ハイスクールD×D Be The One   作:ユウジン

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前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「レーティングゲームを勝利で終えた俺たちだったが……と行きたいところだけど今回はちょっと別の話」
龍誠「なんとこの小説の総合評価300突破いたしました!ありがとうございまーす!」
匙「あれ!?俺たちについては!?」
戦兎「それはほら、本編を見てねってことで」
匙「ちくしょぉおおおおお!」
戦兎「と言うわけでこれからもよろしくって言う感じの39話スタート!」


勝者と敗者

《今回のリアス・グレモリー様とソーナ・シトリー様のレーティングゲーム。勝者はリアス・グレモリー様となりましたがいかが思いますか?》

《まあソーナ・シトリーチームもよかったと思いますよ?最初はね。ただ結局最後ひっくり返されちゃってるし、途中で桐生選手を複数人で襲ったときも結局負けてますし、ゲーム運びは良くても個々の能力が少々低いかと……》

《やはりあそこで無理に桐生選手を狙うべきでは……》

《いや単純に相性が……》

 

ゲームの次の日、先日の試合についてニュースや新聞では大きく取り上げられた。

 

色んな言われ方がある。だが結局のところ言われているのは、余り誉められた内容ではなかったと言うことだ。

 

もっとああすれば……こうすればとソーナの中でも葛藤が生まれる。

 

あの時、戦兎を狙うのではなくおとなしく本陣を狙えば結果は少し違った。狙うべきは戦兎ではなく、本陣でありリアスだった。そんなのはわかってた。だがそれでもコカビエルを倒した戦兎を倒すと言うネームバリューを狙い、返り討ちにあった。その事実は変えられない。

 

そうテレビから流れてくるコメントを聞きながら、ソーナ思う。そして、

 

《まあ彼女はレーティングゲームの学校を建てたいらしいのですが……あのようなゲームをする人が建てた学校っても……ねぇ?私は子供がいませんけど行かせるんだったらやはりちゃんとした所にいかせたいと思いますよ》

「う……ぐぅ……」

 

歯を噛み締め、涙を流す。自分は負けた。無惨に負けた。それは変えようもない事実で、敗者はただ泣くことしかできなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふざけんな!」

 

ガン!とソーナとは別の部屋に入院していた匙は壁を殴る。それを見た、見舞いに来ていた他のシトリー眷属の皆は慌てて彼を止めた。

 

「なにがちゃんとしたところだ!俺たちが建てたいのは、お前みたいなやつらしか学校がいけないから、そういうやつらじゃなくても行ける学校を建てたいんだよ!」

「元ちゃん!落ち着いて!傷にさわるから!」

 

暴れる匙を、他の眷属たちが押し止め、匙はその場に膝をつく。

 

「くそぉ!俺がもっと強ければ!戦兎か龍誠を普通に倒せれば……くそぉ!くそぉぉおおおお!」

 

床を何度も殴り、慟哭する匙に他の皆はかける言葉がない。皆同じだからだ。もっと強ければ、もっと機転が利けば……そういう思いが今もずっとある。

 

それに、匙がスクラッシュドライバーを使うために、どれだけ必死だったか眷属の皆は見てきた。コカビエルとの一件が終わった直後位に、何か顔は覚えてないんだけど、誰かから貰ったとかいって持ってきて、余りにも怪しすぎると皆で止めたが、これで強くなれるならと使い始めた。だが最初は何度使っても、体に電流が流れて弾かれるばかりで使い物にならなからず、そんな様子を見かねたソーナも、もうやめるように匙に何度も言ったが、匙はそれでも止まらなかった。毎日毎日何回も何回もやって、ある日突然変身できた。そしてあの強さは圧倒的だった。なにせ自分達複数人と模擬戦したときに手も足もでなかった。

 

勿論使えるようになったからって油断してない。夏休みに入ってからも、神器(セイクリットギア)の扱いと共に、何度も変身し、力に慣れながら高めてきた。だが結果は……

 

分かっていた。見られるのは内容じゃない。世間が見るのは結果だ。分かっていた。けど……悔しい。

 

覚悟をもって必死に戦った。それを殆ど省みられない。それがこんなに悔しいなんて。

 

そんな中の様子を、廊下で聞いたのは戦兎だ。本当はスクラッシュドライバーについて聞きたかったのと、可能ならベルトの回収もしたかったのだが……

 

「行くか」

 

静かにその場を後にする。今は自分が入る資格はない。そう判断し進むと、

 

「やぁ、ここにいるって聞いてきたんだけど会えて良かったよ」

『サーゼクス様?』

 

目の前に現れたのはサーゼクスだった。突然の訪問に驚きつつも戦兎は、

 

「どうしたんですか?」

「少しこっちの用事でね。戦兎君を探していたんだ。それより元気がないようだけど?」

 

サーゼクスの問いに、戦兎は少し考えてから、口を開く。

 

「なんか、戦いの直後は満足感があったんですけど……今は何か納得いかないって言うか」

「ふむ。シトリーチームは決して簡単ではなかったのに、世間の扱いがってところかな?」

 

そうです、と戦兎が頷くと、サーゼクスは少し表情を引き締めてから、

 

「それが勝者と敗者に分けられると言うことだよ」

「え?」

「レーティングゲームが冥界で数少ない娯楽だ。だから色んな者が注目するし、テレビや新聞でも取り上げられる。勿論その中には敗者を擁護する者もいれば、過激すぎる言い方で非難して、敢えて反感を買うやり方をする者もいる。だがそれだけ色んな者に見られているんだ。レーティングゲームはね。そしてその結果が悪魔社会の地位や名誉、または発言権に影響する。ソーナ君の夢を叶える上で、勝つことは絶対条件だった。その上で華々しくね。だが同時に負ければこうなるのも分かっていたはずだ。それでも彼女たちは自分の夢のために選択したんだ。それを勝者である君が中途半端な同情を向けるのはお門違いだよ?」

「っ!」

 

中途半端な同情だと言われ、戦兎はビクリと背中を震わせる。サーゼクスの言葉に、何も言い返せない。

 

言われてみて、案外的を射ていると思った。スクラッシュドライバーのこととか言っても……結局自分は負かした相手に罪悪感を覚え、それを一方的な自己満足のために、会って話したいと思ったのかもしれないと。

 

「レーティングゲームは家同士の付き合い等である程度勝敗が決まった状態で行われることもない訳じゃない。だが大多数は自分の夢や誇り、プライド、意地をかけて戦う。そして勝ったものは相手のそんな思いを踏みにじって前に進む。それは当然だ。こちらもそれをもって望むのだからね。互いの思いと思い。それらをぶつけ合って相手の思いを壊して……」

 

それがレーティングゲームの一つの側面だ。サーゼクスは淡々と、それを言う。そして戦兎に、

 

「君はなんのためにレーティングゲームを戦う?君が普段戦うのは誰かのために、ラブ&ピースにためにだったかな?だがレーティングゲームにそれはない。互いの欲望を叶えるための戦いだ」

 

その問いに、戦兎は息を吸う。それから、

 

「まぁ、俺にもありますよ。ちゃんと俺個人の戦う理由。まぁ……匙たちみたいに立派なもんでもないですけど」

 

その戦兎の言葉に、サーゼクスは笑みを浮かべてから、勲章を取り出した。

 

「これは?」

「今回の戦いで目覚ましい活躍をした者に送られるものでね。まあ景品のようなものさ。貰う者によってはね」

 

そう言ってサーゼクスは戦兎の手に握らせる。

 

「重い……すげぇ重いです」

 

勲章を手にしたとき、戦兎は思わずそんな言葉が漏れた。その言葉を聞いてサーゼクスは頷き、

 

「ならばその重さを忘れないことだ。それが勝者の礼儀だよ」

「……はい」

 

 

戦兎は勲章をギュッと握る。それを見たサーゼクスは、

 

「それでは私は行くね。ぶちギレたセラフォルーを止めなくては」

「想像つきますね」

 

戦兎がそう返すと、サーゼクスは肩を竦めて行ってしまう。それを見送ったあと、

 

(勝者の礼儀か……)

 

戦兎は自分の手を見て思う。化学や力は誰かのために使う……それが正しいと思ってきたし、今だって変わらない。でも、これからレーティングゲームで戦っていくと言うことは、それとが違うことになる。でも、サーゼクスにも言ったように戦兎なりの戦う理由はちゃんとある。だから、

 

「俺は迷わねぇ……」

 

戦兎はそう呟くと、新たな覚悟を胸に、病院を後にしたのだった。


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