ハイスクールD×D Be The One   作:ユウジン

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前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦「ギャスパーとの出会い、そして特訓が始まった俺たちだが……」
龍「しかし筋トレも大事だと思うんだけどなぁ……」
戦「人には向き不向きってのがあるでしょうが。皆が皆お前みたく筋肉バカにはならないんだよ」
龍「そんな誉めるなって」
戦「誉めてねぇよ!という訳でそんな感じの26話スタート!」


守るために

ギャスパーの特訓開始から数日。この数日も連日修行は行われた。そのお陰か、ギャスパーはグレモリー眷属の新顔にもある程度は慣れたらしく、何とか日常会話をこなせる程度には成長。特に戦兎にはなついており、まだ教室には行けないので戦兎が部室にやって来ると、何と自分の方からやって来て話をしている。流石にこれにはリアスも驚いていた。

 

戦兎も何だかんだ言いつつも面倒を見ており、一緒にゲームをやったりしている。たまにハッとなってブルブルと首を横に振って正気に戻ったみたいな顔をしているが……

 

因みに龍誠曰く、

 

「戦兎は基本的にお兄ちゃんだから、保護欲が駆られる系の容姿や性格に弱いんだよ」

 

とカップラーメン(プロテイン入り)を啜りながら祐斗に話していた。

 

確かにそういう意味ではギャスパーは、守ってあげたくなる感じだ。アーシアもそれに該当しそうだが、龍誠がブレーキなのだろう。ただ戦兎が数少ない名前呼びなのは龍誠を除くと、アーシアとギャスパーだけだし、戦兎はたまにアーシアに適当なホラ話をして、素直に信じる彼女をからかってることがある。

 

そう考えればアーシアの事も気に入ってはいるらしい。

 

さて、いつまでもこの話をしているわけにもいかないので進めよう。

 

遂に悪魔、天使に堕天使の三つの種族の長が集まって行われる会談の日になった。

 

その会談の議題には、コカビエルの一件もあるためか、リアスを筆頭としたグレモリー眷属に、ソーナも同席することになっているのだが、

 

「み、皆さん気を付けてください」

 

ギャスパーは暴走の危険性も考えてお留守番だ。そんなギャスパーに戦兎は、

 

「ほらギャスパー。お菓子とゲームは置いとくから好きに飲み食いしながら遊んでろ」

 

そう言って大量のお菓子と、ギャスパーの好みのゲームを数種類見繕ってやり、渡してやるとギャスパーは嬉しそうに顔を綻ばせる。そんな様子を見ていた面々は、

 

「最近戦兎君ってばギャスパー君に際限なく甘くなってるよね」

「いやあいつなんだかんだ言いつつ美空の我が儘もできる範囲ならなんでも叶えてるし、元から子供とかできたら甘やかして奥さんに怒られるタイプだぞ?」

 

やれやれと祐斗と龍誠は肩を竦めながら話し、他の皆も成程と苦笑いをした。そこに戦兎が帰ってくると、

 

「どうかしましたか?」

「ううん。なんでもないわ。取り敢えずいきましょうか」

 

リアスは慌てて何でもないと答えつつ、出口に向かって歩き出す。

 

ここから先はシリアスモードだ。間違いなく歴史に残るであろう三大勢力の会談。

 

その場にいると言うことの意味を分からない皆ではない。そう思いながら、リアス達は気を引き締めつつ会談の為に用意した部屋に向かって歩き出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼します」

 

リアスが先導して部屋に入ると、既に中にはサーゼクスとグレイフィア、セラフォルーにソーナ、この間会ったアザゼルとヴァーリがいて、光る輪に白い羽根と言う特徴から、恐らく天使だろう。

 

こうして見ても錚々たるメンバーだ。

 

それにヴァーリはアザゼルと一緒にいるってところを見るとアイツも堕天使だったのだろうか?と言うか、普通にいたから他のメンバーもこの張りつめた空気の中、声こそ出さなかったが、驚愕していた。

 

とまあそんな一幕があったものの、リアス達の到着と同時に話し合いが開始される。因みにさっき言った天使の人は、ミカエルと言う人らしい。

 

まず、この場にいるのは全員が神の不在を知っているもの達と言うが前提として進められる。と言う確認の後、それぞれの勢力の長達が話を進め、それが終わると今度はリアス達に、コカビエルの件について質問が来た。

 

それに対してまずはリアスが、そしてソーナがしていくと、ミカエルはアザゼルを見る。

 

「今の説明に異論はありますか?」

「ねえよ。うちのコカビエルがここを襲った……そこは事実だ。だが、今やアイツはうちのヴァーリが連れてきて地獄の最下層(コキュートス)の永久冷凍の刑に処してもう出てくることはねぇ。それで勘弁してくれや」

 

成程。ヴァーリが強引に連れて帰ったのはそういう意図があったらしい。ようは自分のケツは自分で拭いたのでもう良いでしょっと言う為の準備だったと言うわけだ。

 

(用意周到と言うかなんと言うか)

頭を掻きつつ、戦兎が思うとミカエルは更に突っ込む。

 

「成程。ではコカビエルが貴方はもはや戦争に興味がないといっていたと言うのも?」

「当然。俺は今神器(セイクリットギア)にしか興味がないんだ。戦争なんてやってられるかよ」

 

アザゼルはやれやれとでも言いたげな感じで言うと、今度はサーゼクスが、

 

 

「ならばアザゼル。何故ここ数十年神器(セイクリットギア)所有者を集めていると言う噂は?」

「研究の為だよ。気になるなら研究データ渡そうか?何度でも言うが、別にそれで戦争吹っ掛ける気なんかねぇよ。信用ねぇな」

 

当たり前だ。とその場の誰もが思ったが、それは口にしない。そんな時、アザゼルも疑問を口にする。

 

「逆に聞くが。お前らこそ神器(セイクリットギア)……特に神滅具(ロンギヌス)とか隠してねぇよな」

『っ!』

 

アザゼルの言葉にその場が静まり、戦兎や龍誠は首を傾げた。

 

神滅具(ロンギヌス)ってなに?」

神滅具(ロンギヌス)って言うのは神器(セイクリットギア)の中でも特に強力で、極めれば神すら倒すと言われる13の神器(セイクリットギア)のことだよ。ただ最近突然その存在が確認されなくなったって言うのは聞いていたけど……」

 

戦兎が祐斗に説明を求めると、快く答えてくれ、戦兎は納得する。神器(セイクリットギア)にも色々あるらしいが、そんなものもあったとは驚きだ。

 

そしてアザゼルの問いに他の長達は、

 

 

「分かりません。こちらとしても調べてはいますが……」

「こちらも同様だ。十数年前に突如姿を消して以来確認していない」

 

やはりどこも似たようなもんか……アザゼルはそう言うと、立ち上がる。

 

「ま、実際そこまでお前らを疑っちゃいないさ。あれは強力な代物だ。完全に隠し切れるもんじゃねぇ。それにもし上手く隠したとしても、13の神滅具(ロンギヌス)全てが確認されなくなるってのは可笑しすぎる。まあ、心当たりがない訳じゃないだろうが」

 

アザゼルの言葉に、サーゼクス達は無言で同意した。それが意味するもの……それは自分達の預かりしならない勢力が何かしらの形で秘匿していると言うことだ。

 

自分達に見つからず、神滅具(ロンギヌス)の所有者を一部でも独占していたら驚異だ。神滅具(ロンギヌス)と言うのはそれだけ強力なのである。過去にはその神滅具(ロンギヌス)が暴走して島の形が変わったとか、国がいくつか滅んだとか、そういった逸話に事欠かない。

 

「そこでだ。俺達が何時までもいがみ合っていても仕方ねぇ。だから……和平といこうじゃねぇか」

『……』

 

アザゼルの言葉に、サーゼクス達は押し黙り、戦兎達は息を呑む。

 

長い間争い続けてきた三大勢力の和平の申し開き。それがこの会談が開かれたと言う事実以上の価値があるのは言うまでもない。

 

しかもアザゼルの言葉に対して、

 

「我ら悪魔はまた大戦が起きれば滅亡は免れない。和平なら歓迎だ」

「それは天界もです。神が居らずとも我らは生き残る道を選ばねばなりません。和平を受け入れます」

 

あっさりと和平を受け入れてしまう。いや、それは良いことだ。だが恐らくアザゼルが言わずとも、誰かが和平の話を持ち出しただろう。先程サーゼクスが言ったが、次に大戦が起きれば滅亡するのはミカエルを筆頭とした天使や、アザゼル達堕天使も同じなのだ。

 

そしてアザゼルは座ると、すぐに書類を出した。彼曰く今回の和平に関する事項や、決め事などを書いてありそれに同意するならサインを書くらしい。ホント用意が良すぎる。

 

全部こうなることを予想していたレベルだ。ここまで一連のことがアザゼルと言う男の掌の上だったんじゃないだろうか?

 

だからといって態々この場に水を指すようなことはしないが……

 

「これで良いでしょう」

 

最後に書類にサインしたミカエルがペンを置くと、他の長も頷く。

 

取り敢えずは今回話すべき内容は終わりらしい。空気が緩み、重苦しい雰囲気はなくなった。

 

そんな中、サーゼクスがこちらに向き直り、

 

「お疲れ様。大変だっただろう?」

「いえ、それより聞いて良いですか?」

 

戦兎の問いに、サーゼクスが頷く。なので、戦兎はそのまま聞いた。

 

「その……神滅具(ロンギヌス)って奴を独り占めしてる可能性があるところってどこですか?」

「ふむ。勿論三大勢力の他にも多数の神話体型はあるが……そこではない。いや、ある意味その神話体型も関わってはいるだろうがね」

 

意味深な言葉から始まったサーゼクスの言葉だが、彼はそのまま続ける。

 

「私達悪魔もまだ一部しか知らせていないとある組織がある。それは……っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!」

 

ビクッ!と体を震わせ、戦兎はふらつきながら姿勢を立て直す。

 

「なんだ!?」

 

見てみると、目の前にはサーゼクスは結界のようなものを作り出していた。

 

「これは……」

 

サーゼクスが結界を解除する中、戦兎が周りを見回すと、龍誠やリアスもサーゼクスが作った結界におり、ゼノヴィアと祐斗はゼノヴィアのデュランダルでガード。だが、他の皆はそれぞれの勢力の長を除き、完全に動かなくなっていた。

 

動かなくなっていたと言っても、死んだとかではなく時が止まったような姿だ。まるでこれは……

 

「ギャスパーの停止世界の邪眼(フォービドウン・バロール・ビュー)?」

 

リアスの呟きに戦兎も同意する。戦兎も何となくそう思っていた。まるで時が止められたようだと……

 

「しかしよくゼノヴィアもガードできたな」

「勘でね。危険を感じるとデュランダルでガードするのは癖なんだ」

 

そんな龍誠とゼノヴィアのやり取りを聞きつつ、戦兎はサーゼクスを見る。

 

「ありがとうございます」

「いや、気にしなくて良い。私も咄嗟だった為、君やリアスに龍誠君へ結界を張るのが限界だった」

 

危険を察知してからの一瞬でそこまでいけば充分凄いと思うのだが、サーゼクスとしては納得いかないものらしい。そうしていると、

 

「今度はなんだぁ!?」

 

突如外からの爆発に龍誠は、驚く。その横でアザゼルが、

 

「外から攻撃してきてんだよ。まあ結界を張ってるから心配すんな」

 

そう言われ、皆で外を見ると如何にもな姿の魔術師のような格好の連中が魔方陣を作り出し攻撃してきていた。

 

だがよほど結界が強固なのか、取り敢えずは平気だ。だがこのままと言うわけにもいかない。そう思い戦兎はサーゼクスに聞く。

 

「これどういう状況なんですか?」

「今君達も感じたように時が止められた。恐らく部室に残したギャスパー君の身柄を奪って力を高めさせて強引に力を暴走させたんだろう。私達のような高位の悪魔やそれに並ぶ者に、デュランダルによるガードや私の結界があれば防げる程度の出力だったがようだけどね」

 

範囲を広げて威力が落ちたと言うことだろうが、それでもグレモリー眷属や、ソーナまで止まっていることを考えると相当強力だ。

 

「ギャスパーを……よくも」

 

ギリッと歯を噛むのはリアスだ。眷属への情が深い彼女にとって、敵に自分の眷属が利用されていると言う状況は好ましいものじゃない。その中でアザゼルが、

 

「アイツらは禍の団(カオス・ブリゲード)。最近名前が出てきたテロ組織だ。さっき言った神滅具(ロンギヌス)を持っている可能性がある連中がいるところさ」

禍の団(カオス・ブリゲード)……」

 

戦兎が復唱する中、今度はミカエルが言葉を発する。

 

「とにかくこれからどうするかを考えるべきでしょう」

「やはりまずはギャスパー君の救出か」

 

サーゼクスが続けたその時、それに対してリアスは手を上げた。

 

「ならば私が」

「だが旧校舎までの道が危険すぎる」

 

キャスリングを使います。サーゼクスの心配を他所にリアスは聞きなれない単語を発する。

 

確かキャスリングはルークとキングの位置を入れ換えることが出来る技だ。リアスは予めルークの駒を部室に置いてある為、それを用いて行えば外を経由せずにギャスパーがいるはずの旧校舎に向かえる。

 

それを聞いたサーゼクスは、

 

「確かにそれなら虚をつける。だが一人でいかせるのは無謀だな……グレイフィア。私の魔力を使って複数人飛ばせないか?」

「お嬢様ともう一人くらいならば」

「なら俺が!」

 

それに最初に反応したのは龍誠だ。手を上げ、意思表示するが……

 

「いや、俺が行く」

「なんでだよ!」

 

戦兎がストップをかけ、代わりに自分が行くと宣言した。勿論龍誠がブーブー文句を言うが、

 

「知能が猿以下のお前が行ったら事態を悪化はさせても改善はさせねぇだろうからな」

「なんだとぉおおお!」

 

ガルルル!と龍誠が唸るが、こう言うのは性格的に戦兎の方が向いているのは事実だ。何より、なんだかんだで可愛がっていたギャスパーを利用されて、これでも戦兎は怒り心頭だったりする。

 

それに気づいた龍誠は、怒るのを辞めて……

 

「気を付けろよ」

「あぁ」

 

龍誠に戦兎が頷いている間に、グレイフィアがリアスに術式を施し、準備は万端。

 

「では行きましょうか。戦兎」

「うっす!」

 

リアスが戦兎に声をかけ、戦兎はそれに頷く。するとそこに、アザゼルが来て戦兎に腕輪を渡してきた。

 

「これは?」

神器(セイクリットギア)制御の補助道具だ。ハーフヴァンパイアにつけてやりな」

 

成程。とこれを分解して研究してみたい衝動を我慢しつつ、戦兎はそれをポケットにしまう。その間にリアスはサーゼクスに、

 

「お兄様達はこのままですか?」

「あぁ、結界を維持しなくてはならないし、このままこちらに動かずにいれば向こうの首謀者もしびれを切らせて出てくるかもしれないしね」

 

分かりました。リアスはそう言って魔方陣を作り出す。戦兎はそこに入り、二人でワープをしようとしたその時!

 

「魔方陣!?」

 

リアスのではない。と言うかこの場の誰のでもない魔方陣が現れる。リアスは咄嗟にこちらのワープを止めようとするが、

 

「リアス!気にせず行け!」

「っ!はい!」

 

サーゼクスの今までにない気迫の籠った言葉に、リアスは殆んど条件反射で答えてそのままワープ。それを見送ったのと同時に魔方陣を作った主が現れた。

 

「ごきげんよう。現魔王に天界、堕天使の皆様方」

 

そう言って現れたのは、眼鏡をかけたキツめの美女だ。それを見たサーゼクスとセラフォルーは表情を曇らせる。

 

「カテレア・レヴィアタン」

「レヴィアタンって……まさか旧魔王ですか!?」

 

祐斗がそう言うと、カテレアはギリッと歯を噛み締めた。

 

「旧ではない!私こそ真のレヴィアタンよ!そこにいる私からレヴィアタンを奪った紛い物とは違う!」

 

セラフォルーを指差し、カテレアは叫ぶ。先の大戦時、旧魔王の一族は疲弊し、滅亡しかねなくなった状況でも最後まで戦いを望んだと聞くが……

 

「全く。んでテロリストかよ。アホらしい」

 

そう言って笑うのはアザゼルだ。そんな彼の様子にカテレアは殺気をぶつけるが、アザゼルは気にせずカテレアの前に立つ。

 

「丁度良い。禍の団(カオス・ブリゲード)の首領の事とか色々まだ分かってねぇことも多い。聞かせて貰うぜ」

 

お前らは手を出すなよ。アザゼルはそう言って光の槍を作り出す。

 

「良いでしょう。まずは手始めにあなたです!」

 

そんな二人のやり取りの後、アザゼルとカテレアが戦い始めた。その一方、

 

「ハァ!」

 

ニンニンコミックになった戦兎は、扉を四コマ忍法刀で斬ると、リアスと共に部屋に突入する。

 

「な!?何故ここに!?」

 

突然の部屋への乱入に、中にいた魔女風の女性達が驚く中、戦兎とリアスはギャスパーを見つけた。

 

「ギャスパー!大丈夫!?」

「部長……」

 

二人の登場に驚いたギャスパーだったが、ポロポロと涙を流し、

 

「部長。ごめんなさい。僕がしっかりしていれば……いつも迷惑ばかりかけて」

「何言ってるのよ。迷惑なんて思ってないわ。大切な眷属だもの」

 

だがそんなやり取りに魔女風の女の一人が水を指す。

 

「ふふ、やはりグレモリーは眷属思いが過ぎると言うのは本当らしいわね。全く、こんなの洗脳して道具として使えば幾らでも利用価値があるでしょうに」

「そんなことをせずともうちの眷属は優秀なの。今のままで充分にすごいわ。まぁ、貴方達程度の器では扱いきるのは無理でしょうけどね」

 

なんですって?とリアスを睨むが、彼女は涼しい顔だ。

 

「覚悟しなさい。この後私の眷属に手を出したらどうなるかきっちり教えて上げるわ」

「はぁ?これが眼に入らないわけ?いいこと?一歩でも動いたり魔力を使う素振りを見せたらこいつを……あれ?」

 

スカッと、ギャスパーの髪を掴もうとした手は空を切り、意味が分からず振り替えると、そこには地面に倒れ伏した仲間や、捕らえたギャスパーを椅子ごと離した戦兎が四コマ忍法刀を肩に担いで立っていた。

 

「え?え?」

 

何故二人に?そう彼女が驚く後ろでリアスと共に入ってきた方の戦兎はドロンと消える。まあようはこの部屋に入る前に分身して、一人は突入役。本体の方は忍者フルボトルの能力のステルス機能でこっそり後ろから回り込んだのだ。

 

リアスの名演技もあったが、中々上手く引っ掛かってくれたものだ。

 

等と思いながら戦兎は四コマ忍法刀の腹で殴って気絶させてから、ギャスパーを縛っていたロープを切ろうとするが、

 

「なんだこれ?硬いな」

「多分何かしらの術式ね……」

 

と二人は言い合いながらロープを解こうとしていた。それを見ていたギャスパーは、

 

「その、ごめんなさい……」

「良いんだよ。後輩助けるのも先輩の仕事だ。後、こういう時はごめんなさいじゃなくて、ありがとうだろ?」

 

ありがとうございます……ギャスパーはボソボソとだが、はっきり言う。それを聞いて二人が笑っていると、

 

「舐めるなよ……」

「っ!」

 

ギャスパーが気づく。後ろで戦兎に四コマ忍法刀で殴られた女が魔方陣を作り出そうとしていることに。戦兎とリアスは気づいていない。今から伝える?無理だ。間に合わない。自分がどうにかするしかない。だが出来るのか?今まで成功したのは偶々か、匙の制御があったからだ。それを無しで成功させる。それが自分に出来るのか?

 

だがギャスパーは意識を眼に集中させ、相手を見る。今やらなければリアスや戦兎が危険だ。それは嫌だ。引きこもれていたのは、気が向けばリアスたちの存在を感じれたからだ。本当のひとりぼっちは嫌だ。

 

外に出れたのは、戦兎が引っ張ってくれたからだ。口では色々言いつつも優しくしてくれる彼がいたからだ。

 

だから今。ここで助けに来てくれた恩を返さなければならない。守られてばかりじゃダメだ!

 

「なにっ!?」

『っ!?』

 

ギャスパーが突然力を発動させ、何事かと視線の先を追ったリアスと戦兎だが、そこにいたのは魔方陣だけを止められ、魔法を封じられた相手がいた。更に、

 

「先輩に……手を出すなぁ!」

 

次の瞬間、ギャスパーの体が突如無数のコウモリに変わり、ロープをすり抜けるとそのまま相手に襲いかかる。

 

「ちょ!やめ!」

 

無数のコウモリに対して相手は腕を振って抵抗するが、徐々に動きが鈍くなり……そのまま意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれば出来るじゃねぇか。ギャスパー!」

「は、はいぃ……」

 

初めて己の意思で力を制御したギャスパーは、戦兎にアザゼルから貰った腕輪をつけて貰ってから本校舎に向けて走っていた。

 

先程の魔女軍団は、しっかりと拘束しておいたし逃げられることはないだろう。それにしても……

 

「あの魔方陣……」

「俺達が転移する直前に見たやつですか?」

 

えぇ、とリアスは頷く。記憶が正しければあれは旧魔王の一族のレヴィアタンの物だ。それが今回の首謀者なのか……?

 

いやここで悩んでも仕方ないわね。とリアスは頭を振ると、三人は外に出る。

 

外は既に戦いの後といった感じになっており、倒された魔女達や、

 

「ふぅ」

 

黄金の鎧を来た誰かが降りてきて構えると、それが解除され、中から現れたのはアザゼルだ。

 

「その能力は……」

「ん?あぁ、俺が作った人工神器(セイクリットギア)の擬似禁手(バランスブレイカー)でな。まぁ一回使うと修理しなきゃならんのだが今は充分さ」

 

と、片腕を失ったアザゼルは、リアスの言葉に肩を竦める。そして戦兎が腕について聞くと、

 

「ん?あぁ、俺を巻き込んで自爆しようとして来たから腕切って逃げたのさ。まさかオーフィスがバックにいたとはな」

「オーフィス?」

 

戦兎が聞きなれない名前に首を傾げると、アザゼルはそんなのも知らねぇのかよ。と言いつつも教えてくれた。

 

「無限の龍と言われる世界最強の生き物さ。そいつがどうも禍の団(カオス・ブリゲード)についてるみたいでな。そいつの力を僅かだが取り込んできたのさ。僅かでも取り込めば十分すぎるほどの力を得られるからな」

 

そんな相手にでも勝つってこの人も大概化け物だな……戦兎はそう思いつつ周りを見回す。

 

最初はどうなるかと思ったがなんだかんだでこちらが勝ったと言う感じだろう。そう安心したその時!

 

「っ!」

 

アザゼルは振り替えると光の槍を作り出し、突然の攻撃を弾いていく。そして煙が晴れると、

 

「流石に避けられるか」

「おいおい。お前までそっちかよ」

 

アザゼルが呆れながら見た先には、ヴァーリが立っている。

 

「そっち側ってもしかして……」

 

戦兎がそう言うとヴァーリは頷き、

 

「今日からは禍の団(カオス・ブリゲード)の世話になることにした。世話になったな。アザゼル」

「一応。理由を聞いて良いか?」

 

聞かずとも分かるだろ?とヴァーリが言うと、アザゼルはまあなと返す。するとヴァーリは戦兎を見て、

 

「そう言えば聞いたんだが、お前が戦う理由は、ラブ&ピースの為だとか誰かの為だとか聞いたんだが……本当か?」

「あぁ、それがどうした」

 

戦兎がそう答えるとヴァーリは、

 

「いや、下らないと思っただけだ」

「なに?」

 

ヴァーリの言葉に、戦兎は眉を寄せる。だがヴァーリは気にせず続け、

 

「下らないと言ったんだ。そんなもの。何の役にもたちはしない」

「好き勝手言いやがって」

 

戦兎はピキピキとコメカミが痙攣するのを感じる。何の役にもたたないだと?

 

「何度でも言ってやるさ。誰かの為だとか、ラブ&ピースの為だとか……戦いには役立ちはしない。証明してやろうか?そうだな……今お前の後ろにいる主であるリアス・グレモリーを襲うから守って見せろ」

《ロボットゼリー!》

「上等だ!」

《ラビット!タンク!ベストマッチ!Are you ready?》

 

ヴァーリはベルトをつけるとスクラッシュゼリーを刺し、戦兎もベルトにフルボトルを刺す。

 

「大丈夫かぁ?お前確か負けたんだろ?」

「今度は負けねぇよ!変身!」

《潰れる! 流れる! 溢れ出る!ロボットイングリス!ブラァ!》

《鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イエーイ!》

 

変身を終えた戦兎はヴァーリに向かって走り出す。そして素早く拳を握ると、グリスに変身を終えたヴァーリを殴る。だが、ヴァーリはそれを片手で止めると、そのままツインブレイカーで殴る。

 

「ぐぁ!」

 

その衝撃に戦兎は後ずさるが、戦兎は素早くボトルを交換した。

 

《ローズ!ガトリング!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

 

ローズフルボトルと、ガトリングフルボトルで姿を変えた戦兎は、腕からイバラを伸ばしてツインブレイカーのついている方の腕を絡めとると引っ張ってヴァーリの体勢を崩し、

 

「オォ!」

「ぐっ!」

 

ホークガトリンガーをヴァーリに向けて発射。体勢を崩されたところにこれでは、流石のヴァーリも怯む。

 

そこに戦兎は、追い討ちをかけるようにボトルを交換し、

 

《ゴリラ!ガトリング!Are you ready?》

「オォオオオオ!」

 

一気に間合いを詰め、ゴリラフルボトルの力で巨大化した腕を振りかぶって、思いっきり殴り付ける。

 

「かはっ!」

威力重視のゴリラフルボトルの力は流石にヴァーリは大きく吹っ飛ばされた。

 

「どうだ!」

 

吹っ飛ばされ、地面を転がったヴァーリを見て戦兎はガッツポーズを決める。しかし、

 

「それで終わりか?」

「っ!」

 

ゾクッと戦兎は悪寒が走る。ゆっくりと立ち上がるヴァーリの体から溢れだす魔力が、戦兎の体を貫いている。

 

「教えてやる」

「っ!」

 

ドン!と地面を踏み抜きながら、ヴァーリは間合いを詰めて戦兎をツインブレイカーで殴りまくる。

 

「暴力!虐殺!破壊!それが戦いだ!守る為だの誰かの為だの!そんな下らねぇ甘い気持ちで!俺の前に!立つんじゃ!ねぇ!」

「ぐはっ!」

 

今度は戦兎が広報に吹っ飛び、地面を転がる。それを見たリアスが、

 

「なんなのあの魔力……最上級悪魔クラスじゃない。と言うか彼堕天使じゃなかったの?」

「いや?あいつは悪魔だぜ?正確には半分だけどな」

 

そう言ってアザゼルは戦兎とヴァーリの戦いを見る。

 

「アイツの本当の名前は、ヴァーリ・ルシファー。人間の母と、名前の通り旧魔王の一人であるルシファーの末裔の悪魔の父を持って生まれたハーフさ。生まれつき高い魔力を持っていた。何せ物心がつく前から時が経てば魔王……下手すりゃ超越者になるかもしれない片鱗をみせるほどにな。だがそれをアイツの父親は気に食わなかったらしい。気づけば虐待を始めていた。それを庇っていたのはアイツの母親でな。だが人間と悪魔だ。意図したものだったのか、手違いだったのか分からないが……殺されたらしい」

「っ!」

 

アザゼルの言葉に、リアスは息を呑む。

 

「皮肉なことにそれがヴァーリの力を目覚めさせちまったみたいでな。その時に半ば暴走状態になって父親を殺して、ヴァーリは逃げ出したらしい。その後俺と出会って面倒を見てやってたんだが……」

 

アザゼルは言う。だからこそ戦兎をヴァーリは認められないのだと。母を守りたかった。だがそれは叶わなかった。誰かの為に戦うのが正しいのなら、何故自分は母を守れなかったのか?ヴァーリは今も自分を責め続けているのだと……

 

「これでどうだぁ!」

 

ヴァーリがツインブレイカーを構え、戦兎に向かって振るう。だが、

 

「なにっ!?」

 

今度は戦兎の方が、ヴァーリの一撃を止めた。

 

「くっ!」

「それがお前の過去か。確かに同情はするよ。けどな……」

 

変身した状態だと聴覚が上がるため、アザゼル達の会話も聞こえていた戦兎は、力付くで掴んだまま押し返す。

 

「ちぃ!」

 

ヴァーリは空いてる方の腕で、戦兎に反撃しようとするが、

 

「あぶねぇ!」

「っ!」

 

それを止めたのは、クローズに変身した龍誠だ。おせぇよと戦兎が言うと、

 

「こっちだってな!アザゼルが旧魔王の……カステラってやつと戦い始めて相手の気が逸れたところを襲って倒してたんだよ!ようやく終わったかと思えばまた爆発音がすると思って来たら、お前とヴァーリが戦ってるしで驚いたぜ」

 

確かに後ろの様子をうかがうと、他の皆も集まってきている。ならそろそろ気張るか!

 

『オッラァ!』

「ぐっ!」

 

力付くで押し返し、後方に後ずらせると、戦兎はラビットタンクスパークリングを出すと、振ってプルタブを引く。

 

「ヴァーリ。確かにお前の言うことは正しいよ。俺の言ってることは甘い。夢だよ。でも、それが美しいと感じたんだ。綺麗だと思ったんだ……憧れたんだ!それが間違ってるなんて思わない。例えお前がなんと言おうと……俺はラブ&ピースの為に戦う!いくぞ龍誠!」

「良くわかんねぇが……了解だ戦兎!昇格(プロモーション)!」

《ラビットタンクスパークリング!》

 

戦兎はベルトに刺してレバーを回し、龍誠は集中する。そして、

 

「ビルドアップ!」

「クイーン!」

《シュワッと弾ける! ラビットタンクスパークリング!イエイ! イエーイ!》

『さぁ!実験を始めようか!』

 

今の全力となった二人は、共にポーズを決めて、走り出したのだった……


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