戦「コカビエルとの激闘、更にぜのヴィアの加入から早くも数日。だが俺達には新たな戦いの火蓋が切って落とされようとしていた!」
龍「もう良いよぉ……のんびりしてぇよぉ……」
戦「まぁ俺らにはそんな平穏はないんだよと言うわけでまだまだ休めない21話スタート!」
巫女と堕天使
「ふわぁああああ」
龍誠は暖かな陽気の中、のんびりと歩いていた。
今日は休日なので部活はなく、戦兎の家に行っても良かったのだが、たまにはちょっと散歩でもと思い、いつもは通らない道を歩いている。
そんな中、
「あら?龍誠君」
「え?」
キョロキョロよそ見しながら歩いていると、後ろから声を掛けられ振り返った。するとそこ居たのは、
「朱乃さん?」
「えぇ、こんにちわ」
我らがオカ研副部長。朱乃だ。彼女は両手に買い物袋を持ち、制服姿しか見たことがなかったが今は私服だ。
なんと言うか人妻感が凄い。何せ朱乃は色っぽいし穏やかと言うか落ち着いてるし一個上とは思えないと常々思っていた。
まあ流石に本人には言わないが……
「あ、持ちますよ」
「え?そんないいですわ」
朱乃はそう言って断るが、龍誠は半ば強引に朱乃の手から買い物袋を取って、お家何処ですか?と聞いてくる。それを見た朱乃は、
「なんで龍誠君がモテるか分かりますわね」
「はい?」
何て龍誠は何をいってるんだ?と首をかしげる中、朱乃はこっちですわと先導してくれるので、それに付いていくのだった。
「ふぅ」
朱乃が住む自宅に荷物を運びいれた龍誠は、現在お茶をごちそうになっていた。
やはり彼女が淹れるお茶は旨い。そう思いながら目の前に座る朱乃を見る。同じくお茶を上品に飲む姿はこっちの方が照れ臭くなる。
しかしまさか朱乃の自宅が神社だったのは驚いた。しかも悪魔でも入れる特別な儀式を行っているという。確かにまあ巫女服がよく似合いそうではあるが。
とまあ余談はここまでにして、前から気になっていたことを聞くなら今かと龍誠は、
「あの、朱乃さん?」
「はい?」
コカビエルとの戦いの時に……と龍誠が聞くと、朱乃はなにを聞きたいのか理解したらしく、
「バラキエルの娘……ですわね?」
「まぁ、はい」
確か前に悪魔になった頃、三大勢力の幹部について教わったのだが、その時にバラキエルという名前を聞いた気がする。すると朱乃は立ち上がり、背中から翼を出した。
彼女の翼を見るのはまだ二度目。一度目は、初めて悪魔と言うのを知った時。だがその時にはなかった特徴がある。それは左右一対の翼だが、片方は悪魔の翼。だがもう一方が忘れもしない、レイナーレやコカビエルと同じ黒い翼。
「昔、傷つき行き倒れた堕天使が居ました。それを偶然見つけたとある女性はその者を助け、後に子を産んだ。でも堕天使との婚姻をよく思わない者もいて……その女性は殺されました」
鈍い龍誠でも、それがバラキエルであり、母であり、朱乃自身なのはすぐに理解できた。そして、
「私はこの血が……そしてこの黒い翼が嫌いだった。だから悪魔になったの。まぁ結局魔力で無理矢理見た目を変化させなければこんな中途半端な見た目になってしまうおぞましい存在になってしまいましたが」
そんな風に自虐的に朱乃は言いながら、龍誠を見る。
「きっと龍誠君は堕天使が嫌いよね。戦兎君も、アーシアちゃんもきっと」
「朱乃さん……」
そんなことない。そう言うが朱乃は横に顔を振って否定しながら涙を浮かべた。
「ごめんなさい。ずっと黙ってて……嫌われたくなくて、堕天使とは関係ないって思いたかった。龍誠君を殺して、アーシアちゃんも殺そうとした。この間の一件だって皆に危害を加えようとして……堕天使に良い感情なんて持てるはずがない」
下を俯いて言葉を吐き出す朱乃に、龍誠は立ち上がると朱乃の隣に行き、肩を掴むと自分の方を向かせ、
「あのですね?俺はまだ実質堕天使には二人にしか会ってません。レイナーレとコカビエルです。いやまあレイナーレの時に他にも居ましたけど全然顔も覚えてないんで割愛させてもらいますけど……正直それしか知らないんですよ。それで堕天使嫌ってたら俺今頃人間嫌いですよ」
「え?」
昔から親がいなかったので、嫌がらせも受けた。だがそれ以上に会う人たちからの同情が一番辛かった。辛いというか惨めになったという方が正しいか。色んな人達がいたが、基本的に皆は自分を可哀想な奴と言う目で見てくる。哀れで可哀想で……それが一番堪えた。戦兎くらいなものだ。なんの遠慮も無かったのは。だからこそ付き合いやすかったんだと思うが。
だからきっと戦兎がいなかったら自分はどこかで道を踏み外した。俺をそんな憐れんだ目で見るなってな。それに、
「それに俺、朱乃さんは好きですよ?いつもニコニコ笑って部長を補佐したり美味しいお茶を淹れてくれる人だ。あんたが何者だろうと関係ない。堕天使の血を引いてようが俺には関係ないです。勿論、戦兎やアーシアだって同じですよ?」
「でも……」
そう言って朱乃はまた顔を逸らそうとするが、龍誠はグッと肩を掴む力を込めて、低い声を出した。
「俺の言うことが、信じられませんか?」
「い、いえ……」
なら自分を卑下するのはやめてください。そう龍誠が言うと、朱乃は頷く。そうまでして龍誠は我に帰った。
(やっべ!先輩で、しかも女性に俺は何やってんだ!)
微妙な空気が流れる中、龍誠はアワアワ慌てるが、朱乃は顔を上げると笑みを浮かべて、
「ありがとう。龍誠君」
「あ、はい……」
とりあえず怒ってない?大丈夫?と龍誠はホッとする。そんな様子を見た朱乃は、
「リアスの時も思いましたけど龍誠君は良い男ですわね」
「そ、そうですかね?」
「えぇ、リアスが羨ましかった。だって困ったときに助けてくれる人が現れたから……」
朱乃の言葉に、若干引っ掛かるものの龍誠はニッコリ笑みを浮かべ、
「じゃあ俺は朱乃さんのピンチにも駆けつけますよ」
「本当に?」
そりゃもう地球の裏側にいても行きます!と胸を叩きながら、龍誠は言う。戦兎がいたら、こういう事するから大変な目に遭うんでしょうが、といわれそうな台詞を言いながら、
「なので安心してください」
そう龍誠は締め括ると、丁度壁にあった時計からポーンと金が鳴る。時間的にはそろそろ戦兎の家に向かわないとご飯を食べ損ねそうだ。
「じゃ、じゃあそろそろ俺お暇しますね」
「え?あ、えぇ。じゃあまた部活で会いましょう」
龍誠が立ち上がると、朱乃も立ち上がりそのまま玄関で見送ってくれる。
「それでは失礼します」
「はい」
そう言い残し龍誠が外に出ると、朱乃はソッと自分の頬に触れる。
熱い。熱を纏い、胸が力強く早鐘を打っていた。
まさか?と自分に問いかける。男性には興味がない。それどころか、男は苦手だと友人であり主であるリアスに言ったことがある。
確かに同じオカルト研究部の仲間ということで敷居は低かった。それに優しく、それでいてちょっと強引な言い聞かせは今まで出会った男には無かったものだ。
勿論。これが恋だとまだ断定はしない。ただそれでも、万丈 龍誠が特別な男の子に変わったのは、間違いなかった。
「やべやべ!もう暗くなってきた」
朱乃宅から龍誠は走り続けていた。流石に長居しすぎたな、そう思いながら走り続ける。 その時、
「なんだ女を待たせてるのか?」
「ん?」
突然ベンチに座った、ちょいワル風のダンディな男に話し掛けられ、龍誠は首を傾げて足を止めた。
「いやまあ、友達を待たせてはいますが」
「お前の友達って言うとビルド……いや桐生 戦兎か。なぁ万丈 龍誠。いや、クローズと呼んだ方がいいか?」
「っ!」
突然の言葉に龍誠は後退り、咄嗟にビルドドライバーを出して着ける。
「お前なにもんだ」
「おいおい。別に喧嘩しに来た訳じゃねぇ。確かにお前らを直接見てみたかったが、この辺りを彷徨いてたのはちょっと個人的な用事だ」
そう言って男は、ニヤリと笑いつつ両手を上げて、降参降参と合図した。
「俺はアザゼル。堕天使の総督をやってるもんだ。宜しくな」