「それで、未来では一体何があったの?」
屋敷に戻った戦兎たちは、未来の黒歌を座らせる。
「未来の世界は、あの仮面ライダーディザスターって言う男の手によって、目茶苦茶にされてしまったの」
未来の黒歌の言葉に、皆は息を呑む。
「未来の皆は大丈夫なのか?」
「えぇ、でもディザスターの力は圧倒的で、苦戦を強いられているわ」
龍誠の言葉に、未来の黒歌は頷きながらも、辛い現実を伝えてくる。すると戦兎は、
「なぁ、未来の俺は本当に死んだのか?」
「……えぇ」
絞り出すような声に、戦兎は俯く。
「黒兎が俺を憎んでいるのもそれが関係してるのか?」
「憎んでるんじゃないの」
戦兎の言葉を、未来の黒歌は否定する。
「じゃあ何で」
「未来のあなたはね、忙しすぎたの」
その言葉に、皆は首を傾げた。
「超越者にして仮面ライダー。先の大戦で平和を作り出した立役者の英雄にしてヒーロー。冥界だけじゃない。世界中をあなたは飛び回ってた」
未来の黒歌は、窓の外を見ながら言葉を続ける。
「当然家庭に割ける時間は少なくなる。それは私も分かってたし、戦兎が家庭を軽く見てたわけじゃないのも分かってた。忙しい合間を縫って、家族サービスだってしようとしてくれた。でも黒兎はいつも寂しそうだった」
遠くを見ながら、どこか懐かしそうに話す未来の黒歌。
「戦兎もね。子供との関わり方は悩んでいたわ。彼も父親と幼い頃に生き別れ、その後再会しても殆ど関われなかったからね。だから父親っていう立場がわからなくて」
そんな時だった。黒兎が4歳の時、冥界の幼稚園に預けられていた黒兎が、そこで発表会を行われることになり、戦兎が来てほしいと言った。
黒兎は昔から大人しく、余り我が儘を言わない子で、戦兎と黒歌は驚いたものの、
【分かった。必ず行く】
戦兎は黒兎の頭を撫でつつ、約束したのだ。
そして当日。事件が起きた。
突如冥界を襲った未曾有の大事件。多くの人が死に、建物が崩れていく中、黒兎は襲われた。
【助けて、お父さん!】
黒兎は逃げながら叫んだ。恐怖に震え、泣きながら叫んだ。だが、戦兎は現れなかった。
「各地で起きた事件に、私達も対処に追われて、助けに行くのが遅れてね。その中で……」
「俺は死んだって事か?」
未来の黒歌は頷く。
「戦兎も戦いの中で死に、ライダーシステムを奪われたの」
「それがディザスターだと?」
「えぇ、戦兎のライダーシステムを……そして、戦兎の肉体を奪った。それがディザスターよ」
戦兎の肉体を奪った。と言う言葉に、皆は思わず息を呑む。
「俺の肉体を?」
「えぇ、だから私達はアイツを絶対許さない。戦兎の力を……そして仮面ライダーを、寄りにもよって誰かを傷つける為に使うなんてっ!」
拳を震わせ、怒りの表情を浮かべる未来の黒歌。それを見て、黒兎は部屋を出ようとする。
「黒兎。どこに行くの?」
「ちょっと散歩だよ」
「また勝手に!」
「うっせぇな」
と言う黒兎に、戦兎はため息を吐きつつ、
「おい黒兎。あんまり黒歌を困らせるなよ」
間に入ってそういう戦兎だったが、黒兎は睨みつけると、
「無関係なやつは引っ込んでろよ」
「いや……まぁ一応未来の俺の子供なら無関係ではないだろ?」
ちっ、と黒兎は舌打ちをして、
「言っただろ?俺はアンタを父親だなんて思ってない。俺はアンタに頼るつもりはない。どうせ肝心な時に間に合わないんだから引っ込んでろ!」
黒兎は怒鳴って戦兎を突き飛ばすと、ドアを乱暴に開けて出ていった。
「あ!ちょっと黒兎!あーもう!ごめんねお父さん!ちょっと頭冷やさしてくるから!」
戦音は頭を下げてから黒兎を追い、戦兎は頭を掻く。
「俺嫌われてんな」
「ごめんね。でも黒兎は本気で貴方を嫌ってるわけじゃないわ」
未来の黒歌の手を取って立ち上がった戦兎はその言葉に驚くと、
「本気で父親を嫌ってたら、ライダーシステムを使ってないわ」
「あ、あの見たことない奴」
戦兎の言葉に、黒歌は笑うと、
「フューチャーライダーシステムは、戦兎が生前残した黒兎と戦音に残したライダーシステムでね。それを使って、黒兎と戦音はずっとディザスターと戦ってきた。皆の笑顔のためにって。誰が教えたわけでもないのにラブ&ピースの為にって」
未来の黒歌の言葉に、戦兎達は思わず顔を見合わせた。
「ま、誰かと一緒だって言うと機嫌悪くなるから言わないけどね」
そう言って、未来の黒歌は肩を竦めるのだった。
「ちょっと黒兎〜。いつまでへそ曲げてんのよ」
「曲げてねぇよ」
ズカズカと道を歩く黒兎の後ろから、戦音は声を掛ける。
「でもさ、平和でいいよね」
「そうだな」
未来のこの場所は、荒れ果てた荒野となっており、こうして人々が生活していない。
「守らないとね」
「あぁ」
二人がそう言い合うと、
「守れるのか?お前達に」
『っ!』
突然の声に、二人が振り返ると、そこにはディザスターが立っていた。
「お前!」
「いやぁ。他の奴も集まるのを待とうかと思ったんだが、暇だし街をぶっ壊してやろうかと思ったんだが、まさかここにいたとはな」
「させるわけ無いでしょ!」
黒兎と戦音はベルトを装着し、ディザスターを睨みつける。
「ディザスター!」
「ん?」
すると、戦兎達もやってきた。
「良く分かったな」
「あなたの汚い気配はどこにいてもわかるのよ」
未来の黒歌の言葉に、ディザスターは笑う。
「酷い言い方だな」
「そもそも、お前は何者なんだ」
戦兎の言葉に、ディザスターは振り返る。同じ顔で見つめ合うと、
「俺はそうだな。お前達に……仮面ライダーに全てを奪われた者だ」
「俺たちに奪われた?」
戦兎は怪訝な目を向けるが、未来の黒歌は、
「ふざけないで!アンタがロクでもない奴だっただけでしょ!」
「失礼だな。俺は悪魔の未来の為に、頑張っていたんだ。だが仮面ライダーのせいで全てが崩れた」
ディザスターは、そう言いながら指を鳴らすと、空間が歪み、そこからフードを被った者が現れる。
「何だ?」
突然の登場に戦兎達は驚くが、フードの男はフードを外す。そこにあったのは、
「シャルバ!?」
ヴァーリの驚きの声に、戦兎たちも同じく息を呑む。
シャルバ・ベルゼブブ。二年のときの夏休み明けに行われたテオドラの一件の時に現れた魔王の末裔。
「まさかじゃあお前は!」
「そう。俺は未来で桐生戦兎。お前を殺し、力とその体を頂いた。仮面ライダーの力で世界を滅ぼし、破壊しつくすことにしてな」
何でそんなことを、と戦兎が言葉を絞り出すと、
「言っただろう桐生戦兎。俺はお前達仮面ライダーに奪われたもんだ。悪魔の未来を、私が歩むはずだった輝かしい明日を!わからないだろうな。お前たちに敗れ、命からがら逃げたはいいもの、傷が癒えず、やっと動ける頃には全てが終わっていた。兵頭一誠は敗れている
だから、とシャルバが言葉を続け、
「例えどれだけの時間を使ったとしても、俺は復讐することにしたのだよ。冥界だけじゃない。仮面ライダーと言う存在にもな!」
戦兎改め、未来のシャルバは両手を広げて叫ぶ。
「ふざけやがって」
龍誠はそう吐き捨て、
「いつまで経っても今を見れないテメェの身勝手のせいで未来の戦兎は死んだってのかよ!しかもその上戦兎の体も好き勝手しやがって!」
「貴様たちが悪いんだ。貴様たちさえ……仮面ライダーさえいなければ私達が負けるはずはなかった。そうだろう?俺よ」
未来のシャルバの言葉に、今のシャルバは頷く。
「あぁ、だからこそ、俺たちで明日を作るのだろう?」
「そのとおりだ」
未来のシャルバはベルトを付け、ボトルとハザードトリガーを装填。
「今こそ、間違った未来を破壊し、正しい明日を創る時!」
ハザードトリガーのスイッチを2回押し、レバーを回す。
フレームが出現し、未来と今のシャルバを取り囲むと、
『変身』
《暗黒魔境のアクマヤロー!仮面ライダーディザスター!》
先日の姿とは代わり、更に禍々しく、凶悪な見た目とオーラを纏うディザスター。
「未来の俺と過去の俺。だが生きてそこにいるならば、互いとも現在の俺ともなる。だがそれは矛盾。だがその矛盾が一つとなった時、汎ゆる存在の枠から外れた究極の存在となる。これこそが、仮面ライダーディザスターの真の姿だ!」