「スクラッシュドライバー、スクラッシュゼリー、ツインブレイカー……か」
コカビエルとの戦いから数日。プスプス頭から煙を出しながら、戦兎が家のパソコンから探しだした父の研究データをプリントアウトした紙を龍誠は見つめていた。
「あぁ、ボトルの成分をゲル化して成分を高めて使えるようにしたスクラッシュゼリー。そしてそれを使うためのベルトであるスクラッシュドライバー。そして専用武器であるツインブレイカー。でも、どれもまだ研究段階でとても現物を作り出せる程進んでない。理論だって殆ど出来上がってないしな」
「やはり成分を高めてって事は強いんでしょうか」
頭を掻きながら言う戦兎に、アーシアが問うと、
「あぁ、更にこのスクラッシュドライバーは使用者のアドレナリンを過剰に分泌させることで興奮状態にしたり、変身すればするほどハザードレベルを強引に引き上げることができるらしい」
「すげぇじゃねぇか!こっちも作ろうぜ!」
「バカ!これでは理論すら完成できてねぇんだよ!それにアドレナリンを過剰に分泌ってのは体への負担も大きいし、何より問題はこれは使えば使うほど人格を変化させ、好戦的な性格に変えていく。そして使い続ければ根っからに戦闘兵器に変えてしまう」
戦兎にそう言われ、龍誠はそうかと項垂れてしまう。
「多分、父さんが途中で理論すら完成させずに開発を止めたのは、その辺が関係してると思うんだ」
だが気になるのは、なら何故スクラッシュドライバーシリーズが完成したのかだ。それに何故あいつはフルボトルを持っていた?フルボトルは戦兎の
等と考えながら戦兎が部室のドアを開けて中に入ろうと……
「やぁ。来たようだね」
『……』
バタン。とドアを閉めた。可笑しいな。何か見てはいけない人物が中にいたような……そう思いながら三人はもう一度中を見る。
「さっきから何をしているんだ?君達は?」
『……』
普通にいた。駒王学園の女子生徒用の制服を着て、普通に椅子に座ってお茶を飲んでる女。それは間違いなく、
『ゼノヴィア(さん)!?』
「やあ」
何でココに!?と三人でゼノヴィアに詰め寄ると、
「うむ。聖剣を取り戻し教会に返還したのは良いんだが、その時に神の不在問いただしたら異端認定されてね。そして破れかぶれで悪魔に転生した」
色々突っ込ませろ……と龍誠と戦兎が思う中、リアスが朱乃を連れてやってきた。
「あら、丁度良かったわ。三人も知ってると思うけど彼女はゼノヴィア。駒はナイトよ」
「いやいやいや!部長!?良いんですか!?貴重な駒を使って」
良いのよ、デュランダル使いは貴重だもの。とリアス的には問題はないらしい。
そんな中、ゼノヴィアは立ち上がるとアーシアの元に来て、
「すまなかった」
そう言って頭を下げた。突然の彼女の行動にアーシアは戸惑う中、
「私は君に失礼なことを言った。幾ら謝罪してもしきれないと思う。望むなら私を殴っても構わない」
そんな彼女の言葉に、アーシアは慌てて首をブンブン横に振ってから、
「確かに教会に異端認定され、追放された時は悲しかったです。でも今は教会にいた頃は見ることも聞くこともなかった大変をできますし、大切な人達と出会えました。お陰で今は毎日が幸せです」
ですからゼノヴィアさんも気にしないでください。とアーシアが言うとゼノヴィアは優しげな笑みを浮かべた。
「ありがとう。そう言ってもらえると助かる」
そんなやり取りを見ながら龍誠が、
「そう言えばイリナは?」
「彼女は私のエクスカリバーも含めた全てを持って帰っていったよ。彼女は運が良かった。真実を知っていたら宗教心が強いからね。心を崩したかもしれない」
そうか……と龍誠は少し安心したような顔をした。色々あってもやはり昔馴染みではあるのだし無事そうならいい。
そんな風にしんみりしていると、
「しかしそれで今度は悪魔か。見事な転落人生だな」
「がはぁ!」
戦兎が要らんことを言ってゼノヴィアは吐血した。それを見た龍誠はスパン!と戦兎を叩きながら、
「お前にはデリカシーってもんがねぇのか!」
「そうですよ戦兎さん!」
龍誠だけじゃない。アーシアにまで言われるが戦兎は知らん顔。そんな皆の様子を見てリアスは小さく笑う。
「ここも賑やかになったわね」
「えぇ。そうですわね」
リアスの言葉に、朱乃も笑みを浮かべて同意した。
「朱乃がいて、祐斗、小猫、龍誠、戦兎、アーシア、そしてゼノヴィア。後はあの子も居れればいいのだけど」
「きっといつか居れるようになれますわ」
朱乃がそう言うと、リアスもそうねと頷く。
漸く戦いも一段落したのだし、平和な時間を過ごしたい。リアスはそう思いながら騒がしい後輩たちを見ていたのだった。
「おいヴァーリ……もうテレビ権を俺に譲れよ」
「ダメだ」
テレビの前に陣取ったヴァーリだが、既に何週目か分からないほど同じテレビ番組を見ていた。
最近は人間の世界のバラエティ番組と言う奴もこっちでは人気が高い。勿論ヴァーリに文句を言う男も見たい奴があるのだがヴァーリが絶対にテレビの前を譲らない。
理由はただ一つ。この番組に出ている……
「みぃいいいいいたぁああああああああん!!!!」
みーたん。それは最近一気に有名になってきたアイドル。ヴァーリは彼女が全国的に有名になる前からのファンであり、全ての関連グッズを【保存用】【使用用】【観賞用】の三つ揃えているほど。更に彼女が出る番組は全て録画&永久保存版としており、間違ってでも消そう物なら命に関わるくらいだ。
今見てる番組だってコカビエルの捕縛に向かわせる際に、嫌だの時間的に無理だのと駄々をこね始めて行かせるのに苦労した。お陰で代償に暫くの間テレビ権を譲渡する羽目になるし……
しかし見た目はそこそこ良いのに、録画したテレビに向かって光る棒やらうちわを振ってる姿と言うのは、正直言ってアレである。
そんな中、
「そう言えばなヴァーリ。リアス・グレモリー達を調べていた時なんだが……」
「静かにしろ。今良いとこなんだよ!」
いや桐生 戦兎を調べた時にみーたんらしき女の子が……と男が言った瞬間、ヴァーリはバビュン!と男の元に走り、手元の写真引ったくった。そしてその写真を見ると、
「これは……みぃいいいたんだぁあああああ!」
図らずも推しのアイドルが写った、しかも見た感じ明らかにプライベート。余りにレアすぎる写真に、ヴァーリはウヒョヒョヒョと気持ち悪い声を漏らす。だが次の瞬間、
「おい。なぜ桐生 戦兎が隣にいる。アレか?嫌がらせか?みーたんだけを写せばいいんだよ!それとも編集でくっつけたのか!?」
「違う違う!これは桐生 戦兎の周りを調べてる時に二人で出掛けてるの見つけて部下が撮ったんだよ」
二人で出掛けてる……?と言いながら、そこそこの長い付き合いになると言うのに、今まで見たことのない絶望に染まりきった表情をヴァーリは浮かべて、
「なんで……二人は一緒なんだ?」
「あ~、付き合ってるとか?」
んなわけあるかぁあああああああああ!とヴァーリはぶちギレながら、男の胸ぐらを掴んで締め上げる。
「良いか!?みーたんは皆のアイドルなんだ!なのにここここっここここ!恋人だとぉ!?そんなわけあるかぁ!」
「だ、だが一緒に歩いてたし結構仲良さげだったって……あとお前マジで苦しい」
男を離し、ヴァーリは全身をプルプル震わせながら体からメラメラと炎を燃え上がらせ叫んだ。
「きりゅうううううういせんとぉおおおおおおお!」
一方その頃、
「っ!」
「どうしたの?」
部室にて祐斗とチェスに興じていた戦兎はビクッと体を震わせながら立ち上がり、
「いやなんか悪寒が……」
そう呟いたのは、まぁ余談である。