ハイスクールD×D Be The One   作:ユウジン

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前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦「サーゼクス様の来訪から暫く。俺達はまた平穏を満喫していた」
龍「しかしこっちではまた暑くなってきたな」
戦「現実では冬だけどなぁ。悪魔でも暑い寒いは辛い」
龍「だよなぁ……」
戦「とまあそんな感じの23話スタート!」


夏のプール

蝉が鳴き、太陽が照りつける。

 

最早夏は目の前。と言うか最早夏だ。暑すぎる。こういう日はエアコンの効いた部屋でゆっくりしたい。悪魔になっても暑いものは暑いのだ。

 

だが今日は良いだろう。何せ今日は……

 

「さぁ!プール貸し切りよ!」

『イェーイ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、何故駒王学園のプール貸し切りなのかと言うと、本来は来週からプールの授業なのだが、その前に掃除しなければならない。冬を越したプールの汚れはヤバイからな。

 

なのでオカルト研究部が良ければ掃除を代償にプールの貸し切りを生徒会が許してくれたのだ。

 

因みに、

 

「流石にビルドの能力に掃除が出来るのは無いわよねぇ……」

「ありますよ?」

『あるの!?』

 

と言うやり取りが行われ掃除機フルボトルを用いたお陰で三十分も掛からず終わったのはまあ余談。

 

さてプールと言ったら水着である。野郎の水着なんかは別に海パンで良いのだ。問題は女子である。しかもスタイルも美貌も学園でトップクラスのリアスと朱乃、それに次ぐゼノヴィア。そして美貌なら負けていないアーシアと小猫がうちの部活にはいるのだ。それだけでも楽しみと言うもの。そう思いながらいると、

 

「お待たせ」

 

そう言って既に着替えて待っていた男性陣の元にリアスたちがやって来た。

 

リアスと朱乃は露出の激し目なビキニスタイル。アーシアと小猫はご丁寧に平仮名で胸に名前を書いてあるスク水だ。ゼノヴィアがいないが……まあすぐに来るだろう。

 

しかしこうしてみてても壮観だ。動く度にバルンバルン揺れる胸も凄い。戦兎も少し恥ずかしそうにそっぽ向いているが、バレバレである。

 

そんな風に龍誠が見ていると戦兎に脇腹に肘を入れられた。酷い友人である。

 

そんな中始まったオカルト研究部の貸し切りプール開きであるが、そこで判明したことがある。それはアーシアと小猫はカナヅチであると言うことだ。

 

アーシアが泳げないのは驚かないが、小猫が泳げないのは意外だ。運動神経は良さそうだし。そう思いながら龍誠はアーシアに泳ぎを教え、小猫はプールサイドで座っていた。龍誠は、小猫ちゃんにもと言ってくれたが、そんな野暮なことはしない。

 

空気は読めるのでお断りしたのだが、プール入れないのは自分だけなので少し手持ち無沙汰だ。リアスからも少し位入ってみたらと言われたが、やはり怖い。そこに水中から顔を出したのは戦兎だ。

 

「しかしお前がカナヅチだったとはな」

「嫌味言いに来たんですか?」

 

ムッとした表情で戦兎に聞く小猫。腹が立つ事にこの男は泳げる。クロール、背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライ、古式泳法とホントに性格を除けば完璧超人である。

 

「別に難しいもんじゃないぜ?そもそも泳ぐって言う行為は物理学の応用さ。姿勢や動きなんか全部計算し、効率的にやれば良い。それに基本的に人間の体は水には浮くように出来てるしな。余程変な動きしなきゃ平気だよ。まぁ……」

 

部長や姫島先輩よりは浮きにくそうだけど。要らんことまで言った戦兎に小猫はパンチを飛ばすが、スィ~っとプールの中央の方に流れていかれてしまい、小猫は歯軋りをするしかない。

 

そんな光景に、戦兎はケラケラ笑いながら、

 

「ほら、来いよ」

「はい?」

 

手を伸ばしながらこっちに戻ってきたので、小猫はポカンと見ている。それに対して戦兎は、

 

「この俺独自の理論でお前を泳げるようにしてやるよ。そうだな……お前の身体能力を持ってすればすぐに泳げるようになるさ」

 

フフン、と偉そうに言う戦兎だが、取り敢えず気を使ってくれたのは間違いないらしい。ならば、

「ではお言葉に甘えて……」

 

と小猫は言って戦兎の手を取る。すると、

 

「ですが人を貧乳呼ばわりしたのは許しません」

「誰も言ってねぇイデデデデデデデ!」

 

ギュウウウウウ!っと小猫は黙ってルークの握力で戦兎の手を握り、戦兎の手は悲鳴を上げた。

 

その際、悲鳴をあげた拍子に小猫をプールに引きずり込んでしまった戦兎は、心の準備もなくプールに入れられてパニックになった小猫に、更に手を強く握られて手が出してはいけない音を出して、小猫の特訓の前にアーシアに手を治して貰う羽目になったのだが、自業自得と言うやつである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、偉い目に遭ったぜ」

「戦兎先輩が余計なことを言うからです。でもまぁ……ありがとうございました」

 

結論から言うと、戦兎の指導は成功だった。最初は水に慣れるところから始めて、徐々に浮かびながらプールの中を動く感じで行われた特訓により小猫は泳げるようになった。流石にまだぎこちないが、ゆっくりと20m位は泳げるようになった。さっきまで全く泳げなかった小猫にとって大きな進歩だ。

 

後は慣れれば25m泳ぎ切れるようになるだろう。なので戦兎に文句を言いながらも小猫は感謝を伝えた。

 

「いやいや、塔城も呑み込みが早かったからな」

 

そう言いながら戦兎はさっきからずっと泳ぎ続けている祐斗を見る。そこから視線を外すと、同じくプールサイドで休憩中の龍誠とアーシアが見える。いや、アーシアは寝ているようだ。

 

「でも結構戦兎先輩は面倒見は良いですよね」

「あ?俺ほど優しい男もいねぇだろ?」

 

いやそれはないですね。と小猫は返してしまう。まぁ確かに、クラスで聞いていた様に変人ではあるらしい。だがそれでも、基本的に面倒見は良いし、正義の味方に憧れてるだけあってこっちが困ってるときは、手を貸してくれる。

 

こうして見ても顔立ちは整ってるし性格さえ直せばモテそうなのだが……と思ってしまう。本当に残念な先輩だ。

 

「どうかした?」

「いえ、ホントに残念な人だと」

 

どういう意味じゃい!と戦兎が叫ぶ中、龍誠はアーシアにタオルを掛けてやる。幾ら暑いとは言え日陰になにも無しじゃあれだ。そう思っていると、キーキー鳴きながら小さなコウモリがこちらに飛んできた。

 

悪魔は基本的に使い魔を持つ。そして様々な雑用をさせるらしいのだが、戦兎や龍誠、アーシアにゼノヴィアにはいない。まぁ最近加入したゼノヴィアはともかく、他の三人に居ないのは何故かと思われそうだが、それは単純。ここ最近事件に巻き込まれ過ぎて暇がないのだ。事件を解決してもその反動でのんびりしすぎしまい、すっかりズレ込んでしまっている。

 

まあそんなことは良い。その彼女の使い魔は、足で掴んでいた瓶を龍誠に渡してきた。

 

何だ?と思いつつリアスを見ると、手招きをしており、それに従って龍誠はリアスの元に行く。

 

「どうしたんですか?」

「悪魔も日光は天敵なの。だから日焼け止めクリーム塗って欲しくて」

「っ!」

 

ガツン!と龍誠はカナヅチで殴られたような衝撃が走った。

 

男の自分が女性に日焼け止めクリームを塗る。これは様々な本、ゲームなどでイベントCG付きで起こるご褒美イベントでよく見られるあれなのだろうか?

 

良いのだろうか?勿論リアスの肌は柔らかそうで真っ白だ。この肌を守るために日焼け止めクリームは必須だろう。だがそれを自分が塗って良いのか?触って良いのか?

 

そう龍誠が思っている間に、リアスはビキニのトップスを外してしまうと、ブルンと豊満な胸を揺らして、そのままうつ伏せになる。

 

「じゃあ背中からお願いね」

「あ、はい……」

 

もうやることは決定なのねと思いつつ、龍誠はオイルを手に取り馴染ませると、ゆっくりとリアスの背中に塗っていった。

 

「んん!」

「っ!」

 

不味い。色んな物が崩れていきそうだ。だがそれでも龍誠は耐える。必死に崩れそうな理性を抑え、息を整えていく。とにかく今は落ち着かないとダメだ。別に背中にオイルを塗るだけなのだから、なにもやましくなんてないんだから。

 

そうして背中に塗り終えると、リアスはうつ伏せのままこちらを見る。

 

「ふふ、何か龍誠に征服されちゃった気分だわ」

「いっ!?」

 

なんとも官能的な言い方に、龍誠は鼻から鮮血が出そうな気分だ。

 

悪魔稼業にも、所謂サキュバス的なのを専門とするものもいるらしい。勿論リアス達は違うが、龍誠を混乱させるには十分だった。

 

だがそれだけでは終わらない。リアスは体を起こし、胸を見せつけながら龍誠に、

 

「胸にも……塗る?」

「ふぁ!?」

 

胸ですと!?と龍誠は口をパクパクさせながら聞き直す。聞き間違えとかじゃない?

 

そう思いつつリアスを見るが、冗談ではないらしい。しかも、

 

「確かにここじゃ恥ずかしいわね。なら……二人っきりに慣れる場所で」

「二人きり」

 

ゴクリと、龍誠は思わず唾を飲む。二人きりで胸にオイルを塗る。正直それをやられたら我慢できる気がしない。確実に襲い掛かる。アレ的な意味で。

 

そんな時、

 

「あら、リアスのが終わったなら次は私にして貰おうかしら」

「いっ!?」

 

背中に感じる突然の圧倒的なボリュームの柔らかさ。更に背中に感じる柔らかな突起。待て待てこれって!?と龍誠が振り替えると、そこには悪戯っぽそうな笑みを浮かべた朱乃がいた。

 

「あ、朱乃さん!?」

「さん付けなんて寂しいわ。朱乃って呼んでいいのよ」

「うひぃ!」

 

朱乃はSっ気のある笑みを浮かべながら、龍誠の耳を舐める。ゾクゾクと震える中、龍誠の顔の真横を、

 

「ひぇ!」

 

滅びの魔力で形成された球体が高速で通り抜け、背後で爆発した。

 

「あらあら。怖いお姉さまがいたわね」

「朱乃?どういうつもりかしら?」

 

こういうつもりよ?と朱乃は更に龍誠を抱き締め、リアスはコメカミがビクンビクンと躍動させる。

 

「朱乃?貴女、私が主だと言う事を忘れてないかしら?」

「あらあら。男の子の取り合いに主であることを持ち出すなんて少々大人げないわねリアス」

 

朱乃はそう言いながらもバチバチと放電させ、リアスと対峙した。そして!

 

「大体貴女は男が嫌いだったはずでしょ!」

「貴女だって男は皆同じに見えるっていっていたわよ!」

 

次の瞬間雷と滅びの魔力がぶつかり合い爆発。咄嗟に龍誠は転がりながらプールから逃げ出す。

 

「なんなんだよもぉおおおおお!」

 

最近こんなんばっかだ。そう思いながら龍誠は、プールから出てすぐの物置に飛び込んだ。遠くでドッカンバッタン聞こえるが、聞こえない聞こえないと言い聞かせて現実逃避に入る。そこへ、

 

「む?万丈 龍誠か?」

「いぃ!?って何だ。ゼノヴィアかよ」

 

まさか二人が追っかけてきたのかと、龍誠は体を強張らせたが違ったようで、水着を着たゼノヴィアが立っていた。そう言えばさっきからゼノヴィアの姿がなかったなと思いつつ、

 

「つうか随分遅かったな。どうしたんだ?」

「あぁ、水着と言うのは初めて着たのでね。着るのに手間取ってしまった。似合うかな?」

 

そう言ってゼノヴィアはクルリとその場を回って見せるが、リアスや朱乃ほどはないがスタイルも良いし、鍛えているらしいのでウェストも引き締まり、キュッと上がった良い尻をしている。

 

よく似合ってるぞ。と言ってやりつつ龍誠は苦笑いを浮かべ、

 

「ただ今はプールに行かない方がいい。部長と朱乃さんが喧嘩始めちまったからさ」

 

ドォン。と音が響く中そう言うと、ゼノヴィアはならば今がチャンスか、と言った。

 

「チャンス?」

「あぁ、万丈 龍誠。君に頼みがあってね」

 

別に龍誠で良いぞ、そう龍誠が伝える。色々あったが今は仲間な訳だし。そう言われたゼノヴィアは、なら龍誠と言い直し、次の瞬間耳を疑う言葉を発っする。

 

「私と子作りしよう」

「……は?」

 

実際は十秒くらい固まった。何をいっとるんだこいつはと。その反応にゼノヴィアは首をかしげ、聞こえなかったのかと思いもう一度、

 

「私と子供を作ろう。龍誠」

「……はぁ!?」

 

何がどうなってそうなった!?と流石の龍誠も困惑する。それを見て、そう言えば何も説明してなかったなとゼノヴィアは思い直し、説明してくれた。

 

「教会にいたころの私はただ神に仕えられればそれで良いと思っていた。だが今は悪魔だ。そして思ったんだよ。神が居なくなった今、私には何もやることがないとね」

「そ、そうなのか?」

 

色々探せばあると思うぞ?と龍誠が言うとゼノヴィアは、

 

「あぁ、ただ教会に居た頃は何も望まなかった。その性か全く目標が思い付かないんだ。そう考えると私は腕っぷし以外何も持っていなかったからね」

「じゃ、じゃあその腕で部長に貢献とか……」

 

それでは教会の時と変わらない。そうゼノヴィアは言う。

 

「それに悪魔は長生きだ。目的や目標は沢山あった方がいい。後実を言うと女性としての幸せと言うものに憧れがあるんだ」

 

子供を産み育てる。それもまた女性としての幸せだろう?と言うゼノヴィアに龍誠は思わず言葉を詰まらせる。

 

暴論に聞こえるが、一つの真理のようにも感じてしまう。ある種の才能なのかもしれないが、

 

「じゃあなんで俺と何だ?うちの部活には男が後二人いるじゃねぇか」

「うむ。やはり子供には強く、元気であってほしい。その点君なら元気で強い子供を孕ませてくれそうだ」

 

言い方があるだろ……と龍誠はジトーと言う眼で見るが、ゼノヴィアは気にせず、

 

「それに君が一番経験豊富そうで性欲もありそうだ。木場はその辺が淡白そうだし桐生は……うん」

「いや俺も経験ねぇけどな?」

 

龍誠の言葉にゼノヴィアは眼を見開く。何故驚くんだと聞くと、

 

「いや……アレほどの美女達に言い寄られてなにもしていないとは……まさかお前もそこまでなのか?」

「いや正直ギリギリだけど……ってなに言わせんだ!」

 

なら仕方ない。龍誠が怒るのを他所に、ゼノヴィアは言った。

 

「ここまで言ってしまったならお互い初めてでも良しとしよう」

「なに言ってんだって言うか脱ぐなバカ!」

 

元々来ている量が少ない水着だ。あっという間に裸になってしまうとゼノヴィアは龍誠に詰め寄る。

 

「日本には据え膳食わねば男の恥と言う言葉もある!これでも鍛えてるし体には自信があるんだ!覚悟を決めろ龍誠!」

「ちぃ!」

 

飛びかかってきたゼノヴィアを龍誠は押し止めた。

 

「落ち着け!戦兎はああ見えてムッツリだからそれでも……」

 

あいつもいい加減春が来たって良い筈だ。そう思いながら言うと、ゼノヴィアは少し悩んでから、

 

「……なんだ」

「え?」

「桐生は苦手なんだ!お前に言ったのはお前が一番話しやすかったのもあるんだ!」

 

確かにこいつら今まで部室でも話してる姿を見たことがない。出会いといい、その後も決して良好とは言えなかったし仕方無いのだろうが……

 

「悪魔は出生率が低いらしいがお互い転生悪魔だしそこまでじゃないだろう」

「待て待て待て!俺はまだ父親になる覚悟なんてないぞ!」

「大丈夫だ!私が基本的に育てる。だが父親の愛情を欲したときには遊んであげてほしい」

 

そこまで考えてるのかよ、と龍誠は背筋に冷たい汗が流れる。取り敢えずここから逃げねば……

 

「何してるのかしら?」

「え?」

 

背中から掛けられた声に龍誠は全身を強張らせ、ゼノヴィアはポカンとしながら、

 

「ああ、部長か」

「部長!?」

 

龍誠が振り替えると、正確にはリアスだけではなく、朱乃やアーシアまで立っていた。

 

「もう一度聞くわね?何してるのかしら?」

「いやそのぉ……」

 

龍誠は思わず口ごもる。いったいどう説明すれば良いんだ?するとゼノヴィアは、

 

「心配しないでくれ部長。ただ私と龍誠は子作りしようとしてただけだ」

『……はい?』

 

リアス、朱乃、アーシアの三人は呆然とした表情を浮かべ、龍誠を見る。

 

「そう。そういうこと」

「ち、違うんです誤解なんです!」

 

そう言って龍誠は思わず後ずさる。なにせリアスがおっかない。だがどちらかと言えば龍誠は襲われていたのだが、何を言っても言い訳にしかならなさそうだ。自分でもそう思う。

 

「まあ良いわ。少しお話ししましょう」

「お、おたすけぇええええ!」

 

パン!と龍誠は咄嗟に逃げ出そうとするが、リアスに捕まりズリズリと引っ張られてしまう。

 

「あらあら」

「私だって……龍誠さんが望むなら」

 

朱乃笑ってるけど眼が笑ってないし、アーシアは悲しそうな顔をしていた。

 

「ふむ、これは中々ライバルも多そうだね」

 

なに言ってんだお前!と龍誠は叫ぶが、リアスに睨まれて大人しくする。もうダメだ、おしまいだと思いながら外に出たとき、

 

「なんだ。随分賑やかだな」

『っ!?』

 

外に出たとき、空からシュタっと着地した姿と声に、プールサイドでのんびりしていた戦兎や小猫、泳ぐのを終えて上がってきていた祐斗も含め、注目していた。

 

「てめぇはヴァーリ!」

 

戦兎は咄嗟にプールサイドに置いてあった鞄からドライバーとフルボトルを取り出す。

 

「待て、俺は戦いに来たんじゃない。だが桐生 戦兎!お前に聞かなければならないことがある!」

 

突如襲来したヴァーリは、戦兎に向かって叫び、なにをだ?と戦兎は首を傾げた。そして、

 

「おまえ……みーたんとはどういう関係だ!」

『っ!』

 

ズコッと見ていた全員がずっこける。な、何故その話を?となっていると、

 

「ま、まさかカカカカカカカカ彼氏何て言う訳じゃないだろうな!」

「あぁ~」

 

妹だ……と言うのは簡単だ。だが、アレはガチのファンだ。アレに対して身内バレは危険なのだ。身内バレからの身内がストーカー被害、そして本人の住所がバレるという一連の流れは良く聞く話だ。なので、

 

「何でみーたんの話を?」

「お前と一緒に歩いてる写真を見つけた!」

 

何時のだろう?結構何だかんだで一緒に買い物に出てるからなと思いつつ、

 

「多分それはうちの妹で、他人の空似だ。良く間違われる。俺もツナ義ーズの佐藤 太郎に間違われるしな」

 

そう戦兎が言うと、ヴァーリは本当か?と聞いてくる。なので、本当だと言ってやると、ヴァーリは心底安心した表情をした。

 

「そうか、安心した。ならばもう用はない」

「いや俺にはあるぞ」

 

戦兎は立ち上がり、ヴァーリを見据える。

 

「スクラッシュドライバーをどこで手にいれた?」

「なに?」

 

戦兎の言葉にヴァーリは片眉を上げ、戦兎を見た。

 

「それはまだ研究段階だった。とても完成させられない!なのに何故お前が持っている!」

「さぁな。俺はただ受け取っただけだ。力が手に入ると言われてな。だが誰だかは知らない。見たこともないし、どういうわけだか思い出そうとしても顔に靄が掛かったようになってしまってな」

 

成程。そいつがスクラッシュドライバーを完成させたやつだと考えて良さそうだ。なら次は、

 

「じゃあスクラッシュドライバーを渡せ、それは危険な代物だ。お前が何者であっても使って良いもんじゃない」

「無理だな。俺にはこの力が必要なんだ。それと危険なのは百も承知している」

 

そう言いながらヴァーリはスクラッシュドライバーを出すと腰に装着する。

 

「まあ、力付くで奪うというなら相手になってやるが?」

「上等だ」

 

戦兎はヴァーリの挑発に乗る形で、ビルドドライバーを装着した。それを見た龍誠もリアスの手から離れ、プールサイドに置いてあったビルドドライバーを付ける。

 

「戦兎。手を貸すぜ!」

 

コカビエルとの僅かな戦いでも、こいつの強さは底が知れなかった。それに対してヴァーリは不満を言うどころか、

 

「良いじゃないか。最高の祭りになりそうだ」

 

ヴァーリは笑みを浮かべ、ロボットスクラッシュゼリーを出し、戦兎はラビットフルボトルと、タンクフルボトルを。龍誠はドラゴンフルボトルとクローズドラゴンを持つ。

 

「皆は水着だから下がって」

 

戦兎がそういうのを合図に三人はベルトにそれぞれアイテムを挿した。

 

《ラビット!タンク!ベストマッチ!》

《ウェイクアップ!クローズドラゴン!》

《ロボットゼリー!》

 

三人はそれぞれレバーを操作し、ポーズを構える。そして!

 

『変身!』

《鋼のムーンサルト!ラビット!タンク!イエーイ!》

《Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!》

《潰れる!流れる!溢れ出る!ロボットイングリス!ブラァ!》

 

それぞれ変身を終えると、まず戦兎が走り出した。

 

「おぉ!」

「っ!」

 

ヴァーリは戦兎の拳を、片手で受け止めると、ツインブレイカーのアタックモードで殴る。

 

「ぐぁ!」

「おらおらどうしたぁ!」

 

何度も何度も殴り、戦兎が後ろに後ずさった所に蹴りをかまして吹き飛ばした。そこに、

 

「おぉおおおおお!」

 

龍誠が割って入り、ヴァーリの顔面を殴り飛ばす。

 

「くっ!」

「まだまだ!」

 

怯んだヴァーリに、龍誠は追撃を掛けるが、ヴァーリは素早く体勢を戻すとツインブレイカーを、ビームモードに変えながら龍誠の拳を避けて、銃口を腹部に押し付けて撃つ。

 

「がはっ!」

「まだ終わりじゃねぇぞ!」

《シングル!シングルフィニッシュ!》

 

ツインブレイカーにロボットフルボトルを挿したヴァーリは、銃口を龍誠に向けて黄色いエネルギー弾を連続で発射。それにより龍誠は後方に吹っ飛び、そのまま地面に転がる。

 

「くそ!」

《Ready Go!》

 

戦兎は起き上がると、素早くレバーを回して空中にジャンプ。そこに、

 

《Ready Go!》

「おぉおおおお!」

 

負けじと龍誠も起き上がり、レバーを回して飛び上がると、

 

《ボルテックフィニッシュ!》

《ドラゴニックフィニッシュ!》

 

二人が同時に放った必殺の蹴りは、ヴァーリに向けて真っ直ぐ飛んで行く。しかし、

 

「ならこっちもだ」

《スクラップフィニッシュ!》

 

ヴァーリはベルトのレバーを下ろすと同時に、右足にエネルギーが集中する。そこからヴァーリも飛び上がり、肩や背中からゼリー上の物体を撒き散らして推進力を得ながら、二人の蹴りとぶつけ合わせると、凄まじい衝撃波と爆音が辺りに飛んで行く。

 

そしてそれが収まると、

 

「がはっ!」

「げほっ!」

 

ザボン!とプールの中に落下した二人は、変身も強制解除させられてしまっている。

 

「二人とも!」

 

プールから顔を出すのも一苦労な状態になっていた二人を、祐斗が助けている中、ヴァーリは消しゴムフルボトルを出す。

 

「良いことを教えてやる。この世界にはもっと強いやつがいる。おまえ達は今のままでは……まあコカビエルと渡り合ったり倒したのを考えれば千桁は余裕で切れる筈だ。だがこれからも戦い続けると言うのなら、もっと強くなることだな」

《ディスチャージボトル!ツブレナーイ!ディスチャージクラッシュ!》

 

ヴァーリはそう言い残し、姿を消してしまった。

 

「なんつう強さだよ」

「あれがスクラッシュドライバーの強さか……」

 

プールから引き上げてもらい、アーシアから治療を受けながら、龍誠と戦兎は呟く。

 

龍誠には昇格(プロモーション)があるし、戦兎にまだスパークリングもある。

 

だが結局今の状態でも、ヴァーリは全く本気を出していなかった。

 

世界は広い。コカビエルを倒せて安心していたが、まだまだ落ち着けなさそうだ。

 

そう思いながら、戦兎は頭をガシガシと掻くのだった。


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