い」
《オンリーワン!グリスルシファー!》
ナックルをビルドドライバーの装填し、レバーを回しながら構える。
《Are you ready?》
「変身」
《魔王降臨!グリスルシファー!ジャキジャキジャキジャキィイイイイン!》
悪魔の羽を模したようなマントと角を携えた、全く違う姿のグリスに、ヴァーリは唖然とする。
「素晴らしい。これが俺の新たな力だっ!」
高らかに宣言して笑うラヴィに、ヴァーリは奥歯を噛む。すると、
「ヴァーリ?」
「ッ!」
声に振り返ると、ポカンとした顔の美空が立っている。
「みーたん逃げろ!」
ヴァーリがそう叫ぶと、美空は驚きながらも逃げる姿勢に迷わず入る。だが、
「確かヴァーリがお熱のアイドル?とかいうやつか」
ラヴィが手から光線を放とうとし、ヴァーリは再度グリスに変身しながら、美空を庇うように立ち上がった。
それと同時に、爆発と閃光。ヴァーリは変身が解除され、地面に倒れる。
少し離れたところには美空が倒れており、
「成程。相当大切なようだ。ならば」
ラヴィは美空を担ぎ上げ、
「返してほしければ、我が城に来るが良い。分かるだろう?場所は」
「や、やめろ」
「期限は一週間だ。それまでにこなければ殺す。来てもお前とこの女を殺す。お前が悪いんだ。悪魔の誇りを捨て、リゼヴィム様を殺めた挙げ句、こんな下賤な人間の女を崇拝する。あり得ない。全ての悪魔の頂点であるルシファーの……ひいては悪魔という種のの品位を下げる行為だ。だからせめて、苦しんで死んでいくが良い。それがお前に出来る唯一の贖罪だ」
そういう残し、ラヴィはその場を去っていく。
「ま、待ちやがれ……」
ヴァーリは手を伸ばすが、そのまま意識を手放してしまうのだった。
グリスルシファー
パンチ力95t(右腕)、93t(左腕)
キック力88t
ジャンプ力80m(ひと跳び)
走力3秒(100m)
ラヴィ・ルシファーが、ヴァーリのグリスブリザードナックルとノースブリザードフルボトルに、自身の力を注ぎ込むことで生まれた新たな形態。大幅なスペックの向上がなされている。
冷気を操る能力は失われているが、魔王由来のパワーを持っており、グリスブリザードよりも遥かに強い。
本来は想定されていない形態なのだが、ヴァーリから奪った力と、ラヴィ自身の力を過剰に注ぎ込むことで変質している。