ハイスクールD×D Be The One   作:ユウジン

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前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「レーティングゲームも始まり、匙と出会った俺たちだったが、なんと匙も仮面ライダーに!」
龍誠「いやぁ、まさか匙が変身するとはね~」
匙「しかしコメントでは死亡フラグだの負け癖だのとしっけいな……」
戦兎「まあ強ち外れちゃいないしな」
匙「えぇ!?」
戦兎「と言うわけで始まりますのは37話!」


勝つためならば

「おらぁあああ!」

 

ツインブレイカーをアタックモードにした匙は、まずは龍誠に飛びかかる。

 

「ちぃ!」

 

それを龍誠はビートクローザーで止めるが、

 

「オラオラオラァ!」

 

匙は構わず何度も殴る。出力と言う点ではスクラッシュドライバーは、ビルドドライバーより上だ。その力で強引に押しきろうとし、龍誠も押される。しかし、

 

「はぁ!」

「ぐっ!」

 

横から戦兎は匙を蹴り飛ばし、よろめかせたところに、ドリルクラッシャーで斬る。

 

「はぁ!」

 

その隙に龍誠も体勢を立て直し、ビートクローザーの刀身を匙に当て、斬撃を加えながら、

 

《ヒッパレー!ヒッパレー!ミリオンヒット!!!》

「がぁあ!」

 

火花を散らし、地面を転がる匙。だが匙は素早く立ち上がると、今度は黒い龍脈(アブソブーション・ライン)を出して、戦兎達を捕まえようとする。

 

「あぶね!」

 

戦兎は避けながらドリルクラッシャーをガンモードにして匙を撃つ。

 

「ぐぅ!」

 

弾丸を喰らって後ずさりながらも、匙はまだ狙う。

 

「ライダーシステムと神器(セイクリットギア)を同時に使えんのかよ!」

「面倒だな!」

 

匙の黒い龍脈(アブソブーション・ライン)を避けながら、龍誠と戦兎は叫び、戦兎がハリネズミフルボトルをドリルクラッシャーに挿した。

 

《Ready Go!ボルテックブレイク!》

「喰らえ!」

 

ハリネズミの針のような弾丸が匙を襲う。

 

「がはぁ!」

 

また匙は吹っ飛ぶ。だがそれでも匙は立ち上がる。しかし、

 

「げほっ!がはっ!」

 

体に電流が走り、匙は更に苦しそうに顔を歪めた。

 

「やめろ匙!それ以上戦えばスクラッシュドライバーの反動でどうなるか分かんねぇぞ!」

 

戦兎がそう叫ぶが、匙は変身を解除しない。その代わりに、

 

「構わねぇよ。この体くらい賭けてやる」

「なに?」

 

匙の言葉に、戦兎は疑問符を浮かべる。

 

「お前みたいに俺は天才じゃない。普通にやってたら俺はお前らに永遠に追い付けない。今だってお前らの方が強いってのにな。だがそれでも勝つ為だったら……俺はこの体も、そして命だって賭ける!」

 

そう言って匙はツインブレイカーで戦兎に襲いかかった。

 

「俺達がどんな気持ちでこのレーティングゲームに望んでるか分かるか!?俺達はな……命賭けてんだ!何がなんでも勝って、勝って勝って勝ちまくって!俺達は証明しなきゃならねぇんだよ!フウの言うとおりさ。俺達は俺達の出来る方法で自分を証明する!そして会長の夢を叶えるんだ!」

「くぅ!」

 

凄まじいパワーに、戦兎は直接受ける事はせず回避しながら、ボトルを入れ換える。

 

《忍者!タンク!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

「オラァ!」

 

姿を変え、戦兎は四コマ忍法刀とドリルクラッシャーの二刀流で匙を迎え撃つ。

 

「くぅ!」

 

二本の武器で匙の一撃を防ぐが、圧倒的パワーに体勢を保つのがやっとだ。

 

(とにかく距離を……)

 

そう思い、戦兎は後ろに跳ぼうとするが、

 

「逃がさねぇ!」

「なにっ!?」

 

突然引っ張られる感覚に、戦兎は驚愕する。だがすぐに何に引かれたのか理解した。匙の黒い龍脈(アブソブーション・ライン)だ。

 

「ドラァ!」

 

自分の方に引くのを利用しながら腰を捻った匙は、そのままツインブレイカーで戦兎をぶん殴る。

 

「ごはっ!」

 

後方に吹っ飛んだ戦兎だが、匙は

強引に黒い龍脈(アブソブーション・ライン)で引っ張って戻すと、再度ツインブレイカーで殴る。ツインブレイカーの付いている手と、黒い龍脈(アブソブーション・ライン)の手は同じ方だ。左右が違ったら引っ張った際に殴るまでのラグがあるが、同じ方だと引っ張る際に殴る準備もできる。厄介な組み合わせだ。

 

「止めろ!」

 

それを止めたのは龍誠。龍誠はビートクローザーで黒い龍脈(アブソブーション・ライン)を切ろうとするが、びくともせず、その隙に匙はスクラッシュドライバーのレバーを下ろすと、

 

《スクラップブレイク!》

 

飛び上がらず、その場で回し蹴りを放ち、龍誠を蹴り飛ばす。

 

「がっ!」

「捉えたぜ!」

 

吹っ飛んで空中にいた龍誠は避けられず、そのまま匙の黒い龍脈(アブソブーション・ライン)と繋がってしまった。

 

(ラインの数は一本だけじゃねぇのか)

 

戦兎はラインを引っ張ってみるが外れない。どうにかしなければ……そう思っている間に匙が突っ込んで来る。だが、

 

「あがっ!」

 

匙の体を、また電流が痛め付け、それにより足を止めてしまう。その隙を見逃す戦兎ではなく、

 

《火遁の術!火炎斬り!》

《Ready Go!ボルテックブレイク!》

 

戦兎は咄嗟にユニコーンフルボトルをドリルクラッシャーに挿して、四コマ忍法刀と共に匙を斬る。更にそこへ、

 

《Ready Go!ドラゴニックフィニッシュ!》

「はぁあああ!」

 

龍誠の渾身の蹴りが、匙を更に吹き飛ばす。周りに被害がでないように抑えてあるが、それでもこれだけ喰らえば、もう立ち上がれないだろう……

 

「っと思っていた時もありましたってか」

 

戦兎がぼやく中、匙はまだ立ち上がる。

 

「おい匙!もうホントに止めろ!幾ら死ぬ前に自動でリタイアさせられるっていってもホントに死ぬぞ!」

「何度も言わせんなよ桐生。俺達は死んでも良いって思って戦ってんだよ!」

 

そう言って匙が、ツインブレイカーをこちらに振るう。

 

「俺達の夢はそんなにおかしいかよ……ただ誰もが平等にチャンスを得られる機会を持たせたいのが変なのかよ!」

「くっ!」

 

戦兎はツインブレイカーを凌ぎながら叫ぶ。

 

「俺は良い夢だと思う!叶えてほしいと思う。だけどな……俺達だって負けられねぇ!」

「そうだ!俺達だって部長の夢を叶えたいって言うのは同じだ!」

 

戦兎と共に龍誠も言うと、ビートクローザーのクリップエンドに手を掛け

 

《Ready Go!ボルテックブレイク!》

《ヒッパレー!ヒッパレー!ヒッパレー!メガヒット!》

 

戦兎は四コマ忍法刀を投げ、ラビットフルボトルをドリルクラッシャーに挿し、龍誠と共に走り出すと匙に渾身の一撃を放つ。

 

赤と蒼の刀身は、匙の体から火花を撒き散らし、二人が匙の隣を駆け抜けながら斬った後、匙はゆっくり倒れる。

 

「今度こそやったか?」

《ソーナ・シトリー様のポーン一名リタイアです》

 

戦兎が振り返りながら確認すると、放送と共に匙はそのままリタイアとなり消えていく。

 

やっと終わったか。そう思い戦兎はラビットタンクに姿を戻しながら、

 

「取り敢えず次はこっちだな」

 

戦兎はそう言ってエンプティボトルを出すと、匙がリタイアしても消えない黒い龍脈(アブソブーション・ライン)のラインに近づけて吸いとる。引っ張ってもなにしても取れなかったが、無事取れたようだ。そして龍誠にも同じようにしてやり、

 

「今度は塔城の援護か」

「だな」

 

と視線の先で戦い続ける小猫を見ながら行こうとした時、

 

「成程。流石に強いですね」

『っ!』

 

突如現れた声の主を見て、戦兎と龍誠は驚愕する。その視線の先にいたのは、ソーナだ。キングである彼女がここにいる理由は良い。態々現れてくれたのだからここで速攻で倒せば……そう思い二人は行こうとすると気づく。彼女の隣にいる女の子が何故か輸血袋を二つ手に持っている事に。

 

『っ!』

 

そう疑問が浮かんだ瞬間。二人の視界が突然明暗し始めた。

 

「なんだ……これ?」

「残念ですが治りませんよ。例えフェニックスの涙を使ってもね」

「いったい何を……」

 

戦兎がソーナに問うと、彼女は隣にいた少女の輸血袋を指差す。

 

「これは貴方達の血です」

「俺達の?」

 

まさか匙の黒い龍脈(アブソブーション・ライン)か!?と戦兎は目を見開く。おかしいと思っていた。力を散らす筈の黒い龍脈(アブソブーション・ライン)。なのに力は減った気がしなかった。最初はこちらの動きに制限を掛けているのかと思ったが、狙いはこれか。

 

「えぇ、お二人を纏めて相手にして勝つのは難しい。なら分断?いえ、一人でも十分驚異です。ですが二人の方が一つ利点がありました。それは共鳴に入ると興奮状態になる事。強い興奮は多少の不快感には鈍感になってしまう。そこで今回の作戦を思い付きました。二人が一緒なら、匙が神器(セイクリットギア)で二人纏めてラインを繋げやすく、そして少しずつでも血を失えば体に現れるであろう不調も気づかない」

 

成程。というか黒い龍脈(アブソブーション・ライン)って血を抜けるし、悪魔にも失血の概念があった事に驚くと、黒い龍脈(アブソブーション・ライン)で血を抜くのは匙が修行で相当頑張ったらしく、失血は元が人間の転生悪魔だからこそ効果的だったらしい。

 

「そして皆さんも知っているように、レーティングゲームでは過度のダメージや、身体に関わると判断されると医務室に転送されます」

「つまり俺達はこのままリタイアってことね」

 

失血は見た目的には分からないが十分重症だ。医務室行きになってもおかしくはない。だが、

 

「このままってのは面白くないな!」

 

そう言って戦兎がドリルクラッシャーを撃つと、ソーナをすり抜けてしまう。

 

「幻影かよ……」

「それでは」

 

ソーナと輸血袋を持った少女は消え、二人が取り残される。

 

「先輩!」

「行かせません!」

 

小猫がこちらに来ようとするが、それを阻まれた。

 

「おい戦兎。どうにかならないのか?」

「俺だけが助かる方法ならあるが?」

 

んじゃ、それでいこう。龍誠はそう言い、戦兎は良いのかと問う。

 

「構わねぇよ。つうかこのまま会長の掌の上ってのは納得いかねぇ」

「分かったよ」

 

戦兎はそう言うと、またエンプティボトルを出すと、それを龍誠に挿す。すると、ボトルの中身が真っ赤に染まり、

 

「さいっこうの勝利報告届けてやっからよ」

「おう」

《リアス・グレモリー様のポーン一名リタイアです》

 

そう言い残して放送と共に龍誠は消えていき、戦兎は龍誠に挿していたボトルを今度は自分に挿す。

 

龍誠から取ったのは血だ。そして龍誠の血液型はO型。現代では行われないが、O型の血液は全ての血液型に輸血する事が出来る。受けるのは無理なのだが。

 

なので戦兎は、エンプティボトルを使った強引な輸血で失った血を補う。これでなんとかリタイアせず動けるだろう。失血が理由なのだから。まあまだクラクラするけど。

 

「大丈夫か塔城!」

 

とにかく塔城を助けよう。そう思い歩き出そうとした戦兎は、背後の物音に振り返った。そこにいたのは、シトリー眷属の皆様が一、二、三……

 

「いや多すぎじゃね?」

「いやいや、これで妥当でしょ?ま、そんなこと言っても相手してもらうわよ。ギャスパー君嵌めてから急いでこっち来たんだから」

 

そう言って拳を構えるのは、ゼノヴィアの背を高くしたような女の子。確かルークだ。更に、刀を構える子や魔力を集める子がいた。

 

(忍者フルボトル戻したのは失敗だったな)

 

そう思い戦兎がもう一度忍者フルボトルを使おうと手を伸ばした次の瞬間!

 

「させない!」

「っ!」

刀を持った子はナイトか!?と戦兎は驚愕しながら、一瞬で間合いを詰めてきた相手の刀をドリルクラッシャーで受け止める。だがそこにルークの女の子の拳で横から吹っ飛ばされた。

 

「くっ!」

 

転がりながら、戦兎はボトルを交換しようとする。だがそこに魔力を溜めていた子が、それを用いて遠距離から攻撃してくる為、交換する暇がない。

 

「これが狙いか!」

「そういうこと!会長はね!あんたが万が一失血を逃れた場合の対抗策も用意してあったのよ!あんたの能力は厄介。なにせ状況に応じてボトルを交換できるからね。でもボトル交換が厄介ならさせなきゃ良い。単純でしょ?後三人なのはね?あんたは絶対終わったら兎と戦車に戻す。いざって時の防御と、防御しきれない時に使える機動力。だから私達って訳。ルークのあたしならあんたの防御を気にせず戦えるし、速度ならナイトで対処可能。そして隙間にビジョップの魔力で攻撃。これじゃ流石にボトル交換できない!」

 

ガン!と殴られた戦兎はふらつきながら後ずさる。

 

不味い。流石に不味い。ただでさえ匙と戦った後でスタミナ不足だし、血を補給したといってもまだ全快してない。多分それも策だろうが……

 

「おい!お前らギャスパー嵌めた後なんでこっち来たんだ?上手く避けながらこっちの本陣にいくことも出来るだろ?」

「まあね。たださ、あんたも知っての通りこっちの夢叶えるには勝ち続けなきゃいけない。ただ勝ってもダメ。そりゃ相手によっては避けて戦う事も必要だけどさ。初戦からこそこそ戦い避けてさっさと本陣制圧して勝ちましたなんてつまんない戦いするわけにいかない。こっちが狙うのはね、完膚なきまで叩きのめしての勝利なのよ!」

 

それを聞いて戦兎は納得した。自慢する訳じゃないが、自分達は多数の事件に巻き込まれて生き残っていて、名前が売れている。そして、特にコカビエルを倒した自分と、転生したばかりで上級悪魔を倒した龍誠。倒したとなれば相当なネームバリューとなるだろう。

 

こいつらはただ勝ちに来たんじゃない。こちらの名声を踏み台にするつもりなんだ。

 

「お前ら流石に欲しいもん多すぎじゃね!?」

「一戦一戦貰えるもの全部貰ってかないとね!」

 

必死に防ぎ、弾く戦兎だが如何せん相手が多い。それでも、

 

「今なら!」

《Ready Go!ボルテックブレイク!》

 

ドリルクラッシャーになんとか強引にフェニックスフルボトルを挿し込み、銃口から火炎放射機のように火を放つ。だが、

 

反転(リバース)!」

「なに!?」

 

突如、戦兎の放った火は水に変わる。

 

反転(リバース)って言ってね。本来なら光を闇に変えたりとかそういう使い方をするんだけど!」

「ぐぁ!」

 

こういう風に使えば火を水にしたりも出来る。とルークの蹴りで戦兎は更に吹っ飛ばされた。

 

(失敗した……)

 

もし属性を変えるのならば火炎放射ではなく火炎弾を発射できるようなものにするべきだった。そうすればせめて威力のある水弾をぶつけられたのだ。あれでは少々威力のある水鉄砲である。

 

「くっ!通してください!」

「行かせません!」

 

そんな光景を見ながら、小猫は相手を睨む。何故彼女はずっと直接戦わず、時間稼ぎのような事をするのか……それは確実に戦兎と龍誠を倒す為だ。

 

急がなければ戦兎まで脱落してしまう。ならどうする?速攻で相手を倒すしかない。だがずっと相手は直接戦わず、防御を固めている。

 

方法はある。仙術だ……仙術なら多分倒せる。でも使うのか?暴走したら?そう考えると二の足を踏んでしまう。だがその時、戦兎が再度攻撃される光景が目に写った時、小猫の中で何かがキレた。

 

(これ以上……見たくない!)

 

戦兎が傷つく所が……苦しむ姿がそこにある!

 

「アアアアアアアア!」

 

小猫の咆哮。次の瞬間、小猫の体を暖かなオーラが包み込み、猫耳と二股の尻尾が生える。どうなろうが知った事かと。これ以上戦兎が傷付かなくて済むなら、制御してみせると小猫は力を解放する。

 

「な、なに!?」

 

突然の変化に相手が驚くが、小猫は気にせず 走り出し拳を振るう。

 

「くっ!」

 

それを防いだ。防ぐと言ってもルークのパワーを正面から受ければ腕を持っていかれる。受け流すように……ずっとそうやって来たのだから。だが、

 

「え?」

 

受け流した瞬間。相手の女の子は腕を下ろし、膝をついた。全身に力が入らない。自身の体なのに全く意思通りに動かない!?

 

「ハァアアアアア!」

「っ!」

 

ドゴゥ!っと抉り込むような小猫の強烈なストレート。それは相手を吹き飛ばし、

 

「え?」

「きゃあ!」

 

戦兎を攻めていたルークとナイトの女の子を巻き込んだ。

 

「ぐぇ!おげぇ!」

「だ、大丈夫!?」

 

だが殴られた方はそれだけじゃない。殴られた所為?違う。そんなもんじゃない。まるで全身の内臓が全部グチャグチャにされたような感覚だ。

 

そしてビジョップの女の子が心配しつつ、気配に振り替えると小猫が来る。

 

「くっ!」

 

それを迎撃する為に魔力を集めて放った。だが、

 

「消えた!?」

「違う!上!」

 

ビジョップの子が上を向くと、一瞬で飛び上がって天井に両足をつけた小猫は、足に力を込めて勢い良く落下。ビジョップの子の顔面を遠慮なくぶん殴ると、そのままビジョップの子も膝をついて動けなくなってしまう。

 

「はぁ!」

 

そして小猫は更に加速して、二人に飛びかかった。

 

「とにかく触れられたらダメ……って!」

《ローズ!タンク!Are you ready?》

 

一瞬の隙を突いて、戦兎はボトルを交換し、残っていたルークの子とナイトの子をローズフルボトルの、茨の鞭で捕らえた。そしてそこに小猫の拳が襲い、

 

『ガハッ!』

 

二人は後ろに吹っ飛ぶが、戦兎がハンマー投げの要領でグルンと振り回すと、そのまま最初に小猫に吹っ飛ばされた子のところのもう一度戻す。更に、

 

《クジラ!消防車!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

 

戦兎はボトルを入れ換え、小猫を見る。

 

「塔城!そこのビジョップをこっちに投げろ!」

「はい!」

 

小猫は走り出すと、ビジョップの子を掴みそのままぶん投げて全員を一ヶ所に集めた。そして戦兎はボトルの力で倒れているシトリー眷属達に放水。

 

「しょっぱ!これって塩水!?」

 

体は動かないが、味覚などはある。ルークの子は顔をしかめるが、戦兎はドリルクラッシャーを構える。

 

「さて、ここで科学の問題だ。良く勘違いされるが、実は水は電気を通しにくい。正確には真水だな。不純物が混じる事で電気が通る。その代表格が塩水だ」

 

そう言って戦兎はドリルクラッシャーにライトフルボトルを挿す。

 

《Ready Go!ボルテックブレイク!》

 

ドリルクラッシャーの刀身から、発光と共に電流が流れ、バチバチ音を立てると、シトリー眷属達の顔色が悪くなり、

 

「勝利の法則は決まった」

 

そう言って戦兎が、ドリルクラッシャーの切っ先を床を濡らしている水につけると電流が流れ、その電流はシトリー眷属を痛め付けた。そして、

 

《ソーナ・シトリー様のルーク、ナイト、ビジョップ、ポーン。一名ずつリタイアです》

 

放送と相手の消滅を見て、戦兎はそのまま膝をつく。

 

「先輩!」

「大丈夫だ。流石に疲れただけだよ」

 

肩で息をしながら、戦兎は周りを伺う。また敵が来たらたまったものじゃない。そう思いながらいると、

 

「この周りには敵はいません」

「そうなのか?」

「仙術使いは相手の気配に敏感です。先輩も知っての通りですが」

 

そう言えばそうかと、戦兎は変身を解いて床に座る。正直立ってるのも限界に近いのだ。

 

すると小猫がやって来て、手を握ってきた。

 

「塔城?」

「少しおとなしくしててください」

 

そう言って小猫は、意識を集中させるとジンワリ手が暖かくなり、少し体が暖かくなってきた。

 

「仙術はこのように他者に気を流し込み、肉体を活性化させることができます、アーシア先輩のような劇的な回復はありませんが、私みたいに未熟な仙術使いの気でも無いよりはマシなはずです」

 

確かに少し体が軽い気がする。そう思っていると小猫が、

 

「そう言えば何でスパークリングを使わなかったんですか?」

「あれは昇格(プロモーション)使ってビジョップにならないと使えないからな。外ならともかくレーティングゲーム中は相手の本陣に行かないと」

 

そう言えばそうだった。と小猫は納得し、

 

「まだ終わり……ではないですよね?」

「確か後向こうの眷属はクイーンとビジョップとポーンが一人ずつ残ってるはずだ。一人はソーナ会長といたから……」

 

残る二人は恐らく屋上から敵本陣に向かう祐斗達とかち合ったか……そう思っていた時、

 

《リアス・グレモリー様のナイト。一名リタイアです。更にソーナ・シトリー様のクイーン。リタイアです》

 

「グットタイミングだな。多分向こうも来るだろうからこっちも敵本陣に向かうぞ」

「はい」

 

そう言って二人は立ち上がると足を進める。

 

こうしてレーティングゲームは、ついに終盤戦を迎えた。

 

ちなみに道中、

 

《ソーナ・シトリー様のビジョップ一名リタイアです》

 

という放送も流れたのだが、その辺何があったのかは、また次回のお楽しみである。


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