バアル
「最近どうだ?」
サイラオーグはある日、とある施設を訪れていた。
そこは、兵藤一誠の洗脳に晒された人々の治療施設であり、更生施設でもある。
そこにはマグダランがおり、サイラオーグは定期的に足を運び、マグダランと話をしていた。
「あぁ、最近は穏やかな日々だよ」
マグダランは、兵藤一誠の亡き後、この施設にて治療を受けている。
今はすっかり落ち着き、穏やかそのものだ。
「しかし兄さん。その服装なんだが……」
「うむ。特注のオーダーメイドだ」
そう言ってサイラオーグの謎のアラビアンチックな服装。それを見たマグダランは、
「最高に活かしてるな!」
「え?」
思わず背後で待機していたフウが、驚きの声を出してしまう。だが二人は続けて、
「そうだろう!この生地と色使い。どこを取っても一級品だ!」
「あぁ、こんな素晴らしいセンスの持ち主がいたとは」
余り似てない兄弟だが、服のセンスは似ていたらしい。
「まさかマグダラン様まで同じセンスだったとは……」
ため息を吐きつつ、思わず空を仰ぐと、
「ん?」
ふと窓から見上げた空。そこから見えた影に、思わず目を見開くと、
「何かがきます!」
『っ!』
サイラオーグとマグダランも反応すると同時に、壁が爆発し、何かが来た。
「何だ!?」
サイラオーグが爆発した方を見ると、そこには、壮年の男が立っている。
「一体アイツは……」
見たことのない男に、サイラオーグは目を細めると、
「お前達も、バアルだな?」
「お前達も?」
言葉の意味に、サイラオーグは困惑した瞬間。男の手から滅びの魔力が放たれる。
《デンジャー!クロコダイル!》
「変身!」
《割れる!食われる!砕け散る!クロコダイルインローグ!オラァ!キャー!》
サイラオーグは素早く変身し、ローグの体で滅びの魔力を受け止める。
「ぐぁ!」
「兄さん!」
マグダランを守るため、避けれなかったサイラオーグに声を掛けるが、サイラオーグは大丈夫だと言って立ち上がった。
「滅びの魔力だと?」
「ほらほら、来いよバアルの末裔」
男に言われ、サイラオーグは飛び掛かる。
「変身!」
《バットエンジン!》
フウも変身し、サイラオーグと共に戦うが、男は二人掛かりでも余裕で受け流し弾き返す。
「なんだコイツは」
「滅びの魔力にあの強さ。バアルのものでしょうか?」
フウの言葉に、男はニヤリと笑い、
「俺はメザード・バアル。しかしアレだ。弱いな、今の悪魔は」
「メザード?」
サイラオーグには、その名に聞き覚えがあった。
「誰だそれは……」
マグダランは聞き覚えがないらしい。だがフウが、
「サイラオーグ様から聞いたことがあります。余りの狂暴さから、封印されたバアルがいるというのを。確かその名前がメザードのはず」
「イエス!流石だ」
メザードは、大仰なポーズでそれを肯定。
「ちょっと暴れたくらいで酷いもんだよなぁ。寄って集って襲ってきやがって」
「手当たり次第に魔力を放ち、民を気分で殺すようなやつは寧ろ殺されなかっただけマシだろう」
厳密に言えば、殺さなかったではなく、殺せなかった、が正しいのだが。
曰く天才にして天災。最強にして最悪。そして呼ばれたのが、歴代最強のバアル。
「だとしても、何故今更」
「さてな。なんか気づいたら目が覚めてよ。そんで、何かピピって来たからこっちにきたんだ。やっぱり同じ血筋だと感じるものがあるんだなぁ」
楽しそうに笑うメザードに、マグダランは問う。
「なら何故兄さん達を襲うんだ!」
「今のバアルがどんなものだか知りたくてな。悪魔ってのは強いのが正義だ。強く、他者を蹂躙できる者。それが一位の悪魔の条件。俺が民を殺すのだって同じさ。弱い悪魔を間引き、強い悪魔だけが生きる世界。だが昔に奴らはそれが理解できないんだよなぁ」
当然だ。最強のバアルと呼ばれるほどの男を基準にすれば、恐らく殆ど生き残れない。
「だと言うのに何だその変な格好は。ほら、お前も滅びの魔力撃ってこい。今の時代の力を見せろ」
「残念だったな。俺は滅びの魔力を持っていない」
「なに?確かにお前からはバアルの血筋を感じるが?」
「あぁ、俺はバアル家の党首だ。だが、魔力は持ち合わせていない!」
そう言いながら、サイラオーグが殴り掛かると、メザードはあっさりと殴られた。
「嘘だろ」
「?」
余りにあっさり殴られ、サイラオーグは首を傾げるが、メザードはずっと嘘だと言い、
「バアルってのは今はそんなに弱くなっちまったのか。あーあ。悲しいなぁ」
「っ!」
メザードはゆっくり立ち上がり、全身から滅びの魔力が噴出。
「なら、滅ぼすか。弱い悪魔に生きる価値はない。ましてや、滅びの魔力も持たないバアルなんて、論外だ」
「兄さん!」
滅びの魔力を推進力にし、メザードは突っ込む。全身に滅びの魔力を纏った体での体当たりは、もはや魔力の塊と言っても過言ではない。
「がっ!」
ローグのアーマーすら削られるが、サイラオーグはギリギリで直撃は回避。
「くそ!」
フウも銃撃で対抗するが、当たる前に纏った滅びの魔力が弾丸を消してしまう。
「なんだ?邪魔をするのか?」
メザードは巨大な滅びの魔力を作り出すと、それを極限にまで圧縮。極小サイズまで小さくすると、
「死ね」
「っ!」
超光速で射出されたそれは、フウの腹部を貫き、穴を開けた。
「フウ!くそ!」
マグダランは窓を叩くと、
「おぉおお!」
窓に体当たりを決めて破壊した。さっきからの戦闘で、ヒビが入っているのは確認しており、これなら何とかなると考えたが、思ったとおりだった。
「フウ!銃を借りるぞ」
ガラスの破片で体を傷つけるが、今は関係ない。とマグダランは銃を取り、手錠を撃つ。これは悪魔の魔力を封じるためのもので、これがなければ本来いけないのだが、そうも言ってられない。
「ハァ!」
手錠を破壊し、滅びの魔力を放つが、メザードには効かない。
「お前もやはりバアルか。それにしても弱い滅びの魔力だが」
「くっ!」
すると、
「マグダラン様」
「え?」
フウがベルトを外し、フルボトルを渡す。
「私やサイラオーグ様も使えるため、持ち歩いておりましたが、これを使え
ば」
「すまない!」
マグダランは受け取ったベルトを装着し、
《ワニ!リモートコントローラー!エボルマッチ!Are you ready?》
「変身!」
《クロコダイコン!フッハッハッハッハッハッハ!》
マグダランも変身し、メザードに飛びかかる。
滅びの魔力を纏わせた拳をぶつけるが、メザードは意にも返さず受け流す。
「そういった道具に頼り、才能の無さを誤魔化すとは。愚の骨頂!悪魔の風上にも置けない!」
「っ!」
メザードの拳が、マグダランを殴り飛ばす。
「マグダラン!」
するとサイラオーグは、ビルドドライバーを装着し、
「変身!」
《大器晩成!プライムローグ!ドリャドリャドリャドリャ!ドリャー!》
プライムローグになり、メザードを背後から掴み、マグダランから引き剥がすと、拳を叩き込み、回し蹴りで吹き飛ばす。
「くっ!」
だが、サイラオーグは思わず手を抑えた。
手はシュウシュウと音を立て、融解しかけている。滅びの魔力の塊を触っているようなものだ。しかも歴代でもトップクラスの力を。プライムローグでも、かなり危険なようだ。
「兄さん」
「大丈夫だ」
マグダランが心配そうに見るが、サイラオーグは安心させるように言う。sかし、
「弱い」
『っ!』
メザードは、ゆったりと立ち上がり、こちらを見てくる。
「滅びの魔力も持たず、才能も持たず。やはり消し去るべき存在だったか」
「サイラオーグ様っ!」
すると、フウが無理矢理立ち上がり、銃から煙を出す。
「むっ!」
メザードは、それを振り払って掻き消すが、その時には既に3人は姿を消していた。
「逃げたか……」
「何をしている!」
すると、遅れて警備の者たちがやってきたのだが、
「弱き悪魔は滅ぶべし」
メザードの滅びの魔力が爆発し、辺りを消し飛ばすのだった。